「コロナ対策実施店舗応援事業」について、事業執行全般に関わる法的な問題や執行体制のあり方を検討した結果が示されました。

2020/09/26

9月定例月議会において、私は、市内事業者の感染症対策の促進を目的とする総事業費15.6億円の「コロナ対策実施店舗応援事業」を実施するために設置した実行委員会の内容について、実行委員会方式の採用やクーポン券の法的性格について、内部統制、コンプライアンスの観点から質問を行いました。(※クリックするとリンクします。)

そして最後に、「再度、事業執行全般に関わる法的な問題や執行体制のあり方を検討し、クーポン券配布開始までに見解を議会に対して説明するとともに、違法・不当な事実を残さないよう、適正な実施を」と要望しました。

「コロナ対策実施店舗応援事業」について、客観的性格はどう見ても「市民全員への3,000円の給付事業」です。
ところが、事業手法は「商品券事業」のようです。その上、事業目的は「コロナ対策推進のための店舗支援」としています。本来、それぞれの事業目的の実現のために用意されている事業手法には、リスクを防ぎ適正な執行を実現するための仕組みが備えられています。
しかし、まぜこぜにしてヌエのような事業になってしまったために、リスク回避の仕組みが働かなくなってしまっているのではないか、というのが今回の問題ではないかと思っています。

今週から、約19万世帯に特定記録郵便での郵送が始まっていますが、担当の観光にぎわい部から、昨日、「枚方市コロナ対策実施店舗応援事業」及び実行委員会に関する資料」として、以下の内容を示され、説明がありました(提供いただいた資料を転記しています。下線は資料のママ)。

 

法的整理に関する市の資料によると、「枚方市コロナ対策店応援クーポン券」は、有価証券のうち、「商品券」の一種にあたるが、「発行の日から6か月以内に限って使用することができる商品券等」であり、「利用者が対価の支払をしない無償の商品券」に該当するため、「資金決済に関する法律の適用を受けない」(財務局長への登録・届出が不要)、との見解です。

ちなみに、昨年度、市が発行したプレミアム付き商品券は、「地方公共団体が発行する商品券」で、使用できる期間が6か月以内だったから、法律の適用を受けなかったとのことです。

一方、今回の「枚方市コロナ対策店応援クーポン券」は、「利用者が対価の支払をしない無償の商品券」に該当するから、法律の適用が除外されると説明しています。
しかし、財務局の資料を見ると、「資金決済に関する法律の適用を受けない」類型として「地方公共団体が発行する商品券」は示していますが、「無償の商品券」は記載されていません。そもそも商品券は前払式支払手段の一つなので、「無償の商品券」という有価証券が一般的に存在するかのように説明するのは無理があるのではないでしょうか。
たがら、財務局資料の中のFAQに出てくる「無償の商品券」の質問も、イベント等の景品として無償で提供される「商品券」の話なのです。今回のクーポン券のように総額12億円、240万枚も発行される有価証券を想定しているとは考えられません。

結局、市が無償のクーポン券を配布する事業をしたかったのであれば、発行主体は「枚方市」とすべきでした。「実行委員会」発行としてしまうと、クーポン券の法的性格が紙幣類似証券となるリスクが拡大し、法に抵触する危険性が残ったままになるからです。

もし、市が事業の実施手法を「実行委員会方式」にすることが大切で、クーポン券の発行主体も実行委員会にする必要があるならば、プレミアム商品券同様、お得感の大きな「(前払式支払手段の)商品券」とすべきでした。

私が問題だと思うのは、このような専門的な判断を事業実施前にしっかりと検討した気配が感じられないことです。「スピード感」ばかりが重視されて、15億円もの税金が使われる事業における「適正さ」、つまり、必要性から始まって、目的と手段が整合しているのか、法的に問題はないのか、執行体制は適切か、リスク対策は万全かなどの検討がないがしろにされていると感じるからです。
コロナ対策だと言えば、何でもOKというわけにはいきません。私たちがこれから先にもっと必要となる財源を先に使ってしまうことにもなるのですから。
こんなふうに市の事業の適正さを追求する理由は他にもあります。例えば、昨年度、低所得者やひとり親家庭等の水道料金基本料金の福祉減免を行財政改革を理由に廃止しようとしておいて、今回は15億円もの税金をばらまくという姿勢がどうしても理解できないから、でもあります。

 


「枚方市コロナ対策実施店舗応援事業」及び実行委員会に関する資料(観光にぎわい部)

「枚方市コロナ対策店応援クーポン券」の法的性格の整理

・クーポン券は有価証券のうち、「商品券」の一種にあたる。
・商品券のうち、一定の要件を満たすすものは、「資金決済に関する法律」の適用を受け、発行者は、財務局長への登録・届出が必要になる。
・ただし、下記に掲げる要件を満たす場合には、資金決済に関する法律の適用を受けないため、実行委員会が発行する「枚方市コロナ対策店応援クーポン券」は、同法の適用を受けない。
【要件】
発行の日から6か月以内に限って使用することができる商品券等
・乗車券
・美術館等の入場券
・社員食堂の食券
利用者が対価の支払をしない無償の商品券

※プレミアム付き商品券は、無償の商品券ではなかったが、発行の日から6か月内に限って使用できる商品券地方公共団体が発行する商品券であったことから資金決済に関する法律の適用除外。

「枚方市新型コロナウイルス感染症対策事業者支援実行委員会」について

【目的】
北大阪商工会議所、枚方信用金庫・枚方市の三者で構成し、新型コロナウイルス感染症による様々な影響を受けた市内事業者に対し、感染症対策促進等の支援を行うことを目的として設置。
【設置の経緯】
コロナ禍の中、地域経済団体として緊急事業者アンケート等を実施してきた北大阪商工会議所、地域金融機関として相談窓口となり、事業者調査、資金繰り支援を実施してきた枚方信用金庫は、市内事業者の実態を十分に把握されている。
今回のコロナ対策実施店舗応援事業を実施するに際し、三者が情報共有・連携することで、より迅速で効果的な事業を実現できるとの考えから、実行委員会を設置するに至った。
【実行委員長】
役員体制は、三者の互選により、委員長が市観光にぎわい部次長、副実行委員長が北大阪商工会議所専務理事、会計監査が枚方信用金庫理事・業務部長となった。
災行委員長に市観光にぎわい部次長(市職員)が就くことについて、同実行委員会は、新型コロナウイルス感染症対策を行う事業者の支援を目的として設置された任意団体であり、営利を目的とするものではなく、また、実行委員会の事務は、本市の業務と密接な関わりを持ち、かつ、本市も実行委員会の構成員となっている中で、本市としても実行委員会の事務を担う必要があることから、職務命令により、市職員を実行委員会の事務に従事させること
としたものである。
【クーポン券の主体・責任】
クーポン券の発行主体は実行委員会。本事業にかかる責任の所在は、実行委員会ではあるが、構成メンバーであり負担金を支出しており、且つ実行委員会事務局を担っている市の責任もある
【今後の方策】
実行委員会の事務局は、本市、商工振興課内に設置し、事業実施にあたっては、市と同等のセキュリティポリシー等を適用。実行委員会の事務経費の執行、委託業務等についても通時、観光にぎわい部内の複数の管理職がチェック・監査を行うなど、厳正に事業を実施。

 


 

以下のパンフレットは財務局や一般社団法人日本資金決済業協会のホームページからの引用です。(※クリックするとPDFファイルが開きます。)

 

 

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