スマート自治体化を推進するなか、それでも窓口に来られる市民の期待にはたして応えられるのか。窓口業務の委託は、公共財である「行政に携わる人材の質」の低下を招くのみならず、公共としての能力の弱体化につながる。窓口業務の最適化について質問しました。12月定例月議会、一般質問の報告④です。

2020/12/15

枚方市議会議員の奥野みかです。

ここでは、「4.窓口業務の最適化について」の報告です。

窓口業務を委託することによる効果として、繁閑に応じた窓口ブースやスタッフの増減による待ち時間の短縮など、民間の持つノウハウを活用した効率的・効果的な運用がはかれるとのご答弁でしたが、忙しい時(繁)に人員を増員して、暇な時(閑)に人員を減らす等、繁閑期が異なる窓口業務をマルチに担えるスタッフを確保して流動配置するという高度なマネジメントを行うには、極めて高度な人材の確保が必要です。また、柔軟な勤務形態による人的ストックの活用が民間事業者の持つノウハウとしてあげられていますが、雇用側に都合のよい働き方を要求される労働者を増やすことに加担しているようで、結果として、行政の質を下げ、官製ワーキングプア、特に女性の非正規労働者をさらに増やすだけになるのではないかと懸念されます。

スマート自治体化を推進する中で、窓口への来訪の比重はどんどん下がるなか、それでも窓口に来られるという市民が期待されるのは、窓口対応の職員が訴えをしっかりと傾聴し、複雑な困難を解きほぐし、必要な情報を正確にわかりやすく教えてくれ、何らかの対処を行ってくれるという、業務に通じ、意思決定ができる「専門性」と「責任」のある対応ではないでしょうか。
「偽装請負」となるため、判断形成を担う職員層と直接のコミュニケーションができない窓口委託職員に、市民の信頼を得る窓口対応がはたして可能なのか、非常に懸念されます。窓口業務の最適化として行う窓口業務の委託は、公共財である「行政に携わる人材の質」の低下を招くのみならず、公共としての能力を弱体化させるものだと指摘しました。

 

 


 

以下、12月15日の一般質問のやりとりを掲載します。

4.窓口業務の最適化について

Q.私の質問
先日開催された総務委員協議会では、「窓口業務の最適化」について報告があった。改めて、窓口業務の委託に期待する効果について、伺う。

A.総合政策部長の答弁
窓口業務を委託することによる効果としては、繁閑に応じた窓口ブースやスタッフの増減による待ち時間の短縮、また、それによる待合での密状態の解消などの市民サービスの向上や、労務管理・教育研修、各業務に共通するプロセスの集約化等による業務のスリム化など、民間の持つノウハウを活用した効率的・効果的な運用がはかれるものと考えている。

Q.私の質問
窓口業務の委託の効果によるご答弁をいただいたが、繁閑に応じた窓口ブースやスタッフの増減など、はたして実現できるのか。また、労務管理や教育研修、各業務に共通するプロセスの集約化とはいったいどういうことを想定されているのか。
あわせて、活用するという民間ノウハウとは具体的にどのようなことを想定しているのか、伺う。

A.総合政策部長の答弁
繁閑に応じた窓口やスタッフの増減については、先行して窓口業務を委託している自治他の状況や事業者へのヒアリングを踏まえると、突発的、また、短時間での人員増対応も民間事業の多様な勤務形態により可能であると考えており、こうしたスタッフの繁閑に応じたフレキシブルな対応により、繁忙窓口数と閑散窓口数の柔軟な設定を行うことで、市民の待ち時間の短縮につながるものと考えている。
また、出退勤や時間外勤務などの労務管理や、制度や手続き等、窓口業務やその処理手順などに要する研修を事業者自らが従事者へ行うため、市職員の業務負担の軽減が図られること、データ入力や郵便物の封入封緘といった各手続きに共通して発生するプロセスについても、部署を超えて集約化を図ることで、これまでよりも効率的な人員体制で処理でき、それにより生み出された人的資源を効果的に活用していくことができるものと考えている。
民間事業者の持つノウハウについても、待合・受付から始まるオペレーションや教育・訓練システム、また、柔軟な勤務形態による人的ストックの活用などがあると考えており、こうしたノウハウを活用することで、より一層の市民サービスの向上や職員の負担軽減にもつながるものと考えている。

O.私の意見
忙しい時(繁)に人員を増員して、暇な時(閑)に人員を減らすというマネジメントも、民間なら多様な勤務形態により可能であるとのことである。しかし、繁閑期が異なる窓口業務をマルチに担えるスタッフを確保して、繁閑にあわせて流動配置するなどというような高度なマネジメントを行うには、極めて高度な人材の確保が必要である。委託費用と委託期間に制約がある中で、そうした体制が実施できると本気で考えておられるのか。
また、待ち時間の短縮や密状態の解消は、繁閑に応じたスタッフの増減や繁閑に応じた窓口ブースの増減によってではなく、オンライン申請や郵送申請、予約制窓口等の導入により、来庁者の絶対数を減らすことで実現すると考える方がはるかに有効である。
柔軟な勤務形態による人的ストックの活用が民間事業者の持つノウハウとしてあげられているが、雇用側に都合のよい働き方を要求される労働者を増やすことに加担しているようで、結果として、行政の質を下げ、官製ワーキングプア、特に女性の非正規労働者をさらに増やすだけになるのではないかと懸念される。
コンビニ交付などはすでに取り組んできておられるが、スマート自治体化を推進する中で、窓口への来訪の比重はどんどん下がる一方で、それでも窓口に来られるという事例は、単なる「定型的処理」ではなく、さまざまな疑問や要望事項がある場合に集約され、そういった市民が期待するのは、窓口対応の職員が訴えをしっかりと傾聴し、複雑な困難を解きほぐし、必要な情報を正確にわかりやすく教えてくれ、何らかの対処を行ってくれるという、
業務に通じ、意思決定ができる「専門性」と「責任」のある対応ではないか。

これまで、市の窓口業務については、多様な任用形態を活用して、ケアマネ資格等を有する非常勤職員の雇用等により、配置職員の人材の質と効率性の最適化を図るという「行政改革」の取り組みを積み重ねておられる。この窓口業務に係る方針を、10%もの消費税負担が上乗せされる「委託」に転換しなければならない必要性が、どこにあり、どのような費用対効果を生むのか、よくわからない。
結局、人件費を物件費に転換し、人件費比率が減少したかのように見せかけるためだけの効果しかないのではないかと指摘しておく。

Q.私の質問
次に、委託でしばしば問題になるのが「偽装請負」である。
窓口に来られる市民の方が、複雑な困りごとを抱えている場合、また、イレギュラーな制度運用に関する要望をお持ちの場合、それぞれのご事情に寄り添ったきめ細かなサービス提供を行うためにはマニュアルに記載のない対応が必要となる場合がある。マニュアルに基づく運用に疑義が生じた場合や、あるいは市職員の支援が必要となった場合等、どういった対応をしていくのか、見解を伺う。

A.総合政策部長の答弁
議員ご指摘のとおり偽装請負を避ける観点より、委託後の窓口運用については原則的に業務マニュアルに基づいて民間事業者が実施することとなる。
この業務マニュアルについては、業務における処理手順等を記載することとなるが、あわせて保険料の納付相談等の市の判断を要する用件で来庁された際などについては、市へ引き継ぐといった対応についても記載する想定をしている。
同様に、窓口応対を進めるうちに、民間事業者が判断できない事例等が発生した場合については事業者が配置する責任者を通じて市と協議する運用とし、場合によっては、市が対応を引き継ぐといった流れについても委託の仕様や業務のマニュアルに記載を行う予定である。

O.私の意見
「偽装請負」となるため、判断形成を担う職員層と直接のコミュニケーションができない窓口委託職員に、市民の信頼を得る窓口対応がはたして可能になるのか。
窓口業務の最適化として行う窓口業務の委託は、公共財である「行政に携わる人材の質」の低下を招くのみならず、公共としての能力を弱体化させるものだと指摘しておく。

 

 


 

昨年6月の定例月議会で、窓口業務等のアウトソーシングについて質問を行いました。
いま、行政に問われているのは、まさに「仕事の質」で、懸命に生きている市民の皆さんが抱える複雑な「困りごと」に対応できる「高度な質と総合的な対応体制」を確立することが求められていて、行政改革のテーマや必要性はこの点にこそあるのであって、決してコスト削減による「安上がりの行政」を作ることではないと意見しました。

 

 


 

※以下は、2020年11月24日に開催された「総務委員協議会」に市が提出した資料より抜粋したものです。

(2)窓口業務の最適化について

本市では、令和元年5月に「窓口業務等のアウトソーシングに関する考え方」を策定し、窓口業務等のアウトソーシング化の検討を進めてきました。今年度においては、「行財政改革プラン2020」での課題設定も踏まえ、窓口業務における「アウトソーシング」、「ICT導入」、 「直営」のベストミックス(最適化)をめざし、より俯瞰的な見地から、専門知識や経験を活用し各部署間の横断的な改善ができる取り組みとなるよう、事業者への委託により業務調査を実施しています。今般、その中間報告を受けましたので、~それを踏まえ以下のとおり令和3年度より窓口業務の最適化に取り組むものです。

 

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