虚偽公文書の作成は、行政への信頼を失わせるとんでもない行為。公文書は「民」の財産です。「紺綬褒章」の申請をめぐる枚方市の事件を振り返ってみました。

2021/11/15

枚方市議会議員の奥野みかです。

公文書は「民」の財産です。国においても、「森友学園」問題など、公文書の「改ざん」が大きな問題となっていますが、虚偽公文書の作成は、行政への信頼を失わせるとんでもない行為です。
刑法には、作成名義を偽り(本来その文書を作成する公務員ではないのに)公文書を作成する公文書偽造罪(刑法第155条)が規定されていますが、本来、その文書を作成する立場の公務員が、虚偽、変造した内容の文書を職務上作成した場合は、虚偽公文書作成罪(刑法第156条)となります。偽造公文書行使罪(刑法第158条)もあります。

今回、「紺綬褒章」申請のため、虚偽の公文書が作成された枚方市の事件を振り返ってみました。

 


 

国や公共のために功労のあった方、社会の各分野において優れた行いのあった方などに対し、国としてその功績や業績を表彰するために、「栄典制度」が設けられています。その栄誉のしるしとして勲章や褒章が授与されます。

勲章その他の栄典の授与は、戦後、日本国憲法第7条において、内閣の助言と承認によって行われる天皇の国事行為に位置づけられ、公的部門・民間部門を問わず、様々な分野から国家・公共に対して功労のあった者に幅広く授与されるものとなっています。

国が功労を表彰するということ
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勲章と褒章の授与の候補者は、各省各庁の長等から内閣総理大臣に推薦され、内閣府賞勲局での審査を経て、閣議において受章者が決定されます。閣議決定の後、天皇陛下の御裁可を得て発令されています。

各府省などは、通常、都道府県・市町村や関係団体から推薦された方の中から候補者を選考します。「紺綬褒章」を除く5種の褒章は春秋褒章で授与されますが、「紺綬褒章」は毎月1回発令(毎月末の閣議→翌日発令)されています。

公益のために私財(個人500万円以上、団体1,000万円以上)を寄附した者を対象とする「紺綬褒章」は、褒章の一つで、国、地方公共団体又は公益団体に対する寄附が授与の対象で、表彰されるべき事績の生じた都度、各府省等の推薦に基づき審査をし、授与を行っているものです。

紺綬褒章等の授与基準について
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紺綬褒章→栄典事務の手引(平成30年/内閣府賞勲局)からの抜粋
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この「紺綬褒章」の国への推薦書類に、作成した虚偽の公文書を添付したというのが、枚方市で起こった事件です。
新聞記事や市のホームページ等を参考にしながらこの事件を振り返ると以下のようになります。

 ↓↓↓

枚方市は、2020年11月12日、市内在住の大東清四氏(91歳)から、現金2億円の寄附を受けました。

寄附にあたって、大東清四氏のコメントは次のとおり。
「私は、常々、縁の深い枚方市の発展に貢献したいと思ってきましたが、今回の寄附金は、市が検討されている同観光交流施設の整備に活用していただき、地域・関係団体の方々や広く市民の皆様に喜んでいただける施設として、できるだけ早期の完成を目指し、枚方宿地区の活性化と賑わいの創出につなげていただくことを願っています。今回の寄附金については、妻・千代子の一周忌の祥月命日に、私が出資・設立した『一般財団法人 千清文化教育財団』を通して、枚方市に寄附することといたします。」
【過去の寄附】 2017年9月、市は1億円の寄附を受け、「枚方市大東清四美術品管理基金」を市条例で設置。併せて美術工芸品等・約100点についても寄附を受けました。

観光交流施設の整備に」市民から2億円の寄附 ~枚方市の観光振興を願って
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この寄附は、『一般財団法人 千清文化教育財団』(団体/大阪市北区)が、2020年11月、枚方市に2億円を寄附したというもので、宛名を財団とする領収書を発行していました。しかし、財団の代表理事(個人/大東清四氏。以下、「代表理事」と書きます。)が個人的に寄附したように見せかけようと、担当部長は財団の代表理事を「紺綬褒章」の候補者として推薦する書類を部下に作成させ、2021年3月、大阪府に申請書類を提出しました。その際、宛名を代表理事とする領収書も「偽造」し、写しを添付したということです。

2021年5月、市の内部調査により、虚偽の領収書の作成という不正が発覚しました。

市の調べに対して、担当部長は、「金銭の授受や第三者の要請などはなかった」と説明し、「今回は褒章をもらってほしかった(大東氏からは、財団設立前の2017年にも現金1億円などの寄附を受けていましたが、「紺綬褒章」の推薦を失念していたのこと)」、「寄付への感謝の気持ちを表したかった」と話していたとのことです。
部長と代表理事は知人同士で、部長は『一般財団法人 千清文化教育財団』の理事も務めているとのことです。
推薦書類は、いったん国に提出されましたが、虚偽公文書の作成が発覚した後、2021年6月、市は推薦を取り下げ、財団に謝罪したということです。

市は、2021年10月29日、観光にぎわい部の男性部長を減給10分の1(6か月)の懲戒処分としました。
事案の概要は次のとおり記載されています。
「昨年度、一般財団法人から寄附金を受領したが、その団体ではなく、代表である個人を紺綬褒章の候補者として推薦することを検討する中で、あらためて原本とは異なる個人あての領収書の作成を指示したもの。」

懲戒処分の公表(枚方市ホームページ/2021年10月29日)
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大阪・枚方市部長が褒章の推薦書類偽造「褒章もらってほしかった」(毎日新聞/2021年10月29日)
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褒章推薦のため文書偽造 「寄付くれるから…」(産経新聞/2021年10月29日)
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私は、この事件に係る問題を次のように考えています。

まず、絶対に許されないことですが、国に提出する「褒章」(栄典)の推薦書類のなかで、「民」の財産である公文書において、虚偽の公文書が作成されたというのは、行政への信頼を失わせるとんでもない行為であるということ、さらに、多額の寄附をしてくださった方の名誉を貶める行為であるということです。
そして、虚偽公文書の作成という行為、違法な処理を部下に命じる管理職は論外であるということです。

非常に理解が難しい点、私の疑問点は、事件発覚(2021年5月)後、長期間にわたって処分が行われなかったということです。当該部長は、2021年10月29日付での懲戒処分となっています。
そして、一般常識的に考えれば同時に行うべきであったのではないかと思われる人事異動は、2021年11月になって行われています。事件発覚後、実に半年を経ているわけです。

その人事異動については、市の職制に関する規則の改正により、これまでなかった新しいポストを作り、「部長」職のままでの異動となっています(※下記参照)が、降格といった分限処分は、同時に行われていません。

この事件について、議員に対しても経過の詳細な説明はなく、新聞記事等をたどりながら事件の経過を振り返っていますので、私の誤認があればご指摘いただければと思います。

結局、虚偽公文書の作成という事件そのものも全く不要な「不正」(団体からの寄附として推薦しても褒章を受けることはできます)であり、事件発覚後の市の対応についても「公正さを欠く」ものであったのではないかと考えています。
虚偽公文書の作成という不正が起こるということはとても情けのないことですが、起こった後、速やかに公正な対処ができないことが、いま、最も心配なことです。

 


※「公文書の『偽造』」としていた表現について、法的な正確性を踏まえ、「虚偽公文書の作成」という表現に一部修正しました。(12月15日)

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