外国からきた若者たちは、日本でどう生きるのか? 1月27日、毎日新聞のオンラインイベントを聴講しました。

2021/01/27

枚方市議会議員の奥野みかです。

1月27日は、オンラインイベント「外国からきた若者たちは、日本でどう生きるのか?」を聴講しました。


日本で暮らす外国籍の子どものなかに、学校に通っていない、通えない(就学不明の)子どもがいる。子どもたちはこれからの日本社会を支える一員になるにもかかわらず、教育を受ける権利をないがしろにされている。かれらはどのような状況に置かれ、どのようなことを思い、どのように生きているのか。~そんな問いかけのイベントでした。

毎日新聞の取材班が全国100の自治体を対象にアンケート調査を実施し、就学状況が不明な子どもが少なくとも16,000人いるということが報道され(2019年1月)、「義務教育」の対象とされない外国籍の子どもたちの教育を受ける権利がないがしろにされている実態、日本語が理解できずに社会の中で孤立する子どもたちの状況が明らかになりました。その報道をきっかけに文部科学省は全国1,741自治体を対象に全国調査を実施することになり(2019年3月)、最終的には就学促進に法的根拠を定めることになる(「日本語教育推進法(2019年6月)」→すべての子どもの就学保障、「外国人の子供の就学促進及び就学状況の把握等に関する指針(2020年7月)」)など、行政を動かす力になっていきました。

毎日新聞紙面でのキャンペーン報道「にほんでいきる」については、私もスクラップをしながら追いかけていましたが、この報道は「日本新聞労働組合連合(新聞連合)ジャーナリズム大賞優秀賞(2020年1月)」、「新聞協会賞(2020年10月)」を受賞し、「国籍を問わず教育を受ける権利の拡充を訴え、外国人との共生社会実現に向けて問題を提起する優れた報道」と評価されています。(→毎日新聞「にほんでいきる~外国からきた子どもたち」はこちらからリンクします。
連載は、書籍『にほんでいきる 外国からきた子どもたち(明石書店)』として発売もされています。私も購入しました。

 

オンラインイベントの「第1部 外国ルーツの若者たち、子どもたちの現実」では、「にほんでいきる」のキャンペーン報道に携わった奥山はるな記者、堀智行記者と、『ルポ川崎』で若者たちの現実と未来を書いた磯部涼さんが、日本で暮らすさまざまなルーツの子どもたち・若者のリアルな姿の報告がありました。

外国籍の子どもには就学義務がない。100自治体へのアンケートで、就学していない子どもの数は把握していない、入学案内を送って終わり、特に対策はしていない、自治体として把握していても就学不明にはカウントしていない、就学不明の子どもの居場所を調査していない等、自治体によって対応がバラバラである実態が明らかになるなか、国としても放置しておくことができなくなり、全国1,741自治体を対象に全国調査を行った結果、学校に行っているかわからない「就学不明」の外国籍の子は小・中で2.2万人、日本語指導が必要な子は高校も併せて約5万人ということが数として明らかになってきています。
通いたくても通えないまま家にこもり続けていたり、通学できても日本語がわからず、いじめを先生に訴えることができなかったりする子どもたちもいます。適切な日本語教育の不在。自治体に委ねられている就学促進の取り組み。地域で孤立した果てに命を落としたり、卒業後の受け皿、学びの場を見つけられず、社会からドロップアウトしてしまう、犯罪組織に関わってしまう子どもたちもいます。日本で義務教育を受けたのに、不就学・不就労の未成年が8.2%という事実…。外国人の子どもたちの学ぶ権利について、「善意」に頼るのは限界ではないか、そんなお話がありました。
また、2009年のリーマンショックの時には、学校に行けない子どもたちが教会などに出てきて、外国人コミュニティの課題が見える化され、思いもかけず、支援でいるようになったということがあったけれども、今回はより見えなくなってしまっている、支援が届けにくくなっているというようなお話もありました。

オンラインの中では、次の4つのテーマが示されました。
①学校に行っているかわからない子どもたち ~就学不明2.2万人~
②学校には行っているけれども言葉がわからないまま学校で過ごす子どもたち ~無支援状態1.1万人~
③言葉がわからない=発達障害と見なされ、特別支援学級に在籍の子ども ~特別支援学級の在籍率が2倍~
④義務教育を受けた子どもたちのその後の人生にフォーカス ~不就学・不就労の未成年が8.2%~

 

「第2部 ラップカルチャーの可能性」では、ラップを通して、若者が国籍やアイデンティティについての苦悩や葛藤を表現できる場としてワークショップを各地で開催されている、『ルポ川崎』にも登場するラッパーのFUNIさんのワークショップレポート。さまざまなルーツを持つ子どもたちがラップを通して自分の思いを伝えるワークショップの様子が報告されました。

言いたいことがたくさんあって、そんな思いを言葉に乗せて、ラップに乗せて表現するって素晴らしい!と感動しました。ラップに乗せての自分語り、一人ひとりのストーリーに胸を撃たれました。

「第3部 ディスカッション」では、「ほんとうの共生社会って?」をテーマに、『ルポ川崎』のライターの磯部涼さん、キャンペーン報道「にほんでいきる」に関わった奥山はるな記者・堀智行記者と、ラッパーのFUNIさんのディスカッションでした。

日本語が十分でない子どもたちの声を聞き出せているのか。心の中に抱えていることを聞き出していこう。閉じ込めず、のびのびと生きることができる社会にしよう。一人ひとりのストーリーを大切に、自分のルーツを否定的にとらえることのないよう、変えていこう。移民を受け入れる対応ができていない、国が認めていない、構造的な問題が存在する。誰一人取り残さないためにも、子どもたちの就学機会の確保を。そんな話がありました。

 


 

外国人の子どもたちの教育の保障については、これまでの議会の一般質問で取り上げています。

2019年12月、教育長から「国籍に関係なく、すべての子どもたちが生き生きと学ぶことができる学校園づくりに努める」との答弁はいただきましたが、「外国籍の方に就学案内を行ったのち、就学手続きを行わず、就学状況が確認できていない方が、毎年一定数あるが、不就学かどうかについては、把握していないのが実情」という2019年の状況からの進展は確認できす、中学校入学時に就学案内は行われていないことも明らかになりました。

2020年7月に示された「外国人の子供の就学促進及び就学状況の把握等に関する指針」に、地方公共団体が行うべき事項として、外国人の子どもが就学の機会を逸することのないよう、就学の案内を徹底する具体的な取り組みとして、「就学案内に対して回答が得られない外国人の子供については、個別に保護者に連絡を取って就学を勧めること」「学齢期に近い外国人幼児のためのプレスクールや来日直後の外国人の子供を対象とした初期集中指導・支援を実施するなど、円滑な就学に向けた取組を進めること」といった内容も記されています。「すべての外国人の子どもの就学機会が確保されることを目指す」との一文が盛り込まれ、外国籍の子どもに対する日本語教育・就学促進の責務に、法的根拠を持たせることになりました。

子どもの最善の利益の観点からも、SDGsの「誰一人取り残さない」多文化共生の観点からも、このまちに住む外国につながる子どもたちの教育の保障や学力の保障に取り組むことが大切で、まずは、就学機会を確保するため、就学案内等を徹底し、就学状況を把握することが必要です。引き続き、本市の状況も確認していきたいと思っています。

 

▶ 2020年12月定例月議会 「外国につながる子どもたちの教育の保障について」

▶ 2019年12月定例月議会 「外国人市民に対する支援について」

 


※以前にスクラップしていた関連資料を掲載します。

ルポ 外国人労働者の子どもたち ~受け入れ拡大のかげで~(2019年9月18日 NHK)

僕に日本語を教えてくれない?外国人労働者の受け入れ拡大で、学校教育を受けられない子どもたちの問題

 にほんでいきる「外国からきた子どもたち 支援学級在籍率、外国籍は2倍 日本語力原因か 集住市町調査」(2019年9月1日・毎日新聞)

なぜ、外国籍の子どもは特別支援学級の在籍率が高いのか?-拙速な判断で日本人の子どもの2倍以上に!
日本国内に住民登録している外国籍の子どもたちの中で、現在、小学校・中学校の義務教育学齢に相当する子どもは、約12万4千人。海外から日本へ来た子どもたちの日本語能力が十分でないケースは少なくないなか、言葉がなかなか通じない中で、自治体・行政が子どもの状況を正確に把握していくことは難しい状況。言葉の問題か、発達障害か判断がつかないということがあるようです。
「にほんでいきる」の記事によれば、外国人が多く暮らす25の自治体が調査したところ、公立小学校・中学校に在籍する外国籍の子どもの5.37%が「特別支援学級」に在籍していたことがわかりました。この25の自治体のすべての児童生徒の特別支援学級の在籍割合は2.54%なので、外国籍の子どもたちの特別支援学級の在籍率は、その2倍に上るということです。

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