子どもたちの最善の利益を確保するためにも、子どもたちにとって安全で豊かな放課後環境の整備のためにも、職員とのコミュニケーションを図り、課題解決のために必要な取り組みを誠実に行っていただきたい。放課後児童健全育成事業の適正運営について質問しました。12月定例月議会、一般質問の報告②です。

2020/12/15

枚方市議会議員の奥野みかです。

ここでは、「2.放課後児童健全育成事業の適正運営について」の報告です。

保護者が就労等により不在となる児童の家庭に代わる毎日の「生活の場」として、児童福祉法に規定された放課後児童健全育成事業の適正運営について、いくつかの観点から質問を行いました。

・職員が安心して働き、しっかりとした専門性を身につけることができなければ、保育の質の向上は期待できないのに、国補助をすでに申請して、進みかけていた処遇改善(キャリアアップ補助金・年数に応じて定額加算)も財政が厳しいと見送るような話が出ている。
・職場の研修もままならず、新入職員もいきなり現場に配置されるので、子どもたちの保育とあわせて、現場で指導をしなければならない。
・留守家庭児童会室の室長の役割を求められる、管理職でもない「主任支援員」に課はどれだけの職責を求めているのか。新型コロナウイルス感染拡大の中、小学校の臨時休校中の対応についても、身体的にも精神的にギリギリのところで何とかやってきたという状況だけれども、その職責に応じた報酬があるわけでもない。重責に耐え切れず、「主任支援員」を降りたいと思っても、降りる制度がなく、仕事を辞めることしか選択肢がない。
・市は放課後キッズクラブとして、来年度より新たな事業を導入しようとしているが、民間委託のために示された仕様書や質問回答を見る中で、大きな不安や懸念を感じているが、課と十分な意見交換ができていない。

そんな現場のさまざまな声を聞く中で、今回の質問をすることを決めました。

待機児童を発生させないため、「弾力を超える弾力」受入れを前提に留守家庭児童会室の班数を設定されていること、その班数から算出した職員数において、年度当初からずっと3割を超える欠員であるという事実、責任者という「主任支援員」の職務内容と責任体制のあいまいさと職責に見合った処遇が実現されていない現状など、様々な課題が可視化されたのではないかと思います。
さらに、市は、「放課後キッズクラブ」という新規事業の来年4月からの導入を決め、委託事業者も決まったようですが、留守家庭児童会室事業と、目的も内容も異なる放課後子ども教室事業を併せ持つ「放課後キッズクラブ」という事業を、どのような目的で、何を目標に、どのように展開していこうとしているのかについて、市民にも、留守家庭児童会室の職員にも、しっかりと伝えていかなければならないのではないかと考えます。

子どもたちにとって安全で豊かな放課後環境の整備は、留守家庭児童会室の適正な運営、つまり、子どもたちと向き合う職員が安心して働き続けることができる職場環境の確立、処遇改善等による必要な人材の確保、保育の質の向上につながる専門性確保のための人材育成の取り組み等があってこそ、かなえられるものであると考えます。現在の留守家庭児童会室事業の抱える様々な課題が、民間委託することのみで解決できるものではないことは明らかで、現状の改善にしっかりと向き合うことが求められています。私たちの未来のためにも、子どもたちの最善の利益を確保するためにも、市は、いまある課題に真摯に向き合い、職員と行うべきあたりまえの丁寧なコミュニケーションを図り、課題解決のために必要な取り組みを誠実に行っていただきたいと切に願っています。

 

 


 

以下、12月15日の一般質問のやりとりを掲載します。

2.放課後児童健全育成事業の適正運営について

Q.私の質問
今年4月1日時点での留守家庭児童会室の運営状況は、全児童の4分の1にあたる約5,000人の児童を、45小学校で、合計100班を設置して受け入れているとの報告であった。
まず、10月1日時点での入室児童数と全児童数に対する割合(全体・学年別)、及び児童会室の設置班数と1班あたりの入室人数の最大、最小数について、伺う。
市の「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準条例」においては、おおむね40人とする支援の単位ごとに放課後児童支援員を2人以上配置することとし、その内1人は補助員に代えることができる、と職員の配置の基準を定めているが、留守家庭児童会室の職員は、この間、ずっと欠員状態が続き、厳しい状況である。
そこで、10月1日時点における放課後児童支援員(任期付職員)及び准支援員(会計年度任用職員)の人数とその欠員状況、及び、配慮を要する児童や運営をサポートする児童会室サポート員(会計年度任用職員)の現状を伺う。
また、職員の欠員の現状を踏まえ、新年度に向けて、支援員・准支援員はどの程度、確保しなければならないと考えているのか、伺う。

A.学校教育部長の答弁
1点目の10月1日時点での児童会室の運営状況については、100班体制で入室児童数は4,222人、児童全体の20.4%となっている。学年別の内訳は、1年41.3%・2年36.6%・3年25.9%・4年14.7%・5年6.0%・6年2.1%となっている。また、1班あたりの入室人数の最大は56人で、最小は31人となっている。
2点目の職員数は、放課後児童支援員の必要数162人に対し132人、放課後児童准支援員は45人に対し26人となっており、新年度に向けて確保する職員は、支援員が任期更新者30人を含む64人、准支援員が任期更新者8人を含む41人となる。
児童会室の現状を踏まえ、年間を通じて採用を実施するなど人材確保に努めているが、支援員及び准支援員については確保が難しい状況であり、会計年度任用職員である児童会室サポート員として「配慮を要する児童をサポートする者」80人、「運営をサポートする者」を92人配置することで適正な運営に取り組んでいる。

O.私の意見
基準条例において、支援の単位はおおむね40人とされているが、市は1室50人までで定員を設定し、待機を発生させないよう、「弾力」受入れで54人まで、その数以上の「弾力を超える弾力」受入れも行っており、年度当初から児童数が約2割減少した10月現在においても、1班の最大数は56人の「弾力を超える弾力」での受入れとのことである。年度当初、「弾力」受入れは100班の1割弱(7)、「弾力を超える弾力」受入れは2割強(23)で、65人の児童会室もあったと聞いているので、適正運営という観点から、弾力運用を行わずに班数を設定しておれば、3割程度の増班が必要となっていたわけである。

Q.私の質問
10月現在、支援員で30人、準支援員で19人の欠員、3割を超える人員不足をサポート員で補っており、年間を通じて人材確保に努めているとのことであるが、本年度の4月2日以降における職員の離職数及び入職の推移について、伺う。

A.学校教育部長の答弁
離職者数は、支援員が4人、准支援員1人、サポート員が12人、入職者数は、支援員が1人、准支援員8人、児童会室サポート員が12人となっている。

O.私の意見
年度当初から支援員は4人離職し、1人採用、準支援員は1人離職し、8人採用と、人員体制としてはあまり改善されたとは言えない答弁である。振り返ると、年度当初も、3割を超える人員不足の体制であったわけである。

Q.私の質問
次に、留守家庭児童会室運営を担う職員の中でも、各児童会室の室長である「放課後児童主任支援員」については、現場に管理職が不在の中、精神的な負担も含め大きいとの訴えを聞いている。留守家庭児童会室条例の施行規則第7条には、「児童会室の運営を行うため、児童会室に放課後児童支援員及び放課後児童准支援員を置く。」との規定しかないが、「主任支援員」の職務内容及び運営の責任体制について、また、「主任支援員」はどこにどのように規定され、どのような手続きでどのように配置されているのか、伺う。

A.学校教育部長の答弁
主任支援員は、責任者として児童会室の運営を統括するとともに、支援員・准支援員への指導・育成を行うものとしている。
次に、運営の責任体制については、主任支援員が責任者という位置づけであるが、課題等の発生時には、児童会室に勤務する全ての職員が対応を行うこととし、放課後子ども課に遅滞なく対応状況を報告すること、放課後子ども課と緊密に連絡を取り合い、その方針・指示に従い保育運営を行うことを基本としている。
主任支援員は、平成27年度の「子ども子育て支援新制度」施行にともない、新たな職員体制として設けたもので、平成26年12月10日付けで市長決裁を行っており、年度当初に辞令発令を行い、それぞれ児童会室に配属している。

O.私の意見
平成26年に市長決裁で「責任者として児童会室の運営を統括するとともに、支援員・准支援員への指導・育成を行う」という「主任支援員」の職務内容を規定したとの答弁である。職務内容の具体的内容はよくわからないが、「市長部局の職制に関する規則」において、例えば、管理職である「課長代理」は、「所属上司を補佐し、所属上司が指定する担当事務を総括整理し、所属上司に協力して、所属職員の指導教育を行う」とされているので、答弁からは、「主任支援員」は課長代理以上の職責を求められているように受け止められる。さらに、児童会室の責任者という「主任支援員」が、45児童会室すべてに配置できていないのが現状で、年度当初から「主任支援員」が配置できなかったり(欠員)、諸般の事情により不在となった場合には、課に配置されている主任支援員が児童会室の責任者の役割を果たすため、応援に行かれているとのことである。しかしながら、室の責任者とされる「主任支援員」に、職責に応じた管理職手当が支給されているわけではない。

Q.私の質問
次に、子どもたちを安全に保育するためには、それぞれの職種や経験年数に応じ、知識や技能の向上等のための研修が不可欠で、特に、新規採用時、また、責任者とされる「主任支援員」に対するステージ別の研修も重要である。
そこで、職員に対する研修についての考え方(研修方針)と、今年度における職員研修の実施状況について、伺う。

A.学校教育部長の答弁
児童会室では、職員の資質向上を目的とした研修を企画・実施するため、研修委員会及び障害児学習委員会を設置している。通常時は、児童会室職員が委員となり、児童会室での課題等や配慮を要する児童への対応などをテーマとした研修のほか、新入時には服務や児童会室運営に係る研修、経験の浅い職員には、各現場での課題など意見交換を中心とした研修、経験年数に応じた階層別研修では、それぞれの立場での役割や課題解決に向けての研修を実施している。
今年度は、新型コロナウイルスの感染拡大状況を踏まえ、新入時の研修を除き、職員を対象とした集合研修実施を見送っている状況である。

O.私の意見
コロナ禍においても、新入時の研修は実施したが、職員対象の研修は見送られているとの答弁である。責任者と位置付けるならば、主任支援員に対する研修、特にリスク対応の研修などは、通常時の運営を超えるさまざまな判断を求められている今年こそ、実は欠かせないものではないか。職員が安心して働くための取り組みについても、丁寧に実施していただくことをお願いしておく。

Q.私の質問
次に、必要なスキルを有する人員が十分に配置されていない状況は深刻な課題である。この課題を解消する一つの方策としては、処遇改善であると考える。
そこで、国のキャリアアップ補助金制度の活用など、児童会室の主任支援員をはじめ、職員に対する処遇改善に向けた取り組み状況について、伺う。

A.学校教育部長の答弁
放課後児童支援員キャリアアップ処遇改善事業については、今後の留守家庭児童会室を含む放課後対策事業の再編を踏まえ検討する必要があると考えており、導入については困難な状況であるが、同一規模の他団体の利用状況や国の補助制度の継続性なども総合的に勘案し、人材確保の観点から検討していく。

O.私の意見
留守家庭児童会室の職員は、新型コロナウイルス禍において、踏ん張ってきた、頑張ってきた。このことに対して、一時的には慰労金を、さらには、処遇に応じた対応となるよう改善を適切に行っていただきたいと要望しておく。

Q.私の質問

次に、来年度より、留守家庭児童会室を含めた、放課後キッズクラブ事業を導入されます。9月定例月議会の一般質問において、事業を実施するにあたっては、現場職員の意見もしっかり聞きながら、焦ることなく丁寧に進めていただくことを要望した。
放課後キッズクラブには「統括指導員を配置する」と示されているが、留守家庭児童会室の「主任指導員」とは別に配置されるのか、兼務するのか、よくわからない。留守家庭児童会室には職員配置に係る基準があるが、放課後子ども教室にはどのように職員が配置されるのか。放課後キッズクラブは直営2校での導入も予定されていることから、現場からは運営上の問題や処遇の問題など、多くの不安の声が届いている。また、民間に委託する2校では、通常の留守家庭児童会室運営の主体が変わることになる。
そこで、導入に向けて、対象となる保護者・児童や職員に対する説明の状況について、伺う。

A.学校教育部長の答弁
1点目の職員配置については、業務全体を総合的に監督し、連携調整を行う統括責任者は、児童会室の主任支援員がその役割を担うものとし、職員は、児童会室と子ども教室それぞれに配置するが、事業の一体的な運営によるメリットを活かすため、見守り業務などにおいて、状況に応じて、運営日単位、または時間帯単位で両事業の職員が交代で勤務するなど流動的な勤務を可能とするものである。
2点目の説明状況につきましては、9月下旬に、放課後キッズクラブ先行導4校の保護者等に対し、事業の概要資料を配布、意見聴取を行うとともに、10月15日から20日にかけて各校で説明会を開催した。また、1月18日から21日にかけて、子ども教室「登録説明会」を改めて開催する予定である。職員への説明は、職員配置を決定次第、適宜実施していく。

O.私の意見
「職員への説明は職員配置の決定次第、適宜実施」との答弁である。つまり、放課後キッズクラブの対象となる児童会室への配置が決まってから対象となる職員に説明する、と言われているのだろうか。実際に配置される職員に対して、運営に係る丁寧な説明を行うのは必須であるが、来年4月から放課後キッズクラブという新規事業を導入するのに、あまりにも悠長なお答えであると驚いている。民間委託のために示された仕様書や質問回答を見る中で、児童会室の職員は大きな不安や懸念を感じておられる。十分な説明や意見交換ができていないと嘆いておられる。
「ただいま」「おかえり」で始まる留守家庭児童会室は、事業の目的も内容も、放課後子ども教室とは異なる。それらを併せ持つ放課後キッズクラブという事業を、市はどのような目的で、何を目標に、どのように展開していこうとしているのかについて、市民にも、留守家庭児童会室の職員にも、しっかりと伝えていかなければならないはずである。

保護者が就労等により不在となる児童の家庭に代わる毎日の「生活の場」として、児童福祉法に規定された放課後児童健全育成事業の適正運営について、いくつかの観点からお尋ねをした。待機児童を発生させないため、「弾力を超える弾力」受入れを前提に児童会室の班数を設定されていること、その班数から算出した職員数において、年度当初からずっと3割を超える欠員であるという事実、責任者という「主任支援員」の職務内容と責任体制のあいまいさと職責に見合った処遇が実現されていない現状などがわかった。
結局、働く職員の処遇改善を行って必要な人材を確保し、職員の資質向上を図る。こうした留守家庭児童会室をしっかりと運営する体制も十分に作れていないし、職員や保護者との丁寧なコミュニケーションも図れていない、これが現状である。
子どもたちと向き合う職員が安定して働き続けられること、研修等を通じて必要な専門性を高めていくことができることこそが、子どもたちが安全で豊かに放課後を過ごせることにつながると私は思っている。民間委託は決して万能薬ではない。まずは、現状の改善にしっかりと向き合うことが求められているのであり、これらの努力を行うこともなく、民間委託を何としてでも進めようとするのは、行政責任の放棄に他ならない、と指摘しておく。

 


 

「留守家庭児童会室事業」について、今年9月の定例月議会、今年6月の定例月議会、そして、今年3月の予算特別委員会でも私は質問を行っています。

今年9月の定例月議会においても、子どもにとって豊かな放課後環境の整備のためには、国制度も活用しながら、留守家庭児童会室職員の処遇改善を図り、人材を確保するとともに、新たな事業の実施に向けては、現場職員の意見もしっかりと聞きながら、焦ることなく丁寧に進めていただくことを強く要望しています。

小学校の臨時休校中の緊急対応について質問を行った今年6月の定例月議会においては、緊急時の運営方法を整理するとともに、保育の必要な児童の受け皿である留守家庭児童会室の運営が崩壊しないよう、そこに働く職員が見通しを持って安心して勤務することができるよう、課題の共有や情報の伝達も含め、しっかりとコミュニケーションを図っていただくことを強く要望しています。そして、新型コロナウイルス感染症対策における小学校の臨時休業に伴う臨時的で緊急の「児童の居場所」事業と、教育委員会に事務委任され取り組まれている児童福祉法に規定される放課後児童健全育成事業である「留守家庭児童会室事業」は、その目的も機能も異なるものであるということを正しく認識した上で、すべての児童の豊かな放課後をめざす取り組みである「放課後キッズクラブ」事業という新規の取り組みを進めていただきたいと意見しています。

 

 

 

 

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