市立ひらかた病院における病室でのWi-Fi環境の整備について質問しました。6月定例月議会、一般質問の報告③です。

2021/06/22

枚方市議会議員の奥野みかです。

ここでは、「3.市立ひらかた病院における病室でのWi-Fi環境の整備についての報告です。

新型コロナの感染拡大のなか、入院生活を送る患者と家族のオンラインでの面会やLINEなどのSNS、メールの送受信、病室で受ける遠隔授業、手話通訳や多言語対応のためのタブレット活用等、病室でWi-Fi(無線LAN)を利用したいという声が高まっています。また、孤立を防ぐ観点からも、安心して退院することができるための支援としても、病室のWi-Fi環境の整備の必要性が高まっています。

この質問を行うきっかけとなったのは、朝日新聞の記事(2021年4月26日)でした。

「病室にWiFi「助かった」 できた病院、できない病院

この記事の中で、業者や総務省などの省庁などで作る「電波環境協議会」の調査によると、約8割の医療機関が無線LANを導入しているけれども、患者や外部訪問者らのネット接続用は約3割にとどまる実態が報告されていました。
そして、「娯楽ではなく、今やライフライン」と全国がん患者団体連合会(全がん連)理事長で悪性リンパ腫の患者会代表の天野慎介さんのお話として、「病室に入れなくても、WiFiを使えば、病状が厳しい入院患者と家族の大切な会話や、小児患者と親とのやりとりが顔を見ながらできる。動画やブログを見て孤独を和らげることも含めて、多くの患者にとってネット環境が不可欠となっている現実を病院側はぜひ知ってほしい。また行政には、通信環境を整備しようとする医療機関への設備補助の拡充など、より積極的な後押しをお願いしたい。」という内容が記載されていました。
また、がん経験者や筋ジストロフィーの患者、テレビ電話機能で手話通訳を利用する聴覚障がい者らの有志が2021年1月に設立した「#病室WiFi協議会」からは、「WiFiはインフラの一部として導入するべきもの。多くの患者から要望が届いている。政府も補正予算の補助金でWiFi環境の整備をできるようにした。未整備の病院はぜひ活用を。」という訴えが記載されていました。

市立ひらかた病院では、病棟デイルームに無料Wi-Fi機能が提供されており、それを支える情報基盤も有しておられますが、病室のWi-Fi機能は少数の個室等に留まっているようです。新型コロナウイルス感染症の補助金を活用して、感染症入院患者さんの孤立を防ぐ観点からオンラインの環境整備に取り組まれたので、その内容を確認させていただくとともに、現在では、スマホやタブレットが人々のライフラインにもなっていることも踏まえ、全国の病院の中でもまだまだ数少ない全病室でのWi-Fi利用を可能にすることを早期に実現いただくよう強く要望しました。

 


以下、6月22日の一般質問のやりとりを掲載します。

3.市立ひらかた病院における病室でのWi-Fi環境の整備について

Q.私の質問
各医療機関では治療や検査とともに、新型コロナウイルス感染症にかかる院内感染防止対策にも苦慮されていることと思う。入院患者さんへの面会も制限される中、特に、新型コロナウイルス感染症の治療のために入院された患者さんは、精神的にも非常に辛い状況だと思われる。
そこで、感染症患者を受け入れておられる市立ひらかた病院では、入院患者さんにどのような対応をとられているのか、伺う。

A.市立ひらかた病院事務局長の答弁
市立ひらかた病院では、令和2年11月中旬からの第3波による感染拡大時に、感染により不安な状況の中で隔離に近い状況にある患者さんの精神的負担を軽減する観点から、「オンライン面会」ができる環境を令和2年度の「新型コロナウイルス感染症感染拡大防止・医療提供体制確保支援補助金」を用いて整備している。
「オンライン面会」は、感染症病棟として確保した7階東病棟に入院されている患者さんが、持参したスマートフォン等で使用することができるWi-Fi環境と、スマートフォン等をご準備されていない方のために貸し出しタブレットを整備し、オンラインで面会ができるよう環境を確保したものである。

O.私の意見
市立ひらかた病院では、病棟デイルームに無料Wi-Fi機能が提供されており、それを支える情報基盤も有しておられる。新型コロナウイルス感染症の補助金を活用して、7階東病棟のWi-fi環境等を整備されたとのことで、入院患者さんの孤立を防ぐ観点からも非常にいい試みを行っていただいたと思う。ただ、新病院整備の時点では、携帯電話の電波がペースメーカー等に悪影響を及ぼすなどの理由から利用を制限する必要があったとのことで、病室のWi-Fi機能は少数の個室等に留まっていると思う。しかし、現在では、スマホやタブレットを使えるのが当たり前となっており、人々のライフラインにもなっている。新型コロナの感染拡大のなか、入院生活を送る患者と家族のオンラインでの面会やLINEなどのSNS、メールの送受信、病室で受ける遠隔授業、手話通訳や多言語対応のためのタブレット活用等、病室でWi-Fi(無線LAN)を利用したいという声が高まっている。また、孤立を防ぐ観点からも、安心して退院することができるための支援としても、病室のWi-Fi環境の整備の必要性が高まっている。
医療機器側でも電波対応ができる機器が開発されているとのことなので、全国の病院の中でもまだまだ数少ない全病室でのWi-Fi利用を可能にすることを早期に実現すべきだと強く要望しておく。

 


 

Wi-Fi提供者向け セキュリティ対策の手引き~安全なWi-Fiの提供に向けて~(令和2年5月、総務省サイバーセキュリティ統括官室)


電波環境協議会

現在、電波環境協議会「医療機関における電波用推進委員会(医療電波利用作業部会)」では、「医療機関において安心・安全に電波を利用するための手引き(2016.4)」の改定版の策定、コロナ禍における感染症患者看護のリモート支援のための電波利用事例調査、アンケート調査(無線利用状況や周知状況、経年的な変化の把握のため毎年実施)、他機関等への働きかけに向けた検討(2021年度刊行予定の「建築ガイドライン」作成等支援含む)等に取り組んでいる。

医療機関における電波利用推進委員会2020年度報告(2021.05.28)

電子カルテ・ナースコールや遠隔医療などの臨床での利用のみならず、患者の社会や家族とのつながり感の確保による安心・安定の提供や災害時の重要情報の発信および入手方法としても「無線LAN・Bluetooth利用」の需要が高まっていることが課題としてあげられています。新型コロナウイルス感染拡大の中においては、接触機会の制限、政府による制度整備や助成により、非接触・非対面の医療ニーズが増加し、オンライン面会やオンライン診療、遠隔モニタリング等においても、無線LANがこうしたニーズを実現する技術の通信インフラとして活用されていると記載されています。

 医療機関等向けに実施したアンケート結果の公開_2020年度_病院編(2021.05.28)

2020年度調査では、「無線LAN」 は88.7%の病院で導入されており、2019年度調査(81.1%)よりも広がっています。無線LANの使用用途は、「施設スタッフのインターネット接続用(75.4%)」、「医療情報システム用(65.7%)」が最も多く、その他にも「患者様・外部訪問者のインターネット接続用(30.8%、2019年度27.3%)」や、「医療機器のデータ伝送用(26.8%)」等、多岐にわたっています。

 


 

今年3月、枚方市は「手話でつむぐ住みよいまち 枚方市手話言語条例」を制定しています。
2020年に法制化された「電話リレーサービス」(聴覚障がい者がビデオ通信などを利用して手話などを介在して聴者と電話をかけることができるサービス)の事前登録も今年6月1日から始まっています。遠隔手話通訳のさまざまな仕組みもWi-Fi環境が整備されていなければ効果的に生かすことができません。

 

聴覚障がい者に限らず、視覚障がい者や筋ジストロフィーなどの障がい者の患者さんにしても、日本語の理解が困難な外国人の患者さんにしても、外部とのコミュニケーションのために病室でWi-Fiを使うことが必要になってきています。遠隔医療との連携、救急・消防などの緊急時対応との連携、遠隔授業との関係等も含め、病室でのWi-Fi環境の整備について、早急に検討いただきたいと思います。

^