15.6億円のコロナ対策実施店舗応援事業の業務執行体制を問う。枚方市新型コロナウイルス感染症対策事業者支援実行委員会について質問しました。9月定例月議会、一般質問の報告③です。

2020/09/20

ここでは、「3.枚方市新型コロナウイルス感染症対策事業者支援実行委員会について」の報告です。

市内事業者の感染症対策の促進を目的とする総事業費15.6億円の「コロナ対策実施店舗応援事業」を実施するために設置した実行委員会の内容について、内部統制、コンプライアンスの観点から質問を行いました。
「コロナ対策実施店舗応援事業」は、北大阪商工会議所、枚方信用金庫、枚方市の三者で構成される実行委員会が発行者となる500円クーポン券を約240万枚を作成し、市民1人あたり3,000円分を市内全世帯に郵送配布する事業ですが、実行委員会の実行委員長は市長の補助職員である枚方市観光にぎわい部次長で、副実行委員長が北大阪商工会議所専務理事、会計監査が枚方信用金庫理事・業務部長とされています。
内部統制の観点から、この実行委員会方式に問題がないのか、発行するクーポン券の法的性格はどのようなものなのかを質問したところ、「コンプライアンスの観点から問題はないと判断し、厳正に事業を実施していく」、「本事業に関わる法的根拠などについては、庁内関係部署との協議を踏まえたものである」との答弁でしたが、再度、事業執行全般に関わる法的な問題や執行体制のあり方を検討し、クーポン券配布開始までに見解を議会に対して説明するとともに、違法・不当な事実を残さないよう、適正な実施を要望しました。

 


 

以下、9月15日の一般質問のやりとりを掲載します。

3.枚方市新型コロナウイルス感染症対策事業者支援実行委員会について

Q.私の質問
「コロナ対策実施店舗応援事業」は、補正予算を審議した8月緊急議会の翌日、実行委員会が設立され、着々と準備が進められている。8月の段階ではよくわからなかったが、問題点がたくさん見えてきたので、実行委員会方式による、事業執行のあり方について、いくつか、伺う。
まず、改めての確認であるが、実行委員会方式を選択した理由について、次に、設置した実行委員会の構成と役員体制について、ならびにクーポン券の発行主体について、伺う。

A.観光にぎわい部長の回答
本事業を実施する実行委員会は、北大阪商工会議所、枚方信用金庫、枚方市の三者で構成し、新型コロナウィルス感染症による様々な影響を受けた市内事業者に対し、感染症対策促進等の支援を行うことを目的としている。これまで、北大阪商工会議所や枚方信用金庫では、それぞれが独自に、事業者へのアンケート実施や事業者の資金繰り支援などにあたられ、市内事業者の実態を十分に把握されている。
今回のコロナ対策実施店舗応援事業を実施するに際し、三者が連携することで、より迅速で効果的な事業を実現できるとの考えから、実行委員会を設置するに至ったものである。
この三者で構成する実行委員会の役員体制については、委員長が枚方市観光にぎわい部次長、副実行委員長が北大阪商工会議所専務理事、会計監査が枚方信用金庫理事・業務部長となっており、クーポン券の発行主体は実行委員会である。

Q.私の質問
この実行委員会の実行委員長は、枚方市観光にぎわい部次長との説明である。ちょっとしたイベントのための実行委員会ではない。15.6億円の負担金を市から預かり、12億円ものクーポン券を40万人市民に配る事業の責任者を市の次長が務めるというのは、驚き以外の何ものでもない。
この実行委員会の方式に問題はないのか、伺う。

A.観光にぎわい部長の回答
実行委員会の事務局は、本市、商工振興課内に設置し、実行委員長を市職員が担うことについて、コンプライアンスの観点から問題はないと判断しており、事業実施にあたっては、市と同等のセキュリティポリシー等を適用している。
今後、実行委員会の事務経費の執行、特に委託業務についても適時、観光にぎわい部内の複数の管理職がチェック・監査を行うなど、厳正に事業を実施していく。

Q.私の質問
15億円を超える資金の管理と執行、各種の契約締結業務、住民情報のセキュリティ管理、そして監査。これらの仕事のすべてを実行委員会の役割とし、枚方市の統制から離している。
会計管理者や会計室、契約課、ICT戦略課、そして監査委員監査。予算は執行残額が発生すれば減額補正をし、新規事業は目的・効果を明らかにした上で必要な予算計上を行い、議会の議決を得る。
こうした様々な部署や機関の機能によって事務執行の適正さが確保されているのが自治体行政である。それを市長の補助職員である次長がトップの実行委員会にすべてを委ね、求められる各種事務は事務局としての商工振興課1課が担う。
委託費用が予算を大幅に下回ったので、負担金の範囲内で実行委員会が新たな事業を行うような話も出ている。
市は、一方で、行政事務の執行に伴うリスクを低減する内部統制制度の構築を打ち出しているのに、やっていることがバラバラではないか。

気になることは、他にもあるので、次の質問に移る。
実行委員会は市民1人当たり3,000円分のクーポン券、総額12億円分を発行し、40万市民、約19万世帯に特定記録郵便で郵送されるようであるが、このクーポン券の法的な性格について、伺う。

A.観光にぎわい部長の回答
今回のクーポン券は、利用者が対価の支払いをしない無償のものであることから、「資金決済に関する法律」の適用を受けないものである。また、本事業に関わる法的根拠などについては、庁内関係部署との協議を踏まえたものである。

O.私の意見
クーポン券の法的性格について、「資金決済に関する法律」の適用を受けないもの、との答弁は、商品券ではない、という意味かと思う。クーポン券が商品券でないならば、いったい何なのか。
「紙幣類似証券取締法」という法律があり、紙幣に類似の作用・機能を持つものの発行等を取り締まることが定められている。今回のクーポン券は1枚500円券で、たくさんのお店での買い物に使える、紙幣と同じ機能を持つ有価証券のようにも思える。単に商品券でないとだけ言っていたら、取り締まりの対象になりかねない。
期間限定とは言え、500円のクーポン券を240万枚、総額12億円相当を流通させるわけである。クーポン券を受け取った店舗の方の自己使用による複数回流通の防止措置等も必要となると思う。
しかし、そうした説明もなく、実行委員会はどのような対応をするつもりなのか、懸念が残る。

今、ここでは、あえて答弁などは求めないが、「コロナ対策実施店舗応援事業」について、再度、事業執行全般に関わる法的な問題や執行体制のあり方を検討し、クーポン券配布開始までに見解を議会に対して説明するとともに、「庁内関係部署との協議を踏まえたものとのこと」であるが、違法・不当な事実を残さないよう、適正な実施を強く求めておく。

 


 

枚方市コロナ対策店応援クーポン券の配布について (※クリックすると枚方市ホームページにリンクします。)

 


 

▶ 枚方市新型コロナウイルス感染症対策事業者支援実行委員会について
新型コロナウイルス感染症によるさまざまな影響を受けた市内事業者に対し、感染症対策促進等の支援を行うことを目的に、北大阪商工会議所、枚方信用金庫、枚方市が構成団体となり、令和2年8月7日に発足しました。

枚方市新型コロナウイルス感染症対策事業者支援実行委員会が行った「枚方市コロナ対策実施店舗応援事業」の業務受注候補者の公募は市のホームページにも掲載されました。

 

 

枚方市コロナ対策実施店舗応援事業委託に係る公募型プロポーザル募集要項(8月7日)

枚方市コロナ対策実施店舗応援事業委託プロポーザル参加仕様書(8月7日)

枚方市コロナ対策実施店舗応援事業委託の質疑・回答書(8月13日

枚方市コロナ対策実施店舗応援事業委託に係る公募型プロポーザルの審査結果(8月18日)

 


 

「コロナ対策実施店舗応援事業」の目的は、市内事業者の感染症対策の促進。実行委員会を設置し、感染症防止宣言を行う店舗(大阪府もしくは枚方信用金庫のステッカー掲載店)で使用できるクーポン券を発行する事業です。
8月1日現在、市に住民票がある市民1人あたり3,000円分(500円×6枚綴)のクーポン券を配布するもので、クーポン券の使用期間は10月1日から12月31日まで。実行委員会発行の500円クーポン券を約240万枚発行する事業費は 12億円、事務経費は 3.6億円、合計15.6億円(実行委員会に全額負担金で支出)となる市独自の事業です。
大阪府のステッカー掲載店は1,200店ほどあり、そのうちクーポン取扱店は200店余りと答弁がありましたが、いずれも日ごとに増えているようです。
クーポン券の換金は枚方信用金庫11店舗で平日の営業時間中に実施とのことでしたが、この換金業務の公正性の確保はかなりハードルが高いと思います。
このクーポン券は商品券とは異なり、もともとの負担・所有者が特定されませんから、何らかの形で換金ルートを確保できたら、クーポン券を集めた分、現金化することが可能になるのではないか、もしかしたら不正手段で多額の現金を入手する人が出てくるのではないかとヒヤヒヤします。クーポン券が偽造されたものでないか、取扱店舗で使用されたものか、換金のために来行した人が取扱店舗の人かどうか、換金したお金が本当に店舗の売上として計上されるのか等々、リスクを想定していくと、実行委員会はどうやってそれらのリスクに対応していくのだろうかと心配になります。
期間限定とは言え、500円のクーポン券を240万枚、総額12億円相当を流通させるわけです。
クーポン券を受け取った店舗の方の自己使用による複数回流通の防止措置等も必要となると思います。
郵便ポストからの抜き取りがなければいいですが、特定記録郵便は受け取りの確認まで求めていません。届いてないという申し出があった場合、再発行するというならば、何を根拠に対応するのでしょうか。
個人的にクーポン券を現金化することは避けられないのではないかと思われますが、割り引いての買取り等が発生しなければいいです。
さまざまなリスクが想定されますが、モラルハザードを招く危険性があることにも注意が必要だと思います。

「コロナ対策実施店舗応援事業」について、客観的性格はどう見ても「市民全員への3,000円の給付事業」です。ところが事業手法は「商品券事業」のよう。その上、事業目的は「コロナ対策推進のための店舗支援」としています。
本来、それぞれの事業目的の実現のために用意されている事業手法には、リスクを防ぎ適正な執行を実現するための仕組みが備えられています。
しかし、まぜこぜにしてヌエのような事業になってしまったために、リスク回避の仕組みが働かなくなってしまっているのではないか、というのが今回の問題ではないかと思っています。

この事業の補正予算が提案された8月6日の緊急議会においても多くの質疑が出されたこの事業の実施に際して、事業に対する様々な疑問や懸念を取り除くための創意工夫を是非とも行政にはお願いしたい、といった意見を私がホームページ等で発信したのは8月8日でしたが、この内容についてもご覧いただければと思います。

▶ いま、明らかにしておかなければいけないこと。総額15.6億円のコロナ対策実施店舗応援事業について、実施までに整理しておいていただきたい課題など。

 

 

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