12月定例月議会 人生の最終段階の過ごし方を選択できる環境の整備について(一般質問①)

2019/12/19

今年の春、家族の看取りを経験し、「病院で死を迎えたくない」という本人が望む形での看取りにとても苦労をし、いろいろと考えるところがあったことから、人生の最終段階の過ごし方を選択できる環境の整備についての質問を行うことにしました。
人生の最終段階を迎える際の大きな問題とは、生活の場である自宅や施設で穏やかに最期の時を迎えたいと願っていても、救急車で病院に運ばれてしまうと、結局、望まない治療を受けることになってしまうことだと思います。

そこで、まず、本市における高齢者の救急搬送の状況、在宅での看取りの状況や在宅医療の現状について尋ね、住み慣れた地域でいつまでも安心して暮らすことができる地域包括ケアシステムの実現に向けて、本市における在宅医療・介護における多職種連携はどのような状況かを質問しました。


どのような最期を迎えたいかについて事前に考え決めることは、どう生きるかを考えることでもあります。
そこで、アドバンス・ケア・プランニング(人生会議)や適切な救急要請について、高齢者ご本人やご家族をはじめ地域住民への啓発を求めるとともに、その意思決定・意思表示を支援する介護従事者・医療従事者に対する周知・啓発を求め、あわせて、人生の最終段階の過ごし方を選択できる環境の整備のためには、枚方市医師会との強力な連携協力関係を是非とも早期に築いていただき、在宅での療養・在宅での看取りを支える在宅医療体制の整備に努めるとともに、救急搬送・救急医療の課題も勘案しながら、市としては、地域医療の推進に関する専門の部署を設け、支援体制を強化していただくことを要望しました。
そして、担当副市長からは、「在宅医療体制を構築するにあたっては、本人意思を尊重する観点から、様々な部署や関係機関と多角的に連携を図るように考えていきたい。」との答弁がありました。

 


 

質問のやりとりは次のとおりです

今年12月1日現在、枚方市の高齢化率は28.0%。市の行われた人口推計では、2039年には38.8%、85歳以上が12.8%と見込まれている。団塊の世代が85歳以上になり、高齢者数がピークを迎えると推計される2040年は、寂しいことであるが、たくさんの方を看取る「多死社会」でもある。そうした状況になった時に生じる問題についてはすでにあらわれ始めているのではないかと、私は心配している。
というのも、私ごとであるが、今年の春、家族の看取りを経験し、「病院で死を迎えたくない」という本人が望む形での看取りにとても苦労をし、さまざまなことを感じたからである。
人生の最終段階を迎える際の大きな問題とは、生活の場である自宅や施設で穏やかに最期の時を迎えたいと願っていても、救急車で病院に運ばれてしまうと、結局、望まない治療を受けることになってしまうことではないかと思う。

そこで、つの観点から、本市の実情について質問する

◇観点1 高齢者の救急搬送の実態と課題について

質問1

救急出動件数が急増するなかでも、特に高齢者の割合が高まってきていると思われるが、本市の救急搬送について、65歳以上の高齢者の比率はどの程度で、この10年間の推移はどのような状況か。
また、救急車が到着した後、心肺蘇生の措置を拒否される在宅の高齢者や施設入所の高齢者のことが話題になっているが、このような救急搬送事案の状況について伺う。

回答要旨1(市民安全部長)

枚方寝屋川消防組合によると、平成30年中に枚方市内で救急搬送した人員のうち、65歳以上の高齢者は全体の約6割を占めているとのことである。救急搬送人員については増加傾向が続いており、高齢者比率も過去10年間で1割以上増えているとのことである。また、心肺蘇生措置を拒否されている高齢者の救急事案については、難しい対応を迫られることもあると聞いている。

質問2

枚方寝屋川消防組合のホームページによると、本市において救急出動した件数は、平成30年中、22,513件、救急搬送した人員は20,141人と報告されているので、ご答弁により、全体の6割を占めるという65歳以上の高齢者の救急搬送は一日あたり約33人になる。その高齢者の救急要請の中には、在宅療養中の自宅や施設での看取りを希望されている方も含まれているかと思う。
救急隊員は救命処置を行いながら、迅速に医療機関へ搬送する責務を負っておられるので、一分一秒を争う救急現場で心肺の蘇生を望まない意思が示されると、処置を継続すべきか、判断に大変苦慮することになろうかと思う。
東京消防庁では、自宅での看取りを望む終末期の患者さんが心肺停止になった場合、駆け付けた救急隊が心肺蘇生を中止できる基準を新たに設け、今月16日から運用を始めたと報道されている。
宮崎大学医学部附属病院救命救急センターの研究では、「急変時対応に関する事前確認、エンディングノートの確認、心肺蘇生を行わないことについての意思確認、急変対応マニュアルや救急要請基準の作成など、施設側の視点に立った問題を解決しないかぎり、いくら国が在宅医療推進の施策を行い、在宅医連携強化を掲げても、急変時に施設車で搬送困難な場合は救急搬送となり、希望の終末期を迎えられないことになる。」と指摘されている。
そこで、救急搬送の依頼者となる高齢者施設に対しても、入所者や入所者家族の終末期医療へのご希望を確認しながら、終末期のさまざまなことに関して、基準やマニュアルを作成するように働きかける必要があるのではないかと思うが、市の見解を伺う。

回答要旨2(長寿社会部長)

介護老人福祉施設等においては、既に独自のマニュアル等を作成されている場合もあるが、本市としても、介護保険事業所における医療・介護の専門職に向けて、終末期における意思決定支援のあり方などについて、普及啓発のための講座を実施している。また、今後も、研修や情報交換の機会を設定し、更なる啓発に取り組んでいく。

 

◇観点2 本市における「在宅看取り」の現状について

質問1

枚方市の「自宅」看取り率や、在宅医療を支える在宅療養支援診療所数は全国平均と比べるとどのような状況になっているのか、伺う。

回答要旨1(保健所長)

平成29年人口動態調査において、把握できる死亡した場所が自宅であった方の数から算出した本市の「自宅死の割合」は、12.9%で、全国平均の13.2%に比べ低い状況である。また、本市の在宅療養支援診療所は36か所となっている。

質問2

本市の在宅療養支援診療所は36か所とのことである。在宅医療支援や在宅での看取りをサポートする開業医が少ないことが自宅で最期を迎える方が少ないことにつながっている一つの要因と考えられるが、そのことについて、どのようにとらえておられるのか、市の見解を伺う。

回答要旨2(保健所長)

本市には、病院が多く、在宅に戻るまでに看取られることが多いことになるが、病院での医療だけでなく、在宅医療を希望する市民が増えるよう、地域で安心して医療が受けられるための環境づくりとして、医療機関だけではなく、訪問看護や訪問介護等、社会資源の役割も重要と考えている。今後も患者・家族の意思決定を尊重し、人生を全うできるよう、市民や医療従事者を含めて、関係者の間で理解が進むよう研修や情報提供の機会を促していく。

要望

在宅における日常の療養支援はもちろんのこと、入院医療機関からの退院支援、急変時の対応、警察による検死なく在宅での看取りが可能となる在宅医療の体制を整備するためには、在宅療養支援診療所等の医療機関の確保が欠かせないと考える。
そして、そのためにどうしても必要となる枚方市医師会との強力な連携協力関係を、是非とも早期に築いていただくよう要望する。

 

◇観点3 在宅医療・介護における多職種連携の推進について

質問1

重度の医療・介護を必要とする方が在宅で療養できるかどうか、在宅などで看取りができるかどうかについては、そのために必要な医療・介護の提供体制がなければ実現することができないと思う。そこで、地域包括ケアシステムの実現に向け、在宅医療・介護における多職種連携の推進について、どのように取り組み、どのような課題があると考えておられるのか、伺う。

回答要旨1(長寿社会部長)

地域包括ケアシステムの構築に向けた在宅医療・介護連携推進事業の取組として、地域の医療・介護に係る資源の把握や、関係者の研修、市民への普及啓発等を実施している。また、医療・介護の専門職の連携推進を図るために、顔の見える関係づくりを目指し、日常生活圏域を単位として多職種連携研究会を開催するとともに、「医療・介護資源集」を配布している。
また、在宅での療養や看取りに関する課題としては、人生の最終段階に向けた意思表示の重要性が、まだ市民の間に広く意識されるには至っていないことから、リーフレットの作成や講座の開催を積極的に実施するなど、さらなる普及啓発の推進が必要であると考えている。

質問2

ご本人やそのご家族と医療従事者・介護従事者が、ご本人の望む終末期の医療やケアについて前もって考え、繰り返し話し合い共有する「アドバンス・ケア・プランニング」、厚生労働省がつけた愛称で言うと「人生会議」が重要とされている。
「最期」を事前に考え決めることは、「どう生きたいか」を考えることでもある。
人生の最終段階をどう迎えたいか、在宅の場合なら、どのような医療とケアを選択するのかという意思決定・意思表示について、やはりこれはとても大切なことなので、市民に対してもしっかりと啓発いただくよう要望する。

今回、取り上げた問題は、関係する部署や機関が連携して、さまざまな角度から取り組んでいかなければ解決できない難しい課題だと思う。急変時や看取り期の適切な救急要請については、ご本人やご家族のみならず、介護従事者の対応能力の向上も求められる。
今後、救急搬送・救急医療における看取り問題を整理し、在宅医療体制を整備するためには、どの部署が核となり、どのような体制で関係部署・関係機関と検討を進めていくのかについて、これは、担当副市長に伺う。

回答要旨2(長沢副市長)

人生最終段階の過ごし方、また、迎え方を選択できる環境の整備については、議員お示しの通り、ご本人やご家族だけではなく、介護や医療分野に渡る様々な課題がある。
在宅医療体制を構築するにあたっては、本人意思を尊重する観点から、様々な部署や関係機関と多角的に連携を図るように考えていきたいと思う。

要望

人生の最終段階の過ごし方、迎え方を選択できる環境の整備のためには、在宅での看取りを支える在宅医療体制の整備をはじめ、地域医療の推進に関する専門の部署を設け、支援体制を強化していただくことを要望する。

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