近い将来、枚方版支援教室(自校通級指導教室)の全小中学校への設置をめざす⁉ 2023(令和5)年度は、中学校は全19校に自校通級指導教室を設置するが、小学校はモデルとして、4ブロックにまんべんなく計9校の設置となるよう。
枚方市議会議員の奥野みかです。
「今後の枚方市の支援教育について」を審議する9月14日の教育子育て委員協議会では、変更となる具体的な内容に対する質疑に加え、各委員に届いている多くの当事者や現場の声の訴えやそれぞれの委員の支援教育に対する考え方の表明など、活発な協議の場とはなりました。
さて、その意見等々がどう反映されていくのか、反映されないのかはさらに見守っていきたいと思いますが、当日、会場には傍聴者も多く、同じ空間で、担当副市長や教育長の考えなどをお聞きいただけたのは、よかったと思います。(ただ、委員協議会はオンライン配信がなく、会議録のとりまとめもない会議体ではありますが…)
さて、枚方の支援教育における模索(迷走⁉)のはじまりは、2022年4月27日付文科発第375号_文科省通知「特別支援学級及び通級による指導の適切な運用について」の取り扱いですが、8月22日~23日、スイス・ジュネーブで開催された国連・障害者権利委員会がその通知の撤回を勧告と公表されたかと思うと(平野裕二氏による抄訳_9月10日)(ハフポスト日本版_金春喜氏_9月10日)、9月13日、国連が要請した“分離教育”の中止を「考えていない」、さらに、通常学級で学ぶ時間を制限する通知「撤回しない」と永岡文科相が表明したとの報道(ハフポスト日本版_金春喜氏_9月13日) もあり、えっー⁉と思っていましたので、この経過に対する枚方市の見解と、またぞろ方針を変更するというブレはないのか、の確認をしました。(ブレはない、ようです。)
国から来られている教育長からは、報道された切り取りではない文科相の発言全文(通知の趣旨等)をお示しいただきました(9月13日の永岡桂子文部科学大臣会見分の文字おこしをされたよう)。ただ、「特別支援学級に在籍している児童生徒が、大半の時間を通常の学級で学んでいる場合には、学びの場の変更を検討するべき」という国の理屈は現場にはストンと落ちないですよね…。
(参考)永岡桂子文部科学大臣会見(概略)(記者)ハフポスト日本版の金と申します。先週、国連の障害者権利委員会が日本の特別支援教育が分離教育であり、強く見直すよう要請があった。2022年4月の通知の撤回も要請されているが、通知の趣旨を改めて説明してもらい、撤回の要請にどのように対応するか伺いたい。 (大臣)昨年度、文部科学省が、特別支援学級の在籍児童生徒の割合が高い自治体を対象に行いました調査において、特別支援学級に在籍する児童生徒が、大半の時間を通常の学級で学び、特別支援学級において障害の状態などに応じた指導を十分に受けていない、個々の児童生徒の状況を踏まえずに、特別支援学級では自立活動に加えて算数や国語の指導のみを行うといった不適切な事例が散見をされたところでございます。 |
枚方市の小中全学校に自校通級指導教室を配置という当初方針は、実現できるの?という観点から、非常に驚きであり、衝撃的でもありましたが、「学びの場の選択肢を増やす」という点からは、頑張ってほしいと思いましたし、通級指導教室の必要性の検討とともに、自校通級指導教室の可能性を模索いただきたいと思っていましたが、結果、カネ?、ヒト?の問題もあり、全校設置はかなわず、となったようです。
(※案件資料「今後の枚方市の支援教育について」はこちらから。)
現在は、全中学校(19校)と小学校9校に「自校通級指導教室」を新規設置+小学校12校の既設の通級指導教室の継続の案が示されています。特別支援教育支援員(通年)は、「自校通級指導教室」の新規設置校にのみ配置。特別支援教育支援員(短期任用)はなし。
私の方からは、本当に大切なことは、目の前の児童生徒のために、どの資源(教室、先生、教材等)をどう使うかということであって、子どもの実態に合わせて決められるべき指導(支援)が、時間数でどの教室とか、この教室ではこの指導、と、「教室」に児童生徒を合わさせるような流れ、自治体でのルールや環境、体制に左右されてしまう現状は「根本的に違う」と考えていること、また、教室担当の先生や支援員のみに任せない、チーム学校の校内支援体制をしっかりと整備いただきたいこと、さらに、市の福祉や保健分野との連携も含め、保護者に対する障害理解や制度活用等の研修・情報提供も、今後、ぜひ行っていただきたいこと等をお願いしました。
いろいろと課題はありますが…、この間の経過もポジティブに捉えたいと考えています。さまざまな対話を通してインクルーシブな教育が実現されていくことにより、誰もが排除されず、大切にされ、自信を持って、いまを輝いて生きていくことができる社会の実現に向けた一歩前進につながることを願うばかりです。
【参考】
(※以下、平野裕二氏による「国連・障害者権利委員会による日本への勧告の抄訳」より引用。
教育(第24条)
51.委員会は次のことを懸念する。
(a)医学ベースのアセスメントを通じた障害児の隔離特別教育が固定化されており、通常の環境における教育が障害児(とくに知的障害または心理社会的障害のある子どもおよびより集中的な支援を必要とする子ども)にとってアクセス不能なものになっていること、および、通常学校に特別ニーズ教育学級が存在すること。
(b)受入れの体制が整っていないと想定されることおよび実際に整っていないことを理由として通常学校への障害児の受入れが拒否されていること、および、2022年に発出された〔文部科学〕省通知で、特別学級に在籍する児童生徒は学校で過ごす時間の半分以上を通常学級で費やすべきではないとされていること。
(c)障害のある児童生徒に対する合理的配慮の提供が不十分であること。
(d)通常教育の教員がインクルーシブ教育に関するスキルを欠いており、かつインクルーシブ教育について否定的態度をとっていること。
(e)通常学校において代替的・拡張的なコミュニケーション・情報伝達の態様および手段(聾の子どもを対象とする手話教育を含む)が行なわれておらず、かつ盲聾の子どもを対象とするインクルーシブ教育が提供されていないこと。
(f)高等教育における障害学生にとっての障壁(大学入試および学習プロセスを含む)に対処する国レベルの包括的政策が策定されていないこと。
52.インクルーシブ教育を受ける権利に関する委員会の一般的意見4号(2016年)および持続可能な開発目標のゴール4、ターゲット4.5および指標4(a)を想起し、委員会は、締約国に対し、次の措置をとるよう促す。
(a)隔離特別教育に終止符を打つ目的で、国家的教育政策、法律および行政上の取決めにおいてインクルーシブ教育に対する障害児の権利を承認するとともに、障害のあるすべての児童生徒に対し、当該児童生徒が必要とする合理的配慮および個別的支援があらゆる教育段階で提供されることを確保するため、具体的な達成目標、時間枠および十分な予算をともなった、良質なインクルーシブ教育に関する国家的行動計画を採択すること。
(b)すべての障害児が通常学校にアクセスできることを確保するとともに、通常学校が障害のある児童生徒に対して通常学校〔原文ママ〕を拒否することができないよう「受入れ拒否禁止」(non-rejection)の条項および方針を整備し、かつ、特別学級に関連する〔文部科学〕省通知を撤回すること。
(c)すべての障害児に対し、個別の教育上の必要を満たしかつインクルーシブ教育を確保するための合理的配慮を保証すること。
(d)通常教育の教員および教員以外の教育職員がインクルーシブ教育に関する研修を受けることを確保し、かつ、障害の人権モデルに関するこれらの教職員の意識啓発を図ること。
(e)通常教育現場における代替的・拡張的なコミュニケーション・情報伝達の態様および手段(点字、イージーリード、聾の子どもを対象とする手話教育を含む)の使用を保証し、インクルーシブな教育環境における聾文化および聾盲の子どもによるインクルーシブ教育へのアクセスを促進すること。
(f)高等教育における障害学生にとっての障壁(大学入試および学習プロセスを含む)に対処する国レベルの包括的政策を策定すること。
【参考】
国においても、文部科学省において、「通常の学級に在籍する障害のある児童生徒への支援の在り方に関する検討会議」が開催されています。