市民の利益にならない市庁舎移転。9月26日、18対12で特別多数議決である市役所の位置を定める条例の改正は否決されました。

2022/09/26

 

枚方市議会議員の奥野みかです。

9月26日10時からの議会で、議案第49号「市役所の位置に関する条例の一部を改正する条例」が報告案件のすぐ後に提案され、提案され、審議されました。今日は傍聴者も多く、議場の傍聴席は満席、入りきれない方は委員会室でのモニター中継をご覧いただいたようです。

▶ 2022(令和4)年9月定例月議会議案書(追加➁)

 

「市役所」って何を指すの?
「大垣内町2丁目524番地」ってどこ?
「規則で定める日から施行」って誰がいつ決めるの?
「特別多数議決」なのに、なぜ、急ぐのか?

私の方からは、まずは、議案に対する「疑問」から質問を始めました。そして、施行期日を規則に全面委任する条例の提案も、二元代表制における議会の権能を踏みにじるものであると考えるが、市長はどう説明するのか、さらに、市役所の位置を定める条例の制定時期については、行政実例で示された法解釈や鎌倉市の事例を見ても、今の段階で提案するのは極めて不適切だと考えるけれども、市長はどうお考えなのか、なぜ急ぐのかについて、尋ねました。

今日の議案審議では、私も含め、7議員からの議案質疑があり、3議員からの反対討論が行われた後、採決(記名投票)となりました。

記名投票は、賛成が「白票」、反対が「青票」で、それぞれの木札に議席番号が記されていて、誰がどの票を投じたのかがわかるようになっていました。

結果は、賛成18票、反対12票で、議案は否決となりました。とりあえずは、落ち着くべきところに落ち着き、本当によかったです。

ただ、その後の議事が止まっています…。

私に対する答弁で、部長は「本市では、これまで、公の施設等の施設の設置条例につきましては、地方自治法第222条の規定を踏まえ、当該施設の設置目的と設置場所をできるだけ早い時期に市民に明らかにするため、できるだけ早い時期に条例案を議会に提出させていただき、ご審議いただくようにしてまいりました。今般、本改正条例の提出に先立ち、あるいは同時期に、新庁舎整備などを含めた長期財政シミュレーションや、新庁舎整備を見据えた③街区における不動産取得に係る契約議案、及び④⑤街区のまちづくりを進めるための環境影響評価に係る調査経費等を9月補正予算として提出させていただいており、本改正条例の提出に際しては、現時点で、『必要な予算上の措置が適確に講ぜられる見込み』が十分に確保されたものであると考えております。」と答弁されていましたので、「議案47号の一般会計補正予算(第6号)」、「議案51号の財産(不動産)の取得について」の提案をどうすべきか、悩んでおられるのでしょうか…。それはそうですよね。

私は、今日の部長のご答弁に対して、「いずれも、本日、この議案審議の後に提案される追加議案のようですが、③街区の不動産取得契約が新庁舎の予算と言えるでしょうか。アセスメント費用というのは、債務負担行為で計上されている枚方市駅周辺再整備調査設計等事業を指しておられるようですが、アセスメントなどというのは、まさしく事前調査でしかありません。これで、『必要な予算上の措置が適確に講ぜられる見込み』とやらが十分に確保されたものであるとされているのです。『本改正条例の提出に際しては、その時点で、『必要な予算上の措置が適確に講ぜられる見込み』が十分に確保されたものであると考えている。』との部長の答弁は驚き以外の何ものでもありません。」と言っていますので、ね。

 


 

以下、9月26日の議案質疑のやりとりを掲載します。

議案第49号「市役所の位置に関する条例の一部改正について」

Q.私の質問

先日開催された全員協議会において、地方自治法において「市役所の位置を定める条例」が特別多数議決とされているのはなぜか、という私の質問に対して、市は、「市役所の位置は住民の利害に関する点が特に大きいので、その決定、変更に当たっては慎重になるようにするとの趣旨から特別多数議決とされている。」と答弁された。
全員協議会や一般質問での質疑の状況、また、さまざまな状況を踏まえると、慎重にならなければならない「市役所の位置を定める条例」を、今の段階で提案されること自体が全く不適切であると考えるが、内容について確認すべきことを、4点、伺う。
① まず、1点目として、条例案が定める「市役所」とは、どのような部署で構成される市役所庁舎なのか、教育委員会事務局は含まれているのか、伺う。
② 次に、2点目、「大垣内町2丁目524番地」は、現時点でどこの土地の地番なのか。移転後の市役所庁舎は、すべてその土地の中に建設できるのか、伺う。
③ 次に、3点目、条例案では、条例の施行日について、「附則」において期間を明示することなく、「規則で定める日」とされている。非常に大きな政策課題であり、議会においても長年にわたって審議されてきて、近年、設置された施設である「新火葬場」、「新病院」、「総合文化芸術センター」の設置条例の施行日など、枚方市においては、公の施設を条例で定めて設置する場合、条例の施行日については、「公布の日から起算して何年を超えない範囲内において規則で定める日から施行する。」と、期間を定めて規則に委任する「定め」としてきたと思うが、その理由はなぜなのか、伺う。逆に、施行日について、期間の定めなく規則委任した例があるのか、伺う。
④ 最後に、4点目、予算を伴う条例を制定する場合には、地方自治法第 222 条により、条例制定に先立って、または、同時に、「予算を審議すべき」ことが定められている。これは、いわゆる「予算先議原則」と呼ばれる大切なルールである。枚方市において、予算が必要な公の施設の設置条例を制定するにあたって、どのような内容の予算が提案され、審議・可決されたのか、伺う。

A.市駅周辺まち活性化部長の答弁

新庁舎に配置する部署については、令和2年度に策定した枚方市新庁舎整備基本構想に基づき、現在、市役所庁舎として使用している本館や別館、分館、第2分館、輝きプラザきららに加え、土木部中部別館、市役所分室及び穂谷川清掃工場の一部の部署を集約の対象として、検討していく考えである。一方で、今後の新庁舎整備の検討においては、「新庁舎整備基本計画策定の考え方」に基づき、輝きプラザきららなどの既存施設を活用するとともに、今後の庁舎のあり方の検討や議会のご意見などを踏まえながら、具体的に配置する部署の考え方等をお示ししていく考えである。
② 一部改正条例において、市役所の位置として規定している土地の地番については、現在、第2分館が所在している土地の地番となる。なお、移転後の新庁舎用地については、土地区画整理事業において、現第2分館が所在している土地を含めて新たな区画として整備していくことを想定している。
③ 議員お示しの枚方市立新火葬場条例や枚方市病院事業の設置等に関する条例の一部改正、枚方市立総合文化芸術センター条例の施行期日については、議員お示しのように、「何年あるいは何年何か月を超えない範囲」というように施行期日の最終期限を条例においてお示しする形をとらせていただいている。その理由としては、公の施設の設置条例におきましては条例の提出が早ければ早いほど、当該施設の供用期日を確定的に定めることが困難となりますが、その一方で、当該施設の設置目的と設置場所を出来るだけ早い時期に市民に明らかにし、議会におきましてご審議を賜ることも必要であることから、このような方法で条例の施行期日を定めるようにしている。
また、逆に施行日について期間の定めなく規則委任した例としては、枚方市自動車駐車場条例、枚方市立市民体育館条例、枚方市立総合福祉会館条例などがある。いずれの方法をとるかについては、個々の施設の整備状況や条例の提出時期などに鑑みて、適宜判断しているものである。
④ 次に、予算を伴う条例を制定する場合の考え方についてであるが、議員お示しの地方自治法第222条の規定については、地方公共団体の財政の計画的で健全な運営を確保することを目的として設けられている規定であり、同条の規定により、条例等が予算を伴うこととなるものである場合には予算上の措置との調整が必要となるが、その調整のレベルは案件によって異なっており、条例その他議会の議決すべき案件については、「必要な予算上の措置が適確に講ぜられる見込み」が求められている。
本市では、これまで、公の施設等の施設の設置条例については、地方自治法第222条の規定を踏まえ、当該施設の設置目的と設置場所をできるだけ早い時期に市民に明らかにするため、できるだけ早い時期に条例案を議会に提出させていただき、ご審議いただくようにしてきた。今般、本改正条例の提出に先立ち、あるいは同時期に、庁舎整備を見据えた③街区における不動産取得に係る契約議案④⑤街区のまちづくりを進めるための環境影響評価に係る調査経費等を9月補正予算として提出させていただいており、本改正条例の提出に際しては、その時点で、「必要な予算上の措置が適確に講ぜられる見込み」が十分に確保されたものであると考えている。

O.私の意見

ただいま、4点の質問に対して答弁いただいたが、どの答弁も、とんでもない内容だと思う。その一つ一つについて、何が問題かを指摘し、2回目の質問をさせていただく。

まず最初に、1点目として、私は、条例案が定める「市役所」とは、どのような部署で構成される市役所庁舎なのか、教育委員会事務局は含まれているのかを伺った。これは、市民にとっての枚方市役所の位置とは、必要があって出向く担当部署の窓口のことに他ならないからである。新しい庁舎を造って、「市役所の位置はここです。」と決める以上、市民に、どの部署が市役所のどこにありますと説明できなければならない、というのは、当然のことである。
ところが、部長の答弁はまったく意味不明である。「新庁舎に配置する部署については、どこそこの一部の部署を集約の対象として検討していく。」とは、どういう意味か。これでは、市民に対して担当部署の位置を説明することはできない。もっとも、続けて、「今後の新庁舎整備の検討において、具体的に配置する部署の考え等をお示ししていく予定」と答弁されたので、結局、まだ何も決めることができていない、何も決まっていない、ということである。決まっていないことを重ねて質問しても時間の無駄であるので再質問はしないが、市民から、「そんな基本的なことも決めていないのに、なぜ、市役所の位置を決めることができるのか。」と問われても、その疑問に全く答えられない状態でる、ということは明らかである。

次に、2点目として、条例案に定める「大垣内町2丁目524番地」とはどこなのかを伺うと、「現在、第2分館が所在している土地の地番」とのことである。土木部が置かれた建物のところであるようだ。そして、新庁舎はその土地の上に建てることができるのかを聞くと、新庁舎の建設用地は、今後、「土地区画整理事業において新たな区画として整備していくことを想定」しており、その地番、現在の第2分館の地番の土地は、「一部」に「含まれる」だけ、ということのようである。つまり、全員協議会資料の「④⑤街区の土地利用 イメージ図」には、「庁舎・駐車場等」として、⑤街区に非常に大きな区画が示されていたが、まだ、新しい市役所の用地は確保できていない、ということである。
公の施設を整備するにあたっては条例で定めなければならないが、「用地」も確保できていない段階で設置条例を定めることはできませんし、他市事例でも、そんなことを行ったことはないと思う。しかし、最も重要な施設である「市役所」の位置を、なぜ、「用地」の確保もできていない今の段階で、条例で定めるということができるのか、私には全く理解できない。
これは次の質問と関連することなので、まとめて2回目の質問をさせていただく。

次に、3点目として、枚方市においては、公の施設を条例で定めて設置する場合、条例の施行日については、「何年を超えない範囲内で、規則で定める日から施行する。」と、期間を定めて規則に委任する「定め」としてきた理由について、まず、伺った。
これに対する部長の答弁は、「当該施設の設置目的と設置場所をできるだけ早い時期に市民に明らかにする。」との答弁である。地方自治法が公の施設の設置について条例で定めることを義務づけている理由について、「できるだけ早い時期に市民に明らかにするため」と、まるで、「市民周知のため」とでも言わんばかりの薄っぺらな説明をされたのは、驚きでしかない。地方自治法が公の施設の設置について条例主義を取り、「議会」の議決事項としているのは、地方自治体が「首長」と「議会」の「二元代表制」を取っているからで、公の施設の設置については、予算を必要とする非常に重要な事項であるから、なのである。
「議会」は、地方公共団体の意思を決定する機能及び執行機関を監視する機能を担っている。「議会」が可決した条例は、施行されてこそ意味がある
であるから、前職として、30 年間、枚方市職員であった私は、「条例施行日の市長への白紙委任は適切ではないとの考えから、期限を入れてきたという経過。そしてその期間については、明文規定はないが、おおむね 3 年程度まで。」ということを法制の担当部署から聞いていたし、そう考えていた。そして、枚方市の条例はその形が原則として職員の皆さんにも受け入れられていると、議会にもそのようにい受け入れられていると理解していた。それは、「二元代表制」に対する「行政」としてのあたりまえの対応で、「議会」の権能の尊重であり、「議員」に対するリスペクトでもあると考えていた。枚方市が、条例の施行に関する定めを規則、すなわち長に全面委任するのは問題があるから、期間を限定して委任する定めとすべきである。「議員」である今は、より強く、そうあっていただきたいと考えるものである。
実際、非常に大きな政策課題であり、議会においても長年にわたって建設に関することが審議されてきた、近年の重要施設に関して、
・2006(平成18)年公布の「枚方市立新火葬場条例」では、「公布の日から起算して 2 年を超えない範囲内」、
・2012(平成24)年公布の「枚方市病院事業の設置等に関する条例」の改正では、「公布の日から起算して3年を超えない範囲内」、
・2018(平成30)年公布の「枚方市立総合文化芸術センター条例」では、「公布の日から起算して2年6月を超えない範囲内」において、それぞれ、規則・規程で定める日から施行、という定め方(附則)になっている。
これらの条例と異なり、全面委任型の施行規則もある、と部長が持ち出された条例は、
・1991(平成3)年の枚方市自動車駐車場条例、
・1996(平成 8)年の枚方市立市民体育館条例、枚方市立総合福祉会館条例と、
いずれも古いものばかりで、富田部長のただいまの答弁は、ごまかしのために行う印象操作の例示に過ぎないと考える。
さらに、「施行期日の最終期限を定めることなく、条例の施行期日を規則に委任する事例は、本市においても多々ある」と言わんばかりに「個々の状況を鑑みて適宜判断している」というただいまの答弁は、枚方市役所で働いておられる職員の皆さんの考え方や判断を、いったいどういう方向に導くおつもりであるのか。

最後に、4点目として、地方自治法が定める「予算先議原則」が、これまでどのような形で具体化されてきたのかを伺った。
「予算先議原則」とは、先に述べた地方自治における「二元代表制」に関わる重要な原則である。「予算」とは「税の使い方」ですある。市民にとって重要な「税の使い方」は、「議会」が決める。これがこの原則を支える根本的な理由である。「条例等が予算を伴うこととなるものである場合には予算上の措置との調整が必要となるが、その調整のレベルは案件によって異なる。」など、何かしら、予算の考え方に幅を持たせた上で、公の施設等の施設の設置条例は、できるだけ早い時期に条例案を議会に提出することがよいことであるような答弁をされている。
これも、「とんでもない歪曲」で、公の施設を設置するのに、どのような施設を建設し、どれだけの予算が必要なのか、それを行政側が明確に説明でき、議会が先にその議決を行うからこそ設置が決められる、これが「予算先議原則」の意味するところだと考える。
予算を伴う条例、規則等についての制限を規定する地方自治法 第222条第1項は、「普通地方公共団体の長は、条例その他議会の議決を要すべき案件があらたに予算を伴うこととなるものであるときは、必要な予算上の措置が適確に講ぜられる見込みが得られるまでの間は、これを議会に提出してはならない。」という規定である。
実際、
・「枚方市立新火葬場条例」制定の際は、2006(平成18)年度の当初予算案で建築設計委託料と土地購入経費が、
・ひらかた病院の、「枚方市病院事業の設置等に関する条例」の改正の際は、先行して2011(平成23)年度の当初予算案で実施設計委託料等を含む整備事業費が、
・「枚方市立総合文化芸術センター条例」の際は、先行して2018 (平成30)年度の当初予
算案で、当該施設の建設工事費等を含む整備事業費が可決されている、とのことなのである。
今回の改正条例案に先議する予算についてもご答弁いただいたが、③街区の不動産取得に係る契約議案④⑤街区のまちづくりを進めるための環境影響評価に係る調査経費、アセスメント費用を9月補正予算として提出しているという説明である。いずれも、本日、この議案審議の後に提案される追加議案のようであるが、③街区の不動産取得契約が新庁舎の予算と言えるのか。アセスメント費用というのは、債務負担行為で計上されている枚方市駅周辺再整備調査設計等事業を指しておられるようであるが、アセスメントなどというのは、まさしく事前調査でしかない。これで、「必要な予算上の措置が適確に講ぜられる見込み」とやらが十分に確保されたものであるとされているのである。「本改正条例の提出に際しては、その時点で、『必要な予算上の措置が適確に講ぜられる見込み』が十分に確保されたものであると考えている。」との部長の答弁は驚き以外の何ものでもない。
新庁舎の用地を土地区画整理事業で「換地」取得するというのなら、その土地区画整理事業の予算、さらに、新庁舎の設計委託料等の具体的な建設事業経費等といった予算が明確に示され可決された段階でこそ、「移転」ということを決める条例の審議ができるのです。今回の補正予算など、「予算先議原則」や、「必要な予算上の措置が適確に講ぜられる見込み」を満たすものでは、到底ない。

Q.私の質問

そこで、伏見市長に2回目の質問をさせていただく。
まず、「条例施行日の定め方」という一見細かなことにも、これまで市が、条例の施行を市長への白紙委任することは、二元代表制の中での首長と議会の権能との関係で問題があるからと考えられ、それを折り合わせるために、期限の制約というものを付して来られたという深い意味がある、と指摘した。
伏見市長は、現在は市長のお立場であるが、以前は枚方市議会議員もつとめられていた。その時は、議員として、「二元代表制」の下での議会の権能を高めることを強くめざしておられたのではなかったのか。そうであったとすれば、そのために確立されてきたこれまでの取り扱いを無視するのはなぜなのか。それも、よりにもよって、特別多数議決が必要な条例において、これまでの考え方や取扱いと異なった施行日の定め方をなぜ行うのか、その理由について、伺う。また、こうした定め方には問題がないのと、今でも思っておられるのか、伺う。

次に、地方自治法に定められた「予算先議原則」に反し、新庁舎の用地や直接的な建設経費予算も提案できない段階で、条例を提案することについて、である。
神奈川県鎌倉市では、2017年3月に策定された「鎌倉市本庁舎整備方針」に基づいて、老朽化した本庁舎の移転整備に向けた取組を進めておられる。移転先の候補地は、現在地から離れた土地区画整理事業地内の市有地とされている。そして、新たな本庁舎について、市民対話を重ねながら、市が目指す庁舎像など様々な詳細事項を調査・検討するとともに、移転先候補地の土地区画整理事業を進めておられる。
しかし、鎌倉市は「市役所の位置に関する条例」については、「本庁舎の移転に際しては、当該条例の改正が必要だが、その時期は、『新しい本庁舎の建築着工前とするか、建築完了後とするかは、いずれでも差し支えないが、建築に必要な財源の見通しも立たない時期に制定することは適当でない』という地方自治法に対する国の解釈が行政実例として示されていることから、本庁舎建設に要する予算の概要が明らかにならなければ改正すべきではないと考えている。」と説明されている。そして、「今後、基本構想、基本計画、基本設計、実施設計を順次策定していく中で、適正な時期に改正したいと考えている。」とも説明されているのである。
これが適切な進め方だと思う。市役所の位置を定める条例の制定時期については、行政実例で示された法解釈や鎌倉市の事例を見ても、今の段階で条例を提案するのは極めて不適切なのに、なぜ急ぐのか。地方自治法に明確に反する条例提案をなぜ行うのか、なぜ問題がないと考えるのか。これらについても、市長のお考えを伺う。

A.伏見市長の答弁

担当部長が先の答弁で申したとおり、本改正条例については、法の主旨を逸脱することなく、適正に手続きを行っていると認識している。また、その提案については、③街区に引き続き、連鎖型のまちづくりを止めることなく、しっかりと進めていかなければならないため、懸案課題であった民間活力導入エリアなどの活用の考え方とあわせて、土地利用の前提条件である新庁舎の位置を決定し、地権者や関係者などと連携して④⑤街区のまちづくりを本格的に進めて行くためである。

(※以下、伏見市長が自らの言葉で語られた内容で、事前のヒアリングの際にはお示しのなかった内容である。)
ちょっと市民の皆さんにはなかなかわかりにくい議論かもしれないので、私の言葉で説明させていただくと、連鎖型のまちづくりということで枚方市駅周辺再整備基本計画においてお示しさせていただいているとおり、枚方市の総合文化芸術センターを駅の北口に建設して、そしてこの文化センターの建設があって、現在の市役所のすぐ目の前にある市民会館の大ホール、それから本館が必要となくなって廃止したところである。そして、大阪府の北河内府民センターが、⑤街区と言われている枚方警察署の道路を挟んで向かい側の、 この府民センターが駅のすぐそばの③街区に移転・建設を今進められている。 ここの府民センターの跡地は、そこにこの市役所庁舎を移転するという方向で進めている。 これについては、ただいま上程されている議案の審議をしていただいているところであるが、そして、 この市役所周辺のところは、 この市役所の移転が⑤街区のほうに決定されたら、 ここは市民会館がなくなり、そして市役所がなくなり、現在の市役所周辺のここに民間導入エリアと、それから公園、今のニッペパークは存続するが、一つ造って移転していって、空いたところに次のものが来るという連鎖型のまちづくりを行っているのは議員もご承知のとおりで、その上でご質問していただいていると思うが、そういった中で、 この市役所の庁舎の位置を決めないと、 この地域がどういうまちづくりになるのか、それから北河内府民センターの周辺のまちづくりがどういうまちづくりにしていくかというのを決めることができない。であるから、 ここで市庁舎の移転を議会の皆さんにご審議いただいて決定していただきたいということで、議案を提出させていただいているところである。また、③街区、駅のすぐ近くのところも既に開発が進められている。 これも全体のまちづくりの中で進んでいるので、 この庁舎の移転を確定させないと、そちらの③街区のまちづくりがどんどん進んでいって、最後に庁舎の移転が決まらないということになると、これはまた、ほかの③街区の開発にも大きな影響を及ぼすので、 この時点で皆様方に御審議いただき、決定いただきたいということで提出しているものである。

O.私の意見

あきれるようなご答弁である。なぜ急ぐのか、に対して、連鎖型のまちづくりの中での説明を市長自らの言葉で語られたのだと思う。
「位置条例制定の制定ということが前提条件である」との市長は答弁で繰り返されるが、その前提条件が、前提条件とすることが適切なのかどうか、ということについて、議会でも大きな議論があり、市民については、議論のスタートラインにも立っていない、スタートラインにも立っていただけていないということが問題である、と私は指摘しているのである。
枚方市における歴史的な判断を、伏見市長お得意の「はじめに結論ありき」で、不適切かつ強引に進められることは全く認められるものではない、と改めて強く意見しておく。

私は、先の一般質問において、他の議員が指摘されていたように、伏見市長の市政運営は、本当に何でも「はじめに結論ありき」であること。だから議会で議論を重ねても、結局、結論は変わらず、問題点があいまいにされるということ。それどころか、突如として十分な検討もなされていない「思いつき」のような案が出てきて、そしてその不十分さを指摘されると、表向きは急に消える。アリーナ整備案、市庁舎との合築案がその典型である。
今ここでは、④⑤街区の市有地を有効活用した再整備に対する意見を繰り返すことはしないが、はっきりしていることは、他の議員からたくさんの意見が出されているように、まだ「議論の途上」であり、市役所の位置を⑤街区に定められるような煮詰まり方をしていないということである。
市民の皆さんについては、繰り返し指摘しているが、議論のためのスタートラインにも立たせてもらっていない。もっともっと議会での議論を、そして、市民との対話を深めれば、みんなが納得できる、そして50年先、100年先の、将来の枚方市民にも理解いただける再整備が可能になると考える。
であるにもかかわらず、何のためにこんなに急いで定める必要があるのか、全く説明もできない。説明ができていないのにも関わらず、強引に「市役所の位置を定める条例」の改正を提案する伏見市長。
そして、そのことが財政民主主義の原則に基づく予算先議という地方自治法に定めるルールに対する明白な違反であるということを指摘しても、また、本市において積み重ねられてきた「二元代表制」における首長と議会の権限に配慮した条例施行に関する定め方をも踏みにじることであることを指摘しても何の説明にもならない答弁を重ねられ、挙句の果てに、伏見市長が紋切型の「結論」だけを述べられる。このような姿勢で、特別多数議決が必要で、今の枚方市と枚方市民にとって、さらには、将来の枚方市と枚方市民にとっても、慎重にならなければならない「市役所の位置を定める条例」の提案を続けられることは全く不適切である、と意見して、私の議案質疑を終わらせていただく。

 


 

【反対討論】

議案第49号「市役所の位置に関する条例の一部改正について」の採決にあたり、反対の立場で討論いたします。

条例案に反対する理由について、大きく分けて 2 点のことを述べさせていただきます。
まず、その前に、条例提案そのものに対する私の意見を述べさせていただきます。

先の全員協議会において、市は、「④⑤街区の市有地を有効活用したまちづくりの考え方(案)」を示されました。そこで示された基本的な考え方や、枚方市駅周辺再整備基本計画には大きな問題を抱えていること、さらに肝心の新庁舎建設基本計画にいたっては、現時点で「案」すらできていないし、説明も十分できない状態であることが明らかになりました。それゆえに、議会では、今でもさまざまな議論が続いているのです。
市民に至っては、説明会も、他市の場合なら行われている対話集会のような話し合いの場も、全く保障されず、スタートラインにも立てていません。
先の質疑でも述べさせていただいたように、私は、特別多数議決が必要で、慎重にならなければならない条例であり、かつ、今、制定しなければならない理由など何もない「市役所の位置を定める条例案」を、このような状況の中で市長が提案されたこと自体が、全く不適切だと考えています。
まして、条例提案は、地方自治法に定める「予算先議原則」のルールを踏みにじり、条例内容は、本市において積み重ねてきた「二元代表制」に配慮した定め方を踏みにじっているのです。
もっともっと議会での議論を、そして、市民との対話を深めれば、みんなが納得できる、そして 50年先、100年先の、将来の枚方市民にも理解いただける再整備が可能になるのに、そうした努力をまったくしようとしないことに対して、枚方市のおける歴史的な判断を「はじめに結論ありき」で不適切かつ強引に進められることに対して、まずもって強く抗議しておきます。

それでは、条例案に反対する理由について、順次述べます。

まず第1に、条例案が定める⑤街区に新庁舎を移転・建設することの不合理さです。
市は⑤街区の優位性を語りますが、そのようなものはありません。
「目的型施設である行政機能を⑤街区に配置することで、ウォーカブルな街をつくり、賑わいを創出する。」~そんなビジョンは「絵に描いた餅」どころか「絵にも描けていない餅」だと思います。議会の質疑の中で、市は、「ICT の活用で市役所に行かなくても済むことを目指すこと」、また、「将来の人口減少の中で、市役所への来庁者が確実に減少すること」を認められています。
従って、市庁舎が⑤街区に位置することで「賑わい」なるものを創出することにならないことは明白です。結局、どうしても市役所を訪れなくてはならない人にとって、駅から遠くなり、不便をおかけするだけになると思います。あとで述べますが、一方の④街区も、売却によって、できるメインの建築物は、タワーマンション、すなわち巨大な集合住宅で、あわせて「みどりの大空間」をつくるというのですから、もはや「都市型の住宅街」です。
そこで急に出てきたのがアリーナを新庁舎に合築するという案なのでしょうが、これについては、計画も構想もなく、必要性、財政負担、経営のあり方など、一切が定まっていないために適切な説明ができず、結局、今後、いつまでかかるかわからない検討に先送りせざるを得なくなったのです。
次に、⑤街区の災害時における優位性ですが、ハザードマップや新庁舎へのアプローチ道路などの状況を詳細に検討すると、④街区と⑤街区に大きな違いがないことを、私の質疑で明らかにさせていただいたと思います。
こうした不合理さを指摘できる⑤街区への新庁舎建設案ですが、ひょっとすると何か勘違いされる方が出てくるかもしれないので、次のことを付け加えておきます。
それは、この案が、市の財政負担の縮減を可能にするのではないか、という「誤解」です。
しかし、そういった可能性は、大阪府北河内府民センターの用地が市の土地であった場合にしか成り立ちません。つまり、府民センターが移転したあとに市の新庁舎を建設し、④街区内の市有地を売却して得た財源を新庁舎の建設費用に充てるという想定です。
残念ながら、どう想定してもそんなシナリオは成り立ちません。なぜなら、⑤街区の新庁舎建設用地のほとんどは大阪府の所有地で、枚方市がタダで使えるものではないからです。
市は、土地区画整理事業という事業手法を用いるとしているので、非常にわかりにくくなっていますが、結局、枚方市は、大阪府の土地と④街区の枚方市の土地を交換して、大阪府の土地を手に入れなければなりません。大阪府は、枚方市と交換して得た④街区の枚方市の土地を民間企業に売り払ってお金に換えますから、実は、枚方市が、④街区の枚方市の土地を売却して大阪府に支払うのと同じことになるわけです。さらに、土地区画整理事業では、市が大阪府から直接土地を買う場合と異なり、北河内府民センターの今の古い建物についての「移転補償費」を支払わなければなりません。これは土地区画整理事業費を増大させる要因となりますが、この費用についても、土地区画整理事業地内に広大な土地を保有している枚方市の財政負担を増加させることになるのです。
また、市は、⑤街区へ安全に歩行者を誘導するための長いペデストリアンデッキをつくるとか、④街区と⑤街区をつなぐシンボリックな「みどりの大空間」をつくるために、コンビニや民間商業ビルを移転させるとか、さらには④街区の中に大きな道路を造ったりするという計画を立て、土地区画整理事業費を膨らませて、枚方市の財政負担を増大させています。
⑤街区への新庁舎移転は、枚方市の財政負担を広げる一方のものでしかないわけです。

では、④街区のまちづくりは、どうなのでしょうか。これも先の一般質問における私の質疑で明らかにさせていただいたように、市が行おうとしていることは、
・将来にわたる適切な土地利用を担保するために必要な「きめ細やかな制約」はかけず、とりあえず、仮換地で得た大阪府の土地や市の土地が高値で「売却」できたらそれでいい。
・分譲のタワーマンションが複合施設に合築されて、多数の「区分所有者」が存在する超大型の建築物が駅前の市有地の真ん中に 2 棟もできて、将来に禍根を残すことになってもいい。
・市が求める各種都市機能はあくまでも「誘導」なので、選定作業の中で、本当に提案があるのか、ないのかはわからないが、それでもかまわない。
そういった極めて無責任なものになりかねないのです。
しかしそれでは、自治体行政が行うべき将来における責任も視野に入れた公共的で長期的な公有財産管理、ファシリティ・マネジメントの完全放棄だと、私は考えます。

大阪府や吉村知事への気遣いからか、過去の決定にとらわれておられるからか、理由は全く想像だにできませんが、市役所の⑤街区への移転に囚われ、④街区内の市有地を手放す、「売却」することを前提にするから、このような問題が生じるのです。
広大な駅前に広がる市有地を「売却」によって手放すことなく、④街区での新庁舎の建設やまちづくりをすすめる方向で議論を重ねることができたならば、例えば、・複合施設に分譲タワーマンションを合築する代わりに、そこに市庁舎を合築すればどうかとか
・アリーナのような新しい魅力創出のための施設も④街区の中に整備できるのではないか、とか
・子どもたちのための施設を整備できるのではないか、など、市民の皆さんのさまざまな意見を取り入れた整備プランを作ることができる可能性も生まれてくるわけです。

私としては、繰り返し訴えておりますが、大災害に備えて、危険な老朽公共施設をまず取り壊すこと、そして新庁舎を建設することの優先順位が極めて高いと考えます。また、駅前広場の整備とも連動させなければなりませんし、財政状況を確認しながら、段階的に整備することも必要であると考えます。

つまり、何よりもまず、市民との対話を重ねながら、地に足のついた、身の丈に合った事業展開とすべきだということであります。

これらの可能性を完全に放棄するような「⑤街区移転、④街区市有地売却ありき」につながる、つなげられてしまう市役所の位置を定める条例を、今、決定するのは、今と将来に及ぶ枚方市の利益、枚方市民の利益に全く反するものであると考えます。

2つ目は、先ほどの質疑で詳細に述べたように、この条例案は、条例の施行という非常に重要な内容を、これまで枚方市役所の中で築き上げてきた施行時期の明記という制約もなく、規則、すなわち市長に白紙委任させる内容となっていること、また、地方自治法に定める「予算先議原則」に反して提案していることから、枚方市で作り上げてきた「二元代表制」重視のルールを破壊し、公の施設の建設に必要な「税の使い道は議会が審議して決める」という財政民主主義から逸脱しているもの、と考えます。

以上 2 点の理由により、議案第49号「市役所の位置に関する条例の一部改正について」は反対であると申し上げ、反対意見の表明といたします。

 


 

【追記(9月26日)】

▶ 議決結果はこちらから。→付議事件議決結果一覧(9月26日)

議事は17時前に再開されました。その結果は、議決結果のとおりですが、「議案第51号 財産(不動産)の取得について」も「議案第47号 令和4年度大阪府枚方市一般会計補正予算(第6号)」もそのまま提案され、 原案可決となりました。
私は、「③街区の不動産取得契約が新庁舎の予算と言えるのか。アセスメントなどというのは、まさしく事前調査でしかない。このことで『必要な予算上の措置が適確に講ぜられる見込み』とやらが十分に確保されたものであるとは思えない。」と質問のやりとりの中で意見してきたわけですが、市駅周辺まち活性化部長はそこまで答弁をしていたわけです。「市役所の位置に関する条例の一部改正について」の「否決」の後、「議案第47号」の提案は総合政策部長でしたが、歪曲された答弁の修正への言及はありませんでしたので、「議案第47号 」には反対しました。

 


 

【追記(10月6日)】

8:45~奥野の質疑です。

2:03:00~奥野の反対討論です。

 

 

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