「ちがい」への対応としての「合理的配慮」や個別の支援はまだまだ不十分。「日本語指導の必要な児童徒への教育保障」について質問しました。12月定例月議会、一般質問の報告④です。

2022/12/19

枚方市議会議員の奥野みかです。

ここでは、「4.日本語指導の必要な児童生徒への教育保障について」の報告です。

市内に散在している日本語指導が必要な児童生徒に対する日本語指導教員や母語を話せる教育指導員による支援、指導の仕組みは、量・質のどれもがまだまだ不十分です。
言葉や文化などの「ちがい」を認め合う多文化共生社会の実現のため、「ちがい」に対する合理的配慮を踏まえつつ、外国につながる子どもたちと「ともに学び、ともに育つ」インクルーシブ教育を目指していただきたいこと。具体的には、学校現場の努力に頼るだけではなく、地域や各種民間団体とも連携しながら、タブレットの活用による多言語対応、日本語指導教員の役割を補完する市独自の支援人材の検討、放課後を活用した学習支援の場づくり等、外国につながる子どもに対する教育の保障、学力の保障を強く要望しました。

 

 

 


 

以下、12月19日の一般質問でのやりとりを掲載します。

2.日本語指導の必要な児童生徒への教育保障について

Q.私の質問

国際人権規約及び児童の権利に関する条約を踏まえると、外国人の子どもの受入れ体制の整備及び就学後の教育の充実が「不可欠」である。「外国籍の児童、生徒の不就学問題」がクローズアップされて以降、本市就学状況の確認もさせていただいているが、今年度、5月1日現在、住民基本台帳上の本市の学齢相当の外国籍の児童、生徒は201人で、そのうち186人が義務教育諸学校、もしくは外国人学校に就学している、との報告があった。就学状況が把握できていない15人のうち、「転居・出国(予定含む)」は6人、「就学状況を把握できず」は9人とのことであるが、このような子どもに対して市はどのようなアプローチを行っているのか、伺う。

A.位田学校教育部長の答弁

まず、転居・出国については、就学しておらず、住民基本台帳に記載が残っているが、実態としては既に転居・出国している又は近日中にその予定であることが確認できた子どもであるため、対応は行っていない。
次に、「就学状況を把握できず」については、就学案内の送付、学校からの家庭訪問、電話等により就学状況の確認を試みたが、不在や連絡不通により就学状況の確認ができなかった子どもとなる。
教育委員会においては、市民室、観光交流課、子どもの育ち見守り室等と就学に関する情報等を共有して、外国籍の子どもの就学促進や就学状況の確認に努めている。
また、出入国の状況把握が必要な場合等には、出入国在留管理局等との連携を図っている。

O.私の意見
就学状況が把握できていない学齢相当の外国籍の子どもの就学促進や就学状況の確認に引き続き努めていただくよう、要望しておく。

Q.私の質問

今年度、5月1日現在、「日本語指導が必要な児童、生徒」は、小学校15校に48人、中学校8校に20人で、日本語指導が必要な児童・生徒18人を基礎定数とした大阪府の加配教員である「日本語指導教員」4名が「特別の教育課程」による日本語指導を実施しているとのことである。授業時数の標準は、年間10~280単位時間となっているようであるが、本市において、加配教員である「日本語指導教員」は、どのような教育をどのように行っておられるのか、具体的な状況について伺う。
また、タブレットを活用したオンラインでの日本語指導、母語支援などの取り組みについて、実施されているのか、伺う。
さらに、「日本語指導教員」とは異なる、母語を話せる「教育指導員」は、どのような基準で派遣され、どのような役割を求められ、どのような業務を担当されておられるのか、伺う。あわせて、その処遇についても、伺う。

A.部長の答弁

大阪府の加配教員である「日本語指導教員」は、校長の責任のもと学級担任や日本語指導教員等関係する教職員により作成した個別の教育支援計画に基づき、巡回校として1人当たり2校から8校を担当し、児童、生徒9人から22人に対して日本語指導を実施している。
指導については、生活に必要な日本語の習得段階から教科につながる学習段階まで、日本語の理解の状況に応じた教材を活用し、在籍学級とは別の教室での指導や在籍学級での授業に付き添っている。
また、現在はオンラインでの指導ではなく、在籍校に巡回し、対面による指導を行なっている。その際、タブレットの翻訳アプリ等を活用して指導することもある。
「教育指導員」については、担当課において、「枚方市帰国児童等に対する教育指導員派遣事業実施要項」を作成し、「教育指導員」の目的やその派遣の決定等について定めている。
派遣の基準としては定めていないが、小中学校の校長より教育委員会に日本語の習得が不十分な帰国児童等に対して「教育指導員」の派遣が必要との申し出があり、適当と認める場合に派遣の決定としている。
役割とその業務としては、当該児童、生徒の孤立感の解消や学校生活への適応の促進に努めることにより、当該児童、生徒に対する教育の充実を図ることを目的として、主に日本語及び教科の学習の支援、学校生活における相談等を担当している。
「教育指導員」の処遇については、有償ボランティアとして1回2時間の派遣につき報償金として5,000円を支給しているところである。

O.私の意見

言葉や文化などの「ちがい」を認め合う多文化共生社会を築くため、学校において目指すべきは、外国にルーツのある子どもたちと「ともに学び、ともに育つ」インクルーシブ教育だと考える。
しかし、「ちがい」への対応としての「合理的配慮」や個別の支援、すなわち日本語指導が必要な児童・生徒の状況を踏まえた支援・指導については、仕組み、量・質のどれもがまだまだ不十分であると考える。
母語が話せる「教育指導員」は貴重な存在であるが、学校現場において、「相談・支援」のみならず、当該児童、生徒に対する「日本語指導」まで任せてしまっている部分があるのではないか。
外国につながりのある児童、生徒を小・中学校に受け入れるにあたっては、学校生活に適応するだけではなく、まず、日本語能力を早期にアセスメント・評価することが重要で、学年相当の学習言語としての日本語能力を獲得するためには、「日本語指導」のための専門的人材の確保など、適切な日本語指導体制を用意することが必要であると考える。
そして、そういった日本語指導のための加配教員が、国基準での配置では全く不足しているのではないか。小学校15校に48人、中学校8校に20人と、散在する日本語指導が必要な児童・生徒68人を、たった4人の「日本語指導教員」が担当されているわけである。
本市においては、1人1台タブレットも実現されている。タブレットの活用による多言語対応(翻訳等)の工夫も可能ではないかと思う。日本語指導のための加配教員が確保できないのであれば、大阪府と連携してオンライン授業を導入するとか、「日本語指導教員」の役割を補完する「日本語指導支援員」等、市独自の位置づけで確保することも検討すべきである。外部人材となる「日本語指導の支援者」を常勤職員として、また、会計年度任用職員として雇用し、配置している自治体も少なくないようである。「日本語指導の母語支援員」についても同様である。加えて、児童、生徒の放課後を活用して、日本語の学習・教科学習支援の場を「放課後子供教室」のような事業の仕組みで作り、市民にボランティアでの運営協力を呼びかけることなども有効ではないか。
繰り返しになるが、「ちがい」があることを認め合い、地域における多文化共生、インクルーシブ社会の実現のため、学校現場の努力に頼るだけではなく、地域や各種民間団体とも連携しながら、「ちがい」への対応としての「合理的配慮」を踏まえ、外国につながる子どもたちの教育の保障、学力の保障を行うことを強く要望しておく。

 

 


【参考】

▶ 2020年12月15日 12月定例月議会_一般質問「外国につながる子どもたちの教育の保障について」

子どもの最善の利益の観点からも、SDGsの「誰一人取り残さない」多文化共生の観点からも、このまちに住む外国につながる子どもたちの教育の保障や学力の保障に取り組むことが大切で、まずは、就学機会を確保するため、就学案内等を徹底し、就学状況を把握することが必要です。昨年12月、教育長から「国籍に関係なく、すべての子どもたちが生き生きと学ぶことができる学校園づくりに努める」との答弁はいただきましたが、「外国籍の方に就学案内を行ったのち、就学手続きを行わず、就学状況が確認できていない方が、毎年一定数あるが、不就学かどうかについては、把握していないのが実情」という昨年の状況からの進展は確認できす、中学校入学時に就学案内は行われていないことも明らかになりました。
続いて、市立学校に通う外国につながる子どもの現状、教育の保障・学力の保障のために実施されている具体的な取り組み、さらに高等学校等への進学など、日本語指導が必要な生徒の進路選択への支援の現状、日本語の理解が難しい保護者に対する支援について、順に質問を行い、最後に、市に対しては、国際化施策の推進体制を早急に明確化すること、そして教育委員会に対しては、学校現場の努力に頼るだけではなく、地域や各種民間団体とも連携しながら、外国につながる子どもたちの教育の保障・学力の保障を行うことを要望しました。

 

 

 

▶ 2021年9月21日 9月定例月議会_一般質問外国につながる児童、生徒の就学支援について

2019年12月定例月議会で、外国籍の子どもたちに就学案内を行った後、就学手続きを行わず、就学状況が確認できていない方が、毎年一定数あるが、不就学かどうかについては、把握していないのが実情であるとの説明でしたが、教育長は「国籍に関係なく、すべての子どもたちが生き生きと学ぶことができる学校園づくりに努める。」と答弁されました。今回、改めて、国籍に関係なく、すべての子どもたちに教育が保障されるために 、就学状況の把握ができているのかを教育委員会に確認しました。
学校教育部長からは、国の「外国人の子供の就学促進及び就学状況の把握等に関する指針」を受けて、 今年度から、新入学年齢相当の外国籍の子どもの学齢簿を作成し、保護者や学校から情報提供があった際は、記録を残し就学状況把握に努めている、とのお答えでした。

外国につながる子どもたちの「不就学ゼロ」に向けて、全国的にもさまざまな取り組みが行われています。
本市の「就学案内・就学通知」の取り扱いの仕組みは変わっていないようですが、国の「指針」を受け、今年度から外国籍の子どもの「学齢簿」は作成され、市長部局や関係機関等とも連携されているとのことです。
外国籍の子どもたちにもあたりまえに「教育への権利」が保障されるよう、就学状況が把握できないことのないよう、本市においても、この機に「つながる」「つなげる」仕組みづくりを構築していただくよう要望しました。
さらに、外国につながる子どもの教育にかかわる2つの大きな法律の施行や、本市で策定した『国際化施策に関する考え方』も受け、外国につながる子どもの就学支援のため、学校現場のさらなる努力をお願いするとともに、子どもにとっての「最善の利益」のために、市長部局との連携はもとより、地域や各種民間団体との情報共有も行いながら、市として、外国につながる子どもたちの教育の保障、学力の保障を行うことを要望しました。

 

 

 


 帰国・外国人児童生徒等の現状について(文部科学省)

「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査結果(報道発表)」(2022年10月)

・日本語指導が必要な外国籍の児童生徒のうち、学校において特別の配慮に基づく指導を受けている者の割合は 91.0%で前回調査より 11.5 ポイント増加、人数は 43,332 人で前回調査より 10,914 人増加している。
・日本語指導が必要な日本国籍の児童生徒のうち、学校において特別の配慮に基づく指導を受けている者の割合は 88.1%で前回調査より 13.7 ポイント増加、人数は 9,419 人で前回調査より 1,700 人増加している。

「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査結果」(本編)

「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査結果」(概要版)

「外国人の子供の就学状況等調査結果について(報道発表)」(2022年3月)

「外国人の子供の就学状況等調査結果について」(本編)

「外国人の子供の就学状況等調査結果について」(概要)

(参考)日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査(e-Stat_政府統計ポータルサイト)

※上記で「枚方市」のデータも確認できます。

【問3】公立学校に在籍する児童生徒で、日本語指導が必要な児童生徒
・小学校(うち、特別支援学級)/「外国籍」42(2)、「日本国籍」16(0)
・中学校(うち、特別支援学級)/「外国籍」7(1)、「日本国籍」2(2)
[合計(うち、特別支援学級)]/「外国籍」49(3)、「日本国籍」18(2)

「外国人児童生徒等教育の現状と課題(2020年3月)」より引用

 


▶ 外国人との共生社会の実現のための有識者会議(出入国在留管理庁)

「意見書(概要)~共生社会の在り方及び中長期的な課題について~(2021年11月)」より引用

ライフステージ・ライフサイクルに応じた支援では、就学や進学、就職などのライフステージの継ぎ目における支援が必要だと指摘。乳幼児期・学齢期では、幼稚園などにいる外国人幼児の数や保護者への支援ニーズなどの把握を進め、就学を促す取り組みとして、学齢簿の編製に関して、25年度末までに住民基本台帳システムと連携させた、外国人の子どもの就学状況の一体的管理・把握を実現させ
るとした。

▶ 外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議

外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策(2022年度改訂)」について

「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策(2022年度改訂)」(本編)

「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策(2022年度改訂)」(概要)


 

 

 

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