「今、必要なのに、今、使えない」状態の常態化~要介護認定遅延は市民の権利侵害であり、30日以内の回復は政治責任。要介護認定の遅れについての質問です。12月定例月議会、一般質問の報告②です。

2025/12/12

枚方市議会議員の奥野みかです。

ここでは、「2.要介護認定の遅れについて」の報告です。

介護が必要になる時は、多くの場合、突然訪れます。要介護認定は、介護サービスにつながるための「最初の扉」であり、市民の生活の安全と安心を支える大切な行政サービスです。
しかし本市では、新たに介護認定を申請した場合、法律で定められた「30日以内」に結果が出ていないケースが長く続いています。実際には、新規申請の9割以上が30日を超えており、平均でも1か月以上待たされている状況です。

認定が遅れると、退院後に行き先が決まらない、施設に入れない、必要な支援が始められないなど、暮らしに深刻な影響が出ます。市は「暫定ケアプラン」で対応していると説明しますが、これは在宅に限られ、退院支援や施設入所には使えないのが現実です。

新規の認定調査は市が直接行っており、市の体制や判断によって改善できる分野です。それにもかかわらず、遅れが「あたりまえ」になり、形式的な延期通知で済まされている現状は、市民の権利が十分に守られているとは言えません。
必要な介護が、必要な時に受けられる状態を取り戻すことは、超高齢社会を支える自治体としての重要な責任であると意見しました。

 

「わたしたちのまちの介護保険」より引用

 


 

以下、12月12日の一般質問でのやりとりを掲載します。

2.要介護認定の遅れについて

Q.私の質問(新規認定の遅れについての現状認識)

介護が必要となる時は、多くの場合、突然である。要介護認定は、介護が必要となった市民が支援へたどり着くための「入口」であり、生活の安全に直結する行政サービスである。
しかし、本市では法定期間である30日以内で認定が完了していない事例が多数発生しており、議会としても長期にわたって課題認識を共有してきた。とりわけ、新規認定の遅れは深刻である。介護サービスの利用開始には、要介護認定が不可欠であり、認定が遅れれば、生活基盤そのものが損なわれる重大な影響を受ける可能性もある。
本年3月の予算特別委員会において、認定調査体制の強化やICT技術の活用などの改善方針が示されたが、遅延はどこまで解消したのか、本市としての現状認識が問われる。
そこで、新規認定の平均所要日数、介護保険法で定められた30日以内に認定ができなかった件数とその割合について、この間の推移を伺う。
また、調査員体制、主治医意見書、市独自の問診票、ICTの活用、業務プロセスなど、「遅延要因」をどのように構造的に分析し、現状をどう認識しているのか、見解を伺う。

A.上田健康福祉部長の答弁

新規申請の介護認定は、令和7年4月申請分で平均50.2日要しており、そのうち、法定の30日以内に認定を完了できなかった件数は518件で、その割合は約96%となる。その後、10月申請分では平均38.5日に短縮され、30日以内に認定を完了できなかった件数は、337件で割合が約91%となっている。
認定の遅延は生じている主な要因であるが、新規申請件数の増加により対応が追い付いていないこと、「主治医意見書」の内容確認に時間を要していること、また、対象者の健康状態により調査が一時中断されるケースがあることなど、人的要因や業務プロセスの複合的な影響がある。

Q.私の質問(新規認定の遅延が及ぼす不利益について)

入院後の身体機能低下や在宅生活の継続が難しくなるなど、支援が急を要する局面でこそ、認定の迅速性は不可欠である。ところが、詳しいデータを伺うと、4月から10月までの新規認定の9割以上が法定期間である30日を超過し、件数は3,029件とのことであった。「制度の入り口が開かない」状態が続いており、極めて深刻である。
申請書の受付時に、調査予定日・結果通知までの標準期間の提示に加えて、「標準期間を超えてお待ちいただく状況になっている」という説明までされているのが実情のようだ。長くかかるというのがデフォルト、つまり「あたりまえ」と説明されても、まだかまだかと結果を待たれている方が多いのである。区分変更・更新は介護事業者への委託で行われている一方、新規認定は市が直接実施している。本市の対策次第で改善可能な領域であり、遅延は「行政の運用が市民の権利行使を妨げている」状況に他ならない。
認定結果は申請日に遡るとしても、「今、必要なのに、今、使えない」という事実が市民生活に与える影響は極めて大きいのである。
そこで、新規認定の遅延が、介護対象者及び家族にどのような不利益を生じさせていると認識しているのか、伺う。

A.上田健康福祉部長の答弁

介護認定の遅延により、退院後の施設への転所が遅れ、介護サービスの開始に遅れが生じると、要介護者の生活の安全や安心が損なわれる場合もあることから、介護認定業務の所要日数短縮は喫緊の課題であると認識している。
なお、ご自宅などの在宅でのサービスに関しては、ケアマネジャーが本人や家族と相談の上、暫定の「ケアプラン」を作成することで、認定結果が出る前でも必要な介護サービスを受けられることから、特に急を要する方には利用を促すなど配慮を行っているところである。

O.私の意見・要望(違法状態の常態化は市民の権利の阻害)

答弁にもあったように、特に、退院支援の場面では、認定がなければ施設入所も在宅復帰も進まず、生活の場の確保が滞る「実質的な人権侵害」となり得る。暫定ケアプランについての説明もあったが、これは在宅に限られる措置であり、退院支援・施設入所調整には機能しないのが現実である。
遅延は、転所の遅れによる「生活の場の喪失リスク」、家族の介護負担の急増、経済的理由で暫定利用すらできない世帯の存在、一時的な全額負担が不可能な生活困窮層の排除など、複合的で深刻な不利益を生じさせている。
これまでに、認定調査体制の強化やICT技術の活用により改善を図るとの方向性が示されてきたが、それを「いつまでに」「どの水準まで」実現するのか、市としての目標や責任の位置づけが明確に示されていない。
介護保険制度は、市民の命と尊厳を支える社会保障制度であり、必要な支援が必要な時に届かなければ、制度が形骸化する。新規認定の遅延が長期化する中で、認定結果が出る頃には状態が変化し、同時に更新申請を要する例も生じている。
そして、新規認定は法令上「原則30日以内」に決定すべき「行政処分」である。
しかし、認定結果通知延期通知書に記載される「理由」は、「調査票遅延」「意見書遅延」などと定型化されており、延長手続が形式化していることは「違法状態の常態化」と言えるもので、市民の権利を阻害する重大な問題である。

Q.私の質問(行政手続法上の問題認識)

そこで、介護保険サービス新規開始時における認定調査の遅れの常態化は、法定期間を遵守できていないという行政手続法上の問題だと考えるが、本市は、この状況をどのような行政責任として受け止めているのか、伺う。

A.上田健康福祉部長の答弁

介護保険法では、原則として30日以内に認定を行うことが定められているが、やむを得ず30日を超える場合においては、その理由を付記した「認定結果通知延期通知書」を申請者にお送りし、期間の延長について通知することとされている。30日を超える場合については、こうした対応を行っているが、要介護者の生活の安全や安心のためには認定の迅速化は不可欠であり、現在、調査員の増員による体制強化や作業工程の見直しなどを進め、30日以内に認定調査が完了していない割合は高いものの、認定期間の日数は短縮傾向にある。今後、さらなる認定の迅速化に向け取り組んでいきたいと考えている。

O.私の意見・要望(遵法と権利保障)

延期通知を送付しているから問題がない、ということにはなりません。違法状態が常態化し、それを行政運用で追認していること自体が問題であり、市民の権利保障の観点から看過できない。
他自治体では、30日超過ゼロを掲げた改善計画の数値目標を公表(浜松市)する例もあり、制度の遵守を明確に行政責任として位置づけている。「さらなる認定の迅速化に向け取り組む」との答弁であるが、本市も、「遵法と権利保障」を最優先にすべきである。
法定期限を遵守できないのは「違法状態」の固定化であり、単なる忙しさや人手不足ですまされる問題ではない。

Q.私の質問(市長の政治責任について)

さまざまな要因があろうかと思うが、新規認定の遅延におけるボトルネックを解消することは、市民の介護サービス利用機会を保障するなど、超高齢社会の自治体としての政治責任であると考える。市長の見解を伺う。

A.伏見市長の答弁

超高齢化社会の進展に伴い、介護サービスの需要は一層高まる中、市民の安心・安全を確保するためには、法定期間内での要介護認定を徹底することが重要であると受け止めており、さらなる認定調査体制の強化など、認定期間の短縮に向け取り組んで行く考えである。

O.私の意見・要望(市長の姿勢)

市長答弁は「認定期間の短縮に向け取り組む」とのことであるが、言葉づかいを間違っておられる。この状況は単なる遅れではなく、いわば「違法状態」である。実質的に市民の介護サービス利用を制限し、「介護を必要とする市民を待たせる行政」となっているのだから、市長が示すべきは謝罪と、「30日以内の認定を必ず回復する」という明確な責任を伴う方針である。
自治体行政においては、こうした市民の生活に密着した行政施策を、あたりまえに、適切に執行していくことこそ極めて重要であると、改めて意見しておく。

 

◇枚方市議会 2025(令和7)年12月定例月議会(第2日)(5:25:15くらいから)

 

 


【参考】

▶ 私のまちの介護保険(2025年4月改訂版)

 

【参考】

▶ 介護保険 要介護認定・要支援認定等延期通知書について(春日井市)

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