「自宅療養」が自宅放置にならないよう、在宅医療体制の構築も含めた地域医療体制の確立を。新型コロナウイルス感染症による「自宅療養者」を支える体制について質問しました。9月定例月議会、一般質問の報告①です。

2021/09/21

枚方市議会議員の奥野みかです。

ここでは、「1.新型コロナウイルス感染症による『自宅療養者』を支える体制についての報告です。

新型コロナに感染した時の「自宅療養者」とは、入院・宿泊療養となる人以外のことで、無症状または軽症、そして基礎疾患の有無や同居家族の状況等、さまざまな条件を踏まえて保健所が決定します。8月のピーク時には、1日300~400人程度で推移していたとのことです。
「自宅療養者」に対しては、訪問看護師が対面で健康観察や感染対策の指導・助言を行い、急変時には、市内医療機関による外来診療や往診、電話やオンラインによる診療、また、夜間・休日のファストドクターの往診等を、状況に応じて保健所がつないできました。

今後も様々な構えが必要であるとの答弁で、保健所長からは、専門的な基礎疾患やがんなどの治療中、分娩予定近くの方など複合的な医療対応が必要な方については、その方の状況に応じて主治医等と連携して必要な治療が受けられるよう対応しているとのお答えでしたが、感染症と専門的な疾病・疾患の治療、感染症と心身の障害、感染症と小児・妊産婦など、複合的な医療対応が必要な方が適切な医療につながるよう、在宅医療体制の構築も含めた地域医療体制の確立を要望しました。

 


 

以下、9月21日の一般質問のやりとりを掲載します。

1.新型コロナウイルスの「自宅療養者」を支える体制について

Q.私の質問
緊急事態宣言も9月30日までの延長が決まった。感染拡大の状況は少し収まってきているが、数か月後には「第6波」が来るのではないかという予想もあり、「新型コロナ禍」がまだまだ続くことは間違いないと思う。
8月のピーク時には、1日300~400人で推移していたという「自宅療養者」の現状や支援の状況などについて、これまでの議員に対する答弁で理解した。
保健所の職員はもとより、多くの応援職員、医療関係者も含め、ご尽力いただいた皆さんには、心より感謝申し上げる。
だからこそ、改めて、確認をさせていただきたい。そもそも「自宅療養者」とは、どのように定義されているのか、伺う。

A.保健所長の答弁
昨年4月に厚生労働省から発出された事務連絡により、新型コロナウイルス感染者が増加した場合には、都道府県が入院は重症者を優先する体制としたとき、軽症の方は自宅や宿泊施設で療養していただくことになった。自宅療養者は、入院や宿泊療養をしていない待機者を含めて計上している。

Q.私の質問
これまでの答弁では、「自宅療養」について、ご本人の都合や意思で選択できるように思われる内容もあったが、例えば「妊産婦」など、重症度以外にこういう属性の方は入院をする、と決まっている場合があるのか、伺う

A.保健所長の答弁
自宅療養の対象の方は、国の方針に基づき、無症状もしくは軽症であることや、入院を必要とする基礎疾患が無く、自宅内で感染対策が可能で、かつ同居家族に高齢者、免疫不全等の配慮が必要な方や医療・介護の従事者がいないなどの条件を定めている。自宅療養の決定は、保健所がご本人等に聞き取りを踏まえて病床の空き状況を含めて、総合的に判断している。乳幼児の養育や介護の替わりの方がいない等、各ご家庭の様々なご事情をお持ちの方も含んでいる。そのため、妊娠中の方であっても医療的な対応の必要がない場合は、自宅療養となった方もおられる

Q.私の質問
国による入院・入所基準の見直しは何度も行われているが、入院・入所基準が「自宅療養者」の対象範囲を決めているわけである。「自宅療養」が自宅放置にならないように、と願うが、医療者の目が届かない「自宅療養」中の急な重症化や家庭内感染を避けるため、大阪府は、宿泊療養できない方の避難所に近い形で1,000床規模の臨時医療施設を設置するとの報道もあった。
市保健所は、これらの対策をどのように受け止められているのか、伺う。

また、保健所長から、「妊婦を受け入れることのできる病院は限られているが、必要な方は入院できている(「2.新型コロナウイルスに感染した妊産婦に対する支援について」1回目の質問に対して)」とのご答弁があり、「妊娠中の方であっても医療的な対応の必要がない場合は、自宅療養となった方もいる」と、ただいまのご答弁である。
本市においては、感染症と産科といった複合的な医療対応が必要な妊婦さんがおられなかった、もしくは少なかったから、千葉県のような事態に至らなかっただけなのではないかと懸念される。
そこで、複合的な医療対応が必要な方についての療養方針など、どのように対応されているのかについて、伺う。

A.保健所長の答弁
大阪府は府下統一して入院調整をしており、中等症・軽症の療養者には症状改善後、短期の入院から宿泊療養施設への移動の促進や宿泊療養施設で酸素投与や抗体カクテル療法など医療を受けられるよう、積極的な対策を行っている。今後も再び感染拡大が予想される中、大阪府と調整し、臨時医療施設の設置を含め様々な備えが必要であると考えている。
また、専門的な基礎疾患やがんなどの治療中、分娩予定近くの方など複合的な医療対応が必要な方については、その方の状況に応じて主治医等と連携して必要な治療が受けられるよう対応している。

O.私の要望
感染症と専門的な疾病・疾患の治療、感染症と心身の障害、感染症と小児、感染症と妊産婦など、複合的な医療対応が必要な方が適切な医療につながるよう、保健所におかれましては、在宅医療体制の構築も含め、地域医療体制の確立を要望する。

 


 

◇ヒアリングの中で確認してきたこと

自宅療養者の現状と配食等支援の状況について

8月の感染者増加のピーク時には、医療機関からの発生届を受理してから最初の連絡までに2~3日かかっていたが、9月6日の時点では、発生届の受理の当日か翌日には、事務職や看護学生による応援職員等による電話でのファーストコンタクトも含め、何らかのアプローチができており、その後、専門職による疫学調査を実施し、保健所において療養方針を決定されている。
療養方針が決定すれば、概ね当日か翌日中には移動しており、入院・宿泊すべきであるが調整できずに待機している、いわゆる「自宅待機者」は現時点ではいない。
その「自宅待機者」も含み、幼い子どもがいる等、各家庭の様々な事情の方も含めて、入院・宿泊でなく自宅で療養される方、いわゆる「自宅療養者」は、300~400人程度で推移している。
9月10日時点では、新型コロナウイルス感染症による市内の療養中の方は510人となり、ピーク時の半数近くとなっている。そのうち「自宅療養者」は255人。

「自宅療養者」、すなわち、自宅療養中の感染者や健康観察を行う濃厚接触者に対し、療養及び健康観察期間中に公費で弁当や衛生用品を配付するサービス(配食・衛生用品等支援サービス)を実施している。「自宅療養者」の増大に対応するため、配食事業者を追加し、また、10日分の保存食品、衛生用品、日用品類を希望者にお送りする「自宅療養支援セット」を追加している。
この「配食・衛生用品等支援サービス事業」は、市ホームページ内の「感染していることが分かったら」の記事内に掲載し、ファーストコンタクトを行う際にホームページを確認いただくよう案内するとともに事業内容を説明し、必要に応じて手続きをいただくよう伝えている。自主的な申請のため、保健所が直接案内する前に利用している人もいる。
また、自宅療養者の健康観察を充実させるため、血中酸素飽和度測定器であるパルスオキシメーターの貸出対象を自宅療養者全員に拡大し、体調の変化を確認している。

自宅療養されるみなさまへ(大阪府/2021年8月16日)

自宅療養者の健康観察・急変時の対応について

自宅療養中の健康観察は、対象者の健康観察のアプリであるマイハーシスを活用し、体温や咳などの症状を保健所と共有している。アプリを活用困難な方については、保健所から電話により健康状況を聞き取りしている。状態が変化した場合は、大阪府が契約している夜間・休日に往診できるファストドクター、市内の医療機関による外来診療や往診、電話やオンライン診療などに保健所がつないでいる。

訪問看護については、8月から委託契約を締結する事業所を11か所に拡充し、利用者の増加に合わせて、9月からは毎日2か所の訪問看護ステーションの担当制として運用するなど、訪問看護師の派遣ステーションの拡充・調整を行っている。訪問看護師は、療養中の状態の変化を直接把握するため、保健所からの依頼により、感染者宅に赴き、対面での健康観察及びパルスオキシメーターの使い方をはじめ、緊急時の対応方法等の説明など、感染対策の助言・指導を行うが、現状、保健所が必要と判断した感染者には、すべて対応いただいている。

在宅療養体制・各種支援体制の現状の評価について

本市においては、訪問看護や配食サービスの実施等、それぞれ体制を強化し、安心して療養していただける環境整備に努めている。あわせて、大阪府における夜間・休日に往診してくれるファストドクターの取り組みや、市医師会や市内の医療機関によるオンライン診療ができる医療機関の拡充等、支援体制の整備を図っている。

これまでの業務執行体制について(臨時の組織体制を設置すべきではないかということに対して)

第5波による感染者の増大に伴い、8月から開始した感染者への電話によるファーストコンタクトにおいては、所内横断的に所属・職種を問わず一丸となって取り組んできた。また、保健所職員以外でも医療職を含めた多くの庁内応援職員や、会計年度任用職員の緊急的な雇用、人材派遣会社からの医療職の増員をお願いしている。また、ボランティアとして、市医師会、市歯科医師会、市薬剤師会の協力をいただくなど、保健所職員と応援職員合わせて、土・日・祝日を含め、日々約100人で対応にあたっている。

 


 

大阪府の状況について、厚生労働省の資料及び府新型コロナウイルス対策本部の資料を以下に引用します。

 緊急的な医療提供体制の拡充について(第76回 新型コロナウイルス感染症対策本部資料:2021年9月9日)

(※クリックするとPDFファイルが開きます。以下は、資料からの抜粋です。)

 現在の療養状況について(第58回 大阪府新型コロナウイルス対策本部会議資料:2021年9月9日)

(※クリックするとPDFファイルが開きます。以下は、資料からの抜粋です。)

 医療療養体制の強化について(第57回 大阪府新型コロナウイルス対策本部会議資料:2021年8月18日)

(※クリックするとPDFファイルが開きます。以下は、資料からの抜粋です。)

 宿泊療養者へのオンライン診療の充実(第58回 大阪府新型コロナウイルス対策本部会議資料:2021年9月9日)

 自宅療養への支援強化について(第58回 大阪府新型コロナウイルス対策本部会議資料:2021年9月9日)


 

【参考】

コロナ自宅療養者への医療提供に関する講演会等(厚生労働省ホームページ)

感染症法第44条の3第6項の規定による都道府県と市町村の連携について
(自宅療養者等に係る個人情報の提供等に関する取扱いについて)(厚生労働省及び総務省通知 2021年9月6日)

(該当部分引用)
感染症法における感染症対策の実施主体は、都道府県及び保健所設置市とされていますが、自宅療養者の生活支援などの住民サービスについては、住民に身近な行政を担う市町村の協力も重要であるため、連携規定に基づき、都道府県と市町村が連携して自宅療養者等に対する生活支援を行うようお願いいたします。
その際の都道府県から市町村への自宅療養者等の個人情報の提供については、各都道府県がそれぞれの個人情報保護条例に照らしてその可否を判断することとなりますが、連携規定に基づき市町村が自宅療養者等の食料品、生活必需品等の提供などの生活支援を行うために必要な市町村への個人情報の提供は、一般的には、人の生命又は身体の保護のため、緊急の必要があるときの個人情報の提供と考えられることから、それを踏まえて個人情報保護条例に定める個人情報の利用及び提供制限の例外規定の適用の検討をお願いいたします。

 


 

【10月1日追記】

今夏の感染拡大を踏まえた今後の新型コロナウイルス感染症に対応する保健・医療提供体制の整備について(2021年10月1日/厚生労働省)

 

 

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