「死にゆく人の見送り方」についての文化も市民意識も大きく変化しています。収骨を希望しない申し出に柔軟に対応されている実績も。頼れる身寄りがない方の死後事務支援について、質問しました。6月定例月議会、一般質問の報告②です。

2024/06/24

枚方市議会議員の奥野みかです。

ここでは、「2.頼れる身寄りがない方の死後事務支援について」の報告です。

頼れる身寄りのいない高齢者が直面する困りごと、おひとりさまの老後の日常生活から死後対応までを支援する制度について、国が新制度の検討を始めたとの記事がありました。厚生労働省の「持続可能な権利擁護支援モデル事業」は、「日常生活支援」「身元保証を代替する支援」「死後の事務支援」等、本人に寄り添った意思決定を支援する仕組みのようです。身寄りのない高齢者等が生前に準備ができ、確実に事務を実施できる社会づくりが求められているということだと思います。

今後、日常の暮らしの中で、たくさんの人が亡くなる「多死社会」を迎えることになりますが、頼れる身寄りがない方の不安や困りごととして注目されている「死後のことに関する市民の心配やニーズ」は、実はそうした人たちに限られたものではなく、幅広い世代の市民が、今後、直面する心配やニーズでもあるのではないでしょうか。

今回、死後の事務支援等については、多くの議員からの質問がありましたが、私からは、死後の支援の中で最も大きな位置を占める「火葬」や「遺骨の収骨(骨上げ)」に関することに焦点を絞って質問をさせていただきました。

身寄りがないなどの事情により、収骨(骨上げ)をしない、引き取りを希望しない、また、あるいはごく少量の収骨しかしないというご希望にどのように対応をされているのかと尋ねたところ、昨年度は、全火葬件数の約1%の方から収骨を希望しないという申し出があり、事前に承諾を得た上で、すべてのご遺骨を残骨灰として取り扱うなど、柔軟な対応をしているとの回答がありました。

私は、「死にゆく人の見送り方」についての文化も市民意識も大きく変化しているのではないかと考えています。この後、死後事務の支援を考えるにあたっては、行政も従来の業務の前提を見直し、社会状況、市民の意識や文化の大きな変化も踏まえて取り組んでいただきたいと要望しました。

 


 

以下、6月24日の一般質問でのやりとりを掲載します。

2.頼れる身寄りがない方の死後事務支援について

Q.私の質問

ご自身が亡くなられた後の葬儀や納骨などの手続きに不安を抱えるおひとり暮らしの方は多くいらっしゃると思う。「死後のことに関する市民の心配やニーズ」について、市としてどのように考えているのか、伺う。

A.林健康総務部長の答弁

身寄りがない単身高齢者については、亡くなられた際の火葬や葬儀、納骨、また、残された家財処分の代行などの支援が必要と考えていることから、現在、国が実施する「持続可能な権利擁護支援モデル事業」の申請を行ない、こうした支援に向けた検討を行っているところである。

O.私の意見・要望

他の議員からの質問もあったが、私は死後の支援において最も大きな位置を占める「火葬」や「遺骨」に関することに焦点を絞って質問させていただく。
今後、日本は、戦時などではない日常の暮らしの中で、たくさんの人が亡くなる「多死社会」を迎える。ということは、今、頼れる身寄りがない方の不安や困りごととして注目されている「死後のことに関する市民の心配やニーズ」とは、実はそうした人たちに限られたものではないということである。少子化の下で、子ども世代、孫世代の市民が、父母をはじめとする多くの身寄りを見送ることになるわけであるから、幅広い世代の市民が今後直面する心配やニーズでもあると思う。そして、それは、近親者だけにとどまらず、医療・介護・住宅提供など、亡くなる人と仕事で関わる人たちにおける懸案事項やニーズでもあるということである。

Q.私の質問

そこで、まず、死後において最初に直面する「火葬」について、伺う。最近、火葬場の利用が満杯で、引き受けてもらうまでに長い日数がかかって困るという話を聞くようになった。そこで、枚方市の火葬場である「やすらぎの杜」においても長い日数を待たされることがあるのか、現在の状況について、伺う。

A.兼瀬環境部長の答弁

火葬されるまでの期間については、本市の火葬場「やすらぎの杜」の予約状況やご遺族のご都合、葬祭業者の繁忙具合など様々な事情によって異なってくる。
また、12月後半から3月は、利用者が増えるため、希望日に利用できず、お待ちいただくケースがあるが、年間を通してみると、概ね、ご遺族の希望する日に火葬を執り行っている状況である。

Q.私の質問

現在においては、概ね、ご遺族の希望する日に火葬を執り行えているとのことであるが、今後、死者数の増加に伴って、火葬待ちの日数がどんどん増えることが想定されるのではないか。
市は、どのような対策を考えておられるのか、伺う。

A.兼瀬環境部長の答弁

やすらぎの杜における火葬件数は、年々増加しており、2023(令和5)年度の火葬件数は6,335件であった。今後の火葬件数の増加に対応するため、2023(令和5)年4月からは、1日の最大火葬件数を18件から20件に増やしている。今後も、引続き、火葬件数の増加への対応について、運用状況を適宜確認しながら、その必要性を見極めていく。

Q.私の質問

本市においては、火葬件数の増加を受け入れられる余裕がまだあるということで何よりだと思う。
次に、死後には「遺骨」の取扱いのことが大きな課題となるので、火葬後の収骨、いわゆる骨上げについて伺う。
身寄りがないなどの事情により、収骨(骨上げ)をしない、引き取りを希望しない、また、あるいはごく少量の収骨しかしないというご希望に対してどのような対応をされているのか、どの程度のご要望があるのか、伺う。また、収骨後に残された、いわゆる「残骨灰」はどのように処理されているのかについても、伺う。

A.兼瀬環境部長の答弁

2023(令和5)年度の実績では、全火葬件数の内、約1%の方から、身寄りがないなどの事情によって収骨を希望しないという申し出があった。この様な場合には、やすらぎの杜では、死亡届を提出された方から事前に承諾を得た上で、すべてのご遺骨を残骨灰として取り扱うなど、柔軟に対応している。
また、発生する残骨灰については、指定管理者によって、丁寧を旨とし敬意を失することのないよう、適正な処理を行っている。

O.私の意見・要望

コロナ禍の影響もあるのか、「直葬」「ゼロ葬」などといったご要望も注目されている。「散骨」「樹木葬」など、遺骨を納めるお墓を持たない、また、お墓をしまうという選択も急速に増えている。この後、葬儀場にて収骨(骨上げ)をしないという選択、ご遺骨の引き取りが困難な火葬も増えるのではないかと思われる。実際、「遺骨を残さずに灰にまで出来ないのか」と、火力を上げて骨を残さない火葬についての問い合わせもあるようである。
この後、死後の支援を考えるにあたっては、行政も従来の業務の前提を見直し、社会状況、さらには「死にゆく人の見送り方」についての市民の意識や文化の大きな変化も踏まえて取り組んでいただきたいと要望しておく。

 

 


【参考資料】

持続可能な権利擁護支援モデル事業(厚生労働省)(2024年2月) 

高齢者等終身サポート事業者ガイドライン(2024年6月)

高齢者等終身サポート事業者ガイドライン(主なポイント)
高齢者等終身サポート事業者ガイドライン(【別紙】チェックリスト)

「身元保証」や「お亡くなりになられた後」を支援するサービスの契約をお考えのみなさまへ(消費者庁)

 


【参考データ】

今議会の一般質問で市が答弁されていた内容です。

※2020年国勢調査において、65歳以上の高齢者のいる世帯は69,357世帯で、そのうち一人暮らし世帯は19,836世帯(28.6%)となっている。

 


【参考記事等】

▶ 【インタビュー】身元は判明しても引き取り手のない遺骨。横須賀市の終活支援事業の背景にあるもの(いい葬儀/2023年5月29日)

 

▶ 身寄りなき老後、国が支援制度を検討 生前から死後まで伴走めざす(朝日新聞/2024年5月6日)

 

▶ 【そもそも解説】引き取り手がない遺体、なぜ増えた? 何が問題?(朝日新聞/2024年5月19日)

 

▶ 誰が火葬? 遺骨の「引き取り手」は? 捜す自治体、見つからぬ親族(朝日新聞/2024年5月19日)

 

▶「無縁遺骨」急増の一因は携帯電話「亡くなった時、危険なのです」終活専門家が語るワケ(DIAMOND online
/森下香枝:朝日新聞デジタル企画報道部編集長兼編集委員/2024年5月21日)

全国の自治体が管理・保管する無縁遺骨は約6万柱にのぼり、そのうちの9割は身元が判明していても親族などからの引き取りがなく、無縁遺骨の保管に関する法令も存在しない…。(※ただ、枚方市においては、火葬からの地を委託しているため、市に遺骨が残るということはないとのことでした。)

^