まちづくりは誰のために行うのか。 何を実現するために行うのか。合理性を失った⑤街区移転に固執せず、市民利益を優先して、市庁舎は④街区建替えで自治と防災の拠点に。枚方市駅周辺再整備について、質問しました。9月定例月議会、一般質問の報告②です。
枚方市議会議員の奥野みかです。
ここでは、「2.枚方市駅周辺再整備について」の報告です。
公共事業は、なぜ行うのかという「理由」が明らかでなければなりません。しかし市が進める再整備事業は、⑤街区への市庁舎移転と④街区市有地の売却を前提に進められ、国・府・市の合同庁舎構想が消えた時点で合理性を失ったにもかかわらず、市長は見直しを拒み続けています。そのため事業手法の変更やアリーナ構想の浮上など計画は迷走し、移転条例も否決・取り下げとなり、停滞が続いています。その結果、老朽化した危険な公共施設の更新が進まず、消防署の更新やサンプラザ1号館の建替え、南口駅前広場の整備など、多くの課題に悪影響が及んでいます。
私は繰り返し、現実的な案を提案してきました。老朽化建物は早期に解体。④街区防災公園に隣接して市庁舎を建替え、⑤街区には消防署と訓練施設を配置し、防災拠点として段階的に整備。府有地は警察署更新に活用を要望し、国有地機能は④街区市有地との交換で移転。これなら市有地を売却せず、税金を賢く使い「速く・安く・安全に」更新が可能です。
⑤街区移転はすでに合理性を失い、④街区売却にも公共的意義はありません。市庁舎は市民が集い、災害時には防災拠点となる「自治の拠点」であるべきです。市長は方針を改め、市民利益を最優先にした責任ある判断を行うべきではないかと訴えました。
なお、「私の理解」に対して述べられた伏見市長の冒頭の意見ですが、「事実と異なる「空想」によるものが、幾つも含まれていた」との決めつけはいかがなものでしょうか…。最初に述べた「私の理解」の部分については、担当部署を通じて、市長にも事前に原稿を確認いただいています。「事実」に対する「見解の相違」、また、「誤認」というのであれば、その旨をお示しいただく時間はあったかと思うのですが…。本議会の場で、根拠のない「言い放ち」のような答弁を市長がすることは、まともな議会審議を妨げることになると思います。
以下、9月16日の一般質問でのやりとりを掲載します。
1.枚方市駅周辺再整備について
Q.私の質問
どのような公共事業でも、なぜそれを行うのか、その「理由」が明らかにされなければならない。議会も、その理由を把握してこそ、事業の是非を判断できる。しかし、新庁舎の移転整備については、当初から「迷走」と言わざるを得ない経過をたどってきている。
質問に先立ち、これまでの経過と現局面の捉え方について、私の理解を述べさせていただく。
まず、市の当初計画は、市民会館本館・大ホール棟などの跡地、すなわち④街区に建て替えるというものであった。ところが、国・大阪府・枚方市の合同庁舎構想が浮上したため、⑤街区の北河内府民センター用地に移転するという話になった。合同庁舎であれば、④街区でなくても、⑤街区に、ということで議会の意見もまとまっていったようだ。
一方で、2016(平成28)年には、京阪ホールディングスから③街区の京阪用地で国・府・市の合同庁舎を、という案も示された。当時、全員協議会の案件にもなっている。
しかし、結局、国・府・市の合同庁舎構想は具体化することはなく、大阪府は、③街区に北河内府民センター機能を単独移転させた。枚方市においても、これは伏見市長の時になるが、新庁舎の③街区移転を一時検討したが、議会の強い反対で具体化せず、再び⑤街区での整備方針に戻ったのである。
私は、ここに「迷走の出発点」があると考える。国・府・市の合同庁舎が実現しないのであれば、⑤街区移転に固執せず、当初の④街区案を含め、ゼロベースで慎重に再検討すべきであった。当然である。にもかかわらず、市は④街区案を排除し、③街区と⑤街区の比較検討のみを行い、結果、⑤街区が適当であるとされた。巨額の費用を投じて市民会館大ホールを総合文化施設としてクラボウ跡地に移転させ、新庁舎の建設用地を確保までしたのにもかかわらず、である。なぜ、もとの④街区を比較検討の対象にもしなかったのか。そこが極めて大きな問題であったわけである。
すなわち、⑤街区への新庁舎移転は「国・大阪府・枚方市」三者の合同庁舎建設が前提だったものであり、合同庁舎の敷地となる北河内府民センター用地の所有者である大阪府が合築に参加しないとなれば、枚方市としては、何が枚方市の公益になるかということを「的確」に判断すべきだった、ということである。
さらに、事業手法もブレ続けている。当初の「市街地再開発事業」については、実現可能性の観点から断念し、④・⑤街区の約53,100㎡を一体とする「土地区画整理事業」に変更した。市の用地ではない大阪府用地を取得して市庁舎を建設するとなると、財源確保のために市有地を売却する等の検討を行なわなければならなくなってしまったわけであるが、わざわざ利便性の高い市有地を売却し、府有地を「取得する」、つまり簡単に言えば「買う」ということであるが、こんな事業枠組みがあからさまになると、納税者市民から批判を受けかねない。いや、市民批判は必至である。だからこそ、市としては、何らかの公共事業手法を導入して国庫補助金の獲得をめざすとともに、事業の全体像を複雑にしてわかりにくくしようとしたのではないか。
その結果、UR都市機構(独立行政法人都市再生機構)施行だの、市施行だのといった事業主体を想定した「土地区画整理事業」という複雑な事業手法が予定されているわけである。
こうした計画内容に対する議会の同意を得るために、市は、2022(令和4)年9月に「市役所の位置に関する条例」を議会に提案したが、明確に否決された。(特別多数議決) 今年3月には、追加議案を提案当日に取り下げるという失態までさらしている。
そして現在、大阪府は北河内府民センターの③街区移転を終え、活用方針を決めなければならず、跡地処分に向けて準備を進めながら、枚方市に対して対応方針の最終判断を迫っている。
それに対して、伏見市長は、ただひたすら、そして頑なに、これまでの経過、すなわち、「大阪府の用地を取得して市役所を移転する」という枠組みに固執し、「⑤街区移転ありき」の姿勢を崩さず、市役所の位置を定める条例の提案に血眼になっておられる…。
これが私の理解するこれまでの経過と現局面の捉え方である。
新庁舎の建設位置を④街区にするのか、⑤街区にするのかは、枚方市にとって歴史的な判断である。だからこそ、しっかりとした二つの選択肢を作り、様々な観点から議論を尽くすべきであったのに、「はじめに結論ありき」の極めておざなりな、極めて杜撰な比較検討しか示されなかった。それでは市民や議会の疑問や意見に対して説得力のある説明などできるわけもなく、加えて、次から次へと不可解な計画変更を重ねるものだから、④・⑤街区の再整備は長く停滞してしまった。これが現状だと思う。
そこで私は、④街区に新庁舎を建設し、⑤街区には枚方消防署の建替えや訓練施設の整備、そして、②街区の南口駅前広場の拡張整備やサンプラザ1号館の移転・再建築を迅速に進められる可能性のある計画対案を考察してみた。
その中で見えてきたことを踏まえて、枚方市駅周辺再整備について、基本的で重要な点について、改めて、順次、市長に伺う。
◇そもそもなぜ市役所移転が必要か
そもそも、新庁舎を⑤街区に移転することが本当に必要なのか。④街区の市有地を売却して「みどりの大空間」と銘打った公園の拡張以外に、一体、何が実現するのか。私にはさっぱり理解できないし、納税者市民の皆さんに説明することもできない。
⑤街区移転に固執しているのは、過去の経緯において伏見市長が大阪府に対して大阪府用地を「取得する」と言ったから。それゆえに、④街区で何を実現したいのか、何のために市庁舎を移転させなければいけないのかというと、結局、売却収入を得たいからだけ、ではないのか。
これまでの成り行きを変更できないだけ。大阪府に対して言ってきたことをくつがえしたくないだけ。そんな理由で、市民の財産である広大な市有地を手放し、まして、消防行政に対してまで「しわ寄せ」をもたらすことなど、決して許されることではない。
市の計画において、④街区に、どんな魅力のある開発が用意されているか。現時点で見えるのは、タワーマンションと商業・業務系ビル程度。民間事業者からどんな提案が出てくるか、全く不確定である。市駅周辺で民間による居住機能を整備することに意味があるとしても、それは、④街区の市有地でなければならないというものではない。
先の議会で市長は、箕面キューズモールだの、甲子園だの、宝塚歌劇団などの「夢」を語られたが、そういったものの具体化については、④街区のイメージ図にさえ、影も形も示されていない。議会や市民の声に真摯に向き合って、出された意見を踏まえた抜本的な見直しを行わないから、④・⑤街区の再整備事業は長く停滞してしまっているというのが現状である。
この数年、社会・経済の状況変化は著しいものがある。民間事業者に期待した、民間任せのまちづくりが失敗に終わった事例も数多くある。
そこで、新庁舎の⑤街区移転はなぜ必要なのか、改めて、その理由を市長に伺って、1回目の質問とさせていただく。
A.伏見市長の答弁
校方市駅周辺再整備についてお答えする。
その前に、議員からの先ほどの質問の中で、「私の理解」という中で、事実と異なる「空想」によるものが、幾つも含まれていたので、聞いた市民の皆さんが誤解を招くんではないかという大変大きな危惧を抱いているので、「遺憾」の意を表明させていただきたいと思う。
それでは、質問に対してお答えする。
枚方市駅周辺再整備については、2021(令和3)年3月に策定した枚方市駅再整備基本計画に則って、連鎖型のまちづくりを進めるもので、老朽化している市役所庁舎、市民会館、保健所を現在地で建替えるのではなく、国・府・市の公有地を活用することで、④街区に賑わい創出を図る民間活力導入エリアの設定が可能となる。また、⑤街区は、防災性など庁舎の立地に適していることから、新庁舎を整備することとしている。
既に市民会館及び保健所、保健センター、大阪府北河内府民センターの機能移転、③街区の行政サービスフロアの設置が完了しており、連鎖型のまちづくりは、残すところ市庁舎の⑤街区への移転となっている。
◇災害対策上の有利さについて
Q.私の質問
「連鎖型のまちづくりは、残すところ市庁舎の⑤街区への移転となっている」と述べられたが、何とも熱のない、説得力のない答弁であったので、いくつかの具体的な点について、順次、質問させていただく。
これまで市は新庁舎の⑤街区移転が「災害対策上有利」と繰り返し説明してきた。ただいまも「⑤街区は、防災性など庁舎の立地に適していることから、新庁舎を整備する」と答弁されたが、その時の「災害」とは、どのような災害を想定されているのか。まず、確認させていただきたい。当初は「淀川洪水」を念頭に置かれていたと理解しているが、最近は「内水氾濫」、すなわち、新安居川や安居川の氾濫による浸水被害に移ってきているように思う。
もし、淀川洪水であれば、それに伴って天野川や内水氾濫も同時に発生する可能性が高く、④街区・⑤街区の有利・不利に大きな差はない。淀川破堤を起こさないための総合治水対策は明治以降の国家的課題で、引き起こさないことが大前提で、万が一発生した時は、退避して命を守り、水がひいた時に速やかに再活動できる機能を整備することに尽きる。
そう考えるならば、防水シャッターや機械室等の配置階数などの建築設計上の工夫で新庁舎の対浸水性能は確保できるし、⑤街区移転が優位であるとする理由にはならない。
ましてや、内水氾濫のリスクがあるから市役所庁舎を移転する必要があるとするのならば、これほど無責任な論理はない。なぜならば、枚方市駅周辺には官民の商業・業務・住宅・交通施設がたくさん集積している以上、行政の為すべきは、自らだけ安全な場所に逃げることではなく、抜本的な浸水対策を講じて市民生活全体を守ることではないか。「新安居川ポンプ場」の増設もそうであるが、だからこそ、これまでも様々な浸水対策に取り組んできたし、今後も浸水被害を発生させないための対策を強力に進める、こうした姿勢こそ市には求められるのである。
自分たちの庁舎は浸水リスクの低い場所に移転するというのは、非常に身勝手な論理ではないか。市長の見解を伺う。
A.伏見市長の答弁
新庁舎については、通常の市民利用のほか、災害対策の拠点機能が求められる。このため、大規模災害時における耐震性と安全性を確保し、周辺の浸水リスクや道路機能の確保などを含めて検討を行っている。④⑤街区については、新安居川ポンプ場を整備し、排水能力を強化したが、内水の浸水リスクは残っている。そのため、④街区より上流部に位置し、現地盤が高い⑤街区に新庁舎を配置することでリスク軽減が可能となる。
O.私の意見
内水の浸水リスクが残っているので、新安居川ポンプ場に隣接する北河内府民センター跡地の地盤かさ上げを行い、⑤街区に新庁舎を移転させるというのは、無駄に事業費を膨らませるだけの不合理な計画である。④街区の新庁舎であれば、駅直結の利便性を活かしつつ、駅からのペデストリアンデッキで来庁者の動線を確保し、機械室は上層階に設置、1階には高性能な防水シャッターを採用するなど、設計上の工夫により、低コストで内水の浸水リスクを軽減することが可能である。
◇土地区画整理事業について
Q.私の質問
次に、④・⑤街区の再整備手法として位置付けられている土地区画整理事業について伺う。
枚方市駅周辺再整備をめぐっては、大きな修正やその取り消しを繰り返してきている。突如として出てきた「アリーナ整備」はその典型である。これだけ大きな計画内容が、一体、どれだけの期間、有効だったのだろうか。
2022(令和4)年度に実施されたサウンディング型市場調査の際、市への忖度からか、複数の民間提案にアリーナ整備が含まれていたとしていきなり浮上してきたなあと記憶しているが、翌年6月の全員協議会資料では、庁舎併設の可能性はないとして明確に否定され、わずか1年ほどで姿を消した。まさに「思いつき」と言われても仕方がない。
同じく、2023(令和5)年6月の基本計画の改訂では、府道枚方茨木線沿いにあるコンビニや民間業務ビルが立地する約1,800㎡の「三角地部分」、一般地権者5者を含む区域が、新たに④街区の土地区画整理事業の区域に組み込まれた。
枚方市駅から府道枚方茨木線を超えて⑤街区内の市役所庁舎へ来庁者がアクセスするための動線上に位置するため重要とされ、あえて事業区域を広げられたのだろうが、同意を得るのは極めて困難であると当初から予想されていたはずである。そして案の定、現在も同意が得られていないと聞く。
そこで、伺う。この「三角地部分」を土地区画整理事業区域に追加した際、そもそもどこに換地することを想定していたのか、そして今後、同意が得られない状態が続く場合、この区域をどのように扱う考えなのか、伺う。
A.山中市駅周辺まち活性化部長の答弁
換地については、土地区画整理事業の施行者が定めるものであることから、現在、市からは複数の換地先の候補などを地権者にお示しするなど、事業への理解を得られるよう説明を行っている。
今後、都市計画が決定し、土地区画整理事業が施行された後は、工事施工に伴い施行地区内に換地されることとなる。
O.私の意見
複数の換地先の候補などを地権者に示すなど、事業への理解を得られるよう説明を行っているとの答弁であるが、今後、どのように取り扱われるのか、怪しいものである。そもそも、「みどりの大空間」を拡大するとして、基本計画を改訂し、「三角地部分」まで④街区の区域を広げる際に十分な検討をされたのか、非常に疑問を感じる。計画変更自体が、何とも軽々しいものだったのではなかったか。
Q.私の質問
次に、市が進めようとする新庁舎を⑤街区に移転することを柱とした④・⑤街区の再整備事業の核となる土地区画整理事業についてである。
ここで、タブレットの参考資料「④・⑤街区の権利者位置図」、土地の所有状況の図をご覧いただきたい。
これまでの説明によると、④・⑤街区の整備は、約53,100㎡の区域を対象に進められている。内訳は、市有地が約24,000㎡、公共施設用地が約13,400㎡、国有地(税務署・簡易裁判所)が約4,000㎡、大阪府有地が約7,700㎡、一般地権者10者で約4,000㎡、つまり、9割近くが公有地という地区で、市は土地区画整理事業を採用しようとしている。
ヒアリング時に、一般地権者との協議の状況について尋ねたところ、2021(令和3)年10月及び2023(令和5)年1月に全権利者を対象に、市駅周辺再整備事業や土地区画整理事業の概要についての勉強会を開催したとのことであった。そして、基本計画が改訂され、三角地部分の地権者5者が加わってからか、2023(令和5)年には地権者への個別ヒアリングによる意向調査などを実施し、その後は定期的に事業の状況などについて、個別に説明を実施し、意向確認を行っているとのことである。そして、「権利者の一部からは、転出意向や、事業への参画に反対、また、詳細の条件が揃わないと参画する検討ができない等、様々な意見があり、全ての関係権利者から事業の理解が得られている状況ではない」との説明があった。
そもそも、土地区画整理事業とは、土地所有者の合意のもと、土地の交換・減歩・公共施設整備を一体的に行い、土地の利用価値を高めるための都市再開発手法である。道路や公園など公共施設用地の整備費は、減歩した土地の保留地処分によって賄う仕組みであり、主に権利者が多数・権利関係が複雑・公共施設不足が顕著な市街地に効果的であると説明されている。
「換地手法により、地権者の意向に応じて、土地の権利を換地として確保しながら柔軟に対応することができるとともに、道路などの公共施設の整備改善と宅地の利用増進を一体的に手戻りなく、効果効率的に市街地整備を進めることができるなど、まちづくりを実現手法として有効であると考えている」と、市からの説明もあった。
しかし、約53,100㎡のうち市・府・国の公有地が9割近くを占め、一般地権者はわずか約4,000㎡である④・⑤街区の再整備を進めるにあたり、用地取得が必要であれば、個別の折衝・協議に基づいて交換・買収して取得することが最も迅速で、合理的ではないか。時間も人員も含めて多大な間接コストがかかる土地区画整理事業という事業手法をあえて選択することとしたのか、その理由は私には理解できない。そもそも土地区画整理事業として成り立つのか、大いに疑問である。
市はこれまで、土地区画整理事業手法の採用によって、国の補助が見込めることを最大のメリットと説明されてきた。
ここで担当部長に確認をさせていただくが、国のどのような事業メニューによって国の補助を獲得しようとしているのか、伺う。
また、どのような事業内容が補助対象となると見込み、それぞれの事業に対していくらの補助を見込んでいるのか、内訳をお示しいただきたい。
そして、事業主体については、ノウハウを有するUR都市機構とするとの説明もされてきているが、UR都市機構は間違いなく事業主体となってくれるのか、その調整状況についても伺う。
A.山中市駅周辺まち活性化部長の答弁
④⑤街区の土地区画整理事業については、国の社会資本整備総合交付金の都市再生区画整理事業の活用を想定しており、土地区画整理事業費のうち、一定の要件の該当する公共用地や公共施設整備費、移転補償費などについて、国費を算出しており、約59億円を見込んでいる。
次に、土地区画整理事業の施行者については、事業認可までには、市施行のほか、機構施行や個人施行、組合施行を含めて関係者と調整を図るなど、検討を進めていく考えである。
O.私の意見
「どのような事業内容が補助対象となると見込み、それぞれの事業に対していくらの補助を見込んでいるのか内訳をお示しいただきたい」と質しましたが、内訳はお示しいただけず、「約59億円の見込み」と合計額のみのお答えである。
一定の要件の該当する公共用地や公共施設整備費(インフラ整備費か?)、移転補償費を補助対象として当て込んでいるのか。もちろん、要綱を熟読され、対象事業、対象経費を精査されているとは思うが、「一定の要件」との制約もあるようだ。国の財政状況の悪化など、時間の経過ともに要件変更のリスクもないとは言えない。総合交付金事業が存続するかどうかも確たるものではない。
また、土地区画整理事業の施行者については歯切れの悪い答弁であった。事業認可までには、市施行のほか、機構施行等の検討を進めていく考えということなので、UR都市機構が間違いなく事業主体となってくれるという状況でもないようである。スキームとしては、市施行の土地区画整理事業もないことはないとのことであるが、これってそもそもの事業の目的に合致していると言えるのだろうか。
国土交通省の説明によると、都市再生区画整理事業とは、「防災上危険な密集市街地及び空洞化が進行する中心市街地等、都市基盤が貧弱で整備の必要な既成市街地、並びに被災した市街地において、土地区画整理事業の実施により、都市基盤の整備と併せて街区の再編を行い、もって土地の有効利用を促進するとともに、安全で快適に暮らすことができ、活力ある経済活動の基盤となる市街地への再生・再構築を行うことを目的とする事業である。」とされている。
Q.私の質問
繰り返しになるが、対象区域、約53,100㎡のうち市・府・国の公有地が9割近くを占め、官公庁施設が整然と集積している④・⑤街区の市街地が本当にこの事業対象に該当するのだろうか。
いずれにしても、国の補助金を獲得するためには、①事業対象の要件を満たすこと、②国の財政上の制約に起因する「個所付け」、予算配分を獲得すること、そして、③想定する補助金額を確保すること…、この3つのハードルを越えなければならない。
そこで市長に伺う。
「土地区画整理事業により国の補助金が得られる」「ノウハウがあるUR都市機構の事業協力を得る」…、これまで市の計画の前提として説明してきたこれらのことは、すべて具体化できるのか。市の計画や説明がこれまでもゴロゴロと変わってきたことを踏まえると、どうも信用性に欠ける。もし具体化できなければ、結果的に市民をダマしたことになるのではないか。その責任は誰がどのようにして取るのか、伺う。
A.伏見市長の答弁
これまで、④⑤街区については、国の支援制度を活用できるよう、道路・公園などの公共施設を計画し、公有地を有効活用した民間活力の導入などの検討を重ねてきた。
財源確保のため、国の交付金獲得は不可欠であり、都市再生緊急整備地域の指定のメリットを活かすなど、重点的に予算配分を受けられるよう引き続き取り組む。
次に、UR都市機構については、長期間で段階的な事業であることなど、④⑤街区再整備の事業特性を踏まえ、全国的に多数の実績とノウハウなどを有するUR都市機構と事業化に向けた協議を継続している。
O.私の意見
「具体化に向けて努力している」…、それだけではすまない。今の質問は、「結果に対する責任」についてであるが、お答えはいただけなかった。
なぜ、より速く・安く・確実な「直接整備」を選ばず、あえて費用増・長期化・破綻リスクのある手法に固執されるのか。この選択が市民の利益を最大化すると断言できるのか。説明と異なる結果になった時には、市長も担当職員も替わっていて責任の取りようもない~そんな事態は起こらないと言いきれるのか。土地区画整理事業という事業手法の選択妥当性は疑問だらけである。
◇新庁舎整備基本計画について、②街区の駅前広場整備について
Q.私の質問
市の再整備事業の進め方においては、繰り返し計画内容が変わるということとともに、いつまで経っても、しっかりと検討された計画が示されないという問題がある。
これも市長に伺うが、新庁舎の整備基本計画案が未だに示されないのはなぜか。新庁舎や駐車場等の施設がどのような姿や機能になるのか、予定された時期になっても示されないのでは議論のしようもないのではないか。市長の見解を伺う。
また、枚方市駅南口駅前広場の拡充のために、移転建替えが必要なサンプラザ1号館をどのような位置で、どのような事業手法で再築するのか。権利者の合意を得ることができそうな現実的なプランは当初から用意されていなかったし、現在でも提示できているとは思えない。私は、④街区内に再築用地の確保を検討もしない姿勢が原因ではないかと考えるが、市長としては、移転条例云々の前に、なすべき検討、なすべき計画策定を進捗させるための指揮を行うべきではないのか、見解を伺う。
A.伏見市長の答弁
新庁舎整備基本計画の策定に向けては、導入する機能について、市民アンケートや有権者有識者からのご意見を踏まえ、現在、庁内のワーキングチームなどにおいて検討を進めているところである。
計画の策定には、配置計画等を定める必要があることから、庁舎の位置が確定した後に検討していくこととなる。
次に、②街区であるが、これまで④街区の市有地への移転など含め、地権者とは長期に渡り意見交換などを行ってきたが、現位置付近に再建する意向であり、地権者とともに、②街区の市街地再開発ビルの整備等を検討しているところである。
今後、本市としても、必要な検討などを行い、できるだけ早期のまちづくりの具体化に向け、取り組む。
O.私の意見
「計画の策定には、配置計画等を定める必要があることから、庁舎の位置が確定した後に検討していく」との答弁である。位置が決まらないので、何もできないんですよ、ということのようであるが、どのような新庁舎を建設するのかは、位置と関わりなく決めていかなければならないことがたくさんある。主要な事項の検討状況を中間報告するべきであるし、できなければならないのである。しかし、ズルズルと時間を浪費しているというのが実情である。
また、サンプラザ1号館の地権者とは、④街区市有地への移転等の提案も含めて長期に渡り意見交換などを行ってきたけれども、南口駅前広場と岡東中央公園とサンプラザ1号館ビルのある②街区で再建したいという意向を受け、②街区に市街地再開発ビルの整備等を検討しているとのお答えには驚きしかない。②街区のどこに代替用地を確保できるというのか。また、駅前広場の機能等に問題が生じないのかなどの懸念があるが、このことについては、別の機会(全員協議会)で質疑させていただく。
サンプラザ1号館の移転建替えについては、④街区内の街路整備、南口駅前広場整備等とあわせて市街地再開発事業として成り立たせることをめざし、そのことで補助金の獲得もめざすべきであると意見しておく。
◇他の重要施策への悪影響について
Q.私の質問
さて、市が進める再整備事業の特徴は、新庁舎の⑤街区移転に固執し、④街区市有地の売却にこだわるため、他の重要施策へ悪影響を及ぼしていることである。
その1つが、これまでも指摘している枚方消防署と訓練施設の建設である。当初、⑤街区での整備を想定していたのに、中宮北小学校跡地などという用地を消防組合に押し付けることになっている。その結果、中心市街地における消防力の低下、出張所配置の見直しなどの問題を招きかねない。
そもそも、市の計画において、なぜ新庁舎について、⑤街区内の既存の市道をまたぐ形で整備するのか、その理由が私には理解ができない。
⑤街区内の枚方市役所分館・第2分館・旧医師会館・税務署・簡易裁判所等が立地する区域の土地所有者はほぼ枚方市と国であり、これらの土地を④街区内の市有地との交換等で取得すれば、⑤街区に枚方消防署及び訓練施設を整備することは十分に可能である。早期実現の可能性も非常に高いと考える。
そこで、なぜ、⑤街区内の土地を④街区内の市有地との交換等で取得するという選択肢を検討しなかったのか、市長に伺う。
A.伏見市長の答弁
⑤街区は、国・府・市の公有地の最適利用により、新庁舎の建設を進めるとともに、④街区の市有地は、公園・広場を拡大整備や、民間活力の導入などのために有効活用を図る考えである。
国とは、こうした市のまちづくりに協力していくことを確認している。
O.私の意見
国に市のまちづくりに協力いただくことは当然のことである。しかし、⑤街区内の国有地と④街区内の法務局に隣接する市有地を交換して一団の国の施設を枚方市駅に近接し、また、④街区内の市の新庁舎とも近接する位置に集積させるという計画内容であったとしても、国の協力は十分に得られると考える。
訓練施設を備えた枚方消防署の⑤街区整備と国における用地の最適活用の両立は可能であり、この観点から再検討を求めておく。
Q.私の質問
さらに、もう一つ、②街区の整備について、伺う。
これは、④街区の整備とも密接に関連し、枚方市駅周辺の交通体系に大きな影響を与える南口駅前広場の整備や、かつて市の再開発事業で建設されたサンプラザ1号館の再築とも深くかかわる。これらが「再再開発事業」の位置づけを取れるのかについても不明確である。これら②街区の整備にかかる議論にしても、関係者との協議にしても、いったい、誰とどこまでの協議や調整が進んでおり、どのような課題が残っているのかが明らかにされていない。バタバタした形で、性急に行われようとしているようにも感じられるが、市長の見解を伺う。
A.伏見市長の答弁
②街区においては、地権者で構成された「枚方市駅南地区まちづくり協議会」とともに、市街地再開発事業に向けた検討を進めているところである。
今後、②街区と隣接する④街区と調整を図りながら、公共交通の利便性や、歩行者の回遊性を向上させ、交流や賑わいを創出するまちづくりに取り組む。
◇私の対案と方向転換の提案
Q.私の質問
これまでと同様の「ドタバタ計画変更」のように思われる。
私は繰り返し、次の案を提案してきた。
(1)市役所は④街区の現在位置の隣地での建て替えとする。
(2)前段として、老朽化した危険建築物である「もと市民会館大ホール棟」「もと市民会館本館」「職員会館」は一刻も早く解体撤去できるよう、調整を進める。
(3)大阪府の土地は大阪府の判断で処分していただく。その際、地元自治体としては、バリアフリー施設でもない枚方警察署の建て替えを検討するよう強く要望する。
(4)⑤街区の市有地には、更新の必要な枚方消防署を訓練施設とあわせて配置する。あわせて、国有地、一般地権者(2者/納税協会、枚方市医師会)所有の土地も含め、防災拠点としての整備を段階的に進める。
(5)⑤街区の国有地にある国の機関(税務署、簡易裁判所)については、④街区の市有地との土地の交換による移転建て替えを提案していく。
このような事業枠組みであれば、④街区に広がる市民の貴重な一団の土地を売却する必要はなく、預かった税を賢く使い、将来市民のためにもなる。時間コストも抑えられる。一つひとつの事業を個別に進めることで、結果として「速く、安く、安全に」更新することが可能となる。
そこで、再度、市長に伺う。
今なお、もと北河内府民センター跡地を含む⑤街区への市庁舎の移転に固執し、土地区画整理事業ありきで進めるお考えなのか。それとも、市民・議会の声に耳を傾け、コンパクトで持続可能で、時間的コストも省略できる更新へ方向転換する意思があるのか。限られた市民の土地・時間・税金を、誰のためにどう使うのか。今こそ、市長の適切な判断が問われていると考える。見解を伺う。明確にお答えいただきたい。
A.伏見市長の答弁
現在、市民や市議会の意見交換会でのご意見などをお聴きしながら、検討を行っているところである。
今後、まちづくりの大きな要素である、庁舎位置を確定した上で、みどりの大空間などのまちづくりの熟度を高めていきたいと考えており、その内容については、改めて、お示しさせていただきたいと考えている。
今後、全員協議会の開催をお願いし、引き続き、市民や市議会のご意見をいただきながら、取り組んでいく。
O.私の意見
結論を繰り返せば答弁になる、説明になると思っておられるようだが、それは許されないことである。
「国・府・市有財産の最適利用・効率的なまちづくりを進めるという観点から、大阪府用地に国・大阪府・枚方市の合同庁舎を整備する」という構想は、北河内府民センターの③街区移転で消滅しているわけであるから、この用地をわざわざ枚方市が取得して新庁舎を建てる必要はない。
既に府民センター機能が移転していることから、大阪府は、今年度中をめどに、土壌汚染や地下埋設物に関する調査、商品化調査など、府有地の処分に向けて必要な準備を進めており、準備が完了次第、できる限り早期に処分したい意向であるとのことである。
私は、府有地の処分・活用については、大阪府に委ねればよいと考える。
老朽化して、バリアフリー施設でもなく、生活安全課はプレハブ施設で相談対応している等、劣悪な枚方消防署警察署の早期更新に活用されることを枚方市としては強く望むべきだと思うが、仮に大阪府が警察署は現地で建て替え、北河内府民センター跡地は民間売却と判断された場合、枚方市として何か大きなデメリットはあるか。
新庁舎が建設できなくなるか。
売却された場合、駅から少し遠くなるこの場所で想定されるのは居住機能整備であるが、そのことに何か問題があるか。駅前のタワマンよりも市民の手の届きやすい価格帯での居住機能が整備される可能性が高くなるだけではないか。
だとすれば、市施行となりそうな土地区画整理事業という大風呂敷を広げて、想定以上に税負担が発生するリスクのある基盤整備をしなくても、本市としては固定資産税収入を見込めることになるのではないか。
市民にとって大切な市庁舎がどの位置にあってどんな機能を備える必要があるのか。大規模災害に対して防災体制をいかに整備するのか。駅前広場の改修がなぜ必要なのか。そのためにはサンプラザ1号館の再築をどのように進めるのが最適なのか。枚方消防署の建替えをどのように進め、消防救急体制をどう構築すべきか。このまちのこと、歴史的にも大切な方針について、まともな議論もせず進めようとすることは決して許されることではない。
先ほど(冒頭に述べた「私の理解」を、市長は)「空想ばかりだ」と言われた。「遺憾である」ともおっしゃった。どこがということは、また、教えていただければと思う。
繰り返しになるが、⑤街区への市庁舎移転は、大阪府が合同庁舎構想を撤回した時点で合理性を完全に失っている。④街区の市有地売却にも公共的意義はなく、売却のための大規模な基盤整備に税金を投じる理由はない。
そもそも、市庁舎を移転するという市の計画が実現しようとする「価値」は、新庁舎そのものにあるとは思えない。④街区の市有地を民間開発に提供し、消費者によって「賑わいを創出する」というものであり、新庁舎については「市民が来なくてもいい市役所」にするというものである。
そうではなく、枚方市に住み、働き、学ぶ人々が日常的に憩い、イベントで交流し、災害時には避難・情報収集のために集まる。そして、市役所に相談したり、話し合ったり、自治のために集まる…。まさに市民主体の「自治」の拠点を作ることこそが、本来のまちづくりの目的ではないか。
「まちづくり」は誰のために行うのか、何を実現するために行うのか、その根本が問われている。目指すべき価値は「市民が集う場を創る」ことであり、それこそが公共性あるまちづくりの本質ではないか。
今こそ、市長は方針を見直し、市民利益を最優先にした責任ある判断を行うべきであると申し上げて、私の質問を終わる。
【参考】
おるたなプラン
▶ 枚方市駅周辺再整備における④⑤街区再整備計画について、市の計画が抱える問題点を解決できるもう一つの選択肢、「おるたなプラン」を意見しました。(2025/07/30)
▶ 市政報告(第20号)を発行しました。おるたなプラン~平時も災害時も有効な、安全・安心の拠点整備、新庁舎・枚方消防署の整備計画の対案をまとめ、枚方市に意見しました!(2025/07/31)
6月定例月議会・定例会
▶ もう待ったなし。市役所・消防署のダブル整備は、公益目的に切り替えて、速く、安く、確実に推進すべき。枚方市駅周辺再整備の確実な推進について、質問しました。6月定例月議会、一般質問の報告です。(2025/06/24)
▶ 消防力の適正配置の観点から、今なすべきは、現枚方消防署の隣接地である⑤街区内に必要な面積の用地を確保して、枚方消防署庁舎及び訓練施設の早期の更新整備、さらには防災拠点としての機能拡充ではないか。6月5日の枚方寝屋川消防組合定例会の一般質問の報告です。(2025/06/05)
3月定例月議会・定例会
▶ 3月28日、3月定例月議会の最終日が終わりました。追加議案の「市役所の位置に関する条例の一部改正について」は、本日の審議直前に開催された議会運営委員会で伏見市長が取り下げました。(2025/03/28)
▶ 消防力の適正配置上、合理性を欠くダブル移転のごり押しではなく、現在地の隣接の⑤街区内の市有地・公有地等を枚方消防署及び訓練施設の移転候補地として整備できるよう、早急に検討すべき。3月27日の枚方寝屋川消防組合定例会の一般質問の報告です。(2025/03/27)