子ども・若者の「困難」は、より深刻に、より多様になってきている。そのような社会状況下で策定する次期計画なので、基本的な考え方や枠組みを抜本的に再検討する場や調査が必要ではないか。子ども・若者育成支援推進法に基づく取り組みについて質問しました。6月定例月議会、一般質問の報告③です。

2022/06/17

枚方市議会議員の奥野みかです。

ここでは、「3.子ども・若者育成支援推進法に基づく取り組みについての報告です。

ひきこもり状態、また、長期間就業等をしていない子ども・若者やその家族に対する相談・支援については、「ひきこもり等子ども・若者相談支援センター」、そして、「子ども・若者支援地域協議会」における「横」のネットワーク、「縦」のネットワークを活用しながら、重層的・継続的な相談・支援の体制が徐々に構築されてきているかと思われますが、家族の介護等を行う、いわゆるヤングケアラーの問題、18歳を超えた子ども・若者に対する親からの虐待の問題、非行・犯罪に陥った子供・若者の支援(更生保護)の問題、外国ルーツの子ども・若者に対する就学支援・日本語指導・適応支援の問題、女性に対する性暴力の問題、新型コロナウイルス感染症の流行が長期化する中でより深刻化したといわれる孤独・孤立の問題等々、子ども・若者の「困難」は本当に多様になってきています。

いま、行政の支援対象としてしっかりと認識されていない子ども・若者の声をどう受け止めるのか、ということも課題になってきているのではないかと思います。15歳以上概ね30歳代と言われる「子ども・若者」の中でも、特に、「就学していない」「就職していない」子ども・若者の相談支援はいったいどこで受け止めることになるのでしょうか。

また、2022年6月7日に閣議決定された政府(内閣府)の「骨太の方針 2022」「経済財政運営と改革の基本方針2022_新しい資本主義へ~課題解決を成長のエンジンに変え、持続可能な経済を実現~ 」)にも記載されていますし、今国会において審議もあった「学生の奨学金の返還支援の仕組み」に関して、卒業後の所得に応じて納付を可能とする新たな制度や、ライフイベ ントも踏まえた柔軟な返還・納付(出世払い)の仕組みの創設、また、地方自治体や企業による奨学金返還支援の促進など、国の方から、さまざまな方策・方針のお示しもありましたが、例えば、このような若者支援を本市で担当するとなると、いったいどこで相談を受け付け、どこが執行する窓口になるのでしょうか。

子ども・若者の「困難」が本当に多様になってきている中で策定する、子ども・ 若者育成支援推進法に基づく「次期計画」になりますので、実効性のある施策を実施するためにも、今回の策定にあたっては、子ども・若者を取り巻くさまざまな社会状況などを大きく捉え直し、政策の基本的な考え方や枠組みを抜本的に再検討する場や調査、プロセスの設定していくことが必要ではないかと意見しました。

 


 

以下、6月17日の一般質問でのやりとりを掲載します。

3.子ども・若者育成支援推進法に基づく取り組みについて

Q.私の質問
市は、2013年5月、子ども・ 若者育成支援推進法に基づく「枚方市子ども・若者育成計画~ひきこもり等の子ども・若者の自立に向けて ~」を策定し、2018年3月には、「改定版」を策定している。
今回、策定を予定している「(仮称)第3次枚方市子ども・若者育成計画」は、現計画をどのように引き継ぎ、また、どのように変更・改定しようと考えているのか、計画策定に向け、この後、どのような調査や検討を予定されているのか、伺う。

A.子ども未来部長の答弁
今回策定を予定している「(仮称)第3次枚方市子ども・若者育成計画」については、コロナ禍等の影響により、子ども・若者の孤独、孤立が大きな課題となっている中、「主にひきこもり、若年無業者(ニート)、不登校状態の子ども・若者で義務教育終了後(15歳)から30歳代までとその家族」を対象とする現計画の後継計画になるものと考えている。
計画案の作成に当たっては、アンケート調査を実施するとともに、今月開催予定(6月28日)の枚方市青少年問題協議会に諮問する予定としているが、国の「第3次子供・若者育成支援推進大綱」の内容、現行計画での取り組みや課題などを踏まえ、子ども・若者とその家族の状況やニーズに合わせた新たな相談支援、多様な居場所の利用促進、義務教育以降も途切れない支援を行うことなどを視野に入れ、ご議論いただきたいと考えている。

Q.私の質問
本市のひきこもり等子ども・若者相談支援センターにおける相談支援は、関係機関との横の連携・縦のネットワークも構築しながら、重層的・継続的な支援に努めておられるものと思うが、答弁にもあったように、現在では、子ども・若者とその家族の状況やニーズに合わせた新たな相談支援、多様な居場所の利用促進、義務教育以降も途切れない支援を行うことが求められている。
今回の計画策定にあたっては、「ひきこもりや不登校の子どもを持つ家族会に対するアンケートや相談支援利用者に対するアンケートなどを実施する」と説明されたが、子ども・若者支援のための課題を明らかにするためには、このような内容のアンケートにとどまらない、実態把握を行うための調査等が必要ではないかと考える。計画策定のために行うアンケート調査等について、見解を伺う。

A.子ども未来部長の答弁
計画策定に当たっての現状把握として、当事者のほか家族会の会員にアンケートを実施する予定としており、内容については、現計画策定時からの経年変化とあわせてコロナ禍での生活の状況や変化したことなどを把握する内容とする予定である。さらに、当事者には、このアンケートを配布する機会を活用し、可能な限り一人ひとりの思いや状況を個別に丁寧にお聞きするなど、今後の支援策につなげていける調査としたいと考えている。

O.私の意見
子供・若者を取り巻く状況は大きく変化し、子ども・若者育成支援推進法(第1条)にある「子ども・若者をめぐる問題が深刻な状況にある」という状況はさらに深刻さを増している。家族の介護等を行う、いわゆるヤングケアラーの問題、18歳を超えた子ども・若者に対する親からの虐待の問題、非行・犯罪に陥った子供・若者の支援(更生保護)の問題、外国ルーツの子供・若者に対する就学支援・日本語指導・適応支援の問題、若年女性に対する性暴力の問題、新型コロナウイルス感染症の流行が長期化する中でより深刻化したといわれる孤独・孤立の問題、自死の問題、奨学金の返還が困難な若者への支援の問題等々、子ども・若者の「困難」は本当に多様になってきている。
このような状況を踏まえて策定する次期計画ということになるので、社会状況などを大きく捉え直し、政策の基本的な考え方や枠組みを抜本的に再検討する場や調査、プロセスの設定が必要ではないかと、意見しておく。

 

 


 

市は、2013(平成25)年5月、子ども・ 若者育成支援推進法に基づく「枚方市子ども・若者育成計画~ひきこもり等の子ども・若者の自立に向けて ~」を策定し、ひきこもりやニート、不登校の子ども・若者を早い段階から相談につなげ、自立に向けた支援を行うため、「ひとりひとりが自分らしく」と掲げ、さまざまな施策を推進してきています。

その後、複合性・複雑性を増した子ども・若者の有する課題に対して、重層的な支援の充実が求められる中、2018(平成30)年3月には、2018(平成30)年度~2022(令和4)年度までの「枚方市子ども・若者育成計画〈改定版〉」を策定し、子ども・若者に対する支援を、市として、総合的・計画的に推進してきています。

特に、「ひきこもり等子ども・若者相談支援センター」における相談支援は、「子ども・若者支援地域協議会」の支援ネットワークを活用した関係機関との横の連携・縦のネットワークも構築しながら、さまざまな背景や複雑化した要因を解きほどき、アウトリーチ(訪問支援)、問題の長期化を踏まえた伴走型の継続支援、問題の多重化を踏まえたチームによる支援、スモールステップとしての居場所支援「ひらぽ」の実施、就労支援・就労継続支援、家族会に対する支援、オンラインを活用した支援等々、重層的・継続的な支援にも努めておられます。

しかしながら、子ども・若者の「困難」がさらに多様になってきている中で策定する、子ども・ 若者育成支援推進法に基づく次期計画になりますので、実効性のある施策を実施するためにも、子ども・若者を取り巻くさまざまな社会状況などを大きく捉え直し、政策の基本的な考え方や枠組みを抜本的に再検討する場や調査、プロセスの設定していくことが必要ではないかと考えます。

2010(平成22)年4月施行の子ども・若者育成支援推進法に基づき、教育、福祉、保健、医療、矯正、更生保護、雇用等の分野縦割りの取組に「子供・若者の育成」という横串を入れて、分野を超えた連携・協働を総合的に推進するため、国においては「子供・若者育成支援推進大綱」を策定してきておられますが、2021(令和3)年4月、「全ての子供・若者が自らの居場所を得て、成長・活躍できる社会を目指して」という副題が付された第3次の「子供・若者支援推進大綱」が示されています。

第1次の大綱の実施期間中には東日本大震災、第2次の大綱の実施期間中には新型コロナウイルス感染症の流行という、まさに「国難」とも称される事態が発生し、さらには情報化、国際化、少子高齢化が急激に進行するなど、子供・若者を取り巻く状況は大きく変化し、子ども・若者育成支援推進法(第1条)にある「子ども・若者をめぐる問題が深刻な状況にある」という状況は更に深刻さを増しています。

子供・若者を取り巻く状況の認識として、第3次の「子供・若者育成支援推進大綱」には、①生命・安全の危機(自死のリスク)、②孤独・孤立の顕在化、③低い Well-being、④格差拡大への懸念、⑤SDGs(持続可能な開発目標)の推進、⑥多様性と包摂性ある社会の形成(ダイバーシティ&インクルージョン(D&I))、⑦リアルな体験とデジタル・トランスフォーメーション(DX)の両面展開、⑧成年年齢の引下げ等への円滑な対応、⑨子供・若者の人権・権利の保障、⑩ポストコロナ時代における国家・社会の形成者としての子供・若者の育成など、多くの課題が挙げられています。(子供・若者の健全育成に関連する主な社会課題)

【参考】
「子供・若者育成支援推進大綱_第3次(概要)」
「新たな子供・若者育成支援推進大綱の在り方について(2020年12月)子供・若者育成支援推進のための有識者会議報告書」

 


 

【追記】

枚方市青少年問題協議会に「(仮称)第3次枚方市子ども・若者育成計画」策定の諮問(6月28日付け)を行い、審議会において調査・審議を行っていただくものと思っていました。計画策定の流れとしてはそのように進行するようですが、ホームページに掲載された審議会の資料を見せていただいたところ、かなり作業が進んだ資料(骨子案)を提供されていました。

今回の一般質問で、私は、現下を踏まえて策定する次期計画なので、「社会状況などを大きく捉え直し、政策の基本的な考え方や枠組みを抜本的に再検討する場や調査、プロセスの設定が必要ではないか」と意見しました。また、計画策定のために行うアンケート調査についても、ひきこもりや不登校の子どもを持つ家族会に対するアンケートや相談支援利用者に対するアンケートにとどまらない、実態把握を行うための調査等が必要ではないかと意見しましたが、残念ながら、いずれも反映される余裕はないかもしれない、ようです…。

5月に開催された教育・子育て委員協議会において、どのようなアンケートをしようとされているのかをお尋ねしたところ、子ども青少年政策課長からは、「第3次計画の策定において実施しようとしているアンケートについては、前回実施したときと同じ項目をお尋ねして経年変化を把握するとともに、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う新たな生活様式等を踏まえた取り組み内容を検討できるような内容を、青少年問題協議会からご意見をいただいて実施したいと考えている」と、お答えいただいていましたが、そのような提案は行われたのか、また確認をしておきたいと思っています。

▶ 2022(令和4)年度_第1回枚方市青少年問題協議会(2022年6月28日開催)

次第
資料1 「(仮称)第3次枚方市子ども・若者育成計画」の策定と骨子案について
資料2 「(仮称)第3次子ども・若者育成計画~ひきこもり等の子ども・若者の自立に向けて~」骨子案
資料3 ひきこもり・不登校等に関するアンケートの実施について
資料4 ひきこもり・不登校等に関するアンケート
参考資料1 枚方市青少年問題協議会 委員名簿
参考資料2 「(仮称)第3次子ども・若者育成計画」策定に向けてのスケジュール
参考資料3 ひきこもり等子ども・若者相談支援センターを利用されている方へのアンケート調査

【参考】

▶ 2017(平成29)年度_第4回枚方市青少年問題協議会(2017年11月21日開催)

参考資料1 ひきこもり・不登校等に関するアンケート調査 報告書(枚方市)
参考資料2 枚方市で対応ケースの集計・分析について
参考資料3 これまでいただいたご意見一覧

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