性暴力被害の実態にできる限り沿う法改正を重ねることこそが、性暴力被害に苦しむ者を救い、性暴力の根絶につながる。ジェンダー平等推進本部からは、性犯罪刑法改正についてのコメントが出されました。
枚方市議会議員の奥野みかです。
2017年、性犯罪の厳罰化を柱として110年ぶりに改正された刑法は、必要があれば見直しを行う旨の附則がつきました。法務省が設置した「性犯罪に関する刑事法検討会」では、さまざまな論点に踏み込んだ議論が行われ、2021年5月21日、報告書を公表し、今後、性犯罪に関する法改正について法制審議会に諮問することとされています。
結果として両論併記となっている論点も多い中、立憲民主党では、意見の集約という政治の役割を果たすため、議論における大きな2つの論点である「暴行・脅迫や心神喪失・抗拒不能の要件の在り方(不同意性交等罪の創設)」と「いわゆる性交同意年齢の在り方」について、党法務部会が設置した「性犯罪刑法改正に関するワーキングチーム」で見解をとりまとめた上、今国会において党としての方針をとりまとめ、その後の法制審議会における検討を促し、国民的議論に付していくとの姿勢を示されました。
しかしながら、「成人はいかなる理由を持っても中学生以下を性行為の対象としてはならない」という性交同意年齢の引き上げの提案に対して慎重意見が複数寄せられ、全員の合意を得られるものではなかったとされました。その中には、報道で取り上げられた本多議員の発言もありました。
性暴力は「魂の殺人」と呼ばれる犯罪です。性暴力被害の実態にできる限り沿う法改正を重ねることこそが、性暴力被害に苦しむ者を救い、性暴力の根絶につながるものであると考えます。
様々な論点が存在する中であっても、性犯罪刑法改正の早期実現のために、意見の集約という政治の役割を果たそうと「性犯罪刑法改正に関するワーキングチーム」での議論を重ねてこられたわけですから、被害実態や被害者の声を落とし込んだ内容での法改正が実現できるよう、党法務部会としての責務を貫徹いただきたいという強い要望と、報道等で伝えられる発言も含め、ワーキングチームの論議の共有、啓発・研修の実施など、大阪府のジェンダー平等推進委員会として意見をまとめ、本日6月10日付けで、党本部のジェンダー平等推進本部に提出しました。
その内容は、以下の【要望書】のとおりです。
党のジェンダー平等推進本部からは、2021年6月10日付けで、以下の【コメント】が出されました。
「性犯罪刑法改正に関するワーキングチーム」の議論の一部は以下にも記載されています。
【要望書】
2021年6月10日
立憲民主党ジェンダー平等推進本部
大河原 雅子様
ジェンダー平等の確立に向け、被害者の実態に沿う刑法改正を求める要望書
立憲民主党大阪府総支部連合会
ジェンダー平等推進委員会一同
日々のご活動に心より敬意を表し、感謝申し上げます。
2021年5月21日、法務省「性犯罪に関する刑事法検討会」の報告書が公表され、立憲民主党では議論における大きな2つの論点である「暴行・脅迫や心神喪失・抗拒不能の要件の在り方(不同意性交等罪の創設)」と「いわゆる性交同意年齢の在り方」について、立憲民主党の「性犯罪刑法改正に関するワーキングチーム」で見解をとりまとめ、その後の法制審議会において検討を促し、国民的議論に付していくとの姿勢が示されました。
本ワーキングチームでは、「成人はいかなる理由を持っても中学生以下を性行為の対象としてはならない」という性交同意年齢の引き上げの提案に対しては、報道で取り上げられている本多平直議員の発言を含め慎重意見が複数寄せられ、全員の合意を得られるものではなかったことが、「性犯罪刑法改正に関するワーキングチーム中間報告に関する寺田座長意見(2021年6月9日)」として表明されました。そもそも二分される論点が存在しているからこそ、法務部会はワーキングチームを設置し、意見の集約という政治の役割を果たそうとされたわけです。寺田座長は、性犯罪のほとんどは男性が加害者であり、性の同意のあり方も含めて、男性の側が問題意識を持って自らの認識をアップデートしていくこと、男性が主体的に働きかけて、男性の側が変わっていくことが必要であること、特に男性議員を対象とする性犯罪、性被害の勉強会の開催等について、提案されています。
つきましては、下記の通り立憲民主党大阪府総支部連合会ジェンダー平等推進委員会一同より要望しますので、立憲民主党ジェンダー平等推進本部においても下記の意見をご共有いただきますようにお願い申し上げます。
記
1.「性犯罪刑法改正に関するワーキングチーム」の会議録が共有されることを要望する。
2.「座長意見」をしっかりと踏まえ、被害実態や被害者の声を落とし込んだ内容に改正されるよう、党法務部会としての責務を貫徹する。
3.本多議員の発言の有する問題を明らかにするためにも、党における啓発・研修の実施を要望する。
以上
【コメント】
2021年6月10日
立憲民主党ジェンダー平等推進本部
本部長 大河原雅子
本部長代行 徳永 エリ
立憲民主党では、2017年の性犯罪に関する刑法改正で積み残された課題についての議論をすすめるため、今年3月、法務部会のもとに「性犯罪刑法に関するWT」(刑法WT)を設置しました。
刑法WTでは、主に、いわゆる性交同意年齢について議論を行い、本日の政調審議会で「性犯罪刑法改正について」が了承されたところです。
本中間報告において、「中学生以下を性被害から保護するために、成人は、いかなる理由をもっても中学生以下を性行為の対象にしてはならない」ことを明記し、いわゆる刑法における性交同意年齢を現行の13歳未満から16歳未満に引上げることを党として決めました。
ジェンダー平等推進本部は、深刻な社会問題になっている中学生の性被害に関し、中学生本人の自己責任とはせず、保護対象として社会が守るべきと考えます。たとえ恋愛や同意という名のもとであっても、中学生の命と健康と健全な成長こそを優先すべきです。
この「いかなる理由」に例外があるのかが議論される中で、成人と中学生の同意のある性行為について言及があったことが報道されました。「成人は、いかなる理由をもっても中学生以下を性行為の対象にしてはならない」という価値観を、党内に十分に浸透させることができなかったことを深く反省します。
この発言の背後にある、ジェンダー不平等、女性や子どもの尊厳を軽視する態度は断じて許されるものではありません。今後は、党から独立したハラスメント防止対策委員会に、調査が委ねられます。その調査結果を踏まえて党として適切な対応がなされることを強く求めます。
性暴力はすべて、性犯罪として適正に処罰されるべきです。そのために、今後も、立憲民主党は性犯罪に関する刑法改正の検討をかさねていきます。
差別や偏見を否定し、政党としてまっとうな議論を行う環境を確保し、性犯罪被害当事者や支援団体の皆さまの意見を踏まえた刑法改正の実現を目指します。
国の「性犯罪に関する刑事法検討会」報告書の公表を受け、立憲民主党として、性犯罪刑法改正にむけたワーキングチームを設置した際のコメントは以下のとおり。
2021年5月21日
「性犯罪に関する刑事法検討会」取りまとめ報告書の公表にあたり(コメント)
立憲民主党政務調査会長 泉 健太
法務部会長 真山勇一
性犯罪刑法改正に関するWT座長 寺田 学
5月21日に法務省は「性犯罪に関する刑事法検討会」の報告書を公表しました。今後、政府は、性犯罪に関する法改正について法制審議会に諮問する見込みと承知しています。
これまでの法務省内での実態調査・検討会における検討の成果を適切に活用し、更なる法改正へ向けた手続を速やかに進めるよう求めます。
今後開かれる法制審議会の部会においては、性暴力の実態を踏まえた答申を導くために、刑法学者や弁護士等のみならず、性暴力被害者、支援者等からも委員を選任するとともに、丁寧なヒアリングを行うことを強く求めます。
以前から、性暴力被害があるにもかかわらず、性犯罪として捕捉されていない現状に対する不正義を訴える声が多く上がっております。被害の実態にできる限り沿う法改正を重ねることが、性暴力被害に苦しむ方を救い、性暴力自体の減少にも繋がると考えています。
今回の検討会では現行法にない犯罪類型についての議論や、前回の法改正では採用されなかった論点に関して踏み込んだ議論がなされました。結果として両論併記となったものも数多くありましたが、そのような二分される論点であるからこそ、意見の集約という政治の役割を果たす必要があると考えます。まずは、議論における大きな論点である「暴行・脅迫や心神喪失・抗拒不能の要件の在り方(不同意性交等罪の創設)」と「いわゆる性交同意年齢の在り方」に関しては、我が党としては今国会中に見解をとりまとめ、法制審議会における検討を促し、国民的議論に付していきます。
【同意について】
英国のテムズバレー警察署は2015年、「Consent is Everything(同意がすべて)」と題したキャンペーンの一環で、性行為の同意の取り付け方を紅茶の誘い方に例えた動画を制作・公開しています。(http://www.consentiseverything.com/)
「紅茶飲まない?」と聞いた時、相手が「うーん…」と答えたら、紅茶を入れてもいいけれど、飲むことを強要してはいけません。「飲む!」と答えたのに「やっぱりいらない」と言われたら、ムッとしても紅茶を強要してはいけません。先週は紅茶を飲んだからといって、今週も来週もお茶が欲しいとは限りません。セックスでも同じだと分かるでしょ?…といった内容の動画です。
イギリスでは同意のないセックスはレイプとみなされ、相手が同意していたか、相手の同意を得るためにどんな方法を用いたかが問われるとのことです。
【6月11日追記】
立憲民主党の枝野代表は性行為への同意を判断できるとみなす年齢をめぐる党所属の議員の発言が批判を受けていることを踏まえ、調査を外部の第三者機関に委ね、問題の経緯を検証し、再発防止策を検討するという考えを示しています。(6月9日 NHK)
▶ 立民 枝野代表 性行為同意判断めぐる議員発言で外部調査の意向 | NHKニュース
【6月17日追記】
立憲民主党として、6月10日、法務部会から報告のあった「性犯罪刑法改正案について(案)」が了承されました。
これは、法務部会のもとに設置された「性犯罪刑法改正に関するワーキングチーム」が議論を重ね、立憲民主党としての見解をとりまとめたものになります。
ジェンダー平等推進委員会として要請した内容のうち、2の党法務部会としての責務を貫徹いただきたい、については、一定踏まえていただけたということになるでしょうか。
会議録の共有や本多発言の有する問題の可視化については、第三者機関(外部)に調査を依頼していくという枝野代表の発言に基づき、今後どのような取り組みが行われるのかについて注視していきたいと思います。