手話は言語である。「手話でつむぐ住みよいまち 枚方市手話言語条例」が制定されました。4月27日、市議会議員向けの研修が行われました。
枚方市議会議員の奥野みかです。
3月の定例月議会に提案され、枚方市においても「手話でつむぐ住みよいまち 枚方市手話言語条例」が制定されました。(枚方市は380番目の制定)
手話は、文法体系をもち、音声ではなく手指や体の動き、表情を使って視覚的に表現をする「言語」であり、ろう者に必要な「言語」として欠かすことができない重要なものになっています。2006年12月の国際連合総会で採択され、我が国も批准(2014年)している「障害者の権利に関する条約」において、「言語」は「音声言語及び手話その他の形態の非音声言語をいう。」と定義され、障害者基本法(2011年8月)において、手話は「言語」として位置付けられたことも踏まえ、市として、条例制定や手話によるコミュニケーション支援の取り組みを進めていかれるとのことです。
5月1日号の枚方市議会報(332号)に掲載された審議の内容です。
私は質疑の中で、「手話は言語であること」の周知や啓発の推進を要望しました。言語であるということは、外国人にとっての母語を考えるとわかりやすいと思うのですが、手話は、その人がその人らしく安心して生きていくために必要な言葉、それがないと生きていけない、不可欠な言葉であるということです。そして、ろう者が手話によるコミュニケーションを図る権利があるということ、それらのことを周知し、理解を求めていくということは、すべての人が安心して暮らせるまちをつくるという観点からも、誰一人取り残さないという観点からも非常に大切であるということをしっかりと周知していかなければならないと考えています。
質疑では、審議会や意見聴取での要望が多かったと聞く「病院における手話通訳」についての具体的な取り組みについても確認しました。医療機関向けのリーフレットを作成し、遠隔手話通訳を含む手話通訳対応への理解とろう者への理解が図れるよう、市内医療機関へ配布するとの回答を得ています。市の丁寧な取り組みの推進に期待します。
3月定例月議会(3月9日)の議案審議の内容は以下に掲載しています。私の議案審議のやりとり(※こちらをクリック)及び制定された「手話でつむぐ住みよいまち 枚方市手話言語条例」(※こちらをクリック)について、このページの下部にも記しています。
さて、4月27日には、「手話でつむぐ住みよいまち 枚方市手話言語条例と聴覚障害者への対応について」とテーマに、枚方市議会議員研修会が行われました。講師は、健康福祉部福祉事務所の障害福祉担当職員。緊急事態宣言の出ている中でしたが、感染予防対策を行い、議員のみの出席で行われました。
はじめに、手話言語条例の意義や制定に至った経緯の説明があり、制定された条例の内容については、概要版をもとに説明していただきました。条例には、「市の責務」も明記され、「事業者の役割」「市民の役割」も示されています。
障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)に基づく合理的配慮についても説明がありました。差別=「不当な差別的取扱い」+「合理的配慮の提供をしないこと」で、差別を解消するためには、不当な差別的取扱いを禁止するとともに、合理的配慮の不提供を禁止することが求められています。
合理的配慮については、障害者から何らかの助けを求める意思の表明があった場合、過度な負担になり過ぎない範囲で、「社会的障壁」を取り除くために必要な便宜のこと、建設的な対話をもってできるところまで個別対応を行うこと、負担になりすぎない範囲でその人に合った対応を行うこと、と説明されていました。
障害者差別解消法については、大阪府作成のガイドライン(解説編)にわかりやすく示されていますので、下記に引用しています。「大阪府障がい者差別解消ガイドライン(第3版)」の本編と概要版も下記に引用していますので、参考にしてください。
「聞こえない人(聴覚障害者)への対応」では、聴覚障害の原因(先天的か、後天的か)や種類(伝音性難聴か、感音性難聴か)、時期(音声言語を習得する前に失聴したのか、音声言語を獲得した後に聞こえなくなったのか)等、聞こえなくなった状況によってもその人への対応が異なることの説明がありました。
ろう(あ)者:音声言語を習得する前に失聴した人で、そのため手話を第一言語としている人がほとんど。
難聴者:聞こえにくいけれど、まだ聴力が残っている人。補聴器を使って会話できる人から、わずかな音しか入らない難聴者までさまざま。
中途失聴者:音声言語を獲得した後に聞こえなくなった人で、まったく聞こえない中途失聴者でも、ほとんどの人は話すことができる。
例えば、中途失聴者であれば、失聴の時期にもよると思いますが、手話よりも要約筆記の方がコミュニケーション手段としては有効である等、それぞれの特性があるので、その人に合った対応をともに考えることが求められると思います。
その後、聴覚障害のある職員が簡単な手話実演を行ってくれましたが、彼は先天的な聴覚障害なので、生まれてから音を聴いたことがない、音声言語に触れたことがないと説明されていました。彼にとっては、手話が第一言語、まさに手話が生きるための言語となっていると思います。
最後は、病院での受診を例にした「遠隔手話通訳サービス」のデモンストレーションでした。枚方市では、今年4月から、「遠隔手話通訳サービス」が始まっています(土日祝含め、9時から17時半まで)。画面を通しての限界はあると思いますが、タブレットの普及、通信技術の進展がコミュニケーション支援につながっていることを実感しました。この他に使えるサービスとして、「電話リレーサービス(TRS)」の説明もありました。
ICT技術の進展により、さまざまな道具やツールが調達されても、「手話は言語である」「それがないと困る」という意識があるかないか、理解があるかないかで取り組み姿勢が変わってくると思います。行政の各種窓口や学校、医療機関での受診時など、手話通訳を依頼されることが多いと思いますので、関係機関・医療機関への実効性のある周知・啓発を、まずは、しっかりと進めていただきたいと思っています。
制定された条例がしっかりと機能するよう、「連合市民の会」としても支援していきます。
※議案第130号に対する私の質疑のやりとりは次のとおりです。
◆議案第130号 手話でつむぐ住みよいまち枚方市手話言語条例の制定について
Q.私の質問
ただいま提案のあった議案第130号について、質問させていただく。
手話は言語である。外国人にとっての母語もそうだと思うが、手話は、その人がその人らしく安心して生きていくために必要な言葉、それがないと生きていけない、不可欠な言葉であるということ、そして、ろう者が手話によるコミュニケーションを図る権利があるということ、それらのことを周知し、理解を求めていくということは、すべての人が安心して暮らせるまちをつくるという観点からも、誰一人取り残さないというSDGsの観点からも非常に大切であると考える。
そこで、確認するが、市は、この条例の制定により、どのようなことを、どのように市民に周知していこうと考えているのかについて、伺う。また、「病院における手話通訳」は、審議会や意見聴取での要望が多かったと聞くが、具体的にどのような取り組みを考えているのか、伺う。
A.健康福祉部長の答弁
この条例により、手話は言語であり、コミュニケーション手段であり、文化を創造するために重要かつ不可欠なものであることなど、手話及びろう者に対する理解を深めることにより、すべての人が安心して住みよいまちを実現することを目的とするものであることを広く市民に周知を図るものである。
周知については、ホームページやSNSにおいては手話動画を付けて発信するほか、広報への掲載やリーフレット作成にも取り組む。
また、特に、病院における手話通訳については、ろう者が手話通訳を依頼されることが最も多いことから、医療機関向けのリーフレットを作成し、遠隔手話通訳を含む手話通訳対応への理解とろう者への理解が図れるよう、市内医療機関へ配布する予定である。
Q.私の意見
スマホやタブレット端末を利用し、手話オペレーターによる手話通訳を受けることができる「遠隔手話通訳サービス」など、ICTの活用による非接触の取り組みも進んでいるようだ。しかしながら、道具やツールが調達されても、手話通訳を依頼されることが多い行政の各種窓口や学校、医療機関での受診時など、「手話は言語である」「それがないと困る」という意識があるかないか、理解があるかないかで取り組み姿勢が変わってくると思われるので、関係機関・医療機関への実効性のある周知・啓発を、まずは、しっかりと進めていただきたいと思う。
また、市の責務として、第4条に「総合的かつ計画的な施策の推進」が掲げられているが、社会福祉審議会窓外福祉専門分科会で進捗管理を行うとの答弁であった。障害者計画には、要約筆記など、それぞれの障害特性に応じた取り組みの充実についても記載されているが、手話によるコミュニケーション支援の具体的な取り組みの進捗管理についても、しっかりと行っていただくようお願いする。事業者の合理的配慮についての質問もあったが、よりよい方策をともに考えるという視点を踏まえながら、市民及び事業者による合理的配慮の提供を支援する公的な仕組みについても検討いただくことを要望しておく。
「手話でつむぐ住みよいまち」、親しみやすくわかりやすいようにとの説明であったが、とてもよい響きだと思う。この条例の制定により、手話によるコミュニケーション支援の取り組みが確実に推進され、障害のある人もない人もすべての人が互いを尊重し合いながら、安全に、安心して暮らしていくことができるまちとなることを強く要望して、私からの意見とさせていただく。
※手話でつむぐ住みよいまち 枚方市手話言語条例は次のとおりです。
◆手話でつむぐ住みよいまち 枚方市手話言語条例(枚方市条例 第3号)
手話は、文法体系をもち、音声ではなく手指や体の動き、表情によって視覚的に意思を表現する言語であり、ろう者が自ら工夫して作り上げた、情報の獲得とコミュニケーションの手段であり、知識を蓄え、文化を創造するために重要かつ不可欠なものになっています。
しかしながら、これまで手話が言語として認められてこなかったことや、手話を使用することができる環境が整えられてこなかったことから、ろう者は、十分なコミュニケーションを図ることや必要な情報を得ることができず、多くの不便や不安を感じながら生活をしてきました。
こうした中で、平成18年に国際連合総会で採択され、我が国も批准している障害者の権利に関する条約において、言語は、「音声言語及び手話その他の形態の非音声言語をいう。」と定義され、障害者基本法(昭和45年法律第84号)において、手諦は、言語として位置付けられました。
市は、市民及び事業者が「手話は言語である」ことを認識し、手話に対する理解を深め、手話によるコミュニケーションを図ることができるよう、手話に対する理解とその普及を促進し、ろう者はもとより、障害がある人もない人も全ての市民が互いに支え合い、尊重し合いながら、心豊かに、安心して、地域の中で自立して生活し、あらゆる社会生活に参加し、いきいきと活動できる住みよいまちの実現をめざして、この条例を制定するものです。
(目的)
第1条 この条例は、手話が言語であるとの認識に基づき、手話に対する理解及びろう者に対する理解の促進についての基本理念を定めるとともに、市の責務並びに市民及び事業者の役割を明らかにしくもって全ての市民が互いに支え合い、尊重し合いながら、心豊かに、安心して、地域の中で自立して生活し、及びあらゆる社会生活に参加し、いきいきと活動できる、住みよいまちの実現を目的とする。
(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定める~ところによる。
(1) ろう者手話を主なコミュニケーションのための手段として用いる市民をいう。
(2) 市民市内に在住し、在職し、又は在学する者をいう。
(3) 事業者市内で事業を営む個人又は法人その他の団体をいう。
(基本理念)
第3条 手話に対する理解及びその普及の促進は、手話が言語であること及びろう者が手話によるコミュニケーションを図る権利を有することを前提とし、第1条の目的の達成に資するものであることを基本として行われなければならない。
(市の責務)
第4条 市は、前条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、手話に対する理解及びその普及並びにろう者の社会参加の促進を図るため、総合的かつ計画的な施策(以下「手話に関する施策」という。)を推進するものとする。
2 市は、学校その他の場所における学びの機会を捉え、手話に対する理解及びろう者に対する理解の促進を図るものとするb
3 市は、ろう者、手話通訳者その他の手話に関わる活動に携わる者と協力して、市民が手話を学ぶ機会を確保するものとする。~
4 市は、ろう者が乳幼児期からその保護者等とともに手話に親しむことができるよう支援するものとする。
5 市は、手話に対する理解及びろう者に対する理解を深めるための市民及び事業者の取組を支援するものとする。
(市民の役割)
第5条 市民は、基本理念にのっとり、手話に対する理解及びろう者に対する理解を深め、手話に関する施策に協力するよう努めるものとする。
(事業者の役割)
第6条 事業者は、基本理念にのっとり、手話に対する理解及びろう者に対する理解を深め、手話に関する施策に協力するよう努めるとともに、ろう者が利用しやすいサービスを提供するよう努め、及びろう者が働きやすい環境を整えるよう努めるものとする。
(意見聴取)
第7条 市は、手話に関する施策の実施に当たっては、ろう者、手話通訳者その他の手話に関わる活動に携わる者から意見を聴くものとする。
(委任)
第8条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。
附則[令和3年3月15日公布]
この条例は、公布の日から施行する。