新型コロナウイルス感染症が拡大するなか、感染者に対する人権侵害を誘発しない感染症対策の推進について、そして、秋冬に向けて、インフルエンザ等との複合的流行を見据えた地域における診療体制の確立に向けた取組についての質問しました。6月定例月議会、一般質問の報告①です。

2020/06/23

6月22日に行われた6月定例月議会の一般質問において、私は7つの観点から質問させていただきました。

まずは、「1.感染者に対する人権侵害を誘発しない感染症対策の推進について」「2.インフルエンザ等との複合的流行を見据えた地域における診療体制の確立に向けた取組について」の報告です。

新型コロナウイルス感染症の感染拡大の中、恐れるべきは感染した「人」ではなく「ウイルス」であるにもかかわらず、この病気が感染症であることから、社会不安を増大させ、感染者、医療従事者等に対する不当な差別やさまざまな人権侵害事象が見られました。「感染者に対する人権侵害を誘発しない感染症対策の推進について」の質問では、保健所長から、現在の感染症法の理念は「人権への配慮」であること、そして、誰しもがあらゆる感染症の当事者になることを意識し、行政が中心となって感染症に関する正確な知識の普及に努めることが大切であるとのお答えをいただきました。
また、「インフルエンザ等との複合的流行を見据えた地域における診療体制の確立に向けた取組について」では、初期の診療・検査体制をどのように構築する考えなのか、発熱を伴う呼吸器疾患の診療体制に関する「基本的な方向性」について質問し、保健所長から、特定の医療機関に集中させず、市民のかかりつけである一般医療機関において十分な感染対策をとった上で診療できる体制が本来の地域医療の在り方であり、それぞれの医療機能に合わせた診療体制がとれるよう進めていくことが必要とのお答えをいただきました。

いわれのない差別や攻撃を受けることなく、重症にならないうちに的確に治療を受け、新型コロナ肺炎で命を奪われる者が出ないようにするためには、まだまだ未知の部分は多いとはいえ、症例に応じた素早い検査・診断・治療がうけられる適切な検査・治療体制を確立することが重要で、人権侵害を誘発しない感染症対策としては、「普通」の医療を「粛々と」迅速かつ的確に提供する地域における診療体制の確立に力を注いでいただくことが重要であると意見しました。


 

この質問を通して、私が伝えたかったことは、未知のウイルスであるという恐れ(不安)、一人の感染者も出してはいけないというゼロリスクを求めることが人権侵害につながるのではないか(差別)、そして、この新型コロナウイルス感染症対策で特に重要なポイントは症例に応じた素早い検査・診断・治療が受けられるということ(病気)です。だからこそ、「普通の医療提供対応を粛々と行うことができる」地域における診療体制の確立が重要であると考えます。

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以下、6月22日の一般質問のやりとりを掲載します。

1.感染者に対する人権侵害を誘発しない感染症対策の推進について

Q.私の質問
新型コロナウイルス感染症の感染拡大の中、恐れるべきは感染した「人」ではなく「ウイルス」であるにもかかわらず、この病気が感染症であることから、社会不安を増大させ、感染者、医療従事者だけではなく、その家族や近隣の人に対しても不当な差別やさまざまな人権侵害事象が見られるという大きな問題を生んでいると思われる。病気を理由に人を差別したり、職業や属性で排除したりすることは絶対に許容することができない。
また、行政による外出や営業などの自粛要請に応じない個人や商店などに対して、偏った正義感や嫉妬心、不安感などから、私的に取り締まりや攻撃を行うという現象も数多く見られた。
そこで、一般的な人権意識の問題ではなく、感染病対策に伴う固有の課題として、このような現状を市はどのように捉えているのか、伺う。

A.保健所長の回答
感染症については、感染者と自分の距離をおくことや排除することで感染を避けたい、安心感を求めるがあまり、当事者の人権に配慮するという視点が後回しにされ、感染者や医療従事者やその家族などに対する誤解や偏見が生じ、差別事象につながったと考えられる。
また、コロナウイルス感染症は、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」による二類感染症相当の指定感染症とされたことにより、入院勧告や公費による医療の提供、就業制限などの措置が取られている。このような措置が取られることによって、適切な医療を受けていただくことが可能となる反面、恐ろしい病気として「強い不安」を抱かれる方もおられることは認識している。
現在の感染症法の理念は、人権への配慮であり、人権より隔離を優先させた過去の教訓を行政や医療者のみならず、国民も学ばなければならないとされ、誰しもがあらゆる感染症の当事者になることを意識し、行政が中心となって感染症に関する正確な知識の普及に努めることが大切と考えている。

Q.私の質問
今後の流行に備えた感染対策において、感染者に対する人権侵害を誘発しない感染症対策とするため、市としてどのようなことに留意すべきと考えているのか、伺う。

A.保健所長の回答
次の流行に備え、病院や医師会等、市内の医療機関へ向け、感染予防や医療に関する助言などをおこない、市民が受診や検査、治療へのアクセスをできるだけスムーズになるよう地域医療の体制整備に取り組む必要があると考える。
特定の集団や地域に風評被害が及ばないよう、誹謗中傷が起こらないよう、啓発を行っていく。

O.私の意見
「誰しもがあらゆる感染症の当事者になる」とのご答弁である。ウイルスは人を選ばない。どのような人にも感染のリスクがあるわけだ。これが科学的な知見であるにもかかわらず、極端なクラスター対応型の感染症対策が過度に焦点化されると、「道徳的な意味」を優先させてしまい、犯人捜しとバッシングを促してしまうという危険性をはらむ。それは、油断をしたり、落ち度があったり、軽はずみな行動を取ったことにより感染したという自己責任論に基づく偏ったイメージを流布してしまうからではないか。
その結果、本来、社会や医療が守らなければならない感染者が、「逸脱者」や「疫病神」のように、誹謗中傷、攻撃の対象となってしまう。そんな恐ろしい事例もみられた。
「一人の感染も出してはいけない」という倫理が強くなると、新型コロナウイルス患者の受入れは、医療機関にとって、医学的にというだけでなく倫理的にもリスクになる。
新型コロナウイルスそのものではなく、社会が求めるゼロリスクが医療崩壊を引き起こすのではないか。感染の危険性や感染者をゼロにするという志向で取り組みを進めるのは、人権侵害の素地を作っているようなものだと思う。
今後の新型コロナウイルス感染症対策で特に重要なポイントは、いわれのない差別や攻撃を受けることなく、症例に応じた素早い検査・診断・治療がうけられることであると思う。恐怖心をあおることなく、重症にならないうちに的確に治療を受け、新型コロナ肺炎で命を奪われる者が出ないようにすることが重要だと思う。
第2波・第3波の到来に備えて、市民の命を守るため、いま、一番大切なことは、適切な検査・治療体制を確立することであると意見し、次の質問に移る。

 

2.インフルエンザ等との複合的流行を見据えた地域における診療体制の確立に向けた取組について

Q.私の質問
秋から冬にかけて、普通の風邪、インフルエンザ、新型コロナ肺炎など、さまざまな病気で類似症状のある患者が大量に出現することが予測される。市立ひらかた病院をはじめとする複数の医療機関で「発熱外来」が設置されているが、初期の診療・検査体制をどのように構築する考えなのか、発熱を伴う呼吸器疾患の診療体制に関する「基本的な方向性」について、見解を伺う。

A.保健所長の回答
特定の医療機関に集中させず、市民のかかりつけである一般医療機関において十分な感染対策をとった上で診療できる体制が本来の地域医療の在り方であり、すでに多くの医療機関では、発熱や感染症が疑われる患者さんと動線を分ける工夫をされている。それぞれの医療機能に合わせた診療体制がとれるよう進めていくことが必要と考えている。

Q.私の質問
今後、地域における診療体制の確立に向け、医師会や市内の病院とどのように協議していくのか、伺う。
その際、各診療所・病院に対する支援、迅速・適切な診断のための抗原検査・PCR検査の実施は可能になるとお考えか、伺う。

A.保健所長の回答
現在までも枚方市医師会や枚方市病院協会とは随時意見交換を重ねている。今後も連携して次の流行に備えていく。検査体制の充実については、新型コロナウイルス感染症の検査を自院または民間の検査所で実施可能な医療機関を増やしていくよう協力を求めていく。

O.私の意見
新型コロナウイルス感染症に対する医療は、当初、未知のウイルスであるがゆえに「普通」の医療提供対応を「粛々と」できなかったことが課題であったのではないか。いま、次の対策を検討できるこの時間を使って、市民の命を守るための良質かつ適切な検査・治療体制、すなわち、「普通」の医療を「粛々と」迅速かつ的確に提供することに立ち返る体制を整備することが必要である。それを怠ると、秋から冬にかけて始まるさまざまな呼吸器疾患の流行とともに増加する患者への対応が大混乱することになってしまう。
また、「普通」の医療提供対応を「粛々と」行うことが、人権侵害を誘発しない感染症対策のための重要なポイントであることも再度意見しておく。

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