どこに住んでいるかという偶発的な事情によって、同じ被害に遭いながら自治体による支援を受けられない被害者が発生する事態も顕在化。犯罪被害者等支援条例の制定は、最優先の課題。犯罪被害者等支援の現状について、質問しました。12月定例月議会、一般質問の報告⑤です。

2023/12/18

枚方市議会議員の奥野みかです。

ここでは、「5.犯罪被害者等支援の現状について」の報告です。

犯罪被害者や遺族は、ある日、突然、悲しみや困難に直面します。それは、予測不能です。

「大阪市北区で発生した放火殺人事件においては、さまざまな居住地に住む多数の被害者が生じたことにより、被害者の居住地という偶発的な事情によって、同じ被害に遭いながら自治体による支援を全く受けられない被害者が発生する事態が顕在化している。それゆえ、市町村レベルにおける犯罪被害者等支援条例の早期の制定は、最優先の課題として取り上げられるべき施策である」と、大阪弁護士会からの強い訴えも届いています。

同じ被害に遭いながら自治体による支援を全く受けられないことのないよう、まずは、犯罪被害者等を支援するための条例を早急に制定し、具体的な支援施策を検討されるよう要望しました。

 


 

以下、12月18日の一般質問でのやりとりを掲載します。

5.犯罪被害者等支援の現状について

Q.私の質問

大阪市北区で2年前に26人が犠牲となった心療内科クリニックの放火殺人事件もきっかけとなり、「犯罪被害者や遺族に支払われる国の給付金について見直し議論が進んでいる」、「国の給付金は3種類。自治体の施策には地域差も」、「自治体が条例を設け、支援金を出したり、弁護士費用を補助したりしているが、地域によってばらつきがある」と、昨日の朝日新聞が報じていた。
犯罪被害者に対する支援について問い合わせたところ、「枚方市では犯罪被害者支援は行っていない」と返されたと言われる弁護士さんから、「他の自治体に住んでいれば支援を受けられたかもしれないが、枚方市に住んでいると支援を受けられないということになりはしないか。誰もが被害者になる可能性がある中で、被害者支援の制度がないということは、誰もが市から見捨てられるかもしれないということである。」との指摘を受けた。
そこで、犯罪被害者に対して、市が行っている支援について、伺う。

A.新内危機管理部長の答弁

犯罪被害者に対する相談・支援については、人権なんでも相談において相談をお受けしている。また、ご本人が大阪府の窓口に、直接相談された場合は、大阪被害者支援アドボカシーセンターから市へ連絡があり、同センター職員や府及び市の職員、警察、弁護士等で構成する支援調整会議で、それぞれの立場から支援できる内容を検討しているところである。
ご相談をお受けする際は、相談者のニーズや求めている情報を丁寧に確認するとともに、被害を受けられた心情を踏まえ、安心して相談していただけるよう、適切に対応を行っていく。

Q.私の質問

犯罪被害者や遺族は、ある日、突然、悲しみや困難に直面する。予測不能であるわけである。「枚方市_犯罪被害者支援」とインターネットで検索したが、支援者であってもよくわからなかったというお声もお聞きしたが、条例が制定され、窓口が明確になれば、市に相談すればどんな支援を受けられるのかがわかりやすくなり、被害者の負担は軽減されるのではないか。

先行する兵庫県明石市においては、2011(平成23)年施行の条例はすでに複数回の改正が行われ、今年4月には「明石市犯罪被害者等の権利及び支援に関する条例」と、名称に「権利」が加わるという改正も行われているが、「あかし被害者基金条例(2020(令和2)年4月施行)」という独自の財政的裏付けを基に、具体的な支援サービスに応じた各給付金の支給等の支援も行っておられるようである。
枚方市議会としても、犯罪被害者支援の充実を求める意見書を2020(令和2)年12月22日付けで国に提出している。大阪弁護士会からは、2022(令和4)年3月25日付けで大阪府下のすべての市町村に犯罪被害者等支援条例の制定を求める要望書が提出されている。
そこで、犯罪被害者等支援条例の制定について、市の見解を伺う。

A.新内危機管理部長の答弁

犯罪被害者に特化した支援条例の制定は現在のところ考えていないが、犯罪被害者が安心して相談ができ、適切な支援が受けられる体制の構築は重要であると認識している。
今後、他の自治体の動向を注視しながら、引き続き、大阪府犯罪被害者等支援条例のもと大阪被害者支援アドボカシーセンター等と連携し、必要となる各種支援を行っていく考えである。

O.私の意見・要望

2023(令和5)年10月現在、府県条例がある上で、京都府、奈良県、兵庫県はすべて、滋賀県は18/19、和歌山県は21/30の市町村で犯罪被害者等支援条例が制定されている。大阪府については、大阪府が2019(平成31)年に犯罪被害者等支援条例を制定した後に、大阪市が2020(令和2)年に犯罪被害者支援条例を制定しているが、市町村の制定は約2割(9/43)とのことである。

「大阪府条例がある」「まずは大阪府と連携した支援を考えている」と過去にも答弁されており、今回も「犯罪被害者に特化した支援条例の制定は現在のところ考えていない」とのご答弁である。大阪府人権尊重の社会づくり条例が制定されているなか、枚方市人権尊重のまちづくり条例が制定され、現在、改訂作業も進められている。犯罪被害者等に対する具体的支援の法的根拠を明らかにし、市町村における支援の継続性・永続性を担保するためには、犯罪被害者等支援に特化した条例が必要であり、そのことによって、支援にあたる行政職員や地域住民の意識向上にもつながるのではないか。

大阪弁護士会からの要望では、「大阪市北区で発生した放火殺人事件においては、さまざまな居住地に住む多数の被害者が生じたことにより、被害者の居住地という偶発的な事情によって、同じ被害に遭いながら自治体による支援を全く受けられない被害者が発生する事態が顕在化している。それゆえ、市町村レベルにおける犯罪被害者等支援条例の早期の制定は、最優先の課題として取り上げられるべき施策である。」との強い訴えもある。「他の自治体の動向を注視」とのご答弁であるが、同じ被害に遭いながら自治体による支援を全く受けられない枚方市民のことを想定していただきたい。
本市においても、犯罪被害者等を支援するための条例を早急に制定し、具体的な支援施策を検討されるよう要望しておく。

 

 


【参考】

犯罪被害者等基本法(2004年)

▶ 犯罪被害者等支援関連施策集(2022)

大阪府犯罪被害者等支援条例(2019/4/1)

大阪府犯罪被害者等支援に関する指針(2020改訂)

川崎市犯罪被害者等支援条例の運用状況について

明石市犯罪被害者等の権利及び支援に関する条例(2023年3月30日改正)

あかし被害者基金条例(2020年4月)

明石市犯罪被害者等の権利及び支援に関する条例に基づく支援策の概要

▶ 犯罪被害者支援の充実を求める意見書

▶ 大阪府下のすべての市町村に犯罪被害者等支援条例の制定を求める要望書(大阪弁護士会、2022/3/25)

▶ 犯罪被害者等補償法制定を求める意見書(日本弁護士連合会、2023/3/16)

  犯罪被害者等施策(警察庁

▶ 市区町村における犯罪被害者等支援を目的とした条例等の制定状況(2023年4月1日現在)

 

 

 

▶ 大阪府下自治体レベルの犯罪被害者等支援条例の制定状況(2023年10月現在、大阪弁護士会資料)

▶ 地方公共団体における犯罪被害者等を対象とした見舞金の制度(2022年4月1日現在/都道府県)

▶ 地方公共団体における犯罪被害者等を対象とした見舞金の制度(2022年4月1日現在/市区町村)

(※一部抜粋)

 


【参考】

犯罪被害者や遺族に支払われる国の給付金について見直し議論が進んでいます。きっかけの一つは、2年前、大阪市北区で26人が犠牲となった心療内科クリニックの放火殺人事件。被害者の多くが休職中や無職で、収入がなければ給付額が低くなる算定方法の見直しを遺族らは求めているとのこと。関連記事を下記に掲載します。

▶ (いちからわかる!)犯罪被害者・遺族の支援、どんな制度がある?(2023/12/17)

▶ (時時刻刻)犯罪被害、日常取り戻したいのに 死亡給付金、復職目指していた夫は「無職」扱い(2023/12/17)

▶ 時時刻刻【そもそも解説】国の犯罪被害給付、地下鉄サリン事件など経て改善(2023/12/16)

▶ 時時刻刻「命の価値を収入で決めないで」犯罪被害者支援、見直し議論の現在地(2023/12/16)

▶ 犯罪被害者を支援する条例制定を訴え(2023/12/4)

 


【追加】

▶【ツイセキ】加害者から支払われない「賠償金」 終わらない犯罪被害者の苦しみ 背景に『強制力がない』損害賠償の実態 支援制度に早急な改善を【関西テレビ・newsランナー/2023年12月21日放送】

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