妊娠期からの切れ目のない相談支援体制の充実強化は、虐待の発生予防のためにも重要。産後1年までの産前・産後ケア事業として、地区担当保健師のみならず、担当助産師も支援する仕組みの構築を。困難な状況にある妊産婦の支援について、質問しました。6月定例月議会、一般質問の報告③です。
枚方市議会議員の奥野みかです。
ここでは、「3.困難な状況にある妊産婦の支援について」の報告です。「生まれる」に着目しました。
妊娠期からの切れ目のない相談支援体制の充実強化は、虐待の発生予防のためにも非常に重要です。妊娠期から支援が必要な特定妊婦や出産直後から支援が必要な家庭については、「困難な状況」にあるのか「困難な状況となるリスク」を抱えているのか等のアセスメントが行われ、関係機関等で支援の方向性を共有し、連携を図ることで産後も切れ目なく支援できるよう体制を構築しているとの説明でした。
単身妊婦や家族のサポートがない妊婦は孤独感や不安を抱えやすく、支援につながりにくい状況があります。また、予期しない妊娠・計画していない妊娠等、妊娠葛藤のSOSに対する相談を受け止めるためには、若年層の生活圏を意識した多角的な支援も必要になってくるのではないかと考えます。
地域コミュニティや地域の助産院、ボランティア団体との連携を強化し、さまざまな支援ネットワークを構築することにより、さまざまな困難を抱えた妊産婦が社会的に孤立しないよう、また、多様な妊産婦が気軽に相談できるような環境整備にも取り組んでいただきたいと要望しました。
また、妊産婦が本当に大切な出来事である「出産」をしっかりと受け止められるよう支援いただくためにも、産後ケア事業は、産前・産後ケアに認識を変えていただき、地区担当保健師とともに、「出産」のスペシャリストである助産師が担当する仕組みも導入して、異なる専門職が、それぞれの専門性を生かしながら、妊娠期から産後1年になるまでをフォローする産前・産後ケア体制の整備も検討いただきたいと要望しました。
以下、6月24日の一般質問でのやりとりを掲載します。
3.困難な状況にある妊産婦の支援について
Q.私の質問
予期せぬ妊娠や計画していない妊娠、10代での若年妊娠や、外国人妊婦、障がい・疾病のある妊婦など、妊婦の「困難」や「リスク」を、市はどのように把握されているのか、伺う。
また、どのような状況にある妊婦を、支援が必要な「特定妊婦」と認識して対応しているのかについても、伺う。
A.田中子ども未来部長の答弁
困難な状態にある妊婦の把握については、妊娠届出時の面接が最も多く、その他としては低所得妊婦の初回受診助成事業や医療機関等の関係機関からの連絡、家族や本人からの連絡等で把握している。
次に、把握した妊婦との面接において、心身の健康状態、生活環境や背景、経済状況、身近な支援の状況なども踏まえた多角的な視点から状況を確認し、妊婦が出産や産後の育児について「困難な状況」にあるのか「困難な状況となるリスク」を抱えているのかについてアセスメントを行う。その上で計画を立てて支援を行うことになるが、様々な要因の程度や重複により、特定妊婦として支援を必要とすると判断した場合に、要保護児童対策地域協議会に報告し、関係機関等で支援の方向性を共有し、連携を図ることで産後も切れ目なく支援できるよう体制を構築している。
O.私の意見・要望
2023年度、妊娠届出 2,394件のうち、妊娠届出時に行われる保健師もしくは助産師による面談はほぼ 100%で、「妊娠届出以降、伴走型支援や妊産婦健診、助産師による訪問等から支援が必要と思われる妊産婦を把握した場合は、地区担当保健師につなげ、継続的に支援している」との説明も受けている。
また、妊娠6か月時に全対象者に実施しているアンケートの回答率は 54%で、アンケートにより新たに支援の必要性を確認し、保健師や助産師が電話やオンライン面談、家庭訪問を行うケースもあるようである。
担当の保健師や助産師につながれば、計画的な支援を受けることができ、産後までの切れ目のない支援も期待できるということであると思う。
しかし、社会の中には、10 代での若年妊娠や、思いがけない妊娠、性被害により妊娠に至ったケースなど、妊娠したことを誰にも相談できないでいる妊婦が少なくない。妊娠していることを誰にも打ち明けられないまま孤立し、また気付かれないまま、妊娠が進行してしまうと、病院で必要な検査を受けられず、行政などの適切な支援も得られぬまま、孤立出産に至るということもある。子どもの虐待死のケースでは、0 歳児の中でも、とりわけ生まれたその日(日齢0日)に亡くなる子どもの割合が多いとも言われている。
Q.私の質問
そこで、特に妊娠届出を提出されていない妊婦にはどのような相談支援の方法があるのか、また、その実績についても伺う。
A.田中子ども未来部長の答弁
妊娠届出をされていない妊婦については、大阪府立病院機構大阪母子医療センターが運営する「にんしんSOS」が、通話やLine、LINEコール、メールで無料相談を受け付けており、10代や学生からの相談も多いと聞いている。
加えて、本市においては、2023(令和5)年度から開始した低所得妊婦を対象とした初回産科受診料の補助を開始しており、2023(令和5)年度は11件の利用があった。本事業においても、必ず保健師による面接を行っており、妊娠届出前に支援を開始する貴重な機会となっている。
O.私の意見・要望
大阪府での事例をご紹介いただいたが、妊娠SOSの相談窓口はあまり周知もされておらず、量的にも不足しているのではないかと思う。「妊娠葛藤」を抱える女性に妊娠SOSの相談窓口にたどり着いていただき、そこでつながった支援を切らさぬよう確実に必要な支援に結びつける体制が、本市においても、どうか十分に整備されるよう、要望しておく。
Q.私の質問
次に、特定妊婦として支援を必要とすると判断した場合は、産後も切れ目なく支援できるよう体制を構築しているとのご答弁があった。
そこで、特定妊婦、また、ハイリスク妊婦として把握された方について、出産時、そして産後において行われる切れ目のない支援の具体的な内容と、現時点での課題認識について伺う。
A.田中子ども未来部長の答弁
特定妊婦として支援する方については、出産までに出産医療機関や福祉部門等と連携し、産後を見据えた役割分担を確認するとともに、地区担当保健師が妊婦や妊婦の家族と面接や訪問を重ねて、安心安全な出産が迎えられるよう支援を行っている。そして産後は速やかに地区担当保健師や児童福祉担当がご本人と面談し、訪問を重ねるなどして今後の子どもとの生活への思いに寄り添いながら、産後ケア事業や家事育児支援など様々なサービスの情報提供を行い、継続的に支援を行う。
課題としては、社会的背景やライフスタイルの多様化に伴い、様々なご事情を抱えながら転居を繰り返されたり、妊娠届出をされずに出産を迎える方がおられる状況である。妊娠の継続に迷われる方や産後の生活にご不安がある方などが孤立しないように、様々な支援にアクセスできるよう相談窓口などの周知に努めているところである。
O.私の意見・要望
出産直後は母体の回復と新生児のケアが重なり、母親にとって非常に負担の大きい時期である。孤独感や不安、産後うつなどの心理的な問題に直面しやすい時期になる。「産後ケア事業や家事育児支援など様々なサービスの情報提供を行い、継続的に支援」というのであれば、予算特別委員会でも要望したが、助産院として取り組むことが持続可能であるような産後ケア事業の仕組みやコストを検討いただきたいと改めて要望しておく。
また、本当に大きな出来事である「出産」をしっかりと受け止められるよう支援いただくためにも、産後ケア事業は、産前・産後ケアに認識を変えていただき、地区担当保健師とともに、寝屋川市が実施している「マイ助産師制度」のような担当助産師の仕組みを導入して、異なる専門職が、それぞれの専門性を生かしながら、妊娠期から産後1年間をフォローする産前・産後ケア体制の整備も検討いただきたいと思う。
単身妊婦や家族のサポートがない妊婦は、孤独感や不安を抱えやすく、支援につながりにくい状況がある。地域コミュニティや地域の助産院、ボランティア団体との連携を強化し、さまざまな支援ネットワークを構築して妊産婦が社会的に孤立しないよう、妊産婦が気軽に相談できる環境整備に取り組んでいただきたいと思う。特に、外国人妊婦や障がいのある妊婦は、言語やコミュニケーションの障壁により、適切な情報を得ることが難しい場合もあると思うので、必要な情報にアクセスできるよう対応をお願いしておく。
▶ 異次元の子育て支援は、まずは地域に根付く産後ケア事業の充実から。3月21日、予算特別委員会4日目(総論及び市民福祉・建設環境部門)は、健康・保健行政の拠点である保健センター機能や保健所機能がこの後どう移行するのか、相談支援の窓口はどうなるのか等について質問しました。
【参考】
▶ “産まれるいのち”どう守る? 「特定妊婦」支援の最前線(NHK_ NEWSWEB/2024年5月22日)
▶ 「妊産婦等生活援助事業ガイドライン」について(こども家庭庁支援局長/2024年3月29日)
→家庭生活に支障が生じた妊産婦に安心して生活できる居住の場を提供し、日常生活の支援や養育に関する相談や助言、関係機関との連絡調整を行う妊産婦等生活援助事業も創設され、2024年4月より施行となっている。
▶ こども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第19次報告)(2023年9月) (こども家庭庁)
▶「妊娠SOS相談窓口と産前産後の居場所の全国普及に関する提言書」公開(2024年4月9日)
→妊娠葛藤を抱える女性に妊娠SOS相談窓口に辿り着いてもらい、そこで繋がった糸を切らさぬよう確実に必要な支援へ結びつける体制が整うことにより、予期せぬ妊娠をするに至った背景として深刻な困難を抱えて生きてきた女性(とその児童)が妊娠を機に生活を再建・安定させ、自立していくことを「社会」が支えられるようになることが望まれる。
▶ 「特定妊婦」とは?登録で受けられる支援は?深刻な”孤立”状態も(NHKクローズアップ現代/2022年6月28日)
▶ 【ひとりで悩まないで】妊娠、出産支援の窓口まとめ(NHKクローズアップ現代/2022年6月28日)
▶ 公益社団法人 小さないのちのドア_妊娠&子育てSOSチャンネル
→思いがけない妊娠や、出産や育児で悩む女性たちのための「妊娠SOS」相談窓口/24時間365日、電話、メール、SNSで誰でも無料で相談できます。