第3波となる新型コロナウイルスの感染拡大が医療提供体制をひっ迫しないか、心配です。11月24日、第3回病院運営審議委員会が開催され、感染症への対応や、今後、取り組まなければならない3つの重要課題についての審議を行いました。

2020/11/24

11月24日(火曜日)午後3時から、第3回病院運営審議委員会が開催されました。出席委員は6人。
新型コロナウイルス感染症への対応について等の審議を行いました。

案件は以下のとおり。

(1)新型コロナウイルス感染症への対応について
(2)マイナンバーカードによるオンライン資格確認制度への対応について
(3)今後の重要課題について
(4)その他

 


 

病院事業管理者あいさつ

第3回の病院事業運営審議委員会は、宮垣純一病院事業管理者の挨拶で始まりました。
新型コロナウイルス感染症について、昨日18時時点で、大阪府の病床使用率(実運用病床の使用率)は重症患者で80%、中等症・軽症患者で77.5%で、先週、11月19日には大阪府の病床確保計画においてフェーズ4に移行したことが報告されました。
市立ひらかた病院は、感染症指定医療機関として、新型コロナウイルス感染症に対応するため、感染症病棟(8床)に加えて、一部の一般病棟を閉鎖・縮小し、4月7日以降、フェーズ1~3で20床(8月3日に大阪府の重点医療機関の指定を受けてからは26床)、フェーズ4では30床(同42床)の受入れ体制を整えてきている。現状、20床を超える受け入れとなっているが、その体制を支える人員確保のみならず、大阪府からは臨時医療施設(大阪コロナ重症センター)への人員応援要請もあり、医師等の人員確保が厳しい状況であること、経営面でも、空床補償が一定行われることになり、大幅な赤字は解消される見込みではあるが、通常診療も行わないと厳しい現状であることに変わりはなく、新型コロナ対策と通常診療の両方をにらみつつの運営が必要となっているといったこと等に触れられていました。まずは院内感染を防止することが必須で、長期的に、いかに地域医療を継続するかという課題と直面しているということでした。

※以下は、11月24日に開催された「第30回大阪府新型コロナウイルス対策本部会議」の資料(現在の感染状況・療養状況について)からの抜粋です。


 

続いて、案件の審議に入りました。(以下、当日資料からの抜粋も掲載しています。)

(1)新型コロナウイルス感染症への対応について

2020年1月から10月まで、市立ひらかた病院において、陽性患者135人、類似症患者152人、合計287人の受入れを行ってきたとのことです。枚方市民のみならず、多くの新型コロナ患者に対応されています。

病院経営への影響も大きく、2020年1月~10月の収益は前年同期に比べ、入院患者で▲262,431千円(患者数は▲8,652人)、外来患者で▲35,100千円(患者数▲24,844人)で合計▲297,531千円、約3億円の減収となっています。一方、医業費用は前年同期に比べ207,545千円、約2.1億円の増となっています。
入院・外来収益の減少と医業費用の増あわせると、505,076千円(約5.1億円)の負担増となっています。

業務への影響は非常に大きいけれども、重症・中等症の新型コロナウイルス感染症患者の診療及び医療従事者への感染リスクに伴い、各種届出等を行い、診療報酬上の臨時的な取り扱いを受け、2020年9月現在、38,790千円の加算を受けたとのことです。

新型コロナウイルス感染症に係る臨時特例の具体的内容は次のとおり。
・救急医療管理加算
・ハイケアユニット入院医療管理料
・二類感染患者入院診療加算
・二類感染症療養環境加算
・院内トリアージ実施料
・コロナ抗体検査

2020年3月からの感染症患者受け入れに必要な設備整備費・衛生材料購入費や病床確保に対する空床補償として、国の補正予算等による補助金が交付されたり、国や大阪府からマスク・ガウンなどの衛生材料の現物支給もあったとのことです。空床補償に対する国の補助金は、9月末日分までで、合計で443,310千円(12月補正予定)とのことです。これはとても大きいですね。収益減が一定10月以降の補償内容は未定とのことです。

その他、特別勤務手当に関する府補助金、医療機器等に関する国・府補助金も予定されている(12月補正予定)とのことでした。

新型コロナウイルス対策としての財政的支援は一定見込まれるものの、受診控えなどによる入院・外来患者の減少は顕著で、この先、長期化することが懸念されます。新型コロナウイルス感染症の対応等の影響による落ち込みは特に小児科で顕著で、10月の値で、全体の病床利用率が74.7%(前年比▲4.5ポイント)のところ、小児科では57.1%(前年比▲43.2ポイント)となっているとのことでした。
ちなみに、病床利用率の目標は85%で、平成30年度は78.0%が、令和元年度は78.6%(前年度比0.6ポイントの増)と、2020年1月までは一定順調であったようです。

また、インフルエンザの流行期が到来すると、発熱患者そのものが急増することから、同時感染拡大(ツインでミック)が懸念され、トリアージもさらに重要になってくること、その中で、市立ひらかた病院として公的役割を果たすため、院内感染を起こさない取り組みの徹底が求められていること等が今後の課題として報告されました。

委員からの質問

・受診控えが顕著。特に小児科診療において、医療上、受診が必要な児に対して受診を促す取り組み等はあるのか。
→感染予防の徹底で小児感染症は激減。インフルエンザの症例も例年に比して極めて少ない。受診を要する児も減少しているとは思うが、必要に応じて連絡等を行っている。神経疾患でフォローしている患者は一定つながっていると思われるが、慢性疾患の患者さんの受診控えを感じる。
・フェーズ4での受け入れ(30床)について
→最大42床と報告しているが、承認はまだである。
・職員に対する積極的なPCR検査の実施について
→院内感染の予防は喫緊の課題で、職員罹患による病院への影響は計り知れないため、特に注意をしている。濃厚接触者の判断を受ける前に抗原検査をする等、体制は整えている。
・フェーズ3から4に移行すると、最大病床数は26から42とのこと。重症化数の増加も報道されているが、医療スタッフの確保は可能であるのか。
→一番難しい問題である。不足が想定される。委託や派遣など、あらゆる支援を模索している。
・市立ひらかた病院での現状について
→大阪の病床使用率(実運用病床の使用率)は、昨日、重症で80%、中等症で77.5%と報告されている。市立ひらかた病院でも、30床(フェーズ4)のうち24床、80%の病床使用率である。重症化するとフォローアップセンターを通じて転院となるが、重症の病床もひっ迫。Go to トラベルやGo to イートなどの影響で、軽症・中等症患者の増加、中等症患者の重症化も増えてくると思う。第1波・第2波と第3波では、特徴も異なり、ウイルスも変容してきている。府下どこもであるが、ツインでミックになるとパニックとなり、危機的な状況になる。12月がピークになるのではないかと想定されるが、経験・知識の蓄積をもとに対応していきたい。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、全国の重症患者は急増しています。第1波の4月30日時点の328人を超え、今月に入って2倍以上に増加し、昨日には345人となるなど、過去最高との報告が続いており、たとえ体制を構えていたとしても医療現場のひっ迫につながるのではないかと言われています。市立ひらかた病院は中等症の患者さんを受入れる医療機関となっていますが、重症化した患者の転院が困難になるのではないかということも懸念されます。救える命を救うことができなくなってしまうことは避けなければなりません。いまおられる医療スタッフへのケアとともに、委託や派遣なども含め、病院側としてもあらゆる支援を模索しているとのことでしたが、病床数を合わせるだけではなく、医療提供体制のために必要な医療スタッフ、医師・看護師・検査職員等の確保に努めていただきたいことをお願いしました。

また、2020年2月以降、これまでの9か月間で外食を1回したのみであると話された林病院長からは、Go to トラベルもGo to イートもできない状況なので、楽しみとして、Go to スイーツなどがあればと思うとのお声がありました。医師など医療スタッフが身体的にも精神的にも疲弊しないよう、何か取り組めることがあればと思いました。


(2)マイナンバーカードによるオンライン資格確認制度への対応について

市立ひらかた病院においても、2021年3月に開始となるオンライン資格確認制度に対応できるよう、システムを導入するもの。保険証の提示に変えて、マイナンバーカードにより資格確認が自動受付(非接触)で可能となる。12月補正予算を予定。

委員からの質問

・財源は補助率10/10で社会保険診療報酬支払基金から2,431千円の財源となっているが、事業費は2,642千円とある。上限を超えていることについて。本来、国の事業の中で行うものなので、国が全額負担するべきではないか。
→まずはマイナンバーカードを保険証として使用できるようにしたいと考えている。

(3)今後の重要課題について

1⃣ 地域医療構想の推進について

超高齢社会にも耐えうる医療提供体制を構築するため、2014年6月公布の「医療介護総合確保推進法」により制度化されたもので、2025年に病院完結型から「地域で治し、支える」地域完結型医療へ移行するため、地域の実情に合った医療需要を推計し、病床の必要量を定めるもの。

厚生労働省が2015年3月にまとめた「地域医療構想策定ガイドライン」に沿って、大阪府では2016年3月に「大阪府地域医療構想」が策定されています。

急性期のカテゴリーとは言えない「地域急性期」を回復期の中に含めたとしても、回復期機能を担う病床の必要量には約1,500床の不足となるようです。

病床機能懇話会(部会)・在宅医療懇話会(部会)→地域医療構想調整会議→大阪府医療審議会→厚生労働省といった流れで、地域医療構想の達成のための審議が行われていましたが、現在、新型コロナウイルス感染症の影響で議論がストップしているとのことでした。

現時点における市立ひらかた病院の方向性は次のとおり。

2⃣ 医師の働き方改革について

 

市立ひらかた病院は「B水準」の申請のため、医師労働時間短縮計画を策定し、提出している。

3⃣ 地域医療の強化について

市立ひらかた病院は、地域医療支援病院の承認をめざし、2020年8月に仮申請、10月に本申請を行っているとのこと。この後、2021年1月に北河内医療病床懇話会を経て北河内保険医療協議会で審議され、3月に医療審議会病院新増設部会の議論を経て医療審議会で承認する病院が決定されることになります。

 

委員からの質問

・市立ひらかた病院としては、「急性期」のベット数を減らす(廃止)ということか。
→2025年に向け、「急性期」の病床はだぶついてくるが「回復期」が不足することが予想されている。府としてどうするかという全体の中で、市立ひらかた病院は「急性期」の位置づけで維持していくことを原則とする。そのすみわけで整理している。
・地域医療構想に議会として絡んでいくことはあるか。
→公立・公的病院の再編統合として、約440の病院の再検証を行うという厚生労働省の通知があったが、新型コロナの関係で、協議は休止している。現時点では地域医療に対する考え方も変わってきている。
・医師以外の医療スタッフの時間外勤務労働について
・メディカルコントロール協議会の役割について

大阪府においては「急性期」病床が余り、「地域急性期」を含め「回復期」機能を担う病床数を確保するため、圏域での調整が必要になると思うが、市立ひらかた病院としては、何をどのように取り組むのか、「高度急性期(3次)」に近い「急性期」という理解でよいのかと私の方からは確認をしました。
地域医療構想の中で、枚方市としては機能分担をしていこうということになっている。「急性期」を「回復期」「慢性期」に移行すると後戻りはできない。中途半端に「回復期」「慢性期」、中途半端に「急性期」ではなく、市立ひらかた病院は「急性期」を担う役割を求められているとのことでした。

病院長あいさつ

最後に林 道廣病院長から、感染症指定医療機関として新型コロナウイルス患者に対応してきていること、経営は大変厳しいが、院内感染を起こすことなくこれまで対応してきたこと、コロナ危機に際して、いま、経済と感染防止の両立が言われているが、市立ひらかた病院としては、大変厳しいが、経営改善と院内感染の防止の両立をめざし、この後も院内感染を起こすことなく、病院としての使命を果たしていきたいとのご挨拶がありました。

当日の会議は予定通り約1時間で終了しました。第3波といわれる感染拡大により気の休まる間もない中での開催であったにもかかわらず、審議会委員の質問に丁寧に回答いただける病院長をはじめ、病院職員の皆さんに感謝します。11月26日には市民福祉委員協議会が開催され、本日の審議内容も報告されることになっています。

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