3月23日、予算特別委員会の4日目(総論及び市民福祉・建設環境部門)でした。市の財政がどのような納税者に支えられているのか。市税収入の見込みにおける課題等についての質問を行いました。
枚方市議会議員の奥野みかです。
3月23日、予算特別委員会の4日目(B日程:総論及び市民福祉・建設環境部門)において、令和3年度当初予算について、3つの観点から質問を行いました。
A日程では、歳入「自主財源」の「基金繰入金」をテーマに、各基金の設置目的、令和3年度における積立てや充当事業などについて質問し、本日のB日程では、本市にとって最も重要な歳入で、「自主財源」の約 85%を占める「市税収入」をテーマに、質問をしました。
まずは、市税収入について、固定資産税・法人市民税・個人市民税、各税項目それぞれの予算の積算根拠について、質問を行い、令和3年2月の長期財政の見通しとの関係を確認しました。
長期財政の見通しにおける市税(個人市民税)の見込みについては、所得階層ごとの個人市民税の課税状況を把握されているのかどうか、また、コロナショックは、働く女性に対する打撃が大きいと考えられますが、男女別の課税状況は把握されているのかどうか等、納税者の課税状況の詳細把握から収入の見込みを行っているのかという観点からの質問も行いました。
そして、市の財政がどのような納税者に支えられているか把握もせずに、長期財政の見通しにおいて、令和3年度は市税の大幅な減収を見込むけれども、令和4年度にはV字回復する等という楽観的な財政見通しを示すのは問題ではないかと指摘しました。
また、指定管理施設改修経費については、令和3年度の予算を確認しながら、令和3年度を始期とする「市有建築物保全計画」の「第Ⅲ期実施計画」の計画全期間の保全費用、約43億3千万円の実効性を確保するためにも、老朽化する公共施設の更新など計画的な公共施設整備への引当財源となる「施設保全整備基金」への計画的な積立てが必要であり、そのための方針を定めておくべきであることを意見しました。
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【3月23日の質問項目】
・市税収入(固定資産税・法人市民税・個人市民税)について
・長期財政の見通しにおける市税(個人市民税)の見込みについて
・指定管理施設改修経費について
以下、質問のやりとりを掲載します。
市税収入の見通しについて
Q.私の質問
A日程では、歳入「自主財源」のうち、「基金繰入金」をテーマに、各基金の設置目的、令和3年度における積立てや充当事業などについて、質問した。本日、B日程では、本市にとって最も重要な歳入で、歳入予算の 44.2%となる「自主財源」約 625億円の 85%を占める、「市税収入」約 531億円、歳入全体からみれば 37.6%になるが、その市税収入をテーマに、質問させていただく。
まず、「固定資産税・都市計画税」について、伺う。
「固定資産税・都市計画税」の収入見通しについては、前提となる土地利用等に変化がなければ容易であり、令和3年度の「固定資産税及び都市計画税」に対する特例措置や評価替えに伴う減額が大きく現われた後は、令和4年度でいったん回復して、その後は緩やかな減収傾向、という見通しになるのではないかと考えるが、見解を伺う。また、令和4年度の見込みについてもお答えいただきたい。
A.資産税課長の答弁
令和3年度当初予算では、国の新型コロナウイルス感染症に伴う経済対策として、事業収入が 30%以上減少した中小事業者等の償却資産及び事業用家屋に対する固定資産税等の課税標準額を、1/2またはゼロにする特例措置により、固定資産税が約 10億500万円(率にして約 4.7%減)、都市計画税が約 1億6,900万円(率にして約 3.7%減)、また、評価替え等により、固定資産税が約 2億円(率にして約 0.9%減)、都市計画税が約1,800万円(率にして約 0.4%減)の減額を見込んでいる。
なお、新型コロナウイルスに係る特別な措置は令和3年度限りのため、令和4年度は通常どおり課税する予定であるが、ウイルスの感染状況によっては国の追加対策も予想されるので、今後も情報収集に努める。
Q.私の質問
「固定資産税・都市計画税」について、令和3年度は国の新型コロナウイルス感染症に係る特例措置や、3年に一度の評価替えの年に当たることから、減収を見込まれているけれども、令和4年度以降、国の追加対策がなければ、通常の課税になるとのことである。
次に、「法人市民税」について伺う。
「法人市民税」現年課税分の令和3年度予算は、令和2年度当初予算に比べ約 9億2千万円の減額となっているが、その算定根拠について伺う。また、令和4年度の見込みについてもお答えいただきたい。
A.市民税課長の答弁
令和元年10月以降に開始する事業年度より法人税割の税率が 12.1%から 8.4%に引き下げられたことや消費税増税等の影響により、約 2億7千万円の減額(率にして約 10%)となるほか、新型コロナウイルス感染症拡大による影響も加わり、9億2千万円の減額(率にして約 31%)を見込んでいる。
また、令和4年度の見込みについては、新型コロナウイルス感染症の感染収束が見通せないため、具体的に数値を算出することは困難である。
Q.私の質問
「法人市民税」については、実効税率の段階的引き下げの影響とともに、新型コロナウイルス感染症の影響も加わり、令和3年度は約 9億円台の減収となるとのことである。
次に、「個人市民税」について伺う。
「個人市民税」現年課税分の令和3年度予算は、3月の補正後予算額に比べ約 9億2千万円減少している。その算定根拠について、伺う。また、令和4年度の見込みについてもお答えいただきたい。
A.市民税課長の答弁
所得割額のうち給与所得については大阪府の事業規模 5人以上の主要労働経済指標のなかの名目賃金の前年比と常用労働者数の前年比からマイナス 3%、約 5億3千万円の減額を見込んでいる。
営業所得については大阪府景気観測調査結果における大阪府中小企業の四半期ごとのDI値(景気動向の方向性を示す指数)が対前年比からマイナス 30%、約 2億6千万円の減額、譲渡所得については、国土交通省が公表している不動産取引件数・面積の前年比からマイナス 20%、約 1億円の減額を見込んでいる。
なお、令和4年度の見込みについては、法人市民税と同様に、新型コロナウイルス感染症の感染収束が見通せないため、具体的に数値を算出することは困難である。
長期財政の見通しにおける市税(個人市民税)の見込みについて
Q.私の質問
「個人市民税」の翌年度の調定の際には、現年度データを基礎に、その時々の経済状況、雇用状況、納税者人数などを考慮し、積算しているとのことである。
「市税収入」の中でも、特に、「個人市民税」の収入について、できる限り正確に収入見通しを立てることが必要であると考えるが、新型コロナウイルス感染症の感染収束の見通しがたっていないなか、令和4年度の見込みについて、「具体的に数値を算出することは困難である」、というのはそのとおりだと思う。
しかし、令和3年2月の「長期財政の見通し」には、「個人市民税は、新型コロナウイルス感染症の影響により令和3年度に大きく減少するものの、令和4年度には一定の水準まで回復し、その後は高齢化の進展などによる納税義務者数の減少により、緩やかに減少すると見込んでいる。」と記載されている。
そこで、「令和4年度には一定の水準まで回復」との記載であるが、その見込みの算出方法について、伺う。
A.財政課長の答弁
長期財政の見通しにおける令和4年度の個人市民税の見込みについては、大きく減収となる令和3年度予算をベースに今後の経済動向などを勘案し、算定を行っており、令和2年度の決算見込み額までは及ばないものの、一定の水準まで回復すると見込んでいる。
Q.私の質問
新型コロナウイルス感染症の収束はなかなか見通せない中、令和3年度の所得に応じて賦課される令和4年度の「個人市民税」は、今後の経済動向などを勘案して算定すると、令和元年度の所得に応じて賦課される令和2年度の「個人市民税」の決算見込み額までは及ばないものの、一定の水準まで回復する見込み、とのご答弁である。非常に楽観的な見込みに驚いているが、もちろん、令和3年度の所得が、そのように回復すればいいとは思う。
振り返ってみると、12月の全員協議会で示された財政シミュレーションは、「リーマンショック時を参考にして」、とのことであったが、2月の全員協議会で示された「長期財政の見通し」においては、「市税収入は、国の示す経済成長率4%を参考に」、との説明もあった。
仮に経済成長するとして、経済成長がどのように「個人市民税」の増収につながるのか、説明いただきたい。
A.財政課長の答弁
経済成長率については、法人市民税を中心に、市税収入全体を見込む中で、反映させているものである。
Q.私の質問
経済成長率は、必ずしも勤労者所得の増収とリンクせず、コロナショックの社会・経済への打撃は「選択的」であり、高所得ではない市民、特に非正規労働の割合が高い女性に、その影響は大きく表れてくるのではないかと思われる。
そこで、所得階層ごとの個人市民税の課税状況を把握されているのかどうか、また、コロナショックは、働く女性に対する打撃が大きいと考えられるが、男女別の課税状況は把握されているのかどうか、確認させていただく。
まず、令和2年度において、本市の所得割の「個人市民税」の納税義務者のうち、課税標準額が 300万円以下の納税者の納める「個人市民税」は、全体の何%程度になるのか、伺う。納税者数の割合や課税額の割合について、お答えいただきたい。
A.市民税課長の答弁
所得割の納税義務者数のうち課税標準額が 300万円以下の納税者が占める割合は 79.3%である。なお、所得区分ごとの課税額のデータはないが、全体の総所得金額のうち課税標準額が 300万円以下の納税者が占める割合は 53.2%となっている。
Q.私の質問
所得階層ごとの課税額のデータがないということで、えっと、そのことは驚きなのであるが、ご答弁をザクっとまとめると、本市の「個人市民税」について、所得の低いほうから約 8割の納税者市民が、概ね半分の税額を払っている、というご説明かと思う。
では、課税標準額が 300万円以下の納税者のうち、女性の占める割合はどの程度か。近年の動向は把握されているのか、伺う。
また、「個人市民税」の見込みにあたっては、納税者市民の課税額を階層化し、それぞれ所得階層ごとの納税者数、課税総額、構成比を、男女別の区分を含めて整理したデータをもとに算定すれば、現状を反映したより正確な積算ができるのではないかと思う。改めて確認させていただくが、こうしたデータはあるのか、伺う。
A.市民税課長の答弁
確定申告書や市・府民税申告書、給与支払報告書等の課税資料には性別の記載がなく、税のデータは、基本、性別情報は保有していない。なお、課税データを基に、所得階層ごとや所得の種類ごとの状況などをまとめた市税概要は毎年度作成している。
Q.私の質問
納税者市民の所得階層別や所得の種類別の課税状況をまとめた資料は作成しているけれども、男女別の区分を含めて、納税者市民を階層化した課税額のデータはない、とのご答弁である。
では、今後、ジェンダー格差を踏まえた、よりきめ細かな課税資料を作成する考えはないのか、伺う。
A.市民税課長の答弁
繰り返しになるが、税のデータでは基本、性別情報は保有していないため、男女別の課税資料の作成は予定していない。
Q.私の質問
税のデータは、基本、性別情報を保有しておらず、男女別の課税資料の作成も予定していないとのことである。「所得割の納税義務者数のうち課税標準額が 300万円以下の納税者が占める割合は約 8割」とのご答弁であったが、ヒアリングの際、参考に見せていただいた資料では、女性に限ると、課税標準額が 300万円以下の納税者は「約 9割」になるようである。
繰り返しになるが、コロナショックの社会・経済への打撃は「選択的」である。一律の不況、一律の所得減少ではないコロナショックの「選択的」な打撃は、業種・業態によっても全く異なるし、個人のレベルでも、正規・非正規によっても全く異なるわけである。特に非正規労働の割合が高い女性労働者を直撃し、立場が弱い女性の雇用環境をさらに悪化させたことから、「女性不況」とも言われ、それは、ジェンダー格差として、国際社会の共通課題にもなっている。
3月2日公表の労働力調査によると、1月の女性就業者数は前年同月比 20万人減の 2,950万人。非正規労働者の雇い止めに加え、育児や介護で退職を余儀なくされる事情も目立つと報告されている。
「個人市民税」の見通しにあたっては、こうしたジェンダー格差への着目も必要であると思うが、こうした観点は、「長期財政の見通し」ではどのように評価されているのか、伺う。
A.財政課長の答弁
委員お示しの視点による市税収入の試算については行っていないが、新型コロナウイルス感染症による影響など社会経済情勢を踏まえながら長期財政の見通しの作成を行っている。
O.私の意見
財政の推移を見通すという作業は、最も事実に基づいて行われなければいけない領域であると思う。証拠に基づく政策立案・評価:Evidence-Based Policy Making(EBPM)の必要性が指摘されているが、この前提となるのは、「事実認識」をきちんと行うということである。
歳入の根幹となる「市税収入」の、特に「個人市民税」の見込みにあたっては、誰が、どのような形で支えているのか、本市の納税者市民の実情を正しく把握することが「事実認識」であると思う。
枚方市の税収が、どのような属性の納税者から、いくら納めていただいた税収によって成り立っているのかという観点からの分析を行っていないというのは、民間企業で言うと、自社の経営を支えてもらっている顧客のことを分析せずに、あるいは無頓着なまま経営するようなものではないだろうか。「法人市民税を中心、市税収入全体を見込む中では、」とのご答弁ではあったが、国の示す4%の経済成長見通しにより、市税収入全体では令和4年度にはV字回復するといった楽観的な財政見通しを示されるのは、非常に問題であると指摘しておく。
そして、課税額を階層化し、男女別の区分(ジェンダーの視点)を含め、それぞれの層の納税者数、課税総額、構成比等、今後の適切な税収見込みに必要な「事実認識」のデータを早急に作成するとともに、納税者市民の実情に応じて見込んでいることの説明責任を果たすためにも、税情報に関するデータを可能な限り公表すべきであると意見しておく。
さらに、住民税課税台帳という詳細データを市は保有しているわけである。このデータは、市民の財産、宝物でもあるわけなので、証拠に基づく政策立案・評価(EBPM)を掲げるのであれば、課税情報という最も明確でかつシビアなエビデンス(データ)に着目することから始めるべきである。
なお、納税者市民の実情の正しい「事実認識」は、市として必要な施策展開にも有効であると、ここでは意見しておく。
指定管理施設改修経費について
Q.私の質問
次に、A日程で、各基金の設置目的や運用に係る考え方を確認してきたが、ここで、「施設保全整備基金」の充当事業について、内容をお聞きする。
予算説明書 197ページ、指定管理施設改修経費 8,572万5千円として、2件の工事請負費が計上されているが、それぞれの工事の内容について、伺う。また、これらは「施設保全整備基金」の充当工事であるが、これらは「市有建築物保全計画」の対象工事であるのか、伺う。
A.長寿・介護保険担当課長の答弁
(1)の市立特別養護老人ホーム・デイサービスセンター施設改修費の内容については、受変電設備の更新及び消火設備の改修工事である。また、(2)の市立くずは北デイサービスセンター施設改修費の内容については、給湯設備の更新工事である。いずれの工事も市有建築物保全計画の対象工事となっている。
Q.私の質問
いずれも「市有建築物保全計画」の対象工事ということであるが、「市有建築物保全計画」は、次期5か年計画として、令和3年度から令和7年度までを計画期間とする「第Ⅲ期実施計画」が策定され、今後、この計画に基づき各施設の保全・改修が行われると伺っている。
そこで、「第Ⅲ期実施計画」の初年度となる令和3年度の計画上の保全費用に対して、令和3年度予算においては、どの程度の実施を予定されているのか、伺う。
A.施設整備室課長の答弁
市有建築物保全計画第Ⅲ期実施計画における、令和3年度の保全費用は、5億8,400万円である。これに対して実施については、対象施設の劣化状況や安全性等の調査を行い精査した結果、当初予算ベースで 3億7,660万円を予定しており、率とすると約 64.5%となる。
O.私の意見
「平成30年度に発生した災害等により、第Ⅱ期実施計画期間中に未実施である工事については、第Ⅲ期実施計画期間内の費用平準化にも考慮しながら時機を逸することなく、実施計画期間の上半期である令和3年度から令和5年度の計画としている。」と第Ⅲ期実施計画には記載されている。
そして、第Ⅲ期実施計画期間の保全費用は、令和3年度に 5億8,400万円、令和4年度に 億1千万円、令和5年度に 11億1,400万円、令和6年度に 8億9,500万円、令和7年度に 10億2,600万円、計画全期間で 43億2,900万円と見込まれている。
令和3年度は、計画初年度になるが、さまざま調査による精査の結果、計画上の保全費用の約 65%を予定しているとのご答弁であるが、残りの 35%分は大丈夫なのか、心配である。
コロナ禍において財政面の厳しさが予想されるなか、市有施設を適切に維持していくためには、「施設保全整備基金」を有効に活用することにより、保全費用の財源をしっかりと確保していただきたい。
そして、A日程でも意見させていただいたが、今年度を始期とする「市有建築物保全計画」の「第Ⅲ期実施計画」の計画全期間の保全費用、約 43億3千万円の実効性を確保するためにも、老朽化する公共施設の更新など計画的な公共施設整備への引当財源となる「施設保全整備基金」への計画的な積立てが必要であり、そのための方針を定めておくべきであることを、重ねて意見しておく。
また、A日程では、公共施設の廃止について、跡地活用の明確化、もしくは解体まで実施して事業の完了とする仕組みの導入を要望した。そして、移転建て替えは、旧施設の解体まで行って事業完了とするべきで、それが「整備」の意味ではないかと意見もした。そのことは、市の「公共施設マネジメント推進計画」に基づく施設総量最適化(延べ床 1.9㎡/人)にもつながるのではないか。公共施設等総合管理計画の策定要請とあわせて、国が公共施設の解体撤去に係る地方債の特例措置を講じていることからも、公共施設の「解体」は、共通認識の課題であると思う。
「施設保全整備基金」については、施設の「保全」面での活用だけではなく、「整備」という観点からは、不要となった市有建築物の解体工事にも活用ができるよう、「基金」の使途を整理していただくよう要望しておく。