6月2日、総務委員協議会が開催され、8件の協議が行われました。まずは「いじめ対策への取り組みについて」「人権尊重のまちづくりに向けた取り組みについて」等、人権政策室に係る案件の報告から。(総務委員協議会の報告①)

2023/06/02

枚方市議会議員の奥野みかです。

6月2日は総務委員協議会が開催され、8件の案件の審議が行われました。「総務」は私の所属する常任委員会です。委員長のあいさつの後、理事者側は清水副市長の挨拶でした。今回、提出された案件は次のとおり。

【案件名】

(1)いじめ対策への取り組みについて[人権政策室]
(2)人権尊重のまちづくりに向けた取り組みについて[人権政策室]
(3)デジタル田園都市国家構想交付金を活用する取り組みについて[企画課]
(4)公民連携の取り組みの効果検証について [政策推進課]
(5)委託業務における不適正行為の再発防止に向けた取り組みについて[契約課]
(6)➂街区に設置する生涯学習市民センター・図書館の指定管理者制度導入について [文化生涯学習課]
(7)スポーツ施設(3施設)の指定管理について[スポーツ振興課]
(8)枚方市スポーツ推進計画の中間評価報告等について[スポーツ振興課]

 

各案件の詳細について、順次報告していきます。
なお、それぞれの案件のタイトル部分をクリックすると、枚方市HP「枚方市議会/議会資料室」にアップされた資料にリンクします。

 


 

(1)いじめ対策への取り組みについて[人権政策室]

◇枚方市のいじめ対策の体制

人権政策室に、いじめ対策グループを設置。教育委員会児童生徒支援課に設置されたいじめ対策グループと連携し、対策の強化を図る。市長部局と教育委員会で情報共有し、いじめ対策について連携等を行う会議を月1回以上開催する。また、重大事態が発生した時(発生する疑い時含む)には、即時に会議を開催する。

人権政策室内に、「いじめ相談窓口」を設置し、相談員が相談を受ける。
〇特徴:「学校等以外からのアプローチとしての客観性」「法律、心理や福祉面の専門性」「福祉的支援など、その他支援との連携」
〇開設:2023年7月_※専用電話、FAX、Eメール、来庁による相談を開始(平日9時~17時30分)
〇周知等:6月6日_校長会へ説明及び報告等、6月下旬_広報ひらかた7月号に掲載等、7月初旬_全児童・生徒及び保護者へ周知文書の配付

 ◇市立中学校で発生したいじめの重大事態に係る再調査の実施

2023年3月20日付で市教育委員会から調査報告書を受理。当該報告書には、被害側から「報告書についての所見」が添えられ、再調査等を要望されている。市長部局において当該報告書等を確認した結果、「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」(平成29年3月文部科学省)に照らし、再調査を行う必要があると認め、いじめ防止対策推進法(平成25年法律第71号)第30条第2項に基づき、再調査を実施するもの。市長の附属機関「いじめ問題再調査委員会」に諮問。年度内に20回程度(状況に応じて次年度に継続)開催予定。

いじめ問題再調査委員会
委員構成:学識経験を有する者、福祉に関する専門的知識を有する者、臨床心理に関する専門的知識を有する者、このほか、市長が適当と認める者

※旧「重大事態への対処チャート」のスキームでの開催。

▲「枚方市いじめ防止基本方針」(2014年7月策定_2018年9月改定)(15ページより抜粋)

「枚方市いじめ防止基本方針」(2014年7月策定_2018年9月改定)
(今回の「いじめ対策体制」の構築により、この後、改定されると思われます。)

▲「ストップいじめ」(2023年4月)より引用

奥野の意見

(※以下、奥野の発言を掲載します。)

【奥野の質問】

枚方市のいじめ対策の体制が示されている。

いじめの相談窓口としては、これまでも、学校、教育委員会、子ども未来部(となとな、1学期~SNS相談)、人権なんでも相談(枚方人権まちづくり協会)といった複数の相談窓口がある中で、今回、さらに人権政策室が初期段階から加わることになる。市長部局にもっていく重層的な仕組みはすでにあるのに、なぜ、初期段階から市長部局も、教育委員会も取り組むカタチにするのか。「放置されていた等と言われないよう、早い段階から市全体の問題として捉えたい。いろいろなところで、市全体の問題として複層的に捉えたい」と説明された。

教育委員会での対応に不信があるからということではないだろうし、子どもの生活の場は学校教育の場に限らないので、その広がりに対応するため。もしくは、川西市子どもの人権オンブズパーソン制度のように、「家族や学校の先生とはちがった立場で、いじめ・差別・体罰・虐待などで苦しんでいる子どもの話をしっかり聞いて、子どもにとって一番よい解決方法を、子どもと一緒に考え、手助けする。公的な第三者機関を設置する」「子どもの人権に着目した受け皿を導入する」ということであれば理解できなくもないが、学校内でのいじめ事象については、学校・教育委員会が主たる責任を持って対応すべきで、そのことを打ち出されない二元化は、責任の所在が曖昧にされないか、懸念される。

いじめの相談を「どの窓口でも相談できる」として、相談窓口が拡充されたと説明されたが、複数窓口が作られ、連携が悪いと、かえって責任の所在が曖昧になり、相談者の期待を裏切ることにならないかと危惧する。「どの窓口からも相談できる」が「どの窓口も責任を持たない」にならないか、受け止めてもらえると思い、吐露した相談者を傷つけることにならないか、どの窓口でも相談できるということのリスクもある。

設置する窓口そのものについても、事業費「専門職報酬等314万円」は「7月から開設するいじめ相談窓口で、相談を受ける会計年度任用職員(月額19万円)のいじめ相談員1人と、法的支援を行う弁護士(月3回程度の勤務で月額7万5千円)の報酬」と聞いた。福祉・教育、そして人権に関して、どれほどのスキルを持った相談員であってもお一人というリスクは大きい。(先の委員の質問によると、7月からスタートというのに、今なお、相談員[臨床心理士等を要件]が決まってもいないようである。)

また、市長部局の窓口として、「福祉的な課題に目を向ける」とあったが、今回、窓口を担当されるのは、福祉や子ども関係の担当部署ではなく、人権政策室が担当されるということである。この4月に事務分掌規則がどう変わったのかわからないが、人権政策室の職員15人、会計年度任用職員を加えて16人で、人権・非核平和、男女共同参画施策に「いじめ対策に関すること。いじめ連絡会議に関すること。」が加わるわけである。3つめのGとして新たに設置された「いじめ対策G」の増による人員の増があったのか、なかったのか。

そのような中で、今回のいじめ相談窓口の設置に加え、初めて「いじめ問題再調査委員会」を立ち上げて、いじめ重大事態の再調査を行うということも重なる。組織として、十分な体制の整備、体制の強化が図られたのか。私は、人員体制等についても十分ではないように感じられるが、見解を伺う。

【人権政策室答弁】

いじめの防止等にあたっては、学校・教育委員会、庁内関係部署等が一丸となって組織的に対応することが重要である。
人権政策室は、直接、福祉的な支援を担う部署ではないが、人権政策室でお受けした相談については、学校や関係部署につないで終わりではなく、初動の実態把握から対応、見守り、相談者へのご報告まで、相談者に寄り添い、責任を持った対応を進める。
なお、相談窓口の開設やいじめ重大事態の再調査など、新たに取り組む中で、課題も当然出てくるものと思うが、課題解決に向けて、一つひとつ対応策を検討し、子どもたちが安心して学校生活を送ることができるよう、全力で取り組んでいく。

【奥野の意見】

「全力で取り組んでいく」と課長。頑張ってくださると思う、よろしくお願いする、ということであるが、属人ではなく、体制として整備できているのかということ。

「いじめは人権侵害」の視点を貫き、「教育的アプローチ」は学校・教育委員会、「行政的アプローチ」は市長部局、最終段階の「法的アプローチ」は外部機関と整理されている寝屋川市。スキームの是非は別として、市長部局の監察課は9人体制で、弁護士資格を持つ職員、福祉部局での経験を有するCWなどの職員らで構成。

「枚方市いじめ防止基本方針」が今回の資料にはなぜか出てきていないが、平成26(2014)年に策定された「いじめ防止基本方針」に基づき、同年に「枚方市いじめ問題再調査委員会」が条例設置されている。その附属機関が、今回初めて設置され、調査を行うということ(委員は7人以内のところ4人。20回程度の開催を予定。委員会22,000円/日、調査11,000円/回)。これは以前のスキームの中で、人権政策室に位置付けられていたものであるが、その事務だけでもかなりの事務負担が発生する中、今回、初期段階からの「いじめ相談窓口」にも対応するということである。

(以前のスキームでの運用になるのかと思うが、)案件資料にある「市立中学校で発生したいじめの重大事態に係る再調査の実施」について、「市立中学校で発生したいじめの重大事態について、令和5年(2023年)3月20日付で市教育委員会から調査報告書を受理。報告書には、被害側から再調査等を要望する所見が添えられている」とあるが、なぜ、今回の教育子育て委員協議会の案件資料に「調査報告書の提出→再調査の実施」にかかる記載がないのか、これは指摘しておく。

先ほども述べたが、いじめのみならず、子ども自身からの相談、訴えを受け止める「子どもオンブズパーソン制度」といった体制整備(相談場所の環境整備も含め)を市長部局の人権政策室には望むが、まずはそれぞれの部署が自らの分掌の中で様々な人権問題に対応し、その上で何らか課題があるときに、最終的に対応する砦のような部署だと考えるため、人権政策室に「いじめ相談窓口」を設置して初期の段階から相談を受けるスキームに対し、課題を感じる。その上に、いじめ問題再調査委員会の対応も含めた人員体制の課題がある。
市民にしっかり応えるという観点から、人権政策室での対応内容を整理して相談体制を組むべきであったと意見しておく。

他の委員の質問

・いじめの認知件数について。毎年倍増となている理由は?対応できているのか。
→2020年度_929件、2021年度_1,615件、2022年度_3,215件。いじめの定義が変わったこともある。学校現場で対応できている。
・Eメールによる相談の受け止め状況の共有について
→受理したことを返信できる仕組みを検討する。
・相談方法として、2023年度1学期から、SNS相談を順次導入としているが、どういう体制で、誰が、どのような時間帯に対応しているのか。夜間や土日はどうか。早いレスポンスこそがSNSへの期待ではないか。
→1人1台タブレットからの相談の仕組みを構築している。
・なぜ重大事態として再調査をすることに?
→「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」等に照らし、再調査が必要であると認定。保護者の要望もあり。
・いじめの防止に何が必要か。起こらないようにすることと、起こったときの寄り添い。現場力を高める。啓発の重要性。

 

【参考】

▲寝屋川市におけるいじめへの対応(3段階のアプローチ)

 


(2)人権尊重のまちづくりに向けた取り組みについて[人権政策室]

枚方市人権尊重のまちづくり基本計画(2022年策定)」に基づき、多様化・複雑化する人権問題に対し、効果的・総合的に人権施策を推進するとともに、「あらゆる人権侵害を許さない」という市の姿勢を明確に示し、ヘイトスピーチやインターネット上での誹謗中傷、性的マイノリティへの差別・偏見等、多様化・複雑化する人権侵害の解消を推進するため、「枚方市人権尊重のまちづくり条例」を一部改正するもの。

【実施時期等】
2023年6月_総務委員協議会へ報告、枚方市人権尊重のまちづくり審議会へ諮問
2023年12月_枚方市人権尊重のまちづくり審議会から答申
2024年2月_総務委員協議会へ報告
2024年3月_人権尊重のまちづくり条例の一部改正(予定)

奥野の意見

(※以下、奥野の発言を掲載します。)

【奥野の質問】

昨年度(2022年度)策定した「人権尊重のまちづくり基本計画」に基づき、すべての人の人権が尊重されるまちづくりを効果的、総合的に推進していく、今年度はその具体化の年度。なぜ、今回、枚方市人権尊重のまちづくり条例の改正か。具体的にどのような内容の改正を検討されているのか。

【人権政策室答弁】

条例の内容としては、インターネットによる人権侵害やヘイトスピーチ、性的マイノリティの人権など、多様化・複雑化する人権問題に関する理念を掲げるものとして、「あらゆる人権侵害を許さない」とする市の姿勢を示すものとしたい。具体的な内容については、人権尊重のまちづくり審議会に諮問し、検討を進める。

【奥野の質問】

現在の条例の前文に「あらゆる差別をなくし、一人ひとりを大切にするまちを実現することは私たちの願いである。私たち一人ひとりの人権が尊重されるまちづくりを進める」と謳われ、幅広い人権課題をとらえた条文になっていると考えるが、改正する理由はあるのか。

【人権政策室答弁】

議員がおっしゃるとおり、現在の条例において、基盤となる理念は、条例の前文に規定されている。
一方、計画の策定にあたり実施した市民意識調査では、「人権侵害を受けたとき、その人権侵害に対し、我慢した」と回答した人の割合が5割程度、「周りで人権侵害を見聞きしたときに、何もしない又は同調した」と回答した人の割合が4割程度という結果があった。
今回、条例改正を行うにあたっては、改めて、「あらゆる人権侵害を許さない」とする市の姿勢を明確に示すとともに、市民一人ひとりがまちづくりの主体であるという認識のもと、市全体で人権意識の醸成につなげていけるような条例となるよう、審議会に諮っていきたい。

【奥野の意見】
現在の条例は、「市の責務」や審議会の定めが主となっている。複雑多様化する人権課題や国際社会に対応する環境整備を図るためには、市の姿勢をしっかり発信された上で、すべての人の人権が尊重されるよう、行動の主体である市民・事業者がそれぞれの役割を理解し、取り組みを進めることが重要。「市民の責務」「事業者の責務」等の規定を検討されることは大切なことであるかと考える。
大阪府は「(大阪府)人権尊重の社会づくり条例」の改正(府民及び事業者の責務)とあわせて、「性的マイノリティに対する差別の解消に向けた規定」「ヘイトスピーチの解消に向けた規定」についても同時に審議会に諮問されていた(平成31年)。このプロセスも参考にしていただきたい。

また、「市民一人ひとりがまちづくりの主体であるという認識のもと、市全体で人権意識の醸成につなげていけるような条例」を策定しようというのであれば、審議会に諮るだけで良いのか。市民との対話を重ねるとか、条例内容について、市民や議会の意見を聞き、それを反映させるプロセスが全く記載されていない。

ヒアリングの際、記載はしていないが、説明会の開催と審議会としての意見聴取を予定しており、丁寧に取り組みたいとのことであった。
すべての人がお互いの人権を尊重しあうまちの実現に向けて、ベースとなる理念を掲げるために条例改正を行うのであれば、市民の意識醸成につながる取り組みを行っていただくようお願いしておく。

パブリックコメント実施要綱(平成25年)/(実施)第3条 市長は、次に掲げる計画、指針等及び条例等を立案しようとするときは、~パブリックコメントを実施するものとする。

【参考】

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