学乳パック(学校給食向け牛乳パック)のリサイクルはとても難しいこと?「できるところから、すこしずつ」の取り組みの検討を。
枚方市議会議員の奥野みかです。
2022年4月から、大阪府内の小・中学校における学乳パック(学校給食向け牛乳パック)の処理方法が大きく変わります。これまでは、牛乳納入業者側(メーカー側)が学乳パックを引き取っていましたが、今後は、学校(自治体)で処理することになります。
これは、10数年前から全国的に進んでいる流れです。廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)で、事業活動に伴い生じた廃棄物は事業者が処理することになっているので、学乳パックは学校(自治体)が処理すべきものであるというのが、牛乳納入業者側(メーカー側)の説明のようです。
東京都における大きな転換は2020年4月でした。東京都の教育委員会は区市町村に学乳パックのリサイクルを要請したようですが、実際のところ、すんなりと進まなかったようです。
例えば、清瀬市。学校での洗浄は、アレルギーを持つ生徒にとってリスクが高いと判断し、当初、児童・生徒が家庭に持ち帰ってリサイクルする方針を打ち出していたけれども、保護者の反対運動や、そもそも家庭に持ち帰ることが廃棄物処理法に抵触するのではないかとの指摘を受け、焼却処分を選択したとのことです。調布市も、乳製品アレルギーによる死亡事故が起きていることから、安全面を最優先し、焼却処分を選択したようです。
一方、効率的で児童にもあまり負担感のないようなリサイクルの方法を試行錯誤の中で編み出され、給食を終えたら牛乳パックを「開いて、洗って、乾かす」ことは、子どもたちにとって日常当たり前に行う作業となっていることが報告されている西東京市や練馬区の学乳パックリサイクルの例もあります。子どもたちが、自分たちの主体的な行動を通して、環境問題への理解も深めていくという大切な環境教育の機会になっているようです。練馬区の小学校では、牛乳アレルギーの児童に配慮しながらリサイクルを実施されています。
▶ 「パック連通信119号(2021.12.14)」_学乳パックリサイクル実施校の視察特集
「学校給食用牛乳パックリサイクルの手引き」にも、「できるところから、すこしずつ」として、リサイクルの工夫やリサイクル実践校の例が掲載されています。
▶ 「学校給食用牛乳パックリサイクルの手引き」_全国牛乳容器環境協議会
さて、2022年4月以降、枚方市はどのような方法を選択するのでしょうか。
【枚方市の提案】
学乳パック(学校給食向け牛乳パック)について、府内一斉に各自治体で処理しなければならなくなった。一方、古紙のリサイクルを実施している製紙会社では、通常の牛乳パックと紙材が異なる学乳パック(学校給食向け牛乳パック)をリサイクルすることは課題であった。 枚方市内の小・中学校(63校)で、排出される学乳パックは一日あたり約 26,000個、年間約51トン。学乳パックはそのまま(開かない)で、学校から自動洗浄機を設置予定の穂谷川清掃工場まで市の職員が運搬(週2回を想定)し、洗浄作業を行う。製紙工場(大王製紙の四国の工場)の指定事業者が洗浄後の「紙パック」の運搬を担う(委託、頻度は未確認)。そのリサイクルの内容を環境教育として活用していくというスキーム。 |
私の出席した建設環境委員協議会や教育子育て委員協議会に示された「学校給食牛乳パックリサイクル事業」の概要図は以下のとおりです。その報告をまとめたページもご覧いただければ嬉しいです。
学乳パックのリサイクルはとても難しいこと?
しかし、学乳パック(学校給食向け牛乳パック)は、リサイクルにあたって、それほど取り扱いが困難な紙材(資源)なのでしょうか。
枚方市の提案のなかで、「古紙のリサイクルを実施している製紙会社では、通常の牛乳パックと紙材が異なる学乳パック(学校給食向け牛乳パック)をリサイクルすることは課題」との説明が私はとても気になっています。
枚方市の学校給食は「毎日牛乳」です。「紙製容器包装品(紙マーク)」なので、リサイクルが課題であると言われているのかと思って確認したところ、学校給食で出されている「毎日牛乳」のパックは、「紙パックリサイクル製品(紙パックマーク)」である、とのお答えでした。
「紙パックマーク」であれば、牛乳だけではなく、ジュースやお茶、また小型の200ml容器なども同様にリサイクルできる、厚さも特に問題になっていないようです。教育・子育て委員協議会での担当課の回答にあったように、「そんじょそこらの工場ではできない特殊な技術が必要で、専門的な工場での難しいリサイクル処理が求められる。コストもかかる。」ということの証左はあるのでしょうか。
ただ、「紙パックリサイクル製品(紙パックマーク)」であるかどうかは重要なポイントなので、以下の資料も確認していただければと思います。(※「紙パックリサイクル_ほんとのはなし(全国牛乳容器環境協議会)」より」
回収された紙資源のリサイクル工場の様子、動画で見てください。
紙パックリサイクルの実態、学乳パックの回収状況については、以下の資料が参考になります。
2021年度概要版_飲料用紙容器(紙パック)リサイクルの現状と動向に関する基本調査
「2020年度リサイクルの実態」(全国牛乳容器環境協議会)
学乳パックのリサイクルについて、2020年度は、新型コロナウイルス感染症の影響で、従来の取り組みができず、廃棄が増え、乳業メーカー引取回収分を含め、前年度の合計回収量 7,600トン(回収率 65.3%)から 5,700トン(回数率 47.8%)に下がったようです。(しかし、この資料からも、学乳パックの特殊性を読み取ることはできないと思います。)
紙パックリサイクル、「洗って、開いて、乾かして」の手間が大変?
「洗って、開いて、乾かして」の作業については、各学校での試行錯誤や、その結果、得られたさまざまな工夫がいろいろと報告されていますね。学乳パックの手開き動画なども紹介されています。また、ストローレスの紙パックも開発されています。
紙パック手開き動画_屋根型(小型パック)
▶ 給食の牛乳、プラ製ストロー廃止へ 来年度から北九州市(朝日新聞/2021年7月25日)
▶ ストローレス対応学校給食用 紙パックの開発・発売(日本製紙株式会社/2020年6月23日)
ストローレス対応学校給食用 紙パック「NP-PAK-mini School POP」を開発し、2020年9月から発売。パックにあけやすい工夫を搭載した結果、児童・生徒は紙容器を簡単に開封でき、ストローを使用することなく容易に飲用可能となっている。
▶ ストローレス対応学校給食用 紙パック「School POP®」が初採用(日本製紙株式会社/2020年12月22日)
▶ ストローレス学乳容器 SchoolPOP®が九州エリアで続々採用~北九州市は政令指定都市では初、鹿児島は広域エリア~(日本製紙株式会社/2021年7月16日)
▶ ストローレス学乳容器 SchoolPOP®が南日本酪農協同で採用(日本製紙株式会社/2022年1月13日)
ストローレス学乳容器SchoolPOP®の採用は、2021年1月の高知県を皮切りに全国では6件目、九州地区では3件目。
「ストローレス学乳容器 SchoolPOP®」ってどんな容器かな。スーパーで購入した容器で確認してみました。確かに開けやすい!
飲んだ後、ここまで開いてしまえば、もう一息ですね。パックの接合部分から開くと開きやすい。ギザギザになってもOKです。