子どもたちと向き合う職員の勤務の継続と資質の向上が、子どもたちの安全で豊かな放課後につながるのではないか。子どもにとって豊かな放課後環境の整備について質問しました。9月定例月議会、一般質問の報告⑧です。
ここでは、「8.子どもにとって豊かな放課後環境の整備について」の報告です。
「子どもにとって豊かな放課後環境の整備について」では、確認の意味も含めて、「放課後キッズクラブ」はどのような事業で、何を委託するのかを確認しました。令和3年度からの2年間、留守家庭児童会室と放課後子ども教室の総合的な運営を行う「放課後キッズクラブ」は直営2校、委託2校での実施を予定しており、平日の留守家庭児童会室と土曜日と三季休業期の放課後キッズクラブの民間委託にかかる募集要項や仕様書の具体的な内容は、児童の放課後対策審議会の意見聴取ではなく、新たに設置する委託事業者選定審査会での決定を予定し、緊急時・災害時の基本的な対応並びに業務内容変更にかかるリスク分担についても仕様書等に定めていくとの答弁で、もし、委託での実施が困難な場合については、会計年度任用職員も活用しながら、直営4校で放課後キッズクラブの導入を行うとのことでした。
留守家庭児童会室の運営においても人員確保が困難な状況の中、放課後キッズクラブ事業もあわせて実施する人員を確保できると考えておられるのか非常に懸念されるという意見とともに、子どもにとって豊かな放課後環境の整備のためには、国制度も活用しながら、留守家庭児童会室職員の処遇改善を図り、人材を確保するとともに、新たな事業の実施に向けては、現場職員の意見もしっかりと聞きながら、焦ることなく丁寧に進めていただくことを強く要望しました。
以下、9月15日の一般質問のやりとりを掲載します。
8.子どもにとって豊かな放課後環境の整備について
Q.私の質問
まず、確認の意味も含めて、「放課後キッズクラブ」はどのような事業か、また、何を委託するのか、伺う。
A.学校教育部長の回答
放課後キッズクラブは、留守家庭児童会室と放課後子ども教室の総合的な運営を核とし、放課後自習教室、枚方子どもいきいき広場事業と緊密に連携しながら、児童の自由な遊びを中心とした豊かな放課後を創造しようとする事業で、令和3年度から、平日を除く土曜日や三季休業期で4校への先行導入を行うものである。
先行導入する4校のうち2校の児童会室と放課後子ども教室の運営を事業者に委ねることとしている。
Q.私の質問
平日の留守家庭児童会室については、直営での実績があるが、留守家庭児童会室と放課後子ども教室をあわせて行う放課後キッズクラブは、新規の事業スキームであり、これまでのモデル事業においても実績はない。
令和3年度の放課後キッズクラブは、土曜日と3季休業中の実施ということであるが、今回、民間委託のための業務仕様書等を作成するにあたっては、「児童の放課後を豊かにする計画」の策定など、これまで、本市の子どもたちの放課後のあり方について審議を重ねてきていただいている「児童の放課後対策審議会」の委員の意見も聴取して反映していくことが必要だと考えるが、市の見解を伺う。
A.学校教育部長の回答
児童の放課後対策審議会に対しては、募集要項、仕様書の具体的な内容にかかる意見聴取という形はとらなかったが、放課後キッズクラブ導入に向けての進捗について報告を行うとともに、児童生徒の居場所の検証結果等について、専門的な見地からご意見を伺っている。
なお、募集要項・仕様書等は、委託予定事業者を決定するプロセスの一環として、新たに設置する委託事業者選定審査会において審議、決定していただく予定である。
Q.私の質問
「災害時には、平時の弱点がより顕在化する」と言われる。
学校と留守家庭児童会室の連携や職員の働き方など、小学校の臨時休校中の緊急的・臨時的な児童生徒の居場所の検証結果については、保育の必要な子どもたちの居場所の確保について、また、その子どもたちを支える職員体制について、留守家庭児童会室運営のリスクマネジメントの一助になることを期待している。
しかしながら、新規事業である放課後キッズクラブの実施に今回の検証結果が活用できるかというと、事業目的が異なるので注意すべきである。
その小学校の臨時休業に際しては、直営であったからこそ可能となった留守家庭児童会室の緊急対応だったと思うが、今回、留守家庭児童会室の委託も検討するというのであれば、緊急的な対応についても、業務仕様書等に反映されるのか、伺う。
A.学校教育部長の回答
緊急時・災害時の基本的な対応並びに業務内容変更にかかるリスク分担について、仕様書等に定めていく。
Q.私の質問
緊急時・災害時のことも、「基本的な対応」について定めるだけである。それが契約型業務執行の限界であり、今回の新型コロナウイルス対応が委託事業であれば、大変困難な状況に陥っていたと思う。
次に、留守家庭児童会室の委託も含む委託事業が委託できなかった場合の対応について、予算も含めて伺う。
A.学校教育部長の回答
事業者の応募がなかった場合など、委託での実施ができなかった場合、4校で直営によるキッズクラブ導入を行い、児童会室の職員を中心に会計年度任用職員も活用しながら、児童の安全が確保できる体制構築に努めていく。
なお、委託での実施ができなかった場合は、予算の見直しが必要であると考えている。
O.私の意見
委託での実施ができなかった場合、4校で直営の放課後キッズクラブを実施するとのことであるが、その方針は理解できない。
留守家庭児童会室の運営においても人員確保が困難な状況の中、放課後キッズクラブ事業もあわせて実施する人員を確保できると考えておられるのか。
そもそも、当初は直営で1校の予定であった放課後キッズクラブの運営を2校で行うということについても、現場にしっかりと説明をされているのだろうかと懸念される。
児童福祉法を根拠とする放課後児童育成事業については、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて小学校の臨時休業措置が行われた際に求められた役割や、その中で果たした役割などが改めて注目されている。
放課後児童支援員の勤続や資質の確保・向上を図るため、厚生労働省は、人材不足解消策として、キャリアアップ処遇改善事業等の支援を用意している。しかしながら、市町村における活用はなかなか進んでいないのが実情のようである。
子どもたちと向き合う職員が安定して働き続けられること、研修等を通じて必要な専門性を高めていくことができることこそが、子どもたちが安全で豊かに放課後を過ごせることにつながると私は思っている。
子どもにとって豊かな放課後環境の整備のためには、国制度も活用しながら、留守家庭児童会室職員の処遇改善を図り、人材を確保するとともに、新たな事業の実施に向けては、現場職員の意見もしっかりと聞きながら、焦ることなく丁寧に進めていただくことを強く求めておく。
児童の放課後対策に関しては、2019(令和元)年6月定例月議会の一般質問でも取り上げています。
▶ 2019(令和元)年6月定例月議会
小学校が臨時休業となったこの間の留守家庭児童会室での緊急対応等、学校臨時休業中の児童の居場所の運営について質問しました。6月定例月議会、一般質問の報告④です。
▶ 令和2年3月に枚方市教育委員会が策定した「児童の放課後を豊かにする基本計画」、及び「児童の放課後を豊かにする基本計画(概要版)」はこちらから。
放課後キッズクラブのイメージについて、第14回の児童の放課後対策審議会の配付資料より引用しました。
▶ 総合型放課後事業(放課後キッズクラブ)について(資料1)(※クリックするとPDFファイルが開きます。)
一般質問の中で、「放課後キッズクラブ」について、何人かの議員から質問がありました。
新規事業として検討している「放課後キッズクラブ」モデル事業の実施は、令和2年度、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて実施できなかったけれども、小学校の臨時休校下において、図らずも留守家庭児童会室への在籍の有無にかかわらず、同一小学校区の児童がともに過ごした「児童生徒の居場所」が実施された。この検証結果の一部について、次年度に実施を予定している「放課後キッズクラブ」の実施に要する検討へ活用可能であると「児童の放課後対策審議会」からも意見をいただいている、という答弁が繰り返されていました。
確かに「一部の活用が可能」というエクスキューズはあるのですが、「児童の放課後対策審議会」の意見を適切に伝えているのだろうかと不安を覚えました。
「災害時には、平時の弱点がより顕在化すると言われるので、そのような観点からの検証結果の活用、リスクマネジメントはありうるが、事業目的が異なるので注意が必要」と私の限定的な意見はホームページに掲載しています。
▶ 「児童生徒の居場所 検証結果報告書」を市は公表しています。ただ、新規事業として検討している「放課後キッズクラブ」の実施に今回の検証結果を活用できるかという点については注意が必要です。
児童の放課後対策審議会の意見も「児童生徒の居場所 検証結果報告書」の限定的な活用を意図していると思われますので、市が公表している「児童生徒の居場所 検証結果報告書(令和2年9月)」から、児童の放課後対策審議会の意見部分(全文)を以下に引用します。ご一読いただければと思います。
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5 児童の放課後対策審議会の意見等(※9~10ページより)
8月4日(火)開催「第14回児童の放課後対策審議会」及び審議会後の意見等を取りまとめたもの。
(1)児童生徒の居場所について
児童生徒の居場所の運営を担った児童会室職員、教職員の意見からは、自身の感染リスクという不安要素を抱えつつ、子どもの居場所を確保するための物的、心的、組織的対応への尽力が明らかになった。立場や所属を超えた人員による連携と協働が、そこに子どもを通わせながら社会機能を維持するために就業継続していた保護者を支えたことは、保護者の意見等にも表れている。このことから、事業における連携と協働の重要性は明らかとなったが、一方で、この連携と協働は「新型コロナウイルス感染症の拡大という緊急時」という条件下において行われたものであることにも着目しておく必要がある。
また、借用教室等の確保や個別対応等の業務の過重負担、人員確保の困難さについては、勤務時間延長や支援を必要とする児童への対応を可能とする人員の確保といった「量」的な問題と、子どもの安全を確保しながらその適切な生活を支援できるスキルを有した人員の配置といった「質」的な問題の両面から考慮する必要がある。
今回の取り組みにおいては、新型コロナウイルス感染症拡大防止を含む子どもの安全が最優先されたが、放課後キッズクラブでは、こうした子ども同士の感染拡大防止を踏まえた上で、子どもたちの遊びの機会と場を保障することが課題となる。子どもの自由な遊びと安全確保の両立には、様々な工夫が必要である。
今後、放課後キッズクラブ実施に際しては、それぞれの事業目的が達成されるような活動内容が展開されることとなり、「量」と「質」の問題は、子どもの安全確保を前提としながら、それぞれの事業目的の達成と相乗効果の向上を果たすための観点から、検討が必要である。
(2)放課後キッズクラブ実施に向け検討すべき事項
3月に策定された「児童の放課後を豊かにする基本計画」において、「すべての児童が自発的、自主的な諸活動を行うことができる環境の整備」と「児童が自発性、自主性を発揮することができるような働きかけ」を基本的な考え方とする「放課後キッズクラブ」の実施に向け検討すべき事項は、以下のとおりである。
① 緊密に連携・協働を行う体制の検討
② それぞれの事業目的の達成と相乗効果の向上の検討
③ 本市の財政状況を踏まえた効果的・効率的な事業運営の観点から、総合的な運営を行う望ましい主体の検討
④ 地域の方々との連携の検討
⑤ 教員の負担とならないような配慮に関する検討
(3)「児童生徒の居場所」の検証結果の活用
参加児童の区分や運営体制等に鑑みて、児童生徒の居場所の取り組みの中で、その検証結果を「キッズクラブ実施に要する検討」に活用し得る事項としては、第Ⅰ期(3/2~4/7)では、検討事項の①、第Ⅱ期以降(4/8~)では、検討事項の①⑤が挙げられる。
なお、参加人数等については登室自粛要請下であったこと、活動内容については児童の感染拡大防止の観点から、それぞれ相当の制限があったことが推察され、活用に際してはそのような条件の相違に対する留意が必要である。
(4)基本計画の具体化に向けて
図らずも留守家庭児童会室への在籍の有無にかかわらず、同一小学校区の児童が共に過ごし、立場や所属を超えた人員が連携と協働をもってその運営にあたった点に鑑みて、「児童生徒の居場所」の検証結果の一部(とりわけ、事業における連携と協働の重要性とそのあり様)について、「キッズクラブ実施に要する検討」へ活用可能だと判断する。
一方で、事業の具体化に際しては、検討事項の②③については、十分な検討が必要である。
5つの検討事項は、平常時と緊急時の両方に対応できるという観点から行われるべきであり、特に、その運営を担う望ましい主体に関する検討(検討事項③)に際しては、財政的・経費抑制の面での効果・効率性のみならず、基本計画の基本理念や公共・公益性を理解し、児童福祉法、その他関連する省令等の法令遵守が担保され、さらに必要な体制構築を優先しうるものでなければならない。
民間事業者による運営に際しては、長年にわたって蓄積されてきた活動内容や、それを支えた職員、関係者による運営体制、保護者や学校・地域との信頼関係が維持・向上できるよう、行政による監督と必要に応じた指導が不可欠である。
基本計画の基本理念が真に具現化され、「すべての児童の放課後を豊かにするための取り組み」という目的が果たされることを期待する。
▶ 令和 2年9月に学校教育部が公表した「児童生徒の居場所 検証結果報告書」の全文はこちらから。
▶ 2020(令和2)年8月4日に開催された第14回の児童の放課後対策審議会の「会議録」はこちらから。