「介護の仕事をするなら枚方市で」という評価・評判を獲得できる、公的施策の構築を。「介護人材の確保に向けた取り組み」について質問しました。12月定例月議会、一般質問の報告⑤です。
枚方市議会議員の奥野みかです。
ここでは、「5.介護人材の確保に向けた取り組みについて」の報告です。
90歳超の団塊世代に加え、団塊ジュニア世代が65歳以上となることで高齢者人口がピークを迎える2040年には大量の介護人材不足が見込まれています。「やりがいのある専門的な仕事」であるにも関わらず、社会的な評価や処遇などが全く伴っていない介護労働について、行政・事業者・医療機関等、さらにサービス利用者である市民が一体となって変革し、「介護の仕事をするなら枚方市で」という評価が受けられるよう、若者や外国人材に対する本市独自の介護(ケア)労働の支援施策の検討を求めました。
以下、12月19日の一般質問でのやりとりを掲載します。
2.介護人材の確保に向けた取り組みについて
Q.私の質問
団塊の世代全員が75歳以上の後期高齢者になることで迎える超高齢社会の問題は「2025年問題」と言われ、さらに少子高齢化が進展し、90歳を超える団塊の世代に加えて団塊ジュニア世代が65歳以上となり、高齢者人口がピーク迎え、介護サービス給付が著しく増大するなど、様々な問題が発生する問題が「2040年問題」と言われている。その中で、最も深刻な課題は、労働人口の激減に伴い、介護人材が全国的に不足するということである。
「ひらかた高齢者保健福祉計画21(第8期)」では、高齢者が可能な限り住み慣れた地域で、その有する能力に応じて自立した日常生活を営むための「地域包括ケアシステム」の2025年の実現を掲げ、在宅医療と介護連携のための取り組みを拡充するとしている。しかし、介護人材不足がさらに進めば、「在宅」で望む介護を受けられる高齢者は一部の人のみ、という事態になってしまうのではないか。
「計画」には、「必要となる介護人材の確保に向け取り組みを進める」との記載があるが、現在、市としてどのような取り組みを行われているのか、また、今後はどのように進めていくつもりであるのか、伺う。
A.林健康福祉部長の答弁
介護人材確保の取り組みとしては、大阪府や事業者が行っている、介護助手や生活支援員など多様な人材の活用促進や、潜在介護福祉士等の再就職支援推進といった取り組みとの連携を行っているほか、市ホームページにおいて、介護職の魅力向上のため動画等の周知等を行っている。
今後も、こうした取り組みを引き続き推進するとともに、子どもたちにも介護や介助の仕事への理解を深め、「将来なりたい仕事」の一つと意識してもらえるような取り組みについても検討してまいりたいと考えている。
O.私の意見
大阪府や事業者と連携した取り組みの継続、さらには、介護(ケア)労働の社会的評価の向上につながる取り組みを積極的に実施していただくよう、要望しておく。
市内の在宅介護関連の事業所数は、昨年度、767事業所、従業員数は8,932人。第8期計画における居宅介護サービス利用者の2022(令和4)年度推計では、ひと月当たりの利用者数が「要支援者5,634人」、「要介護者26,605人」の「合計32,239人」となっている。これらは、需要や供給の一つの指標に過ぎないが、在宅介護、特に訪問介護系の事業所は、効率的な人員配置などが難しく、介護人材不足は非常に大きな負担となる。
(第8期計画「第4章_介護保険サービス量の推計と介護保険料」より引用)
Q.私の質問
大阪府の推計では、2040年には約67,000人の介護職員の不足が見込まれている。介護人材不足のそもそもの大きな要因として、少子高齢化による生産年齢人口自体の減少があるため、今後の介護業界を支えるためには、現に拡大している外国籍の介護職員の雇用や育成などの支援を行政が行うことも検討すべきではないかと思うが、市の見解を伺う。
A.林健康福祉部長の答弁
外国籍労働者については、「公益財団法人 介護労働安定センター」が、全国で実施した2021(令和3)年度「介護労働実態調査」の結果によると、受け入れ事業所は6.2%となっているが、新たに活用する予定があるとする事業所は11.7%となっており、一定のニーズがあるものと考えている。
一方で、外国籍労働者が「訪問介護」を行うためには、介護福祉士の資格取得が必須なうえ、高い日本語能力も必要とされていることから、日本では雇用が進んでいない状況であると認識しており、他自治体の動向などを注視しつつ、利用者や市内事業者の意向なども踏まえながら、行政の支援の必要性等について検討していく。
(2021年度「介護労働実態調査結果(介護労働安定センター)」より引用)
O.私の意見
2017年、国は在留資格制度を改正し、介護専門職の在留資格を作った。現在、ベトナムなどアジアの国々の介護人材は、すでになくてはならない人材になりつつある。しかし、介護人材は国際的に見ると先進各国による争奪戦になっている。必ずしも日本が働き先として選ばれるとは限らない。
雇用に際しての手続きの問題、ことばの問題、生活上の問題、職場における人間関係、外国人の介護サービスを受け入れる被介護者側の意識の問題などさまざまな課題があるが、現状では雇用主となる介護業界の皆さんに「まかせきり」になっている。「行政の支援の必要性等について検討していく」というご答弁をいただいたので、よろしくお願いする。
最後に介護人材確保における問題点に関する意見である。
まず、1点目。介護(ケア)労働が「やりがいのある専門的な仕事」であるにも関わらず、その位置づけ、社会的な評価、処遇などが全く伴っていないわけである。これを行政、事業者、医療機関など関連事業者、さらにサービス利用者である市民が一体となって変革していくことが重要で、必須でもある。そして、本市がそのような取り組みを積極的に推進した結果、「介護の仕事をするなら枚方市で」「枚方で介護職として働いてよかった」という評価・評判を獲得できれば、激烈な介護人材の争奪戦を乗り越えることができるのではないか。また、そうならなければ、2040年問題に対応することはできないと考える。
2点目は、獲得する介護人材のターゲットである。外国人人材については、先に申し上げたが、介護職の育成機関が少子化と介護職の人気のなさで生徒募集に苦しんでいる。若い人たちに介護業界などにおけるエッセンシャルワーク、介護(ケア)労働を支えてもらえるようにするための対策を行う必要があると考える。
要介護状態等となっても、可能な限り、住み慣れた地域において継続して日常生活を営むことができる「地域包括システム」を成り立たせるためにも、在宅医療と介護の連携を強化するためにも、介護離職ゼロ(低減)のためにも、そもそも、現行の介護保険制度を有効な制度として持続させるためにも、介護(ケア)労働の担い手の確保は必須の課題である。「介護の仕事をするなら枚方市で」と評価してもらえる本市独自の公的施策の構築を要望する。
【参考】
▶ 「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数」について(厚生労働省HPより引用_20210709)
▶ 「介護労働実態調査」について
▶ 「2040年問題」について
総務省では、2040年頃の自治体が抱える行政課題を整理し、今後の自治体行政のあり方を展望し早急に取り組むべき対応策を検討するため、「自治体戦略2040構想研究会」を設置し、2018年に報告書を公表しています。また、第32次地方制度調査会では、2040年頃から逆算し、今後の地方行政体制の在り方について、顕在化する諸課題が議論されています。
(第32次地方制度調査会)
◆ 2040年頃から逆算し顕在化する諸課題に対応するために必要な地方行政体制のあり方等に関する答申(2020年6月26日)
(自治体戦略2040構想研究会)
◆「第一次・第二次報告(概要)」