「大阪の子どもたちを無料招待」の取り扱いは、1回目も2回目も不明な点だらけ。万博運営費用に対する市町村分担金のような性格の支出は不適切。子どもたちの万博入場料の公費負担について、質問しました。12月定例月議会、一般質問の報告③です。

2023/12/18

枚方市議会議員の奥野みかです。

ここでは、「3.子どもたちの万博入場料の公費負担について」の報告です。

「2025年関西・大阪万博」について、ごみや残土の処分場として埋め立てられた人工島・夢洲や周辺の工事をめぐっては、想定を上回る地盤沈下や軟弱地盤への対応が求められ、次から次へと関連事業費の上振れが報告されています。そのような中、大阪府が「大阪の子どもたちを無料招待」として打ち出した入場チケットの取り扱いについては、1回目も、2回目も、まだまだ不明な点だらけです。まずは、大阪府に対して、公金の執行という観点も踏まえ、しっかりとした説明を求めるよう要望しました。

本市から万博会場の夢洲までは遠く、往復の移動時間が長くかかります。低学年には公共交通機関を使っての移動は困難ですし、観光バスの借り上げの困難性も想定されます。1回目の万博入場料の大阪府による負担(公金の執行)について、たとえ入場料が無料になったとしても、学校として判断すべきことが多々あることから、「学校行事等」である遠足の行先に万博を選択するかどうかの判断については、市や教育委員会が押し付けることなく、各校が保護者の理解も得て、児童・生徒の安全が脅かされることのないよう、独自に判断が行えるよう要望しました。

また、2回目、当初予算に7,000万円程度を見込むと答弁された市の負担(公金の執行)は、配付対象者による入場券の確実な使用を当然に前提としたものであるべきで、赤字発生の危険性が高い万博運営費用に対する市町村分担金のような性格の支出は決して認められるものではないと指摘しました。

 


 

以下、12月18日の一般質問でのやりとりを掲載します。

3.子どもたちの万博入場料の公費負担について

Q.私の質問

大阪府は、2025年に開催される大阪・関西万博において、「大阪の子どもたちを無料招待」との考えを示し、その手法として、「府内の小・中・高校生等は、学校教育活動の一環として、学校単位で1回招待」、「府内在住の4・5歳児や府外の学校への通学者などは、各家庭等からの申請に基づき、入場券を1枚配付」と説明資料に記載されている。
そこでまず、本市の公立小中学校での対応について、教育委員会の考え方を伺う。

(※2023(令和5)年度第3号補正予算(案)より抜粋)

(※万博への参加促進に関する取り組み【2023年8月_政調資料(万博推進局)】より抜粋)

 

A.今市総合教育部長の答弁

大阪府教育庁で実施される、大阪・関西万博への児童・生徒の1回目の無料招待についてであるが、本市の公立小中学校については、万博を体験することは貴重な機会であることから、基本的には参加する方向で検討したいと考えている。
本市において、学校行事として参加する上で、いつの時期に実施するのか、あるいは移動手段をどのように確保するかなどの課題について検討する必要があるが、現時点では、学校行事として実施を検討するための具体的な情報が十分に示されていないため、今後も、大阪府教育庁から情報収集を行いながら検討を進める予定としている。

O.私の意見・要望

遠足は学校の教育課程上、「学校行事等」に位置づけられる教育活動である。これまでも、小学校、中学校及び高等学校の遠足の行き先選択については、各校において様々な事情や条件を踏まえて自主的に決められてきた。
大阪・関西万博会場の夢洲は、大阪市内とは違って本市からは遠く、往復の移動時間が長くかかる。また、近年観光バスについては、借上げ費用が極めて高額になっている上に、万博開催期間に借り上げることは、極めて困難になると思われる。電車などの公共交通を使って、乗り換えの多い長時間移動は、低年齢児童の場合、困難である。いずれにしても、たとえ入場料が無料になったとしても、運賃等の費用負担の問題、見学できる時間や内容など、学校として判断すべきことが多々ある。従って、学校行事等として万博を遠足の行先にするかどうかの判断については、決して市や教育委員会が押し付けることなく、各校が保護者の理解も得て、独自に判断ができるようにしていただくことを求めておく。
とりわけ、高温期における熱中症や天候悪化等に対する緊急対応を含め、児童・生徒の安全が脅かされることのないように、それらの対策や対応のあり方を、大阪府と充分詰めておくよう、要望しておく。
また大阪府は、小・中・高校の在学者については、大阪府が入場券を学校に配付して学校行事として実施するが、何らかの事情で学校行事を欠席した児童・生徒には、学校から入場券を配付し、「個別」で入場できる方法を検討されているようであるが、詳細は未定とのことである。
大阪府が買い取った入場券を配付するという方法は、公金である税支出の執行方法として問題があると考えるが、学校行事を欠席した児童・生徒に入場券を配付することについては、市町村が具体的な検討を進めるための判断根拠が十分に提供されていないように思う。
子どもたちだけで万博会場に行くことは困難であるから、子どもの交通費に加えて、保護者の交通費、保護者等の入場料等、ご家庭への経済的負担も大きなものになる。さらに、府外の学校に通っている児童・生徒の取り扱いはどうするのか等についても不明である。こうした点について、大阪府に対してしっかりとした説明をすること求めるよう要望しておく。

Q.私の質問

大阪府は、1回目のチケット代は府が全額負担するとのことであるが、2回目以降は市町村側の負担になるとの方針を示されている。府は市町村側に2回目以降の入場料の負担を呼びかけており、大阪市では、夏休み期間に何度でも来場可能な「夏パス」を市内の子どもたちに配付すると発表している。
府は、2回目以降の入場料の負担をどうするのか、市町村に対して回答するよう求めていたようであるが、本市はどのような回答を府に対して行ったのか、伺う。また、予算計上についてはどのようにお考えかについても、あわせて伺う。

A.田中総合政策部長の答弁

大阪・関西万博への子ども達の万博入場料の公費負担に関しては、子ども達が万博会場を訪れ、世界各国のパビリオンに触れるかけがえのない機会が増えることとなるため、実施に向けた検討が必要と考えており、大阪府の「子どもの万博会場への招待にかかる意向調査」においては、実施に向けた課題等、条件を付記した上で、「府と連携して実施する」を選択し、回答したところである。
また、万博入場料に係る予算計上については、2024(令和6)年度の当初予算への計上に向けて調整を進めており、2025(令和7)年4月1日時点で4歳から17歳までの子ども達を対象とし、対象人数分のチケット料金のほか、大阪府で構築中のシステム利用料を計上する予定である。現時点における試算としては、7,000万円程度を見込んでいる。

Q.私の質問

子ども達が万博会場を訪れる機会が増えるとして、2回目以降の子ども達の万博入場料を市負担で進めようとされているが、私は大阪府が実施する1回目も含め、各市町村が実施判断する2回目以降の子どもの万博会場への入場料負担についても、様々な観点での検討が必要だと考えている。
先に述べたように、枚方から万博会場までは遠く、経路も方法も費用についても、子どもだけで行かせることには問題が多々存在する。特に児童の場合は無理である。そうすると、児童・生徒に対して、保護者の判断抜きに入場券を配布すると、万博へ子どもを連れて行くことを強いることになりかねない。経済的なことを含め、各ご家庭には様々な事情がある。
そして、チケットは全員に配付するのか、希望者のみか。もし希望者のみの場合、いつ、どのように、誰に(保護者?)希望を把握して、どのように配付するのか。万博入場料の市の費用負担は実績払いなのか等。様々な課題があると考える。
これらの山積する課題への対応について、市の見解を伺う。

A.田中総合政策部長の答弁

子ども達への2回目以降の万博入場チケット配付については、より効率的な事務執行を行う観点から、現在、大阪府で構築中の電子申請による入場券発行システムの活用を前提として検討を進めているところである。同システムを活用する場合、入場チケットは全員配付ではなく、希望した子どもの保護者などが申請した場合にのみ配付されるものと認識している。また、大阪府から同システムは実績払いを可能なものにしていく方向であると聞いているが、配布方法等については現時点で明らかになっていない。引き続き、不正使用等に関するリスク回避の視点等も含め、大阪府と調整していく考えである。
なお、府のシステムが活用できない場合には、市独自で仕組みを構築する必要があることなど新たに複数の課題が生じると思われるが、子ども達の無料招待の実現に向けて検討を進める必要があると考えている。
また、同行する保護者に関する課題については、今後、子ども達の無料招待の実施に向けた整理を行う中で、支援の要否を含め、検討を進めていく。

O.私の意見・要望

万博入場チケットの取り扱いについては、1回目も、2回目も、まだまだ不明な点だらけある。特に2回目、市として執行する公金の使い方については、「当初予算に7,000万円程度を見込んでおられる」とのご答弁であったが、関西同友会の大企業のように自治体が前売券を購入して配付するという方式を採ることは、公金の執行として不適切である。公金の執行という観点からは、配付対象者が万博に行こうと行くまいとおかまいなしでは不適切なのである。つまり、配付対象者による入場券の確実な使用、すなわち、市が経費負担する対象事実が「前提」として存在しなければならない。そうしたことを無視すれば、赤字発生の危険性が高い万博運営費用に対する市町村分担金のような性格の支出となる。そのような予算については、位置づけも根拠もない支出となるから、とても認められるものではないと指摘しておく。

 


【参考】

▶ 2025年に開催される万博インフラ整備計画の概要(2021)

【追記】

▶ 231219_大阪関西万博に関する国の費用について

 大阪・関西万博、インフラ整備費9.7兆円 政府が全体像示す(毎日新聞 2023/12/19)

 


【参考】

 万博子どもの2回目招待、行政が費用出すべき?悩む市町村…1回目は府、以降は各自治体の負担に(読売オンライン_2023/12/09)

注:ここでは枚方市は「検討中」の25市町村と記されていますが、12月18日、「「府と連携して実施する」と答弁がありました。

 吉村知事「数を増やすためでない」 万博への子ども複数回無料招待で(朝日デジタルデジタル 2023/11/25)

▶ 万博への子どもの複数回無料招待 高槻市長「市町村支出に賛否両論」2023/11/23)

【追加】

 万博の大阪府市負担265億円増、1378億円に 子供無料招待など影響(2023/12/22)

 万博「1日で回れる」答弁書、閣議決定 大阪市は複数回の来場推奨(2023/12/22)

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