会派で視察。1月22日、新病院開院から7年になる大阪精神医療センターに行ってきました。大阪精神医療センターは大阪府の依存症治療拠点です。

2020/01/22

1月22日、2013(平成25)年4月に473床の新病院として開院して7年になる「大阪精神医療センター」を、山田府議会議員と会派(連合市民の会)で視察させていただきました。

植樹した桜の花も大きくなり、今年、追加の植樹をしようかと考えている。令和3(2021)年からは、依存症や認知症といった社会に求められている課題のよりよい成果をめざすため、病院の研究機能の充実を考えている、と地域連携部長の説明は始まりました。今後は、「医療」と「人材育成」と「研究」の3本柱で病院のさらなる充実に努めていくとのお話でした。

説明を受けた後、児童・思春期病棟「みどりの森」、緊急救急病棟、救急外来などの施設見学をさせていただきました。外来や児童・思春期病棟の前など、院内の壁に癒される素敵な絵が展示されていましたが、大阪府所蔵の美術作品(全38点)を借り受けて展示されているとのことでした。太陽の光が温かく差し込む施設には、人権を配慮したさまざまな工夫も施されていました。また、入院患者の受入れをフレキシブルに行えるよう、病棟内を区切る壁は移動可能な構造になっていました。

外来受診の方法としては、児童・思春期外来の初診は、2019(令和元)年6月より完全紹介型予約制です。精神科外来の初診は原則予約制を採用していませんが、2019(令和元)年6月より医療機関等からの完全紹介型に。そのことにより、他の医療機関でも対応できる患者の受診が減り(約7~8割)、受診がスムーズに効率的になってきているとのこと。
受診される病気としては、以前は統合失調症が最も多かったようですが、現在は発達障害が9割と多く、統合失調症・躁鬱・強迫神経症等はまちの医療機関(心療内科)で診察できているようだとのことでした。

依存症治療拠点である大阪精神医療センターは、アルコール・ギャンブル・薬物に問題を感じておられる方の治療にも取り組んでおられます。依存症は自分ひとりの力や家族だけで対応するのはとても難しいことから、「病気」であることを認識して早期に適切な医療機関等への相談につながればと思います。
大阪精神医療センターでは、依存症治療プログラムの紹介も行われているので、必要な情報提供ができればと思っています。

とはいえ、依存症対策は、相談・治療だけで完結するものではなく、家族や地域への啓発も含め、地域での生活支援のためのさまざまな取り組みも必要になってくると思いますので、関係機関との連携しながら、回復することができればと思います。
なお、大阪精神医療センターでは、「『依存症』から立ち直るための本」も発行されているとのことでした。

 


➣当日、説明いただいた「病院の沿革」及び「病院の現状」は次のとおりです。


◇病院の沿革

「府立中宮病院」が精神科300床の病院として開院したのは大正15年4月。その後、1970(昭和45)年7月に自閉症児施設「松心園」42床が開設。その後、緊急救急病棟や大規模ケアセンターも設置され、2003(平成15)年10月には「府立精神医療センター」に名称変更。
2006(平成18)年4月からは「地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立精神医療センター」として新たな病院運営となり、2007(平成19)年9月には医療観察法専用病床も開設。
施設整備及び維持管理にかかる再編整備事業としては、平成22年2月~平成40年3月までを事業期間とする総事業費211億3,853万円(うち建築費125億6,499万円、維持管理費85億7,354万円)のPFI手法を採用した整備事業に取り組まれ、2013(平成25)年2月の新病院施設完成以降、施設管理業務・警備業務・窓口業務の維持管理業務は民間事業者による運営が行われているとのことでした。
その後、2017(平成29)年4月に「大阪精神医療センター」に名称変更となり、2018(平成30)年3月には大阪府災害拠点精神科病院に指定されており、DPAT[※注]として、東日本大震災時には100名ほどの職員が応援に駆け付けたとのこと。また、依存症治療拠点として、アルコール・ギャンブル・薬物に問題を感じておられる方の治療にも取り組んでおられるとのことでした。

[※注] DPAT(Disaster Psychiatric Assistance Team)は「災害派遣精神医療チーム」のことで、自然災害や航空機・列車事故、犯罪事件などの集団災害の後、被災地域に入り、精神科医療および精神保健活動の支援を行う専門的なチーム。災害急性期に活動できる機動性を持ったトレーニングを受けた医療チーム。なお、「災害派遣医療チーム」は、DMAT(Disaster Medical Assistance Team)である。

 

再編整備事業のポイントは建物の集約配置診療・療養機能の充実で、内容としては以下のとおり。
・13棟に分散していた建物を5棟に集約。比較的低層な建物で、敷地面積約76,700㎡に延床面積約30,595㎡を確保。
・個室・保護室の充実(旧病院76床→新病院181床全体473床の約38%
※473床の内訳→「4床数」56床、「2床数」34床、「個室」109床、「保護室」72床
※多床室で受け入れられない患者の増加。
・依存症等にも対応できる外来環境の整備など、外来部門の充実
・児童期・思春期部門の一体的な運営(みどりの森:児童期病棟「たんぽぽ」25床・思春期病棟「ひまわり」25床)
※たんぽぽは、児童福祉法に定める医療型障害児入所施設でもある。
・医療観察病棟(さくら病棟)の整備(5床→33床
※全国で33病院のうちの1つ。(まだ都道府県に1つにはなっていない。)

 


◇病院の現状

2018(平成30)年度の病床利用率は86.8%、2019(平成31)年度、2020(令和2)年1月までの病床利用率は87.2%と全国的にも高い利用率とのことでした。
外来9診で対応している延べ患者数については、2018(平成30)年度72,151人、一日平均では295.7人。

2018(平成30)年4月、精神科の単科病院なので、地域医療機関との連携強化も必要であるとの考えより、地域連携部に地域連携推進室を新設。医療機関や関係機関からの受診相談・入院相談の円滑な受入れという「前方支援」と、退院後の地域での生活への支援など地域移行推進体制の構築などの「後方支援」に取り組んでおられます。依頼から受入れまでの流れについては「原則20分以内の判断」に努め、入院患者は増加し、成人病棟の新規入院患者数は2018(平成30)年度、過去最高の1,111人。今後も、地域と連携した精神科でありたいとのことで、①保護室確保(長期にわたる保護室占有者問題)、②長期入院者の地域移行(通院阻害要素の解決)、③社会環境の変化への対応(認知症・身体合併症・依存症)の3点が今後の主な課題であるとのこと。
また、研究がまだまだ進んでいない分野の研究が進めば治療も充実するとの考えより、さらなる研究機能の充実のため、2021(令和3)年4月の「(仮称)こころの研究リサーチセンター」設置に向け検討を進めているとのことでした。

 

 

 

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