地域福祉の担い手である民生委員が活動しやすい環境整備について質問しました。6月定例月議会、一般質問の報告④です。

2021/06/22

枚方市議会議員の奥野みかです。

ここでは、「4.地域福祉の担い手である民生委員が活動しやすい環境整備について」の報告です。

民生委員・児童委員、主任児童委員の任期は3年で、給料はなく交通費など活動費を支給される非常勤の公務員で、「民生委員法」および「児童福祉法」に基づき設けられており、厚生労働大臣が委嘱しています。委員は、住民の立場に立って福祉や児童に関するさまざまな相談に応じ、必要な援助を行うほか、福祉事務所や関係行政機関の事務等に協力し、社会福祉の増進に努める役割を担います。また、児童福祉専門担当員として主任児童委員が委嘱され、関係機関との連絡調整等にあたっています。

委員の定員は自治体規模や世帯数で決められます。枚方市の民生委員・児童委員の定数は545人(民生委員・児童委員500人+主任児童委員45人)です。

地域の福祉活動を担う民生委員・児童委員や主任児童委員は、新型コロナウイルスの流行や自然災害が多発する中、ひとり暮らしの高齢者の家庭訪問や児童虐待の早期発見など、地域の見守り役としての重要性が増すばかりです。今回、コロナ禍の中における、民生委員・児童委員及び主任児童委員の活動について、まずは伺いました。

感染拡大防止の観点から、さまざまな活動が制限される中においても、多機関連携や地域連携の中で、継続的な支援を行うため、できる限りの活動を行っていただいていることを改めて確認させていただきましたが、高齢化でなり手が減る等により、民生委員・児童委員及び主任児童委員は、全国的に「欠員」が広がっているのが現状です。

今回、一般質問で取り上げるきっかけとなったのが、以下の日本経済新聞の記事でした。

長寿社会のリアル ~縮む地域の「見守り網」 担い手、高齢で欠員相次ぐ(日本経済新聞、2020年10月31日)

日本経済新聞の調べによると、2019年12月時点で全国約21万8,000人の定員総数に対し、任命された委員数は約20万7,000人。2000年頃までは1%未満で推移していた全国平均の欠員率は4.9%。都道府県別で欠員率が最も高かったのは沖縄県の23%で、神奈川県(8.6%)、東京都(8.5%)、大阪府(7.4%)と大都市圏が続きます。さらに、公式統計がない市区町村単位の調査も実施し、全体の54%にあたる940市区町村で委員定数を満たしていないこと、13%にあたる230市区町村では、1割以上の欠員が発生、一部では欠員率が3割以上のところもあることを明らかにされています。この欠員率は、都市部においてさらに深刻で、人口10万人以上の自治体に限ると、欠員が1割以上の自治体は48市区で、その割合は全国平均を上回る17%となっています。東京都や大阪府で欠員率が総じて高く、東京都東久留米市は33.8%、東京都多摩市は26.0%。ちなみに大阪府枚方市は、人口10万人以上の自治体のうち24番目、14.4%と記載されていました。

新型コロナの流行や自然災害の多発によって、地域の見守りネットワークの重要性は増しています。欠員が増え続けると行政の福祉サービスが行き届かず、感染症流行時や災害時も支援体制がもろくなってしまいます。地域の見守りネットワークの担い手となる民生委員・児童委員、主任児童委員のバトンを幅広い層でつないでいく仕組みを、行政と住民が一緒になって真剣に考えていく時期に来ているとも記されています。

今回、枚方市の民生委員・児童委員、主任児童委員の現状について確認したところ、2021年4月1日現在、民生委員・児童委員の定数は500人に対して委嘱数は443人、欠員は57人で、欠員率は約11%、主任児童委員の定数は45人に対して委嘱数は35人、欠員は10人で、欠員率は約22%、男女比については民生委員・児童委員は男性29%、女性71%、主任児童委員は男性6%、女性94%の割合で、平均年齢は、民生委員・児童委員は67.9歳、主任児童委員は54.7歳であること、そして、欠員が生じている地区においては、校区内の他の委員が担っていただいているのが現状であることを報告いただきました。

日本経済新聞の記事の中で、同志社大学の上野谷加代子名誉教授は「民生委員は定年退職者の仕事という考え方を変えるべきだ」とし、「会議や研修を夜間・休日に開催するなど、会社勤めでも委員を引き受けやすくする必要がある。業務を取捨選択し、委員の負担を軽減するのも一案」と記されていました。上野谷加代子名誉教授は、枚方市社会福祉審議会の会長も担っていただいていますので、枚方市の現状を踏まえて、担い手不足解消のための方策についてのご意見をいただければありがたいなと思いました。

また、同じ記事の中で、石川県の野々市市では、新型コロナウイルス禍で対面活動が難しい中、タブレット端末を使えば、自宅など離れた場所でも意思疎通でき、仕事と委員の活動が両立しやすくなるとして、昨年、全民生委員・児童委員に市がタブレット端末を配布し、業務のオンライン化に取り組まれたという事例の紹介もありました。業務のオンライン化・見守り活動のオンライン化が進めば、負担軽減や活動のしやすさにつながり、仕事を持ちながら活動していただける可能性も広がるのではないかと思われます。

今回の新型コロナワクチンの接種において、高齢者の皆さんに予約システムを使っていただくためには人的支援が必要なことが明らかになりました。今後、さまざまな行政手続きがオンライン化されても、オンライン環境にうまく対応できず取り残されてしまう人が地域には必ず存在すると思います。誰一人取り残さないためにも、そのような人たちの支援に地域で重要な役割を果たしていただけるのが民生委員・児童委員、主任児童委員の皆さんではないでしょうか。

もちろん、ICTの使い方が不慣れな民生委員・児童委員に対しては、まずその方たちから支援が必要です。野々市市では大学と連携して、タブレット端末の操作方法を学ぶ取り組みなども行われたようです。そのような人的支援、ヒューマンサポートの提供とあわせて、民生委員の負担軽減、民生委員のなり手不足解消の観点から、オンライン回線(無線LAN)の確保されたタブレット端末の貸与等に取り組むことを検討いただきたいと要望しました。

 


以下、6月22日の一般質問のやりとりを掲載します。

4.地域福祉の担い手である民生委員が活動しやすい環境整備について

Q.私の質問
地域の福祉活動を担う民生委員・児童委員や主任児童委員は、新型コロナウイルスの流行や自然災害が多発する中、ひとり暮らしの高齢者の家庭訪問や児童虐待の早期発見など、地域の見守り役としての重要性が増していると思う。
コロナ禍の中、民生委員・児童委員及び主任児童委員の活動はどのような状況であったのか、特徴的な活動について、伺う。

A.健康福祉部長答弁)危機管理監の答弁
コロナ禍における民生委員・児童委員の活動については、感染拡大防止の観点から、家庭訪問や高齢者のいきいきサロン、子育てサロンなどの活動は極力控えている状況となっている。そういった中においても、電話やインターフォン越しでの安否確認を行うなど孤立しないよう支援を継続していただいている。最近では、高齢者の新型コロナワクチン接種予約に関しての相談やサポートも行っていただいている。
また、子育て家庭や児童の支援を行う主任児童委員についても、子どもや子育ても関する支援など継続的に活動を行っていく必要があるため、電話による状況確認や小中学校、子どもの育ち見守りセンター、校区福祉委員などと連携、協力しながら、把握しにくくなっている家庭環境の情報収集をするなど、コロナ禍においてもできる限りの活動を行っていただいているところである。

Q.私の質問
民生委員・児童委員や主任児童委員の皆さんには、このコロナ禍においても地域福祉のためにご尽力いただいているが、高齢化でなり手が減るなど、「欠員」が全国的に広がっていると言われている。
そこで、欠員状況・男女比など、本市の民生委員・児童委員及び主任児童委員の現状について、伺う。

A.健康福祉部長の答弁
本市の民生委員児童委員・及び主任児童委員の現状について、令和3年4月1日現在、民生委員・児童委員の定数は500人に対して委嘱数は443人、欠員は57人、主任児童委員の定数は45人に対して委嘱数は35人、欠員は10人、男女比については民生委員・児童委員は男性29%、女性71%、主任児童委員は男性6%、女性94%の割合となっている。なお、欠員が生じている地区においては、校区内の他の委員が担っていただいているのが現状である。

O.私の意見
本市民生委員・児童委員の定数に対する欠員率は約11%、主任児童委員の場合は約22%におよび、校区内の他の委員が欠員地区を担っていただいているとのことである。こういった状況を改善するための努力を始めなければ、地域で重要な役割を担っていただいている皆さんの高齢化が進む中で、取り返しのつかない事態になる危険性があると思う。そこで、委員の皆さんの負担軽減や活動のしやすさを整えることに取り組むことが重要だと考える。
石川県の野々市市では、新型コロナウイルス禍で対面活動が難しい中、タブレット端末を使えば、自宅など離れた場所でも意思疎通でき、仕事と委員の活動が両立しやすくなるとして、昨年、全民生委員・児童委員に市がタブレット端末を配布し、業務のオンライン化に取り組まれている。業務のオンライン化・見守り活動のオンライン化が進めば、仕事を持ちながら活動していただける可能性も広がるのではないか。
さらに、今回のワクチン接種において、高齢者の皆さんに予約システムを使っていただくためには人的支援が必要なことが明らかになったかと思う。今後、さまざまな行政手続きがオンライン化されても、オンライン環境にうまく対応できず取り残されてしまう人が地域には必ず存在するわけである。誰一人取り残さないためにも、そのような人たちの支援に重要な役割を果たしていただけるのが民生委員・児童委員の皆さんではないか。もちろん、ICTの使い方が不慣れな民生委員・児童委員に対しては、まずその方たちから支援が必要である。野々市市では大学と連携して、タブレット端末の操作方法を学ぶ取り組みなども行われたようだが、そのような人的支援、ヒューマンサポートの提供とあわせて、オンライン回線(無線LAN)の確保されたタブレット端末の貸与等に取り組むことを検討いただきたいと要望する。

 


 

今ではライフラインであるスマホ・タブレットを病室でも使えるようにするためにも、孤孤・独立を防ぎ、人とつながりたいという入院患者さんを支えるためにも、まずは、市立ひらかた病院が先行して、全病室におけるWi-Fi環境の整備を行っていただきたいことを、この6月の一般質問で要望しました。民生委員・児童委員、主任児童委員さんへのタブレットの貸与に取り組むことを要望した背景には、おひとり暮らしの高齢者等のICT支援や、オンライン環境の整備につながる仕組みづくりに役立たないかとの思いもありました。なかなか難しくて、解は出ていませんが…。

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