学校を開放して勝手に遊ばせておけばいいというような取り組みは、子どものための「放課後事業」などと言えるものでは決してない。総合型放課後事業実施プランについて質問しました。6月定例月議会、一般質問の報告②です。
枚方市議会議員の奥野みかです。
ここでは、「2.総合型放課後事業実施プランについて」の報告です。
昨年12月の議会の際、市長に、留守家庭児童会室と放課後子ども教室の2事業についての考え方を確認したところ、「留守家庭児童会室」は、保育を必要とする児童の生活の場を確保し、保護者が安心して就労できる環境を整備するという児童福祉の観点からも重要な「子育て支援施策」の一つであることを明言され、「放課後子ども教室」については、保護者の就労に関わらず、すべての児童の自主性や社会性、創造性など生きる力を育み、可能性を広げるための取り組みである、とお答えいただきました。
市長のお答えからも、児童の放課後対策は、校庭や図書室の開放など、「居る場所」さえあればいいというものでないことは明らかです。児童福祉、学びの保障、子どもの社会教育の理念など、それぞれの事業目的を達成するためには何が課題で、その課題解決のために何を行うのか、「総合型」を実施するのであれば、その中でどのように解決されるのか等、想定される課題やリスクを丁寧に検討いただくことが必要であると意見しましたが、2023年度からの「総合型放課後事業」の実施に向けて、果たして、さまざまな検討が行われているのか、不安です。
留守家庭児童会室、放課後子ども教室、放課後自習教室、枚方子どもいきいき広場。本市でこれまで実施してきたそれぞれの事業の理念は何であるのか。その理念に基づき、実施してきているそれぞれの事業の目的達成のために、何が課題で、どのような解決が求められているのか。子どもたち自身はどのように考え、何を望んでいるのか。
今回の質問では、まず、今年度(5月23日より)、全小学校において始まった放課後における児童の自由な遊び場(校庭開放)事業の目的と実施状況を確認しましたが、児童の安全で自由な遊び場として、公園へ遊びに行くのと同様に平日の放課後、小学校の校庭に遊びに行ける事業、が市の事業と言えるのでしょうか。
2023年度から実施する総合型放課後事業の準備期間中の取り組みとしてより多くの子どもたちに安全で安心な遊び場を提供するために実施している、とのお答えでしたが、果たして、2023年度からの事業の準備につながるのでしょうか。
「今年度実施している校庭開放の夏休みまでの参加人数や学校ごとの課題等を検証の上、来年度円滑に実施できるよう取り組みを進めていく。」とのお答えでしたので、今後の検証を期待しますが、「見守り型の自由な遊びの場」と称して、学校を開放して勝手に遊ばせておけばいいというような取り組みは、子どものための「放課後事業」などと言えるものでは決してない、と意見しました。
以下、6月17日の一般質問でのやりとりを掲載します。
2.総合型放課後事業実施プランについて
Q.私の質問
今年度、全小学校において始まった放課後における児童の自由な遊び場(校庭開放)事業について、改めて、当該事業の目的と事業の実施状況について、伺う。
A.学校教育部長の答弁
放課後における校庭開放(児童の自由な遊び場)については、公園へ遊びに行くのと同様に児童の安全で自由な遊び場として、これまで27校の市立小学校で実施していた校庭開放の取り組みを活かし、「総合型放課後事業」の準備期間として対象を全市立小学校に広げ、2022(令和4)年5月末から平日の放課後に実施しているものである。
校庭開放は、各学校の実情に合わせて実施しており、開催日時は学校の行事等により小学校ごとに異なる。実施日は週1日から2日実施している学校が12校、週3日から4日実施している学校が3校、行事に合わせて月ごとに決定している学校が5校、毎日実施している学校が24校となる。また、一度帰宅して参加する学校は36校、帰宅せずにそのまま参加する学校が7校、どちらも可能とする学校が1校となっている。実施時間については、午後4時までの学校が1校、午後4時半までの学校が23校、午後5時までの学校が20校となっている。児童の参加状況については、2人から80人と様々であり、これらについては、学校の規模や立地、校区の広さ、地域に遊べる公園があるかないかなどの状況により違いがあるものと認識している。
Q.私の質問
放課後における校庭開放(児童の自由な遊び場)は、児童の安全で自由な遊び場として、公園へ遊びに行くのと同様に平日の放課後、小学校の校庭に遊びに行ける事業、と説明されたが、これが市の事業と言えるのかどうか、よくわからない。
ヒアリングの際、それぞれの学校の校庭開放事業の実態について聞かせていただいたところ、一度帰宅してから参加するタイプの校庭開放では、週1回の実施校での参加児童数は35~80人、週2~3回の学校で30~35人、週3回の学校で5~20人、毎日実施の学校で4~18人。また、帰宅せず、そのまま参加するタイプの校庭開放では、週1回の実施校での参加児童数は2~4人、毎日実施の学校で10人弱や6~20人であると。このような実態であった。
「一度帰宅」での事業実施の場合、その往復でどれだけの時間とリスクが発生すると想定しておられるのか。また、何のプログラムも、体制もないまま、下校までの時間を延長するだけであれば、課業終了後の「放課後」をなくし、学校の管理運営時間の拡大、すなわち単に「放課後」でない学校管理下にある「下校前の時間」のような、あいまいな時間と空間を夕方に広げただけ、である。これでは子どもの多様な体験機会を保護者の経済力に関わらず提供し、成長につなげるという効果が期待できないばかりか、教員が後追い的にさまざまなトラブルに対応しなければならないリスクを拡大してしまう。
総合型放課後事業実施プランに位置付けて、来年度から全小学校で実施する「放課後子ども教室」についても、また、その準備段階として、今年度、全小学校において実施する「校庭開放事業」についても、放課後の学校における校庭開放や図書室開放は、「プログラム」としての組み立てをしないと教員の負担が増えるだけではないかと懸念するが、見解を伺う。
A.学校教育部長の答弁
校庭開放は、あくまで2023(令和5)年度から実施する総合型放課後事業の準備期間中の取り組みとしてより多くの子どもたちに安全で安心な遊び場を提供するために実施しているものである。今年度実施している校庭開放では管理や緊急時の対応など学校に対応を求めているところではあるが、少しでも教員の負担が軽減されるよう、学校と情報共有を図りながら学校の実情に合わせた形で実施している。また、教育委員会としても、少しでも学校をサポートできるよう全校への傷害保険の加入と、学校のニーズを踏まえ、27校への門監視員の時間延長、13校への労働者派遣による見守り員の配置に努めているところである。
2023(令和5)年度からの総合型放課後事業については、児童の自主性を尊重した見守り型の自由な遊びの場として、専任のスタッフを配置し、余裕教室や特別教室等を活用しながら実施するものであり、今年度実施している校庭開放の夏休みまでの参加人数や学校ごとの課題等を検証の上、来年度円滑に実施できるよう取り組みを進めていく。
O.私の意見
昨年12月の定例月議会の一般質問で、「放課後子ども教室」はなぜ必要で、どんなことを提供しないといけないと考えているのか、校庭等の施設開放だけでいいと考えているのか等、市長の見解をお聞きした。「放課後子ども教室については、児童の自主性や社会性、創造性など生きる力を育み、可能性を広げるため、保護者の就労状況に関わらず、放課後にすべての児童が安全に安心して過ごせる居場所を確保する取り組みであり、2023(令和5)年度には、「放課後子ども教室」をすべての小学校で実施できるよう進めていく考えである。」と答弁された。
すべての児童の豊かな放課後の実現のためには、留守家庭児童会室の役割はしっかりと果たしつつ、子どもいきいき広場や放課後自習教室も含め、地域やそれぞれの学校の実情に応じた、子どものための「放課後事業」を展開していただきたい。すべての児童が利用できる、安全に安心して過ごせる放課後の居場所の整備と、多様な活動や体験等のプログラムの提供による支援は、その後の成長過程において、現象として表れてきているひきこもり等、次の課題解決にもつながると考える。
スタッフには、児童が自発性、自主性を発揮することができるような働きかけが求められる。「見守り型の自由な遊びの場」と称して、学校を開放して勝手に遊ばせておけばいいというような取り組みは、子どものための「放課後事業」などと言えるものでは決してない、と意見しておく。
▶ 総合型放課後事業実施プラン(2022年3月)
▶ 放課後における校庭開放(児童の自由な遊び場)事業の実施について
・放課後における校庭開放(児童の自由な遊び場)について(教育委員会→保護者、2022年5月20日)
・子どもたちに安全で安心な遊び場を_平日放課後に校庭開放 5月23日から全市立小学校で(プレスリリース、2022年5月20日)
【児童の放課後対策に関して、これまでの私の議会質問から】
2021年12月定例月議会で、児童の放課後を豊かにするための取り組みについて~総合型放課後事業の目指すもの~について、質問しました。
「留守家庭児童会室」は、保育を必要とする児童の生活の場を確保し、保護者が安心して就労できる環境を整備するという児童福祉の観点からも重要な「子育て支援施策」の一つであることを明言され、「放課後子ども教室」については、保護者の就労に関わらず、すべての児童の自主性や社会性、創造性など生きる力を育み、可能性を広げるための取り組みであると市長は答弁されましたが、綱渡りの留児守家庭童会室運営に、何をすればよいかも十分に検証できていない放課後子ども教室であり、民間の力も借りてまとめてやれば何とかなるみたいな「総合型」で本当に子どもたちの豊かな放課後が実現できるとはとても思えません。
児童の放課後対策は、校庭や図書室の開放など、「居る場所」さえあればいいというものではありません。
児童福祉、学びの保障、子どもの社会教育の理念など、それぞれの事業目的を達成するためには何が課題で、その課題解決のために何を行うのか、「総合型」を実施するのであれば、その中でどのように解決されるのか等、想定される課題やリスクを丁寧に検討いただくことが必要である、と意見しました。
2020年12月定例月議会では、放課後児童健全育成事業の適正運営について、質問しました。
働く職員の処遇改善を行って必要な人材を確保し、職員の資質向上を図る。こうした留守家庭児童会室をしっかりと運営する体制も十分に作れていないし、職員や保護者との丁寧なコミュニケーションも図れていない、これが現状でした。子どもたちと向き合う職員が安定して働き続けられること、研修等を通じて必要な専門性を高めていくことができることこそが、子どもたちが安全で豊かに放課後を過ごせることにつながるわけです。
民間委託は決して万能薬ではありません。
まずは、現状の改善にしっかりと向き合うことが求められているのであり、これらの努力を行うこともなく、民間委託を何としてでも進めようとするのは、行政責任の放棄に他ならない、と指摘しました。
2020年9月定例月議会で、子どもにとって豊かな放課後環境の整備について、質問しました。
子どもたちと向き合う職員が安定して働き続けられること、研修等を通じて必要な専門性を高めていくことができることこそが、子どもたちが安全で豊かに放課後を過ごせることにつながります。
留守家庭児童会室の運営においても人員確保が困難な状況の中、放課後キッズクラブ事業もあわせて実施する人員を確保できるのだろうかという懸念を伝えるとともに、子どもにとって豊かな放課後環境の整備のためには、国制度も活用しながら、留守家庭児童会室職員の処遇改善を図り、人材を確保するとともに、新たな事業の実施に向けては、現場職員の意見もしっかりと聞きながら、焦ることなく丁寧に進めていただきたい、と要望しました。
2020年6月定例月議会で、学校臨時休業中の児童の居場所の運営について、質問しました。
学校の臨時休業中の緊急対応についての検証、学校教育の現場と連携を図りながら運営方法を整理すること等、保育の必要な児童の受け皿である留守家庭児童会室の運営が崩壊しないよう、そこに働く職員が見通しを持って安心して勤務することができるよう、課題の共有や情報の伝達も含め、しっかりとコミュニケーションを図っていただくことを強く要望するとともに、すべての児童の豊かな放課後をめざす取組には期待するけれども、内容も体制もあいまいな全児童対象の放課後児童対策の名目で、「留守家庭児童会室事業」を事実上放棄するなどということは断じて許されることではない、と意見しました。
【参考】
児童の放課後対策審議会
児童の放課後対策の総合的な推進に関する事項について調査審議を行うため、児童の放課後対策審議会が設置されています。
▶ 「児童の放課後を豊かにする基本計画~すべての児童の放課後を豊かにするための取り組みについて~」(2020年3月_枚方市教育委員会)
◇ 新・放課後子ども総合プラン
▶ 「新・放課後子ども総合プラン」について(2018年9月14日、厚生労働省依頼)
▶ 「新・放課後子ども総合プラン」の一層の推進について(2020年3月31日、厚生労働省依頼)
放課後児童クラブは、小学校の余裕教室や児童館などで、共働き家庭等の小学校に就学している児童に放課後等の適切な遊びや生活の場を提供する安全・安心な居場所であり、「新・放課後子ども総合プラン」(2018年9月14日策定)に基づき、放課後児童クラブについて、2021年度末までに約25万人分を整備し、待機児童の解消を目指し、その後も、女性就業率の更なる上昇に対応できるよう整備を行い、2019年度から2023年度までの5年間で約30万人分の整備を図るとされています。
【追記 2022年6月30日】
▶ 社会保障審議会児童部会_第11回放課後児童対策に関する専門委員会_2022年6月30日
社会保障審議会児童部会の放課後児童対策に関する専門委員会は、「総合的な放課後児童対策に向けて_社会保障審議会児童部会 放課後児童対策に関する専門委員会_中間とりまとめ(2018年7月27日)」を発出して以降、開催がありませんでした。
しかし、2022年6月30日に開催されたようです。資料が厚生労働省のHPに掲載されています。
「中間とりまとめ(2018年7月27日)」においては、「 放課後児童対策については、様々な事業や活動が実施されており、民間事業者も多く参画している。放課後児童対策を考えるにあたっては、民間事業者による事業や活動も含め、放課後児童対策全体の質をどのように担保していくかと同時に、公的に行うことが適切な施策について検討していく必要がある。」「放課後という時間・空間は、子どもの成長・発達の面から捉え直すと、家庭における保護者や学校における教師とも異なる大人と過ごすこともでき、遊びを通して子どもが自主性や社会性、自立を育むことができる重要な場である。それを実現するために、放課後児童対策として、子どもの成長・発達という観点からどのような経験・体験を子どもに提供していくべきか、地域資源の活用を含めて検討することが求められる。その際、放課後児童対策は、現在の子ども・家庭に広がる様々な格差(経済格差、教育格差等)、地域間格差(財政面、社会的資源の格差等)の是正を目指したものと考えていくことが必要である。」といったことも記載されています。これらの観点もしっかりと見ておくべきものであると思っています。
そして、「健全育成という観点から子どもの放課後生活を保障していくためには、放課後児童対策の全容を明らかにし、その全体の充実を図ることが必要である。また、その中では、放課後児童クラブの果たすべき役割を明確化し、その量・質ともに充実を図っていくことも求められる。子どもたちが主体的に生きる力、他者と共に生きる力を育成することを支援するため、国が総合的な放課後児童対策を進めていくことが課題となるだろう。」と締めくくられていました。
今年に入り、会議が再開された意図はよくわかりませんが、会議の進行を確認していきたいと思っています。
柏女委員提出資料には、以下のような整理・コメントがありました。
これは、「公的に行うことが適切な施策について検討」の関連資料になるでしょうか。
以下は、資料3「放課後児童クラブについて」からの引用です。
これは、「地域資源の活用を含めて検討する」の関連資料になるでしょうか。
以下は、資料4「放課後児童関連施策について」からの引用です。
こちらも、「公的に行うことが適切な施策について検討」「地域資源の活用を含めて検討する」の関連資料になると思います。