市政は、市民の生活、社会の現実を踏まえて進めるべきものであり、実現可能性の低い「夢」を振りまいて行うものではない。「観光まちづくり」を支える淀川舟運事業の実現可能性について、質問しました。6月定例月議会、一般質問の報告①です。

2023/06/26

枚方市議会議員の奥野みかです。

ここでは、「1.『観光まちづくり』を支える淀川舟運事業の実現可能性について」の報告です。

広報ひらかた5月号において、「大阪・関西万博と枚方が舟運でつながる!?」、「2025年の大阪・関西万博を契機に、万博会場・夢洲と枚方、さらに上流の京都府域までをつなぐ舟運実現に向けた取り組みが官民一体となって進められている」と、市は大々的なアピールを行っておられます。この記事を読まれた市民の皆さんは、枚方から舟に乗ったら、そのまま夢洲の万博会場に行けるようになるの!?、と思われたのではないでしょうか。また、枚方から三川合流地点・背割堤にかけては、水深1メートル未満の箇所も多く、必要な水深確保のために、恒常的な浚渫等の対策を求めることができるものなのか、求めてもいいものなのか、疑問です。

そこで、淀川を航行する船舶航行の実態と課題、舟運の実現可能性について、順次、確認しました。

淀川舟運事業を試験的・実験的なコンテンツとしての取り組みを進めるというのは、それはそれでいいのかなとは思いますが、事業の採算性などを考えると、淀川舟運を「まちづくりの柱」に位置づけるというような過剰な期待は控えた方がよいのではないでしょうかと伏見市長の見解をお聞きすると、
「事業の採算性というのは、事業者の方で検討していただく必要があると思うが、観光交流を促進し、賑わいを作り、経済を動かしていくということは非常に大事なことである。したがって、枚方市としてこの事業が成り立つような土壌を作っていくということも、我々自治体としての一つの仕事だと思う。万博会場から伏見までを一本で結ぶ淀川舟運の復活に大いに期待しているところであり、国や大阪府、京都府等とさらに連携を深め、舟運の活性化に取り組んでいく考え」とのお答えでした。

採算性は事業者で考えていただくとのこと…。
淀川河川事務所は、近畿の暮らしを支える淀川・宇治川・木津川・桂川における治水防災、維持管理や河川環境の保全などに取り組まれており、2025年大阪・関西万博に向けた観光・賑わいづくりに取り組まれているといっても、例えば、淀川閘門の整備も、観光ではなく災害発生時の物資物資輸送ルートの確保が大きな目的だと報じられています。
市政は、淀川舟運の復活・活性化という実現可能性の低い夢をふりまいて行うのではなく、市民の生活、社会の現実を踏まえて進めるべきものではないか、と意見しました。

 


 

以下、6月26日の一般質問でのやりとりを掲載します。

1.「観光まちづくり」を支える淀川舟運事業の実現可能性について

Q.私の質問

淀川舟運については、2017(平成29)年に大阪天満橋の八軒家浜船着場と枚方船着場を結ぶ定期運航船が就航している。この定期運航船について、事業者と船舶の種類、定員と価格、所要時間、年間運行回数、過去最多運航回数などについて、伺う。
あわせて、枚方から京都府域、上流への定期運航船はあるのか、あるのであれば、その内容について、伺う。
また、臨時運航船はあるのか、あるのであれば、その内容について、伺う。

A.富田観光にぎわい部長の答弁

淀川舟運事業については、現在2社の民間事業者が行なっており、事業者が公開する情報によると、いずれも航行区間は八軒家浜船着場と枚方船着場の区間の運航であり、枚方から京都府域内についての運航は行なわれていない。
今年度、大阪水上バス株式会社においては、最大搭載旅客人員約100名程度の「アクアライナー」を使用し、お弁当と市立枚方宿鍵屋資料館の入館付きの価格として6千円で販売、所要時間は2時間30分、昨年度の年間運航回数は春と秋の42コースであった。また、過去5年間での最多運航回数は52コースであった。
一方、一本松海運株式会社においては、乗客定員40名の屋形船風遊覧船「えびす」において運航、上りはお弁当と鍵屋資料館の入館付き価格は7千円、下りは枚方銘菓と鍵屋資料館の入館付き価格5千円で販売、所要時間は2時間30分、昨年度の年間運航回数は30コースであった。過去5年間での最多運航回数は44コースであった。
臨時運行については、例えば、一本松海運株式会社により八軒家浜船着場から八幡市の背割提船着場までの8コースが販売された実績がある。

O.私の意見・要望

淀川舟運の定期運航船の現状について、ご答弁いただいた。ご答弁の年間運航回数42コースの事業者は、上り21回・下り21回、年間21日の実施で、30コースの事業者は、上り15回・下り15回、年間15日の実施、いずれも食事等と鍵屋資料館の入館付きで1回6,000円程度での販売ということのようである。
広報ひらかた5月号において、「大阪・関西万博と枚方が舟運でつながる!?」、「2025年の大阪・関西万博を契機に、万博会場・夢洲と枚方、さらに上流の京都府域までをつなぐ舟運実現に向けた取り組みが官民一体となって進められている」と大々的にアピールされた。読まれた市民の皆さんは、枚方から舟に乗ったら、そのまま夢洲の万博会場に行けるようになるの!?、と思われたのではないか。しかし、このことが実現するためには、大きな課題があることも報じられている。

Q.私の質問

まず最初に、河川を航行する船舶と海を航行する船舶には構造上の違いがあると聞くが、それは何なのか、伺う。その上で、運航上の安全性確保のために必要な処置をどのように考えておられるのかについて、見解を伺う。
広報ひらかたでは、「現在、さらなる舟運拡大に向け、淀川下流から大阪湾への船の行き来ができない淀川大堰に、航行を可能とする『閘門』が整備中」ともあるが、淀川大堰に「閘門」ができると、淀川を航行している船舶は、そのまま、客を乗せて大阪湾への航行に向かうことができるのか、伺う。
その上で、淀川や大阪市内の河川を周遊(航行)する船舶が、大阪湾、海を航行することの可能性・安全性について、見解を伺う。

A.富田観光にぎわい部長の答弁

船舶については、河川の流れや波などに対応するため、河川と海を航行する船舶については、船底の形状が異なることや、河川を航行する船舶は橋をくぐる必要があるため、高さを抑制されているなど構造の違いがある。
次に、大阪湾等への運航の拡大に向けて、昨年3月に設立された、本市も参画する淀川舟運活性化協議会において、国や府、沿川市町、民間事業者等が一丸となって、舟運を核とした淀川沿川地域のにぎわいづくりとともに、淀川大堰閘門を活用した万博会場までの航行ルートの確保を含め、「淀川河口部での川船、海船の円滑な乗り継ぎ」、また、大型船の安全な就航を目指し「船舶航行のための航路確保」等を目標に、具体的な取り組みを進めているところである。淀川大堰閘門の完成により、淀川上流から大阪湾への船の航行が可能になる。

O.私の意見・要望

ただいまのご答弁は、非常に重要な説明を省略されているので、私の方で補足する。
河川と海を航行する船舶について、船底の形状や高さが抑制されているなど「構造の違いがある」というのは、こういうことである。議長の許可を得て、イラストを示させていただく。

(※図「海用の船/川用の船」を提示)

「川用の船」は水深が浅いので「船底までが浅い構造」となっている。しかし、川と違って海はうねりや波があるので、「船底までが浅い構造」の船で海を航行すると揺れるし、転覆の危険性も高くなる。
一方、「海用の船」は、そうしたことに対応できる「船底までが深い構造」になっているが、逆に川では、「川底に接触」、つまり座礁してしまうので、「船底までが深い構造」の船で水深が浅い河川の航行はできない。


淀川大堰の向こうは、もう海である。このイラストの出典は、昨年1月25日放送の読売テレビ「かんさい情報ネットten.」であるが、穏やかな日でも、海には50cm程度のうねりや波は普通にあり、「川用の船」ではかなり揺れると報道され、番組の中では、「最悪どれくらいの波まで対応できるのか、これからも研究していかなければならない。川の方から一気通貫で来る船にするのか、継接点をどこかに設けて船を乗り換えて揺れない船に変えるのかというのも、いろいろ検討の余地がある」と報じられていた。
そういう事情もあるのであろう。ご答弁では、「淀川河口部での川船、海船の円滑な乗り継ぎ」のことに触れられている。
つまり、現状では、「川用の船」で大阪湾に入って万博会場の夢洲に行くのは難しいので、現実的には、「川用の船」から揺れない「海用の船」に乗り換えることになるという意味であると思う。
しかし、ご答弁では、「大型船の安全な就航を目指し『船舶航行のための航路確保』等を目標に進めている具体的な取り組み」の見通しがどうであるのかに触れることもなく、「淀川大堰閘門の完成により、淀川上流から大阪湾への船の航行が可能になる」とも述べられた。

Q.私の質問

そこで、続いて、広報ひらかた5月号で「さらに上流の京都府域までをつなぐ舟運実現」と打ち出された、枚方から京都府域、上流(三川合流地点、背割堤)に向かう舟運の実現可能性について、質問する。
最初に、この区間の河川水深はどのような状況か、船舶航行に必要な水深から、現状の水深をみた場合、確実に航行できる船舶は存在するのか、伺う。
航行可能な船舶があるのであれば、どのような規模の船舶を想定し、どの程度の所要時間、運航日数を想定しているのか、伺う。
さらに、想定の船舶航行が可能となるよう、必要な水深確保のために、恒常的な浚渫等の対策を求めることができるものなのか、求めてもいいものなのか、見解を伺う。

A.富田観光にぎわい部長の答弁

まず、宇治川、木津川、桂川が合流する三川合流付近の水深の状況については、国が公開する淀川水深情報図によると一部1メートルを下回る部分があることが示されている。
また、そうした状況の中で、一本松海運により枚方船着場から三川合流域となる、八幡の背割堤船着場まで旅客人数60名とする中型船等が2019年に8回、運航された事例はあるものの、水深等の課題がある。そのため、現在、淀川舟運活性化協議会において、中型船の恒常的に安全な就航を目指し、航路確保のための河道掘削などの対策を実施していくことが示されているところであり、枚方から三川合流域まで中型船が航行できるように2023(令和5)年度に国において、河道掘削を実施する予定であると聞いているところである。
また、9市2町で構成する淀川舟運整備推進協議会においても、舟の運航に支障となる水深の浅い箇所について浚渫等を国に対して要望を行ってきたところである。

O.私の意見・要望

ただいま、ご答弁にあった「国が公開する淀川水深情報図」であるが、これも議長の許可を得て、図を示させていただく。出典は、国土交通省淀川河川事務所のホームページである。

(※3枚の図を順に提示

淀川大橋の近くにある枚方船着場から、三川合流付近までの3枚の図を順に見ていただきたい。
最初が「枚方船着場周辺」である。こちらが「牧野・楠葉周辺」である。そして最後が「三川合流付近」である。
濃い赤色のところが、川の水深が50㎝を下回る箇所、オレンジ色が1mを下回る箇所である。これ、淀川の枚方大橋の近くの図であるが(※再度、図を提示)、1mを下回る箇所は、決して、「一部」というわけではない。



Q.私の質問

「大阪、京都の中間地点として思わず立ち寄りたくなる中継港」と打ち出されているが、“中継港”と言うためには、「枚方~京都の上流」と「枚方~大阪の下流」が同じ船で連続的に上り・下りできることや、多数の乗船客の集客による事業採算性が前提になるのではないかと考える。
上流・下流における舟運事業について、それぞれの船舶への乗員数及び運航可能な回数を踏まえ、採算の取れる事業であると考えておられるのか、この舟運事業の採算性について、見解を伺う。

A.富田観光にぎわい部長の答弁

現在、淀川舟運活性化協議会においては、淀川沿川地域における観光コンテンツの商品化など、にぎわいづくりを目指した取り組みが進められている。
本市においても、過去から、大阪と京都の中継港であったという利点を活かし、舟運はもとより、船を降りた先でのにぎわい創出と連動した、まちの活性化に繋がるよう、枚方宿を起点に、枚方市駅、淀川河川エリア、枚方公園駅を面で捉えた観光コンテンツの創出に取り組むとともに、就航便の確保や舟運事業実施については、現在抱えている様々な課題解決に向け、引き続き、国、大阪府、京都府など関係機関や舟運事業者等と連携・協力して取り組みを進めていく考えである。

O.私の意見・要望

ご答弁では、舟運事業の「採算性」についての見解を全く述べておられない。
先の答弁で、「中型船の恒常的に安全な就航を目指し、航路確保のための河道掘削などの対策を実施していくことが示された」、「枚方から三川合流部まで中型船が航行できるように2023(令和5)年度に国において、河道掘削を実施する予定であると聞いている」と述べられが、「2023(令和5)年度に国において実施される河道掘削」とは、すべての区間にわたって季節や水量に関わりなく、河川内水路のようなものが作られて「常時」水深が確保され、船が航行できるような対策なのだろうか。それとも、現状の川底を掘り下げる「浚渫」を意味するのだろうか。

いずれにしても、1メートル未満の箇所が本当にたくさんある。降雨で大きく川の水位が上がる時には、上流から多量の土砂が流れてきて川底に堆積するので、きりがない。その都度、浚渫いただくとなると、予算にも限界があると思う。
結局、「京都と大阪(夢洲)を直接結ぶ淀川舟運」といっても、枚方から上流へは必要な水深が到底確保できないので、今、枚方まで来ている大阪水上バスの大きな船舶は航行できそうもない。昔の三十石船と同じ大きさで椅子席の場合、50人定員の中型で船底の浅い船舶であっても、「常時」航行することはとても難しそうである。

枚方から下流についても、このたび、淀川大堰に新たに閘門が整備されても、うねりや波のある海を川用の船底の浅い船舶が航行することは安全性の問題からとても難しそうである。

となると、もし、京都府域から万博会場まで船舶で行くとなると、枚方でかなり小型の船から水上バスの中型船に乗り換えて、または、小型船のまま淀川大堰近くまで下って、そこでまた、海用の船舶に乗り換えるというのが、まだ現実的なのかなと思われる。
こうした下りの形はまだ考えられるかと思うが、上りとなると時間がかかり過ぎて、とてもとても困難そうである。そして、乗船定員、1日の可能運航回数、年間の可能運航回数の制約から売上げの拡大には限界があり、一方では、船への投資やランニングコストが相当必要となることから、この舟運の事業としての採算性は、非常に厳しいものであると考える。

Q.私の質問

試験的、実験的なコンテンツとしての取り組みを進めるのはいいとは思うが、淀川舟運なるものを「まちづくりの柱」に位置づけるというような「過剰な期待」は控えた方がよいのではないか。これは、伏見市長の見解を伺う。

A.伏見市長の答弁

事業の採算性というのは、事業者の方で検討していただく必要があると思うが、枚方市としては、観光コンテンツ、京街道の宿場町として栄え、淀川の中継港としてもにぎわっていた歴史は、本市の重要なアイデンティティのひとつである。観光交流を促進していって、賑わいを作っていく、経済を動かしていくということは非常に大事なことである。従って、この事業が成り立つような土壌を作っていくということも、我々自治体としての一つの仕事だというふうに思っている。万博会場から伏見までを一本で結ぶ淀川舟運の復活に、大いに期待しているところであり、国や大阪府、京都府等とさらに連携を深め、舟運の活性化に取り組んでいく考えである。

O.私の意見・要望

採算性は事業者で考えていただくとのことである。国土交通省近畿地方整備局の淀川河川事務所は、近畿の暮らしを支える淀川・宇治川・木津川・桂川における治水防災、維持管理や河川環境の保全などに取り組まれており、2025年大阪・関西万博に向けた観光・賑わいづくりに積極的に取り組まれているとのことであるが、どこまで、どこまでいつまで継続いただけるものなのだろうか。淀川閘門の整備も、観光ではなく災害発生時の物資輸送ルートの確保が大きな目的だと報じられている。

淀川舟運の復活・淀川舟運の活性化を「見果てぬ夢」とまでは言わないが、市政は市民の生活、社会の現実を踏まえて進めるべきものであり、実現可能性の低い「夢」を振りまいて行うものではないと意見しておく。

 


【参考】

第3回淀川舟運活性化協議会(2023年3月14日開催)

(※【資料4】近畿地方整備局による取り組みについて より引用)



【追記】

▶舟に100億円?舟運にかける水都・大阪 いったいなぜ? 2023年1月4日_NHK

www3.nhk.or.jp
舟に100億円?舟運にかける水都・大阪 いったいなぜ? | NHK
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▶大阪万博前に「水都」の姿を取り戻せ 大阪―京都の舟運復活へ 急ピッチで工事進む 2023年4月9日_朝日新聞デジタルGLOBE+

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