市政運営にあたっては、極めて慎重で、的確な舵取りが必要。大型事業は抜本的な見直しを。「長期財政の見通しの見直しにあたっての考え方」について質問しました。12月定例月議会、一般質問の報告①です。

2022/12/19

枚方市議会議員の奥野みかです。

ここでは、「1.長期財政の見通しの見直しにあたっての考え方について」の報告です。

子ども医療費助成の対象年齢を拡大する議案審議において、「本市の財政状況については、2021年度普通会計決算の状況も踏まえ、長期財政の見通し上でも実質収支の黒字は堅持できるものと考えており、『市民生活、市民福祉、教育子育て』など、市の重要施策にかかる経費については、しっかりと投資をしていかなければならない」と、市長の答弁がありました。
近い将来、人口は35万人を割ると推計され、少子化と超高齢化のため生産年齢人口が減少する中、市税収入を増加させることは構造的に困難です。まして、現在、国においては、防衛費の未曽有の拡大と、その財源確保のための増税や歳出改革による財源確保が進められようとしており、地方財政への影響も図りしれません。政策や事業は、不確実な将来環境をできる限り正確に予測・見通し、それらを踏まえて適切な修正を加えながら展開する必要があります。

現在は、今後の市政運営にあたって、極めて慎重で、的確な舵取りが必要な局面だと考えます。市役所の位置に関する条例の改正条例は、議会で否決されました。市長が政治生命をかけているという市駅周辺再整備事業や新庁舎整備事業などの大型事業については、抜本的な見直しも必要ではないでしょうか。

全く説得力のない市役所庁舎の⑤街区移転、貴重な市の土地を売却するために行われる④⑤街区における土地区画整理事業。そのために必要な巨額の財政負担が可能であると見せるために、歳入の見通しにあたっては楽観的なデータを用い、歳出にあたっては真に必要性の高い経費をカットする。これまでの長期財政の見通しにはそのような操作も感じられました。

様々な予測、見通しは、不確実な将来環境をできる限り正確に見通し、それらを踏まえた政策や事業展開に修正するために行うものであるべきですが、今はそれが逆になっているようです。
来年度予算にあたっては、議論の根拠となり、適切な判断を可能とする長期財政の見通しを策定されるよう要望しました。

 

 


 

以下、12月19日の一般質問でのやりとりを掲載します。

1.「長期財政の見通しの見直し」にあたっての考え方について

Q.私の質問

子ども医療費助成の対象年齢を拡大する条例議案の審議の中で、市長は、「本市の財政状況については、2021(令和3)年度普通会計決算の状況も踏まえ、長期財政の見通し上でも実質収支の黒字は堅持できるものと考えており、『市民生活、市民福祉、教育子育て』など、市の重要施策にかかる経費については、しっかりと投資をしていかなければならない。」と答弁されていた。
市は、毎年、「長期財政の見通し」を見直し、2月に公表している。改めて、現在の社会・経済状況を踏まえて「長期財政の見通し」を見直すにあたっての考え方について、伺う。

A.田中総合政策部長の答弁

まず、毎年度公表を行っております長期財政の見通しの作成にあたっては、市民サービスの低下を招くことなく、将来にわたり安定した財政運営を維持する観点から、税制改正などの制度変更や、今後取り組むことが予定される様々な事業について、その実現可能性を明らかにするとともに、長期的な視点による財政状況の把握を行うことを目的として作成しており、近年で申し上げると新型コロナウイルス感染症対応やDXへの対応など、その時々の社会情勢の変化についても適切に見込んでいるところである。
今年度についても、昨今の原油価格高騰や資材高騰による影響について反映させる必要があるものと考えている。

Q.私の質問

まず歳入について。
市税収入の「伸び率」に政府のGDP伸び率の予測値を用いられていることに対して私は、2021(令和3)年度の予算特別委員会において、「国の示す4%の経済成長見通しにより、市税収入全体では2022(令和4)年度にはV字回復するといった楽観的な財政見通しを示されるのは、非常に問題である。」と指摘した。また、2022(令和4)年度の予算特別委員会において、「国内経済力を表すGDPの伸びが所得に影響し、その結果、市民税にも一定の影響があるとの考えに基づく。」という市の説明に対して私は、「過去の実績を見ると、個人市民税について、景気変動による増減があったとのことであるが、近年はおおむね220億円台で安定的に推移していることから、GDP伸び率との相関は確認できない。」と指摘した。
2021(令和3)年度普通会計決算の黒字を踏まえ、「実質収支の黒字が堅持できる」という、先に紹介した市長答弁についても、決算特別委員会で指摘させていただいたように、コロナ交付金で膨張した自治体の「黒字」は特殊なもので、国の財政措置、つまり、著しく増加した依存財源がいつまでも続くわけがない。

こうしたことを踏まえると、自主財源の根幹をなす市税収入の見通しについては、大幅な見直しの必要があると考える。
2023(令和5)年度以降の、市税を中心とした本市の歳入を見通すにあたってポイントとなる考え方を伺う。

A.田中総合政策部長の答弁

歳入の見通しにおける主なポイントとして、まず、歳入の根幹をなす市税や各種交付金などの今後の推移については、コロナ禍の影響など社会情勢等の変化を踏まえた見直しを図っていく。また、新型コロナウイルス感染症対策に係る財源として、これまで措置されている多くの国・府支出金については、まずは2023(令和5)年度の状況を踏まえたうえで、その後の推移についても国の動向を見極め、規模や期間も含め適切に反映する必要があると考えている。

Q.私の質問

次に、歳出について。
「万博工事 止まらぬ不成立」(2022年12月15日朝日新聞)、「万博施設の再入札 3件で45億円増額」(2022年12月17日朝日新聞)などの報道が先週もあり、建設費用の上ぶれが懸念されている。原油価格・原材料費・資材価格の高騰や、人件費の上昇などは本市においても同様で、市駅周辺再整備事業などの大型事業にかかる支出見込みの大幅な修正が必要ではないか。
また、老朽インフラの更新、老朽施設の大規模改修、予防保全等は適切に見込まれているのか。加えて、学校空調整備やエレベーター設置、公共施設のバリアフリー化など、公共施設の各種整備・改修費用は適切に見込まれているのか。今月に入り、小中学校体育館空調設備整備DBO事業は、予定価格の範囲内での入札がなく不調であったとの報告があった。
先の子ども医療費助成に関する答弁で「18歳までの年齢拡充分の2億円を加えると、一般財源として年間12.5億円が継続して必要となる」とあったが、子ども医療費の年齢拡充や、また、第2子以降保育料の無償化、さらにICT教育などの施策の拡充による固定的な増額等、長期財政を見通すにあたっては、さまざまな課題があると考える。

そこで、2023(令和5)年度以降の本市の歳出を見通すにあたってポイントとなる考え方を伺う。

A.田中総合政策部長の答弁

歳出の見通しにおける主なポイントとして、社会保障関係費や投資的経費などこれまでから取り組んでいる様々な施策に加え、子ども医療費助成や支援教育への対応、中学校における全員給食の実施など新たに取り組みを進める重要施策、また、原油価格高騰による光熱水費の上昇や資材高騰などによる影響についても適切に見込むとともに、歳入同様、新型コロナウイルス対策に係る事業についても事業規模や実施期間など必要性を見極めながら、例年12月末に国から示される地方財政対策などの情報も踏まえ見直していく必要があると考えている。

O.私の意見・要望

「長期財政の見通し」の見直しにあたって、歳入・歳出を見通す際のポイントとなる考え方について答弁いただいた。しかし、これまでの「長期財政の見通し」のあり方や今回の答弁を踏まえると、市の「長期財政の見通し」作業については、根本的なところで、懸念が残る。
それは、そもそも「長期財政の見通し」をなぜ行うのか、なぜ重要なのかという点があいまいにされていると感じるからである。様々な予測、見通しは、不確実な将来環境をできる限り正確に見通し、それらを踏まえた政策や事業展開に修正するために行うものなのである。ところが、今はそれが逆になっているように思い。

全く説得力のない市役所庁舎の⑤街区移転、貴重な市の土地を売却するために行われる④⑤街区における土地区画整理事業。そのために必要な巨額の財政負担が可能であると見せるために、歳入の見通しにあたっては楽観的なデータを用い、歳出にあたっては真に必要性の高い経費をカットする、そのような操作が行われたのが、これまでの長期財政の見通しではなかったか。
しかし、伏見市長が政治生命をかけて提案された市役所の位置に関する条例の改正条例は、議会で「否決」された。枚方市においては近い将来、人口は35万人を割ると推計され、少子化と超高齢化のため生産年齢人口が減少する。市税収入を増加させることは構造的に困難である。まして、現在、国においては、防衛費の未曽有の拡大と、その財源確保のための増税や歳出改革による財源確保が進められようとしており、地方財政へも大きな影響を与えると思われる。

それゆえに市政運営にあたっては、極めて慎重で、的確な舵取りが必要だと考える。市駅周辺再整備事業、新庁舎整備事業などの大型事業については、抜本的な見直しも必要ではないか。
来年度予算にあたっては、そうした議論の根拠となり、適切な判断を可能とする「長期財政の見通し」を策定されるよう求めておく。

 


【参考】

(※「ひらかた高齢者保健福祉計画(第8期)」より引用)

▶ 2022年3月17日 予算特別員会「自主財源の根幹である市税収入の見通しについて」

【質問】
「長期財政の見通し」を作成される際、「伸び率」に政府のGDP伸び率を用いておられるが、過去のGDP伸び率と市税収入の伸び率の間に関連はあったのか、伺う。また、あったとすれば、どの税目との間に、どのような相関があったのか等についても、お示しいただきたい。
【財政課長答弁】
長期財政の見通しにおけるGDPの伸び率と市税収入の関連であるが、長期財政の見通し上、いかに将来の市税収入を予測するかが重要である。本市では、収支見通しの作成にあたり、毎年、国が示す経済見通しにおける、GDP成長率を参考としており、これは、国内経済力を表すGDPの伸びが所得に影響し、その結果、市民税にも一定の影響があるとの考えに基づくものである。
【意見(指摘)】
本市の個人市民税は、概ね220億円台で推移している。固定資産税は、概ね210億円から220億円での推移である。そして、「長期財政の見通し」で示された2033年度を見ると、個人市民税は205億円、固定資産税は211億円、市税全体では528億円と減少している。
「長期財政の見通し」を作成される際、市税収入の「伸び率」に政府のGDP伸び率を用いておられるが、その理由に、「国内経済力を表すGDPの伸びが所得に影響し、その結果、市民税にも一定の影響があるとの考えに基づく」と答弁された。
しかし、過去の実績をみると、「個人市民税」について景気変動による増減はあったとのことであるが、近年は概ね220億円台で安定的に推移しているとのことであるから、GDP伸び率との相関は確認できない

 

▶ 2021年3月17日 予算特別委員会「長期財政の見通しにおける市税(個人市民税)の見込みについて」

【意見(指摘)】
歳入の根幹となる「市税収入」の、特に「個人市民税」の見込みにあたっては、誰が、どのような形で支えているのか、本市の納税者市民の実情を正しく把握することが「事実認識」であると思う。
枚方市の税収が、どのような属性の納税者から、いくら納めていただいた税収によって成り立っているのかという観点からの分析を行っていないというのは、民間企業で言うと、自社の経営を支えてもらっている顧客のことを分析せずに、あるいは無頓着なまま経営するようなものではないだろうか。「法人市民税を中心、市税収入全体を見込む中では、」とのご答弁ではあったが、国の示す4%の経済成長見通しにより、市税収入全体では2022(令和4)年度にはV字回復するといった楽観的な財政見通しを示されるのは、非常に問題であると指摘しておく。

^