急傾斜地の崩壊による災害からいのちを守るため、住民の安全に責任を持つ自治体としてなすべきことはいったい何か。急傾斜地の崩壊による土砂災害への対応について質問しました。6月定例月議会、一般質問の報告①です。
枚方市議会議員の奥野みかです。
ここでは、「1.急傾斜地の崩壊による土砂災害への対応について」の報告です。
2021年5月21日、前日からの大雨の影響により、枚方丘陵にある伊加賀北町で発生した急傾斜地の崩壊による土砂災害に対して、市として、土砂災害防止法に基づく避難誘導対策だけではなく、現地調査や、地元との調整も踏まえ、急傾斜地法に基づく根本的な解決策となる対策工事を行うことなど、大阪府にしっかり役割を果たすよう求めていくことが必要ではないかと質問したところ、「急傾斜地崩壊危険区域の指定がなされ、地域の同意や受益者負担などが整い、対策工事の施行を要請する際には、要望の取りまとめをはじめとする地元及び大阪府との調整など、市としての役割を果たしていく。」という副市長の答弁でした。地元自治体である枚方市が本気で動かなければ、大阪府は「急傾斜地崩壊危険区域」の指定や対策工事に取り組まないのではないかと指摘し、市としての役割をしっかりと果たしていただくよう要請しました。それが、昨年6月の議会のことです。
それから1年が経ちました。
法面所有者が「本復旧工事(2022年1月27日完了)」として、崩落した斜面下部に擁壁を設置しましたが、崩落した斜面上部は、依然として土がむき出しのままになっています。
市として、これで安全と判断されたのか、大阪府に対して、急傾斜地の対策工事を要請しないのかと、今回の議会で、重ねて質問したところ、「地域の同意や受益者負担などが整い、急傾斜地崩壊危険区域の指定がなされた際にできるものと考えており、市として、その際の要望の取りまとめや、地元及び大阪府との調整といった役割を果たしていく。」との答弁でした。これでは、大阪府が「急傾斜地崩壊危険区域」の指定をするまでは、地元自治体である枚方市として「何も取り組まない」ということになります。住民の安全に責任を持つ自治体として全く無責任です。住民の安全を守るために重要な施策・事業への取り組みを放置するような府政を許してはいけません。急傾斜地の崩壊による災害からいのちを守るために、市として適切な役割を果たしていただくよう、改めて、強く要望しました。
また、法面所有者による工事やこの間の状況を踏まえ、市は、2022年5月20日付けで、伊加賀北町7-6に発出されていた警戒レベル4の「避難指示」を解除しましたが、そもそも、1年間も全員避難の「避難指示」という避難情報を発出していたことが適切であったのか、防災リテラシーの観点からも検証が必要であると考えます。避難指示の取り扱いについても、適切な対応を求めました。
※今回、パネルの持ち込みを許可をいただいて、質問に臨みました。
以下、6月17日の一般質問でのやりとりを掲載します。
1.急傾斜地の崩壊による土砂災害への対応について
Q.私の質問
昨年5月、前日から降り出した大雨の影響により土砂災害が発生した伊加賀北町の状況について、議長の許可を得て、現場の写真を3点、持ち込ませていただいた。
1点目は、昨年5月21日、発災時の写真である。6月8日以降、法面所有者による「応急対策工事」として、ブルーシートが設置されていたが、大阪府の枚方土木事務所の助言を受け、法面所有者が「本復旧工事」に着工し、今年1月27日に工事が完了したとのことである。
2点目の写真は、今年4月22日時点での写真である。崩落した斜面下部には擁壁が設置された。崩落した斜面上部は、依然として土がむき出しのままである。
そしてこの3点目の写真が現在の状況である。土がむき出しの斜面上部からパラパラと落石しているとの地元住民の声を受け、雨期、降雨による浸水被害も想定されることから、6月9日頃、法面所有者が対応したとのことで、崩落した斜面上部に再びブルーとグレーのシートが設置されている。昨年5月に崩落した斜面に続く急傾斜地は左右に広がっている。
この現状について、質問させていただく。
市として、これで安全と判断されたのか、伺う。
一度は外されたブルーシートが再び設置され、この法面は安全です、安心してくださいと言われても、地域住民は安心できない。市として、大阪府に対して、急傾斜地の対策工事を要請しないのか、見解を伺う。
A.危機管理部長の答弁
伊加賀北町の法面の安全性については、大阪府枚方土木事務所の助言を受けて施工された工事であること、残斜面が少なくなったことでマンションへの影響が相対的に小さくなったことをもって、判断させていただいたものである。
また、大阪府への対策工事の要請についてであるが、地域の同意や受益者負担などが整い、急傾斜地崩壊危険区域の指定がなされた際にできるものと考えており、市として、その際の要望の取りまとめや、地元及び大阪府との調整といった役割を果たしていく。
O.私の要望
昨年6月の定例月議会の一般質問において、副市長は、「急傾斜地崩壊危険区域の指定がなされ、地域の同意や受益者負担などが整い、対策工事の施行を要請する際には、市としての役割を果たしていく。」旨の答弁をされた。今回も、府への対策工事の要請は「急傾斜地崩壊危険区域の指定がなされた際にできるものと考えている。」との答弁である。
ということは、大阪府が「急傾斜地崩壊危険区域」の指定をするまでは、地元自治体である枚方市としては、「何も取り組まない」ということになる。これでは、住民の安全に責任を持つ自治体として全く無責任である。
枚方丘陵に点在する崩壊の危険がある急傾斜地で、実際に崩壊が起こったわけです。急傾斜地の崩壊による災害からいのちを守るために、市として適切な役割を果たしていただくよう、改めて、強く求めておく。
また、昨年5月20日、改正災害対策基本法の施行により、「避難指示」と「避難勧告」が一本化され、「警戒レベル4」の全員避難の「避難指示」に一本化された。その翌日に本市は「避難指示」を発令し、この伊加賀北町7-6には、今年5月20日まで発令されていた。
全員避難の「避難指示」を1年間も出し続けたけれども、そんな状態が続くと当該地の不動産価値が下がるのではないか、いや、こんな対策工事で解除できるのなら、もともと「避難指示」が必要だったのか、また、1年間、住民が通常の生活を送っていたならば、そもそも、避難情報に基づく「避難行動」とはどういうことなのか等、多くの疑問がわいてくる。避難指示の取り扱いについても、適切な対応を求めておく。
▶ 避難指示の解除(伊加賀北町7-6付近)について(2022年5月17日、危機管理部長)
2021年6月定例月議会で、急傾斜地の崩壊による災害からいのちを守るために行政が果たす役割について、質問しました。
2021年6月定例月議会で、防災情報の見直しと地域の防災リテラシーの向上についても質問しました。
急傾斜地の崩壊による災害から市民のいのちを守るため、必要な箇所すべてにおいて、大阪府による急傾斜地崩壊防止工事が行われるよう、市としての役割をしっかりと果たしていただくとともに、土砂災害から身を守るためには、一人ひとりが日頃からの備えとともに、危険が迫っているときに避難行動に移ることができるよう、防災意識を高めていくことも重要である、と意見しました。
また、現状を踏まえると、二段擁壁の設置に関する課題についても考える必要が出てきたのではないでしょうか。
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二段擁壁の判断基準(都市計画法第33条第1項第7号関係、宅地造成等規制法第9条関係)【福岡市ホームページ】