枚方寝屋川消防組合議会で、「高齢者の救急搬送について~心肺蘇生を望まない傷病者への対応、地域包括ケアシステムの構築に向けた消防機関としての関わり」について、質問を行いました。

2019/12/24

「病院で死を迎えたくない」という本人が望む形での家族の看取りに私自身がとても苦労をしたことから、枚方市の12月定例月議会の一般質問で「人生の最終段階の過ごし方を選択できる環境の整備について」の質問を行いました。そのなかで、救急搬送・救急要請に関する課題については、消防組合の議会での一般質問が適当であろうとのことで、本日開催の第3回定例会で質問しました。
人生の最終段階を迎える際の大きな問題とは、生活の場である自宅や施設で穏やかに最期の時を迎えたいと願い、その意思表示を行っている方であっても、救急車で病院に運ばれてしまうと、結局、望まない治療を受けることになってしまうことだと思います。
そこで、急増する高齢者からの救急要請に対する救急現場での対応の現状や課題について質問し、救急現場における心肺蘇生を望まない傷病者への対応について、枚方寝屋川消防組合としての対応基準等を検討いただくことや、地域包括ケアシステムの構築に向けた取り組みに対して、適切な救急要請や救急搬送・救急医療体制の確保のためにも、消防機関としての関わり(参画)について、積極的に対応をいただくこと等を要望しました。

 


 

◇ 高齢者の救急搬送について
(1)救急現場における心肺蘇生を望まない傷病者への対応について
(2)地域包括システムの構築に向けた消防機関としての関わりについて

 

質問のやりとりは次のとおりです。

質問1

救急出動件数が増加し、救急搬送される方の数も年々増え続けるなか、特に65歳以上の高齢者の救急搬送の割合が増加しているとのことである。
高齢者数がピークを迎える2040年の高齢化率は4割に届くほどであると推計されており、多くの方を看取る「多死社会」でもある。高齢者の救急要請の中には、救急車が到着した後にご家族などからご本人の心肺蘇生の中止の意思を示され、本人の意思に従うべきか、応急措置を実施するべきか、医療機関へ搬送するべきか等、一刻を争う救急現場で、救命を使命とする救急隊員が判断に苦慮する状況もあるとのこと。これらの状況については、冒頭、管理者のご挨拶の中でも十分に触れていただいたところである。
そこで、1回目の質問であるが、枚方寝屋川消防組合における救急搬送状況は具体的にどれくらいで、そのうち、65歳以上の高齢者の割合はどれくらいか。
また、本消防組合において、救急の現場で、ご本人のご家族や周囲の方、あるいは入所する施設の方等から心肺蘇生の中止(DNAR)を求められるケースはどれくらいあり、そのような場合、救急隊員はどのような対応をとっておられるのか、伺う。

回答要旨1(警防部長)

本消防組合における本年1月から11月末日までの救急搬送人員は31,127人で、そのうち65歳以上の高齢者の割合は約59%である。
同期間において、救急現場で心肺蘇生を拒否されたケースは38件あり、多くのケースはご家族や周囲の方が、傷病者が心肺停止状態かお亡くなりになっているのか分からず救急要請に至っている。
また、傷病者が心肺蘇生を望んでいないことを施設の職員が認識しておらず救急要請に至るケースもある。
救急隊としては、心肺蘇生の中止を求められた場合であっても、原則として、救命処置をして救急搬送することを説明している。
ただし、心肺蘇生を望んでいないことを書面で確認したうえで、かかりつけ医と連絡をとり、医師が現場で傷病者の状態を確認できる場合については、救急搬送しない場合がある。

質問2

平成29年に日本臨床救急医学会から公表された「人生の最終段階にある傷病者の意思に沿った救急現場での心肺蘇生のあり方に関する提言」では、傷病者が心肺蘇生等を希望していない旨を救急の現場で伝えられた場合の、救急隊の対処に関する基本的な対応手順をフローチャートで示されている。また、東京消防庁では、自宅での看取りを望む終末期の患者さんが心肺停止になった場合、駆け付けた救急隊が心肺蘇生を中止できる基準を新たに設け、今月16日から運用を始めたと報道されている。
本消防組合としても、このような基準等を作成していくことが必要ではないかと考えるが、見解を伺う。

回答要旨1(警防部長)

総務省消防庁では、このような事案に対する今後の方向性として、各地域での検証を通じた事案の集積と、国民の動向、医療、ケアの取り組みを見極めながら検討を進めることとしている。
そうした中、東京消防庁で一定のルールが作られたが、現時点では全国各消防本部の対応が分かれているのが現状である。
本消防組合としては、今後、各地域の動向を見つつ、北河内地域メディカルコントロール協議会をはじめ医師会、関係部局と協議する必要性を認識している。

要望

「人口減少・少子高齢化が進む中、今後も増加が予測される救急需要に対応するための救急体制の強化も喫緊の課題である。」と決算審査意見書にある。安全・安心につながる救急搬送体制の確保は強く望むところであるが、高齢者の救急搬送が急増する中、限られた社会資源の有効活用のためにも、人生の最終段階におけるご本人の意思を尊重するためにも、避けることのできる救急要請を減らすことも重要であると考える。
「もしもの時」や「最期」を事前に考え決めることは、「どう生きたいか」を考えることでもある。ご本人やそのご家族と医療従事者・介護従事者が、ご本人の望む終末期の医療やケアについて前もって考え、繰り返し話し合い共有する「アドバンス・ケア・プランニング」、厚生労働省がつけた愛称で言うところの「人生会議」であるが、こうしたことを広げていこうとする取り組みが、今後、枚方・寝屋川両市においても進められていくものだと思う。
救急現場における心肺蘇生を望まない傷病者に対する標準的な対応等の基準については、このような構成両市の人生の最終段階における医療・ケアのあり方に関する取り組み状況を踏まえ、在宅医療や介護に関わる関係者の参画も得ながら、検討を行っていただくよう要望する。
そして、地域包括ケアの構築に向けた構成両市のこれらの取り組みに対し、枚方寝屋川消防組合にも参画いただくことで、適切な救急要請や救急搬送・救急医療体制の確保につながると考える。積極的な対応を要望する。

 


※救急業務のあり方に関する検討会(総務省消防庁)に提出された資料から引用したものです。

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