生まれてくる命の安心も。陽性妊産婦の確実な受け入れを市立ひらかた病院に期待。新型コロナウイルスに感染した妊産婦に対する支援について質問しました。9月定例月議会、一般質問の報告②です。

2021/09/21

枚方市議会議員の奥野みかです。

ここでは、「2.新型コロナウイルスに感染した妊産婦に対する支援についての報告です。

今年8月、千葉県で「自宅療養」中の妊婦が自宅で早産となり、新生児が死亡するという大変痛ましい事例が発生しました。府内の陽性妊産婦の受入れ医療機関は22か所で、そのうち出産対応可能な医療機関は19か所(北河内は2か所)に拡充されたとのことです。
市立ひらかた病院は、大阪府の入院フォローアップセンターの要請に応じて陽性妊産婦の受け入れも行っており、「今後においても、妊婦や乳幼児を受け入れられる医療機関が少ないといった事情も踏まえ行われる大阪府からの要請に対し、条件を問わず適切に応じられるよう努める」と答弁しました。
感染症医療と産科医療機能の両方を備え、救急対応も可能な、公的役割を担うことのできる市立ひらかた病院においては、府全体の入院調整を行っている大阪府との連携・調整、そして市内の産科医療機関との連携を図り、大きな医療体制の中での役割分担・機能分担として、いざとなれば、女性病棟全体を産科的管理や緊急処置が必要な新型コロナ感染妊産婦の専用病棟とする体制の確立を検討していただきたいと要望しました。

 


 

以下、9月21日の一般質問のやりとりを掲載します。

2.新型コロナウイルスに感染した妊産婦への支援について

Q.私の質問
今年8月、千葉県で「自宅療養」中の妊婦が自宅で早産となり、新生児が死亡するという大変痛ましい事例が発生した。同様の事案の再発防止のため、厚生労働省は都道府県に対し、新型コロナウイルス感染症に係る確実な周産期医療体制の確保について、繰り返し依頼しています。2021年8月23日付の事務連絡(新型コロナウイルス感染症に係る周産期医療の着実な整備について)には、「至急」という文言まで含まれている。
府の周産期医療協議会等においても、確実な周産期医療体制の確保に向けた検討や調整が行われていると思うが、府内における陽性妊婦の療養はどのようになっているのか、伺います。

A.保健所長の答弁
新型コロナウイルス感染症陽性となった妊婦については、妊娠週数や妊娠経過に加え、ご家族の状況や患者さんご本人の希望等を総合的に判断し、療養方針を決定している。妊婦を受け入れることのできる病院は限られているが、現在までにおいて、必要な方は入院できている

Q.私の質問
複合的な医療対応に関する質問として、新型コロナウイルスに感染した妊産婦への支援について、伺う。
陽性妊婦の受入れ医療機関は府内22か所で、そのうち出産対応可能な医療機関は19か所に拡充され、北河内医療圏では2か所で出産可能であると、広瀬議員の質問に対してご答弁があった。
第二種感染症指定医療機関として、これまでも新型コロナウイルス感染症に対するさまざまな対応に努めてきていただいている市立ひらかた病院には心より感謝申し上げる。
その市立ひらかた病院において、陽性妊婦の受入れ体制はどのように整えておられて、実際の受入れはどのような状況であるのか、伺う。

A.市立ひらかた病院事務長の答弁
入院については、受入れ体制を一元的に管理する「大阪府入院フォローアップセンター」が、中等症患者の受け入れ病院である本院の体制や状況を照らし、受入れの要請を行うこととなっている。
本院では、新型コロナウイルス感染症に対応するための看護師を増員するため、やむを得ず一部の一般病棟を閉鎖するなど、現在は人的にも設備面においても本院としてギリギリの限界値である42床を確保し、一人でも多くの命を救うべく対応にあたっている。
こうした中、これまでから妊婦の方についても「大阪府入院フォローアップセンター」の要請に応じ治療を行ってきたが、今後においても、妊婦や乳幼児を受け入れられる医療機関が少ないといった事情も踏まえ行われる大阪府からの要請に対し、条件を問わず適切に応じられるよう努めていく

O.私の意見・要望
妊婦や乳幼児を受け入れられる医療機関が少ないという現状に対して、意見と要望を述べさせていただく。
私は、千葉県で発生した痛ましい事案をしっかりと受け止めなければならないと思っている。なぜならば、あのことがあって、妊娠している女性、そしてその家族の方が、妊婦が新型コロナに感染するとどれほど大変なことになるのかを我が身のこととして知ったからである。
それは新型コロナの症状に対する不安よりも、新型コロナに感染すると妊娠・出産を診てもらえる医療機関がないということに対する不安だと思う。特に36週以降は毎週の健診が必要であるにもかかわらず「自宅療養」を余儀なくされている妊婦さんの不安は計り知れない。
だから、妊婦さんは、感染しないように外出もせず、毎日すごく注意して、孤立した状態で過ごさなければならない。私にも経験があるが、出産までの日々は不安でいっぱいである。それなのに、何かあった時に受け止めてもらえる病院がはっきりしない、なかなか見つかりそうにない、となると、その不安は本当に大きいと思う。
「自宅療養」を余儀なくされている妊婦の“不安の解消”と院内感染防止のため、京都府では、コロナ診療に詳しい内科医の協力も得て、産婦人科医が妊婦を“対面”で診察するという、救急車を使った妊婦の診察を行う取り組みが始まったとの報道があった。京都府は「早期の入院につながる。モデル事業として広めていきたい。」と言われている。素晴らしい取り組みだと思う。ただ、入院先の確保という課題は残っている。
そもそも産科・周産期医療を担える病院が限られている上に、新型コロナの感染症の対応まで必要となるとほんの一部の病院でしか受け入れられない。患者間の感染リスクがあるため、健診でさえ、民間産科医療機関で受け入れることは非常に困難だと思う。産科医療のためのスタッフも資機材もない「臨時医療施設」や通常のコロナ病床では、当然、産科的緊急処置への対応はできない。
だからこそ、厚生労働省は、各都道府県においては、今回の事案を踏まえ、「産科的緊急処置が必要な妊産婦の受入れを行う医療機関を確実に設定することについて、改めて検討をお願いしたい。」という緊急の事務連絡を発出しているのだと考える。
「これまで大丈夫だったから、今後も大丈夫」と言われても、コロナ禍の中で安心して妊娠・出産するための環境が整備されたとは思えない。いま求められているのは、産科医療機関の間の役割をどう分担し、陽性妊婦の健診や出産の受け入れ体制をどう築くのか、そのシステムを具体的に確立することだと思う。

神奈川県では、「妊婦の新型コロナウイルス患者対応等について」として、「周産期コロナの運用体制フロー図」、「入院調整の流れ」、7つの「周産期コロナ高度医療機関(基幹病院)」と「周産期コロナ受入医療機関」の一覧が県のホームページに掲載されている。

大阪府には、もともとOGCS(産婦人科診療相互援助システム)という産科の救急搬送を円滑に行うための連絡調整システムがあるが、神奈川県のシステムのように感染症対応がどのようになっているかについては、府のホームページでは確認できなかった。総合周産期母子医療センターすべてが感染症対応をされているわけではないようである。
地域周産期母子医療センターでもある大阪医科薬科大学病院は、重症化リスクが高いとされる妊娠中期以降の中等症の妊婦や、出産が差し迫った妊婦の受け入れを想定した陽性妊婦専用病床を8月25日から6床確保し、感染状況に応じて最大10床まで増やす計画である、と病院のホームページに掲載されていた。
その直後、8月27日のニュース(テレビ大阪)で、大阪医科薬科大学病院の陽性妊婦専用病床6床はすべて埋まった、中等症患者専門の十三市民病院の入院中の患者の約20%が妊婦であり、自治体の対策も急がれるとの報道があった。
番組の中で、大阪府知事は、産婦人科があり新型コロナ患者を受け入れている病院などに対し、コロナ陽性患者であっても出産を受け付けるよう要請した、と話されていた。

さまざまな状況をふまえると、今、受入れ体制の確立にあたって鍵を握るのが、感染症医療と産科医療機能の両方を備え、救急対応も可能な、公的役割を担うことのできる市立ひらかた病院ではないかと思うわけである。府全体の入院調整を行っている大阪府との連携・調整、そして市内の産科医療機関との連携を図り、大きな医療体制の中での役割分担・機能分担として、いざとなれば、4東の女性病棟全体を産科的管理や緊急処置が必要な新型コロナ感染妊産婦の専用病棟とする体制の確立を、ぜひ検討していただきたいと強く要望する。

 


 

◇コロナ禍における妊婦さんへの相談支援について

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、妊婦さん向けのパンフレット「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策~妊婦の方々へ~」について、厚生労働省も順次更新して発行しています。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、様々な不安を抱えた妊婦さんが増えています。帰省分娩(里帰り出産)を取りやめることになった妊婦さんは、出産場所の確保や産前産後の支援等、強い不安を抱えておられます。安心して出産等ができるよう、寄り添った支援が求められています(2021年5月7日付け厚生労働省通知「寄り添い型支援」及び「不安を抱える妊婦等への分娩前検査」の実施方法等についてなど)が、市はどのような相談支援体制を整えているのか、確認しました。

① 妊婦オンライン相談やオンラインによるマタニティスクール

感染の不安等で従来の来所での相談が難しいと考えられることから、2020年度より、オンラインによる保健指導事業として、妊婦オンライン相談やオンラインによるマタニティスクール(ひらかた de オンライン 産前産後クラス)を開催。

■ 妊婦オンライン相談(2020年10月~)の2020年度実績は1件、オンライン産前産後クラス(2020年12月~)の2020年度実績は、5回開催(参加者数28名)。

② 新型コロナウイルス感染症にかかる相談支援

大阪府内で連携し、「不安を抱える妊婦への分娩前のPCR検査」、「コロナ陽性となった妊産婦への寄り添い型支援」を実施しており、希望があれば、コロナの療養解除後も継続して助産師が訪問や電話で相談に応じ、支援している。
妊娠届出の際は、保健師や助産師が相談に応じるとともに、新型コロナウイルス感染症に係る各種相談窓口や新型コロナワクチンに関する情報について、リーフレットを配付する等、不安を抱える妊婦さんへの情報提供に努めている。

■ 不安を抱える妊婦への分娩前の検査(2020年7月27日~)
無症状の妊婦が検査を希望した場合に実施するPCR検査費用について、妊婦1人1回、20,000円を限度に助成(大阪府外の医療機関で実施の場合は償還で対応)するもので、2020年度の実績は、180件。(参考:妊娠届出数2,509件)

■ ウイルスに感染した妊産婦への寄り添い型支援(2020年7月27日~)
コロナ陽性者に対しては、保健所が疫学調査、健康観察を行い、健康観察期間の解除をもってフォロー終了となるが、フォロー終了後も不安や相談希望がある場合は、母子保健の保健師及び助産師が訪問や相談等の支援を行うもので、2020年度の実績は、情報提供4件、相談希望0件。

③ ワクチン接種について

時期を問わず、妊婦さんがワクチンを接種することについて、さらに、妊婦感染の約8割は、夫やパートナーからの感染であるため、妊婦の夫またはパートナーの方のワクチンを接種することについて、推奨する声明が出されている。(2021年8月14日「新型コロナウイルスワクチンについて(第2報)」日本産婦人科学会、日本産婦人科医会、日本産婦人科感染症学会

④ 乳幼児健康診査個別実施支援事業の活用

2020年5月~2021年3月末日の間、4か月児健康診査を集団健診から個別健診に変更して実施。

■ 4か月児健康診査
受診者数2,596人(受診率96.0%)のうち、集団健診(3回)は69人、個別健診(22医療機関)は2,527人。

 


 

各都道府県知事あて、厚生労働省医政局長事務連絡「新型コロナウイルス感染症に係る周産期医療の着実な整備について(2021年8月23日)

(引用)
これまで、各都道府県におかれては、新型コロナ ウイルス感染症の妊産婦を受け入れる医療機関の設定等を進めていただいているところでありますが、 令和3年8月17日に千葉県で自宅療養中の新型コロナウイルス感染妊婦が自宅で早産となり、新生児が死亡するという大変痛ましい事例が発生しました。
本事例に関しては、「新型コロナウイルス感染症に係る確実な周産期医療体制の確保について (確認依頼) 」(令和3年8月20日付け事務連絡)により、今後の同様の事案の再発防止のため、至急新型コロナウイルス感染症に係る確実な周産期医療体制の確保について、改めて周産期医療協議会等において、関係者間で確認・共有すること等をお願いしているところですが、改めて、新型コロナウイルス感染症に係る周産期医療体制の着実な整備について、下記のとおり検討・確認の実施の徹底等をお願いします。
なお、今回お願いする体制整備については、既に各地で行われている各種の取組について、 実効性を確保するという趣旨であり、着実な運用がされていれば 必ずしも現状の取扱いの変更を求めるものでは ありません。地域において実効的な体制が既に構築されている場合については、引き続き、そうした体制の維持をお願いするものであることを申し添えます。

1.確実な周産期医療体制の確保

・これまで、新型コロナウイルス感染症に係る周産期医療体制については、各都道府県において、周産期医療協議会等の開催による、新型コロナウイルスに感染した妊産婦の受入れ医療機関の設定、都道府県調整本部等において
周産期医療の専門家(災害時小児周産期リエゾン等)に連絡が取れる体制の整備等を要請しているところである。
・新型コロナウイルスに感染した妊産婦については、肺炎の重症化に対応できる専門性を有する集中治療が必要となる可能性が高く、さらに感染妊産婦の産科的緊急処置も必要となる場合があることから、受入れ医療機関を確実に設定する必要がある。
・ 今回の事案を踏まえ、各都道府県におかれては、地域の関係者とともに周産期医療体制の再確認・共有等を実施していただいているところであるが、産科的緊急処置が必要な妊産婦の受入れを行う医療機関を確実に設定することについて、改めて検討をお願いしたい。
なお、検討にあたっては、時間帯(例:平日、休日、夜間)ごとの体制や、自宅療養中等の妊産婦において産科的対応が必要となる場合等についても、それぞれ検討いただきたい。
・また、産科的緊急処置が必要な妊産婦の受入れを行う医療機関が確実に妊産婦を受け入れることができるよう、当該医療機関に妊産婦が集中することの軽減策(例:産科的管理の必要性が低い状態の妊産婦については、上記の医療機関以外で受け入れる等)について、周産期医療協議会等において検討いただきたい。
なお、併せて、自宅療養中等の妊産婦において、産科的対応ではなく、新型コロナウイルス感染症の症状悪化が認められた場合の受入れについても、周産期医療協議会等において検討いただきたい。
・また、周産期医療協議会等に消防機関等の関係者の参画を求めることについて、検討いただきたい。

2.新型コロナウイルスに感染した妊産婦の緊急性を踏まえた救急搬送・移送新型コロナウイルスに感染した妊産婦の緊急性を踏まえた救急搬送・移送

・ 新型コロナウイルスに感染した妊産婦について、より迅速かつ円滑な医療機関の選定と救急搬送・移送を目指す必要がある。
・ このため、1.で設定された産科的緊急処置が必要な妊産婦の受入れを行う医療機関のリストについて、都道府県消防防災主管部局等を通じて各消防機関に共有いただきたい。
・また、上記の医療機関における空き病床状況についても、同様に共有いただきたい。
・その上で、妊産婦から消防機関に出動依頼があった際、産科的緊急処置が必要であると判断した場合において、消防機関も即時に受入れ医療機関を選定し、救急搬送する方法について、改めて地域で検討いただきたい。

▶ 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)第5波医療体制のひっ迫に際しての妊婦のコロナ感染症に対する対応のお願い

2021年8月10日付 産科医療機関あて (日本産婦人科学会、日本産婦人科医会)
2021年8月10日付 産科医療機関あて[続報] (日本産婦人科学会、日本産婦人科医会、日本新生児成育医学会)

 


神奈川県における妊婦の新型コロナウイルス患者対応等について

◇周産期コロナの運用体制フロー図

神奈川県感染症対策協議会(2020年11月27日)資料より

・妊婦・新⽣児の新型コロナに対応する「周産期コロナ受入医療機関」体制
・新型コロナウイルス感染症にり患した妊婦の状況調査
・神奈川県における「周産期コロナ受入医療体制」の整備推進についての提言(神奈川県産科婦人科医会) ほか

神奈川県における子どもの新型コロナウイルス患者対応等について

【参考資料】

新型コロナウイルス感染症にかかる病床確保状況(第58回 大阪府新型コロナウイルス対策本部会議資料:2021年9月9日)

国内でのCOVID-19妊婦の現状~妊婦レジストリの解析結果(2021年9月15日付中間報告)

・COVID-19妊婦レジストリには、2021年7月31日までに感染妊婦180人の登録があり、重症度別の内訳は、軽症 74%、中等症 I 11%、中等症 II14%、重症 1.7%であった。
・36週未満での感染であれば、重症化しなければ軽快後の分娩を待機し、36週以降の感染では、施設の状況で分娩法を選択していた。軽症~中等症 Iでも36週以降に感染診断された場合(27人)、半数超(15人)がCOVID-19を適応とした帝王切開で出産していた。


【参考 10月5日追記】

コロナ感染の妊婦 第6波に備え専用病床確保 東京・墨田区(NHK)

▶ コロナに感染した妊婦の出産 母親が語る体験「赤ちゃん ごめんね」(NHK)

▶ 「妊婦だからって優先はできません」濃厚接触者でもPCR受けられず たらい回しの末に“流産” 女性の無念(東海テレビ)

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