3月25日、予算特別委員会の5日目は、特別会計・公営企業会計です。令和2年度当初予算について、3つの観点から質問を行いました。
3月25日に行われた予算特別委員会の5日目(特別会計・公営企業会計)において、令和2年度当初予算について、3つの観点から質問を行いました。
「①一般会計からの繰入金について(病院事業会計)」について、感染症指定医療機関である市立ひらかた病院は、新型コロナウイルスの感染症対策という役割を担っていることで病院経営という観点からは多大なる損失を被っている状況であることを聞いています。何が起こるかわからない病院経営において、令和2年度におけるキャッシュフローの現状も確認しながら、今回の新型コロナウイルス問題に対するリスクマネジメントの観点からも、いのちと安全を守るという公的病院の役割という観点からも、病院事業会計として必要な資金残高を確保するためにも、留保している自己財源の執行には慎重であるべきです。少なくとも令和元年度から令和2年度にかけて、病院事業会計に対する操出金のあるべき状況が見極められるまで、行政改革の効果が出たものと見込んで「この街に住みたい基金」に積み立てを行うべきでないこと指摘しました。
「②管路の計画的な整備について(水道事業会計)」については、地震等の災害による断水を回避するためのバックアップルートの確保となる中宮浄水場から田口山配水場間送水管更生工事等、管路の計画的な整備についての考え方を確認し、枚方市水道施設整備基本計画に基づき、老朽化施設や基幹管路の更新・耐震化、バックアップルートの確保はもちろんのこと、配水支管の耐震性能の向上や応急給水と復旧を行うための体制整備も推進するとともに、市民の安心につながるよう、本市水道の現状と課題について、適切かつ丁寧な情報提供を行っていただくことを要望しました。
「③在宅医療・介護連携推進事業費について(介護保険特別会計)」については、要介護の状態となっても、高齢者が住み慣れた地域で自分らしく暮らすための支援体制の整備を目的とする在宅医療・介護連携推進事業費の令和2年度の内容について確認し、「人生の最終段階の過ごし方を選択できる環境の整備」に向け、本人意思を尊重する観点も踏まえ、地域医療の推進、地域包括ケアの実現のため、保健所を有する本市において、実効性のある有機連携が可能となるよう、枚方医師会をはじめとする関係機関のさらなる連携強化に取り組んでいただくことを要望しました。
以下、質問のやりとりを掲載します。
①一般会計からの繰入金について(病院事業会計)
Q.私の質問
令和2年度病院事業会計の当初予算の内訳については説明もあったが、収益的収入では、入院収益・外来収益・固定資産売却益の増を見込まれ、対前年度比5.2%増の105億3,000万円(10,530,416千円)とされている。一方、収益的支出では、給与費・材料費等の経費は増えるものの、減価償却費の減などにより、対前年度比2.3%増の104億6,200万(10,461,837千円)にとどまったことから、約6,800万円(68,579千円)の黒字を見込む予算となっている。令和元年度当初予算においては、約2億2,000万(220,255千円)の収益的収支の赤字を見込む予算であったことと比べると、病院の経営努力を反映しているものと理解している。
そうした状況の中で行われるという「病院事業会計の繰入金」の抑制について、「行財政改革プラン2020」では、病院収支の改善を図り、令和5年度まで毎年度5,000万円、総額2億円の繰り入れ抑制を行うと掲載されている。
※参考 「病院事業会計の繰入金」について
(→私も質問を予定していましたが、さきの委員に説明されていたので、省略しました。)
一般会計からの繰入金は、すべて国の示す基準内の繰入金で、不採算である政策医療を提供するのに必要な経費と市の財産となる資産を整備した際に発行した企業債の償還金の2分の1を積算したもの。繰入金を受けている政策医療の具体的なものとしては、北河内二次医療圏における二次救命救急、小児医療の提供に対する負担金、MRIや放射線治療装置などの高度医療機器の設置・運用に対する負担金、今回の新型コロナウイルスなどの感染症医療の提供に対する負担金、医師確保として応援医師の人件費に対する負担金などがある。
Q.私の質問
先の委員への答弁で、病院事業会計への繰入金はすべて国が定めた基準内の繰入れで、不採算な政策医療を提供するのに必要な金額も積算されているということである。
また、令和2年度予算において抑制を予定されている繰入金5,000万円の約99%は、資本的支出である企業債償還金に対する繰入れとのことで、企業債償還金については、一般会計からの繰入金を財源とするのではなく病院の自己財源で対応するとのことである。
病院経営において重要なのは、もちろん損益計算書上の黒字化を図ることであるが、新病院以降の5年間については、開院時に整備した高額な医療機器の減価償却費もあり、厳しい時期であったと思う。企業会計における減価償却費は、現金出入りを伴うものではなく、貸借対照表上の償却資産の価値を毎年減らしていくために、その減少分を「費用」として経理上把握するものなので、減価償却費分は現金や預金として病院事業会計内に内部留保されることになる。
病院経営においては、多額の人件費や物件費を日々動かしているので、いわゆる「キャッシュフロー(現金の流れ)」を支える資金の状況がとても重要だと考える。
「当初予算書」248ページに、令和2年度のキャッシュフロー計算書が掲載されているが、まず、市立ひらかた病院のキャッシュフロー資金の推移・現状を伺う。あわせて、同規模公立病院のキャッシュフロー資金等を参考に、市立ひらかた病院としてはどの程度の資金残高が適当であると考えているのか、伺う。
A.経営企画課の回答
現金預金残高については、今年度末で、昨年度末から約3億5,800万円の増加を見込み、令和2年度当初予算で、18億3,421万7千円と、約3億8,300万円増加すると見込んでいる。
病院を安定的に運営する上で必要な資金については、提供する医療や診療体制等が大きく影響することから一概には申し上げれないが、こうした収益の増加に伴い一定確保することができるものと見込んでいる。
今後、新病院開院時に整備した医療機器の更新や開院後5年半を経過した施設の改修等の費用が見込まれることと、高額の抗がん剤や新たな医療機器の購入なども念頭に置いた、資金の安定的な確保に向けて、職員が一丸となり更なる経営改善に取り組み、経営基盤の強化に努めていく。
Q.私の質問
市立ひらかた病院の現金預金残高は、令和元年度末で約14億5,000万円、、令和2年度末の見込みで約18億3,000万円とのことである。対前年度で約3億5,800万円、約3億8,300万円と残高が増加するのは、新病院開院時の高額医療機器分の減価償却期間が終了することが寄与していると思うが、次の更新への備えもあり、このキャッシュフロー資金は決して過大なものではないと思う。
病院事業の経営が本当に悪化した状態というのは、収益的収支で大きな赤字が発生してキャッシュフローを支える資金が底を尽き、一時的な借り入れと返済を繰り返すような状態になることである。一般の企業でも、最低でも月商の1か月分、できれば月商3か月分の現金保有が必要と言われている。市立ひらかた病院の収入規模を年間約100億円だと仮定すると、月額で約8億3,000万円。3か月分となると約25億円の現金保有が必要ということになる。例えば、約600床、24診療科の市立豊中病院の平成30年度末現金預金残高は約52億円と報告されている。
「行財政改革プラン2020」で定められた総額2億円の繰入れ抑制は、企業債償還金の財源を一般会計からの繰入金ではなく、病院の自己財源、すなわち、今、ご答弁いただいた内部留保資金で返還することで行うとのことである。これを行財政改革と呼べるかどうかは別にして、財政運営上の工夫であるかとは思う。現在の資金残高から見れば、そうした方法で行う一般会計からの繰入金減額も可能な範囲なのかもしれない。
しかし、病院経営においては何が起こるか、どんなリスクが発生するか、わからない。実際、現在、市立ひらかた病院では、感染症指定医療機関として、施設・体制の両面で感染症防止対策が徹底されているにもかかわらず、新型コロナウイルスの感染症対策という役割を担っていることで、病棟使用を制限せざるを得ないこと、また、まるで病院自体が危険な場所であるかのような風評被害の影響もあってか、新型コロナウイルスの問題発生以降、病棟・外来とも患者数が一気に落ち込んでいることなど、病院経営という観点からは多大なる損失を被っている状況だと聞いている。そうした時に必要となるのがキャッシュフローを支える現金資金であると考える。
これまで本委員会で収益増についてやり取りがなされ、病院としても、資金増を図り、経営基盤の強化を図っていくとのことであったが、このまま令和2年度も新型コロナウイルスの影響が続いていくのであれば、当初予算どおりに収益的収支の黒字が実現できるのか、疑問である。
そこで、令和2年度予算の状況を見通す上で聞かせていただきたいが、新型コロナウイルス問題の発生以降、現在の病院経営は、どのような状況なのか、伺う。
A.経営企画課の回答
今年度の本院の経営状況については、市立ひらかた病院改革プランを中間検証する時点では、順調な伸びを示していたが、今回の新型コロナウイルス感染症が発生し、大阪府下でも感染者が出だしたころから、本院への感染患者の入院の有無の問い合わせが多くなるとともに、入院の辞退が相次ぐなどして患者数の下降傾向が見え始め、現在では1月と比較して病床利用率が10ポイント近く落ち込むなど大変厳しい状況となっている。
令和2年度予算の利益剰余金の計上には、本院の感染予防対策が万全な点を患者の皆さんにこれまで以上にご理解いただくことで、早期に患者数が感染症の発生前の水準まで回復することが必要であると考えている。
O.私の意見
病床利用率が10ポイント近く落ち込むなど、大変憂慮すべき事態となっているではないかと思われる。繰り返しになるが、病院経営においては、何が起こるか、どんなリスクが発生するか、わからない。今回の新型コロナウイルスの問題では、公立病院はいのちと安全を守るという社会的に重要な役割を担っており、市立ひらかた病院においては、より高い安全性を備えているにもかかわらず、その役割が故に厳しい経営状態に陥るといった構図を浮き彫りにしたのではないか。
感染症対策に伴う損失分は、令和2年度の補正予算において、新型コロナウイルス感染症対策経費として、一般会計からの繰入金を増額して補填すべきものだと私は考えている。
もしそうなれば、資本的支出に係る5,000万円の繰出金抑制を行ったとしても、総額として、病院事業会計に対する操出金の抑制が具体化できないことも考えられる。何が何でも5,000万円の繰入金削減をするなどという乱暴なことを行うと、病院経営において重要なキャッシュフロー資金を不足させ、感染症対策は言うまでもなく、市民にとって貴重な医療資源である市立ひらかた病院の経営を危うくしてしまわないかと大変心配である。
市立ひらかた病院は、感染症以外でも災害医療や小児救急などの政策医療を担っており、公立病院として市民のためにその責務を果たせるよう運営することが市の責務であると思う。
今回の新型コロナウイルス問題に対するリスクマネジメントの観点からも、いのちと安全を守るという公的病院の役割という観点からも、病院事業会計への操出金抑制には慎重であるべきこと、少なくとも令和元年度から令和2年度にかけての操出金のあるべき状況が見極められるまで、「この街に住みたい基金」への病院事業会計への操出金抑制分の基金積み立てを行うべきでないことを、改めて指摘しておく。
②管路の計画的な整備について(水道事業会計)
Q.私の質問
「予算説明書」216ページ、送配水管更生事業費として中宮浄水場から田口山配水場間送水管更生工事が記載されている。この工事については中宮浄水場から田口山配水場への送水管を管更生により二重化し、バックアップルートを確保する事業と聞いているが、令和元年度末の進捗率、また、事業はいつまでを予定しているのか、伺う。
A.上下水道計画課の回答
中宮浄水場から田口山配水場間送水管更生工事の進捗率については、令和元年度末で48パーセントとなる見込みである。また、事業として令和3年度までを予定している。
Q.私の質問
水道管路は地震等の災害による断水が発生した場合、市民生活に大きな影響を与える。そのため断水を回避するためのバックアップルートの確保は重要なものと考えるが、中宮浄水場から田口山配水場間送水管更生工事の他、どのような取り組みをされるのか、伺う。また、水道事業では平成30年度に「枚方市水道施設整備基本計画」を策定され、令和2年度はこの基本計画に基づく事業実施の2年目となるが、管路の計画的な整備はどのような考えのもと進めているのか、伺う。
A.上下水道計画課の回答
断水を回避するためのバックアップルートの確保するための事業については、田口山配水場から北山配水場への送水管のバックアップルートとなる招提東町3丁目地区の配水本管更新事業や村野西町地区では軌道下の配水管のバックアップルートのため連絡管の整備等に取り組む。
また、管路の計画的な整備は、「枚方市水道施設整備基本計画」の策定にあたって実施した現状把握による管路評価に基づき進めている。評価は老朽度の他、災害により漏水が発生した場合に社会的影響が大きい緊急交通路や軌道の下に埋設されていることなどを評価対象としており、この評価に基づく優先順位により事業を実施している。
O.私の意見
SDGs(国連の持続可能な開発目標)にも、そのゴール6にあるように、すべての人に水と衛生へのアクセスの保障と持続可能な管理の確保がうたわれている。
枚方市水道施設整備基本計画に基づき、管路評価を踏まえ、法定耐用年数を超えた老朽化施設や基幹管路の更新・耐震化、断水を回避するためのバックアップルートの確保を計画的に推進いただくことはもちろんのこと、「いのちの水」の確保のためには、鉛製給水管の解消を含む配水支管の耐震性能の向上についても、進めていただくことをお願いする。災害時における給水の継続に係る経費は、一般行政の責務の部分もあろうかと思われるが、平時から災害時に速やかに応急給水と復旧を行うための体制整備を進めていただきたい。そして、市民の安心につながるよう、本市水道の現状と課題について、適切かつ丁寧な情報提供を行っていただくことをお願いしておく。
③在宅医療・介護連携推進事業費について(介護保険特別会計)
Q.私の質問
「予算説明書」97ページ、在宅医療・介護連携推進事業費、4,282万1千円の内容について、伺う。また、この事業は、介護保険特別会計の運用上、国によって予算の枠組みが規定されているのか、伺う。
A.地域包括ケア推進課の回答
在宅医療・介護連携推進事業費の内容について、まず、啓発のための各種講座や研修会の開催、及びエンディングノートをはじめパンフレット等の作成・配布にかかる経費として、報償金や印刷製本費等を計上している。委託料については、医療・介護の事業者を対象とする相談窓口の設置や「かかりつけ医マップ」の作製を枚方市医師会に委託するための経費、及び各日常生活圏域における医療・介護のネットワーク構築等の業務を地域包括支援センターに委託する経費となっている。
また、予算の枠組みについては、本事業の経費には国により標準額が設けられており、基礎事業分105万8千円に、規模連動分として376万1千円に地域包括支援センターの数を乗じた金額を加えた4,995万1千円が本市における標準額となる。この標準額の範囲内で各自治体の実情に合わせ、柔軟に事業を実施することが求められている。
Q.私の質問
在宅医療・介護連携推進事業費の内容、そして、国の定める「標準額」の約85.7%を予算化されているということは理解した。「人生の最終段階の過ごし方を選択できる環境の整備」のためにも、住み慣れた地域で、最期まで自分らしく生きることを支援する取り組みは今後ますます重要なものとなってくる。今回の予算案もそのような視点を重視したものとなっているのか、見解を伺う。
A.地域包括ケア推進課の回答
要介護の状態となっても、高齢者が住み慣れた地域で自分らしく暮らすための支援体制の整備がこの事業の目的である。環境が整うならば自宅で最期を迎えたいと望む高齢者も多くおられることから、医療・介護の支援ネットワークの充実や、広く市民に対し、ご自宅で最期を迎えるにあたっての準備や心構えなどの啓発や情報提供を行うための予算を計上している。
O.私の意見
要介護の状態となっても、高齢者が住み慣れた地域で自分らしく暮らすための支援体制の整備がこの事業の目的とのことである。「在宅医療体制を構築するにあたっては、本人意思を尊重する観点から、様々な部署や関係機関と多角的に連携を図るように考えていきたい。」と先の議会では答弁があり、今回の機構改革で前進することを願うが、地域医療の推進、地域包括ケアの実現のため、保健所を有する本市において、実効性のある有機連携が可能となるよう、枚方医師会をはじめとする関係機関のさらなる連携強化に取り組んでいただきたいと、これは要望させていただく。
※参考 「人生の最終段階の過ごし方を選択できる環境の整備」について
2019年12月議会で「人生の最終段階の過ごし方を選択できる環境の整備について」質問し、枚方市医師会との強力な連携協力のもと、在宅での療養を支える在宅医療体制の整備に努めるとともに、地域医療の推進に関する専門の部署を設け、支援体制を強化していただくことを要望。(➣その時の記事はこちらから)