5月14日、立憲アカデミー大阪開講。開講式の後、第1回勉強会は「水循環~水危機、気候変動時代のまちづくり」をテーマに、水ジャーナリストの橋本淳司さんの講義。「水から考える」、自ら考える、学びの多い勉強会でした。
枚方市議会議員の奥野みかです。
立憲アカデミー大阪開講。全6回となる政治スクール、5月14日の開講式は、塾長である森山浩行衆議院議員(立憲民主党大阪府連代表)の挨拶からスタート。
将来政治家をめざす方、政治に興味がある方、立憲民主党の政策をより深く知りたい方との呼びかけで集まってくださった皆さんと、いま、それぞれにできることは何か等、ボトムアップで、ともに学んでいく勉強会でありたいと考えている、ノウハウではなく、ありかたを伝えていく「立憲アカデミー大阪」で、一緒に学び、考えていきましょう、との森山塾長。政治家は「聴くこと」から、という熱い思いも伝えてくれました。
さて、立憲アカデミー大阪、第1回勉強会は、「水循環~水危機、気候変動時代のまちづくり」をテーマに、水ジャーナリストの橋本淳司さんの講義でした。
講師:橋本淳司
水ジャーナリスト、アクアスフィア・水教育研究所代表、武蔵野大学客員教授。
1967年、群馬県生まれ。学習院大学卒業。水ジャーナリストとして国内外の水問題やその解決事例を調査し、メディア等で発信している。著書に「日本の地下水が危ない」「水道民営化で水はどうなる」など。
冒頭、立憲民主党の綱領「私たちのめざすもの」と水循環の関係に触れ、「(ウ)多様性を認め合い互いに支え合う共生社会」の「地域ごとの特性を生かした再生エネルギーを基本とする分散型エネルギー社会を構築」「多様な生物や自然環境との調和をはかり、持続可能な社会」について、「水」がないとダメですよね~と、「(エ)人を大切にした幸福を実感できる経済」の「食料やエネルギー、生きるために不可欠なサービスなどを確実に確保できる経済」についても、「水」がないとダメですよね~と、「(カ) 危機に強く信頼できる政府」の「災害や感染症などの社会的危機に際しても、確実に機能する実行力のある政府」「多様な主体による自治を尊重し、地域の責任と創意工夫による自律を可能とする真の地方自治の確立」についても、「水」政策のキホンで、「(キ) 世界の平和と繁栄への貢献」の「気候変動などの地球規模の課題」も「水」問題。
持続可能な社会の構築に向けては、「水から考える」ことが大切である、と橋本さん。立憲民主党のめざすもの=「綱領」と、水の憲法と言ってもいい「水循環基本法」との関係についてもしっかり学んでほしいとのお話がありました。
「水とくらしと流域」
「流域」単位で水をマネジメントしよう、との説明も「なるほど」と、納得しました。
「流域」でものごとを考えることは、戦国時代に始まったもので、上流を整備して中流域で国をつくる、というまとまりづくりが進行し、「流域」が一つの経済圏、一つの自治体のようなものであると。一級河川をベースに考えると、日本の中には、109の「流域」があり、その中に、中流域・小流域があるということのようです。
「私たちの生活は、グローバルサプライチェーンの末端にある。世界各地の流域の水をつかってつくられた製品を買い集め、大量に消費し、廃棄している。自分の所属する流域を意識し、水を保全と活用しながら暮らしていこう。人の暮らしは流域の水とともにあったから、水と森、食、エネルギーの関係性を最適化する。」
治水・利水についても、「流域」全体=流域圏でみていくという説明もとてもよくわかりました。
昨年4月に可決成立、7月施行の「流域市水関連法(特定都市河川浸水被害対策法等の一部を改正する法律)」により、「治水」は大きく転換することとなり、河川区域での治水から、流域全体での治水を考えるという発想に、担い手も、これまでの「河川管理者」という考え方から、「流域人」、つまり、流域に所属する自治体、企業、住民などに変化しているとのこと。
(※国土交通省 水管理・国土保全局 「流域治水」の基本的な考え方より引用)
いつまであると思うな、親とカネと水道、なんて冗談を交えながら、「水道の持続を危うくする要因」についてもお話しいただき、ここでも、「流域」を意識した水管理の説明がありました。人口減少・水需要減・気候危機を課題としてとらえ、設備・管路の削減(ダウンサイジング)等の更新と縮小・地域最適、利水のみならず、治水、生物多様性をあわせて考える必要性、IOTの活用等々。専門人材の確保(育成)も必要ですね。
そして、流域の水循環政策について、「水道」から「水点」へのシフト、といった話もありました。大きな施設で浄水処理し、そこから水を道を通して運ぶのが「水道」だとすれば、給水ポイントを小規模分散化すると。エネルギーの視点からの水道事業の見直しのようです。
水と食との関係、水と森林との関係、エネルギーと水との関係などの話が続きましたが、水田の公的機能をどう維持するか(水田は地下水を育む。耕作放棄地が増えると地下水が減る等)、森林の公益的機能を発揮させながら、持続的な林業経営を行うべき等、とてもわかりやすい語りで、とても勉強になりました。森林環境譲与税を「流域」単位で使うべきではないかという提案もとても興味深いものでした。
繰り返し説明されていた、水の憲法であるという「水循環基本法」について、あまり触れてこなかったので、見ておかなければと思いました。
「水循環基本法」では、「水循環」を「水が、蒸発、降下、流下又は浸透により、海域等に至る過程で、地表水又は地下水として河川の流域を中心に循環すること」と定め、「健全な水循環」を、「人の活動及び環境保全に果たす水の機能が適切に保たれた状態」と定めているとのことです。なお、法律では、「水循環の重要性」「水の公共性」「健全な水循環への配慮」「流域の総合的管理」「水循環に関する国際的協調」の5つの基本理念や、「貯留・涵養機能の維持及び向上」、「水の適正かつ有効な利用の促進等」など8つの基本的施策が法律で定められています。※参考:水循環基本法と水循環基本計画について(内閣官房 水循環政策本部事務局)
最後の質疑応答もとても活発に行われ、時間が足りないほど…。受講者から出された多くの質問に、講師の橋本さんがとても丁寧に答えてくださいました。
(質問内容)
・地下水条例をつくるということについて(地下水は誰に属するのか)
・地下水の見える化について
・大阪市の水道料金基本料金の減免について
・水道事業の経営(コンサルの意見に依存し、高度な判断ができない公務員…)、財源問題
・水道法の改正により可能となったコンセッション方式(運営権の譲渡)のメリット・デメリットについて
・公のモニタリング能力の課題(水道の技術継承について。技術の革新により変化した経験知のない技術をモニタリングできるのか)
・専門性を持つ公務員を育成するということについて(官を監視するのが政治)
・自治体で行っている水道事業を流域で考える、ということについて(広域化の課題)
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京阪渡辺橋駅か