すべての子どもたちに教育の保障を。就学につながる取り組みの徹底を要望。外国につながる児童、生徒の就学支援について質問しました。9月定例月議会、一般質問の報告④です。
枚方市議会議員の奥野みかです。
ここでは、「4.外国につながる児童、生徒の就学支援について」の報告です。
2019年12月定例月議会で、外国籍の子どもたちに就学案内を行った後、就学手続きを行わず、就学状況が確認できていない方が、毎年一定数あるが、不就学かどうかについては、把握していないのが実情であるとの説明でしたが、教育長は「国籍に関係なく、すべての子どもたちが生き生きと学ぶことができる学校園づくりに努める。」と答弁されました。今回、改めて、国籍に関係なく、すべての子どもたちに教育が保障されるために 、就学状況の把握ができているのかを教育委員会に確認しました。
学校教育部長からは、国の「外国人の子供の就学促進及び就学状況の把握等に関する指針」を受けて、 今年度から、新入学年齢相当の外国籍の子どもの学齢簿を作成し、保護者や学校から情報提供があった際は、記録を残し就学状況把握に努めている、とのお答えでした。
外国につながる子どもたちの「不就学ゼロ」に向けて、全国的にもさまざまな取り組みが行われています。
本市の「就学案内・就学通知」の取り扱いの仕組みは変わっていないようですが、国の「指針」を受け、今年度から外国籍の子どもの「学齢簿」は作成され、市長部局や関係機関等とも連携されているとのことです。
外国籍の子どもたちにもあたりまえに「教育への権利」が保障されるよう、就学状況が把握できないことのないよう、本市においても、この機に「つながる」「つなげる」仕組みづくりを構築していただくよう要望しました。
さらに、外国につながる子どもの教育にかかわる2つの大きな法律の施行や、本市で策定した『国際化施策に関する考え方』も受け、外国につながる子どもの就学支援のため、学校現場のさらなる努力をお願いするとともに、子どもにとっての「最善の利益」のために、市長部局との連携はもとより、地域や各種民間団体との情報共有も行いながら、市として、外国につながる子どもたちの教育の保障、学力の保障を行うことを要望しました。
以下、9月21日の一般質問のやりとりを掲載します。
4.外国につながる児童、生徒の就学支援について
Q.私の質問
2019年12月定例月議会において、「教育委員会では、国籍に関係なく、すべての子どもたちが生き生きと学ぶことができる学校園づくりに努める。」と教育長にご答弁いただいている。「多文化共生のまち・ひらかた」の実現のため、受け皿となる施策の拡充も望むが、国籍を問わず、すでに準備されている施策について、まずは誰もが「つながる仕組みづくり」が喫緊の課題である。
特に、このまちに住み、このまちで育つ外国籍の子どもの就学について、「つなげる」「つながる」仕組みの徹底を、と願い、この間、外国籍の児童・生徒の就学状況を確認してきているが、今年度の入学に際しての実情について、伺う。また、昨年7月の国の「指針」を受け、教育委員会として取り組み内容の変更があったのかについても伺う。
A.学校教育部長の答弁
外国籍の児童・生徒の就学状況について、令和3年度入学に際して、就学案内を送付した外国籍の児童の人数は22人、そのうち枚方市立小学校に入学した外国籍の児童は19人となっている。
また、中学校では、就学通知を送付した外国籍の生徒の人数は15人、そのうち14人が入学している。
令和3年度から、国の「外国人の子供の就学促進及び就学状況の把握等に関する指針」を受けて、新入学年齢相当の外国籍の子どもの学齢簿を作成し、保護者や学校から情報提供があった際は、記録を残し就学状況把握に努めている。
Q.私の質問
国の「指針」には、市長部局、ハローワークや出入国在留管理局等、各種関係機関との情報共有や連携体制についても記載があるが、教育委員会としての見解を伺う。
A.学校教育部長の答弁
教育委員会においては、市民室、観光交流課、子どもの育ち見守りセンター等と就学に関する情報等を連携して、外国籍の子どもの就学促進や就学状況の確認に努めている。
また、住民登録したまま出入国の状況確認が必要な場合等には、出入国在留管理局等との連携を図っている。
O.私の要望
小学校入学に際して、外国籍の児童には「就学通知」ではなく、「就学案内」送付し、中学校入学に際しては、小学校からの繰り上がりの生徒に「就学通知」を送る。この仕組みは以前の答弁から変わっていないが、国の「指針」を受け、今年度、就学する児童、生徒の「学齢簿」は作成されているということである。そして、市長部局や関係機関等とも連携されているとのご答弁である。
「住民基本台帳上、学齢相当の外国籍の児童、生徒、合計205人のうち、今年5月1日基準日現在、不就学の可能性があると考えられる数は13人であったが、関係機関からの情報等により、現時点ではすべて状況を把握している。」と、ヒアリングの際、ご説明いただいた。
外国につながる子どもたちの「不就学ゼロ」に向けて、不就学調査や就学前支援教室の実施、就学年齢を超えた受入れ等、全国的にもさまざまな取り組みが行われている。外国籍の子どもたちにもあたりまえに「教育への権利」が保障されるよう、就学状況が把握できないことのないよう、本市においても、この機に「つながる」「つなげる」仕組みづくりを構築していただくよう要望する。
近年になって、外国につながる子どもの教育にかかわる2つの大きな法律が施行された。「教育機会確保法(2017、義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律)」や「日本語教育推進法(2019、日本語教育の推進に関する法律)」等の施行前から、教育委員会として、母語を話せる教育指導員の派遣や府の加配教員である日本語指導教員の配置は行っている、とのご説明であったが、法施行を受けての変更は確認できなかった。市の『国際化施策に関する考え方』の取り組みの内容には「外国籍等の児童・生徒の学校への受入れ体制の確保」もあげられている。
現場の声を紹介する。「ほとんどのお子さんは、入学して2年も経てば日常会話ができるようになり、3、4年経てば日常会話には支障がないように表面的には見えますが、学年が上がるにつれ、難しくなる学習についていけなくなるのが現状です。また、家庭では母語、学校では日本語と、バイリンガルのように見えても、どちらも確実に身についていないお子さんもおられます。アイデンティティに悩むお子さんもおられます。日本語の日常会話ができるようになったその後にこそ、確実な学習支援となる日本語教育が大切です。学ぶための学習言語の習得には時間がかかります。子どもたちは未来の大人です。是非、支援の時間を延長してください。」
これが現場の声である。
外国につながる子どもの就学支援のため、学校現場のさらなる努力をお願いするとともに、子どもにとっての「最善の利益」のために、市長部局との連携はもとより、地域や各種民間団体との情報共有も行いながら、市として、外国につながる子どもたちの教育の保障、学力の保障を行うことを強く要望する。
▶ 外国人の子供の就学促進及び就学状況の把握等に関する指針(2020年7月)
我が国における外国人の子どもの受入れ体制の整備及び就学後の教育の充実については、国際人権規約及び児童の権利に関する条約を踏まえ、各地方公共団体において取組が進められてきたが、2019年度に文部科学省が実施した「外国人の子供の就学状況等調査」により約2万人の外国人の子どもたちが就学していない可能性がある、又は就学状況が確認できていない状況にあるという結果が明らかとなったところである。
こうした状況に対して、外国人の子どもたちが将来にわたって我が国に居住し、共生社会の一員として今後の日本を形成する存在であることを前提に、日本における生活の基礎を身に付け、その能力を伸ばし未来を切り拓くことができるよう、外国人の子供に対する就学機会の提供を全国的に推進することが必要であるため、日本語教育の推進に関する法律(2019年)により策定された「日本語教育の推進に関する施策を総合的かつ効果的に推進するための基本的な方針」(2020年6月23日閣議決定)に基づき、外国人の子供の就学促進及び就学状況の把握等のために地方公共団体が講ずべき事項を示したもの。
(※クリックするとPDFファイルが開きます。以下は、資料「外国人児童生徒等教育の現状と課題(2021年5月、文部科学省資料)」からの抜粋)
▶ 外国人の子供の就学状況等調査結果について
■ 外国人の子供の就学状況等調査結果(確定値)(概要)
■ 外国人の子供の就学状況等調査結果(確定値)
▶ 外国人児童生徒等教育の現状と課題(2021年5月、文部科学省資料)
(※クリックするとPDFファイルが開きます。以下は、資料からの抜粋です。)
【本市の実情】
不就学の可能性があると考えられる数については、2021年5月1日基準日現在では13人となっていますが、教育委員会によると、その後の関係機関からの情報等により、すべて状況把握しているとのことです。
以下、これまでの議会の質問について掲載します。
■ 2020年12月定例月議会
・外国籍の子どもの保護者に対して、多言語に対応した就学案内を送付。入学を希望される場合については就学手続きをおこなっていただくよう周知を図っている。
・就学通知書を送付した児童生徒について、学校に就学届を提出されていない方には、学校から訪問するなど、対応をおこなっている。中学校に入学される外国籍の方には「就学案内」を送付していない。就学手続きをされていない外国籍の方が、不就学か、否かについての把握ができていない。
■ 2019年12月定例月議会
・国籍に関係なく、すべての子どもたちが生き生きと学ぶことができる学校園づくりに努める(教育長)。
・外国籍の方に就学案内を行ったのち、就学手続きを行わず、就学状況が確認できていない方が、毎年一定数あるが、不就学かどうかについては、把握していないのが実情。
▶ 学校への受け入れ体制の確保について
市は、「国際化施策に関する考え方」を定め、基本方針である「多文化共生の推進」には、「家族で暮らす外国人市民等の増加に伴い、医療や各種社会保険制度の利用、出産や子育ての支援、子どもの教育など、様々な場面で多言語対応等の環境づくりを進める必要があります。また、来日したばかりの外国籍の児童・生徒を円滑に学校で受け入れる対応や、生活・仕事の基礎となる「学び」を保障することが重要な課題となっています。」と記載されています。
取り組みの内容の中には「外国籍等の児童・生徒の学校への受入れ体制の確保」とあります。
■ 2020年度の実績(学校教育部の回答)
・日本語の習得が不十分な児童・生徒等の在籍する小中学校に対して、母語を話せる教育指導員を派遣し、日本語及び教科の学習の支援、学校生活における相談等を行い、当該児童・生徒の孤立感の解消や学校生活への適応の促進に努めている。
・保護者に対しても、懇談等における通訳者の派遣や配付プリントの翻訳など、児童・生徒がスムーズな学校生活が送れるよう支援している。
2017年の「教育機会確保法」の基本理念として,国籍に関わりなく教育を受ける機会を確保する旨が定められ、2019年の「日本語教育推進法」の施行に基づき「日本語教育の推進に関する施策を総合的かつ効果的に推進するための基本的な方針」が示されています。教育委員会として新たに配慮したことがあるかを確認したところ、「教育機会確保法等の施行前より、母語を話せる教育指導員の派遣を行っており、加えて、府の加配教員として、日本語指導教員を配置している。日本語指導教員は、拠点校において、日本語指導が必要な児童・生徒に対し、別室での個別指導や、在籍学級での付き添い指導等により、日本語指導を実施している。さらに他の学校についても、月に1回程度巡回し、児童・生徒へ日本語指導を行っている。」との回答でした。
■ 2021年度の具体的な内容は以下のとおり。
・5月1日時点で日本語指導が必要な児童・生徒は、小学校18校58人、中学校6校9人(日本国籍が18名、外国籍が49名。日本国籍の中には、ダブル国籍の児童・生徒も含む)。
・教育委員会では、帰国及び来日児童・生徒の編入日から1年間は週2回、派遣2年目には週1回、母語が話せる教育指導員を学校に派遣し、当該児童・生徒の孤立感の解消や学校生活への適応の促進に努めている。→現在、15か国語に対応し、母語が話せる教育指導員として41人が登録。希少な言語については教育指導員を探すことに時間を要することもあるが、確保の方法については、「広報ひらかた」による募集や、関係機関へ相談し、確保に努めている。
・府の加配教員として、日本語指導が必要な児童・生徒18人を基礎定数とした日本語指導教員を今年度より4名に増員(4名の加配教員には教諭を配置。研修等の機会を通じて、日本語指導の充実を図っている)し、日本語の習熟が不十分な児童・生徒に別室指導等にて、「特別の教育課程」による日本語指導を実施している。さらに日本語指導が必要な児童・生徒が在籍する他の学校にも月に1回程度巡回し、当該児童・生徒への支援をしている。児童・生徒の日本語の習得状況等を考慮し、「取り出し指導」をする場合や、通常の授業中に指導者が支援する「入り込み指導」をしている。
なお、これまでの議会の質問で確認した内容は以下のとおりです。
■ 2020年12月定例月議会
・2020年度、5月1日時点で日本語指導が必要な児童・生徒は、小学校18校62人、中学校6校14人在籍。
・教育委員会では、帰国及び来日児童・生徒の編入日から1年間は週2回、派遣2年目には週1回、母語が話せる教育指導員を学校に派遣し、当該児童・生徒の孤立感の解消や学校生活への適応の促進に努めている。
・府の加配教員として、日本語指導が必要な児童・生徒18人を基礎定数とした日本語指導教員を今年度より3名に増員し、日本語の習熟が不十分な児童・生徒に別室指導等にて、「特別の教育課程」による日本語指導を実施している。さらに日本語指導が必要な児童・生徒が在籍する他の学校にも月に1回程度巡回し、当該児童・生徒への支援をしている。
・(教育指導員は)現在、14か国語に対応し、母語が話せる教育指導員として52人が登録。希少な言語については教育指導員を探すことに時間を要することもあるが、確保の方法については、広報ひらかたでの募集や、関係機関へ相談し、確保に努めている。
■ 2019年6月定例月議会
学校現場における支援の現状と今後の体制整備について、2019年5月1日現在、市立小中学校において日本語の理解が困難な児童・生徒は65人おり、学校生活に適応し、周りの児童・生徒とのコミュニケーションが図れるよう、当該児童・生徒の母語を話せる教育指導員を在籍する学校に派遣している。
・日本語の理解が困難な保護者に対しては、年度当初の家庭訪問や学期末に実施される懇談会等において、円滑にコミュニケーションが図れるよう関係部署等と連携し、通訳者の派遣を行っている。
・今後は、さまざまな言語を母語とする日本語の理解が困難な児童・生徒及び保護者が増加する傾向にあることから、それに対応するため、幅広いネットワークを構築し、より多くの教育指導員や通訳者の人材確保及び派遣に努めていく。
【参考】
▶ 2021年8月19日、関東弁護士会連合会「外国につながる児童・生徒の教育の実態に関するアンケート調査結果報告書~教育を受ける権利の保障のために~」
近時の外国籍住民等の増加に伴い、外国につながる児童・生徒の学校教育や自治体における対応等の点においてわが国の現状を明らかにするとともに、その問題点を把握することにより、今後の子どもの権利、主に教育を受ける権利の充足に向けて、国及び自治体が、外国人共生政策上、どのような措置が必要となるのか、または弁護士会やNPO、国際交流協会等の関連諸団体のどのような働きかけが必要となるのか等を検討し、弁護士会として意見表明等の現状改善のための働きかけをする際の一資料となることを目的としたもの。
▶ 小島祥美(東京外国語大学 多言語多文化共生センター長 准教授)、「外国につながる子どもを取り巻く教育課題」(※自治体国際化フォーラム384号、2021.10、「外国につながる子ども支援」より抜粋)
変わらない就学扱いのなかで自治体ができること、増加する日本語指導が必要な児童生徒とその対応、自治体間の格差が大きい高校進学などについて、書かれています。
▶ 小島祥美(東京外国語大学 多言語多文化共生センター長 准教授)、「外国籍の子どもの不就学ゼロに向けた教育支援の在り方~「誰ひとり取り残さない」ために自治体ができる教育施策の提案~」(※「都市とガバナンス Vol.35」より引用)
変化のない就学扱い、自治体での各種規定の整備状況、外国籍の子どもの教育を支える通知文、自治体に期待すること等について、書かれています。尊厳を持った人を外国から受け入れているという認識のない政治的リーダーシップの日本において、外国籍の子どもの顔が「見える」自治体の果たす役割は大きいとし、「日本に暮らす外国籍の子どもたちは、自然発生的に増加したわけではない。人による判断でその増加が始まったことであるからこそ、人による判断で国際社会には恥じない、SDGs の達成をめざした教育施策を自治体の熱い志を持つ人の「覚悟」で取り組んでいただきたい。」と締めくくられています。