中宮浄水場更新事業について質問しました。6月定例月議会、一般質問の報告⑦です。

2021/06/22

枚方市議会議員の奥野みかです。

ここでは、「7.中宮浄水場更新事業について」の報告です。

市の水道事業の基幹浄水場である中宮浄水場では、磯島取水場(1984年竣工)から取水した原水を「第1浄水場」(1965年竣工)及び「第2浄水場」(1973年竣工)で凝集沈澱及び急速ろ過処理を行い、その後、「高度浄水施設」(1998年竣工)においてオゾン接触及び粒状活性炭処理を経て、水道水として、最大日量13万㎥の供給を行っていますが、これまで大規模な更新や改修は行われずに現在に至っています。そこで、中宮浄水場の浄水施設全体の更新の基本的な方向性を整理し、より老朽化が進んでいる第1浄水場(凝集沈殿及び急速ろ過施設、最大日量9万㎥)について、近接する予定地(近畿財務局より購入)に、将来の水需要や民間活力の活用を検討し、効率的・効果的な「新第1浄水場」の建設・更新を行うため、2014年度、プロポーザル方式による委託業務事業者選定審査会(4回開催)を経て、中宮浄水場更新の「基本構想」「基本設計」業務について、最優秀提案者である「(株)日水コン」に委託しています。

中宮浄水場更新「基本構想」「基本設計」の業務委託の範囲は、「プロポーザル実施要領」によると、(1)基本構想策定業務、(2)官民連携手法検討業務、(3)浄水処理実証実験業務、(4)基本設計業務、(5)測量・地質調査業務、(6)耐震劣化診断業務、(7)その他(1)~(6)に付帯する業務で、委託期間は、2015(平成27)年6月~2018(平成30)年9月(※ただし、基本構想策定業務と浄水処理実証実験業務は、2017(平成 29)年3 月までに業務を完了し成果物を提出すること)、委託金額の上限額は、1億6,000万円となっていました。

浄水処理方法、浄水場規模、民間活力導入についての検討が行われ、安定的な浄水処理が行え、総事業費を最も削減できるのは、「DBO方式を用いた、最大日量11万㎥の膜ろ過方式を採用した浄水場である」ということで「基本構想」を策定され、施設の設計図の作成、概算費用の算出などの「基本設計」を行ってきているようです。

これまでの「中宮浄水場更新事業の進捗状況」として、上下水道局から示された資料は、以下のとおりです。(※ただし、2020年に開催予定の事業者選定委員会が新型コロナウイルス感染拡大の影響で開催できなかったことから、右下の「スケジュール」は変更となっています。)

枚方市のホームページに「中宮浄水場更新事業の歩み」が掲載されています。

中宮浄水場更新事業の歩み
(※クリックすると、枚方市ホームページにリンクします。)

「DBO方式を用いた、最大日量11万㎥の膜ろ過方式を採用した浄水場である」として策定された「基本構想」「基本設計」に基づき、2018(平成30)年9月以降、事業者の選定業務が行われることになります。

「基本構想」及び「基本設計」はホームページ等では公表されていませんが(見つけられませんでした)、それらの内容を踏まえ、「中宮浄水場更新事業及び浄水施設運転維持管理業務等委託_実施方針(2020年3月)」や、以下の業務要求水準書等、DBO方式による総合評価一般競争入札の入札関係書類が作成されていったと思います。

この「実施方針」や以下の入札関係書類の中では、
「中宮浄水場の浄水施設全体の更新の基本設計を行い、基本設計に基づき、より老朽化が進んでいる第1浄水場について、近接する予定地に建設・更新するものである。本市は、新第1浄水場の設計・工事・運転維持管理(DBO)、及び、改造が必要となる中宮浄水場・中宮浄水場高度浄水施設の設計、工事、並びに、中宮浄水場・中宮浄水場高度浄水施設・場外29施設の運転維持管理までを一括してDBO方式(Design Build Operate)により実施することを予定している。」と記載されています。

中宮浄水場更新事業及び浄水施設運転維持管理業務等委託の入札公告(再発注)について
(※クリックすると、枚方市ホームページにリンクします。)

入札説明書(再発注)
業務要求水準書
発注仕様書
落札者決定基準

 


 

前提としての情報が多くなってしまいました…。

今回の一般質問では、DBO方式を用いた総合評価一般競争入札を実施している中宮浄水場更新事業が、新第1浄水場の設計・工事・運転維持管理(DBO)だけではなく、新第1浄水場以外の中宮浄水場内施設、高度浄水施設、場外29の既存施設の運転維持管理も含み、さらに、新第1浄水場の整備に伴い既存施設の改造が生じる場合には、それら改造の設計・工事も行うことまでを包括する巨大な業務内容であること、そして、2047(令和29)年3月末までの25年という長い契約期間で、予算額が300億円という巨額の契約案件であるということを、まず最初に確認しました。

そして、入札参加者が複数者とならず、競争性を確保できていないのは、25年と長期にわたる契約期間内における多数の業務と多額のコストを、現時点で契約により定めるリスクを避けた民間事業者側の評価であると謙虚に受け止め、契約スキーム等の見直しを検討すべきではないか、と指摘しましたが、水道事業部長からは、今回の発注に至るまでには審査会も開催し、様々な観点から検討を重ね、業務要求水準などの仕様を決定してきたと考えており、内容の変更は行っていないとのご答弁でした。私は、競争性の確保という公共契約上の大原則は、適正価格の実現だけではなく、長期にわたる効率性の担保のためにも不可欠で、長期にわたる無競争環境での業務展開は、利益確保のための質の低下や惰性による非効率を生み、さらに、発注者側の能力の低下により、受託事業者のコントロールが難しくなるリスクも高まることを指摘しました。

続いて、中宮浄水場更新事業及び浄水施設運転維持管理業務等の委託により、今後、浄水事業に従事する本市職員数はどれくらいを予定しているのかを尋ねたところ、今回の総合評価では運転維持管理体制や新たな浄水システムにおける市職員への技術継承についても評価項目としているので、これらを踏まえながら、市職員の適正な人員配置を検討していくとのご答弁でした。このことについても、そもそも、水道事業の中核である浄水事業運営において将来にわたって必要な職員体制と、それを維持するために受託事業者に求めるものを明らかにし、それを仕様に定めて契約に臨むのが本来のあり方であると考えますが、それがすでに逆転しているわけです。発注者側に受注者をコントロールすることができる能力や体制があってこそ、適切な「委託」が成立するのであって、発注者側の体制や人材、ノウハウなどが失われてしまう事業スキームでは、「民間依存」になってしまうのではないかと指摘しました。

私たちは、このコロナ禍で、公共部門の削減一辺倒では、危機管理対応能力を危うくすることを学びました。この案件は、地方公営企業である上下水道局の案件ですから、議決案件ではありません。議会で契約締結に関する賛否を議論できる機会はありませんが、私たち議員も含め、市民とともに考える姿勢を持ち、枚方の未来に禍根を残すことのないよう、適切な対応を行っていただきたい、今ならまだ再検討できると訴えました。

 


以下、6月22日の一般質問のやりとりを掲載します。

7.中宮浄水場更新事業について

Q.私の質問
中宮浄水場更新事業ではDBO方式を用いた総合評価一般競争入札を実施しているが、このDBOではどのような内容の発注をされているのか、業務内容・契約期間・予算額、これまでの経過と現状及び今後の審査方法について伺う。

A.上下水道部長の答弁
今回のDBOによる業務内容としては、新第1浄水場の設計・工事・運転維持管理及び、新第1浄水場以外の中宮浄水場内施設、高度浄水施設、場外29の既存施設の運転維持管理を行うこととしている。また、新第1浄水場の整備に伴い、既存施設の改造が生じる場合は、それら改造の設計・工事も行う旨を業務内容としている。
契約期間については、契約日から令和29年(2047年)3月末まで、予算額については、300億円である。
令和2年9月に1回目の入札公告し同年10月に本事業の参加表明確認をしたところ、複数の参加表明がなかったため、同年11月に再公告している。今年6月2日に開札を執行したところ、予定価格の範囲内で1者の入札があった。今後は中宮浄水場更新事業総合評価一般競争入札審査会にて、入札参加者のプレゼンテーション及びヒアリング、審査会による審査及び落札候補者の決定、答申を経て、今年度末までの契約を予定している。

O.私の意見
ご答弁によると、現在、発注されている「中宮浄水場更新事業」については、新第1浄水場の設計・工事・建設後の令和9年度からの運転維持管理、そして新第1浄水場以外の中宮浄水場内施設、高度浄水施設、場外29の既存施設の令和8年度からの運転維持管理を行うこと、そして、新第1浄水場の整備に伴い、既存施設の改造が生じる場合は、それら改造の設計・工事も行うことまでを包括する巨大な業務内容となっている。そして、契約期間は、令和29年(2047年)3月末までの25年という長期間で、予算額が300億円という巨額の契約案件だということだ。
DBO方式とは、整備する施設のデザイン(設計)・ビルド(建設)、そして設計・建設した施設のオペレーション(運転管理)を一体発注する方式だが、これだけ数多くの業務を包括してしまう契約をDBO方式と呼ぶのは、非常に無理があると思う。入札参加者が複数者とならなかったのは、25年と長期にわたる契約期間内における多数の業務と多額のコストを、現時点で契約により定めることを避けた事業者が多かったからではないかと思われる。実際、今後25年間、安定した経営状態の下で、さまざまな不確実さに対応して、確実に業務を遂行できることを、現在、約束できる事業者がどれだけあるだろうか。この入札において結果として競争性を確保できていないのは、この契約スキーム(枠組み)に対する民間事業者側の評価であると謙虚に受け止め、「要求水準書」や「仕様書」の見直しを検討すべきであったと考える。

Q.私の質問
そこで、1回目の公告で複数者の応札がなかったことを受け、その結果をどのように評価されたのか、また、2回目の公告に向け、仕様上の工夫はしたのか、伺う。

A.上下水道部長の答弁
1回目の発注で不調が生じたが、今発注に至るまでには審査会も開催し、様々な観点から検討を重ね、業務要求水準などの仕様を決定してきたと考えており、内容の変更は行わず再公告している。

O.私の意見
総合評価一般競争入札を行うにあたり、提案される価格や内容が1者からだけの場合、その妥当性について、複数提案の比較検討による検証・評価ができない。つまり、その価格や提案内容の審査は、本当に的確な検証・評価と言えるのだろうか。契約ありきの追認になるのではないか。ましてや、これだけ長期で莫大な金額の契約になるわけだから、「競争性の確保」は非常に重要なポイントであったと思う。
ところが、経過説明を聞かせていただく限り、基本設計時のサウンディング調査では「3者の意向確認」が得られたとはいえ、1回目が、結果として1者のみの応募であった事実があったにも関わらず、競争性の確保のために、「要求水準書」や「仕様書」の内容を見直すという意思もなく、努力もされなかった。そして、2回目も、結果として1者の応募にとどまっている。
競争性の確保という公共契約上の大原則は、適正価格の実現だけではなく、長期にわたる効率性の担保のためにも不可欠であると考える。1者が提案する価格が適正価格であるとどうして判断できるのだろうか。そして、価格の問題だけではなく、長期にわたる無競争環境での業務展開は、事業者の緊張感も低下し、利益確保のための質の低下や惰性による非効率を生んでしまうのである。さらに、発注者側の能力が低下し、受託者側との力関係が入れ替わってしまい、受託事業者のコントロールが難しくなるリスクも考えられる。

Q.私の質問
そこで、中宮浄水場更新事業及び浄水施設運転維持管理業務等の委託により、今後、浄水事業に従事する本市職員数はどれくらいを予定しているのか、伺う。

A.上下水道部長の答弁
今回の総合評価では運転維持管理体制や新たな浄水システムにおける市職員への技術継承についても評価項目としているので、これらを踏まえながら、市職員の適正な人員配置を検討していく。

O.私の指摘
まず、水道事業の中核である浄水事業運営において将来にわたって必要な職員体制と、それを維持するために受託事業者に求めるものを明らかにし、それを仕様に定めて契約に臨むのが本来のあり方である。しかし、ご答弁では、それがすでに逆転し、提案を踏まえて体制を検討していくとされている。
発注者側に受注者をコントロールすることができる能力や体制があってこそ、適切な「委託」が成立する。水を供給する水道事業の中核をなす業務が浄水業務かと思うが、そのすべての業務を民間に丸投げする事業スキームでは、発注者側の体制や人材、ノウハウなどが失われてしまう。そうなれば、それはもはや「民間委託」と呼べる代物ではなく、「民間依存」になってしまうのではないだろうか。
私たちが、この間のコロナ禍で学んだことは、保健・医療分野において公共的な体制を縮減し続けてきたことで、感染症対策や災害対応という危機管理能力が低下してしまっていたことだ。公共部門の削減一辺倒では、危機管理対応能力を危うくするのである。しかし、枚方市においては、市立ひらかた病院という公立病院を存続させ、感染症対策機能を維持し続けたことによって、感染症医療提供において大きな安心を得られたということもまた、経験している。
いったん船が動き出したら、状況が変わっても、航路も操船方法も何も見直さないし、見直す気もない。そして嵐が来た時に、案の定、遭難・座礁する。そのような未来を私は想像したくない。
中宮浄水場更新事業及び浄水施設運転維持管理業務等委託契約の契約締結は、地方公営企業である上下水道局の案件ですから、議決案件ではない。従って、議会で契約締結に関する賛否を議論できる機会もない。今なら、まだ再検討できる。
何度も繰り返しているが、私たち議員も含め、市民とともに考える姿勢を持ち、枚方の未来に禍根を残すことのないよう、適切な対応を行っていただきたいと強くお願いしておく。

 


 

中宮浄水場更新事業及び浄水施設運転維持管理業務等委託契約 入札説明書(再発注)
(※以下の資料は、入札説明書から抜粋しています。)

 

 

 


浄水処理方式の検討について(※上下水道局提供資料)


 

【7月3日追記】

 期待と懸念と 全国初の上水道「民営化」目指す宮城県(朝日新聞)

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