寄附を受けることも、重要な表彰の被表彰者を推薦することも市長の決裁事項です。

2021/12/03

枚方市議会議員の奥野みかです。

公文書は「民」の財産であり、虚偽の公文書を作成するなんてことは、行政への信頼を失わせるとんでもない行為です。

枚方市が国に提出する「褒章」(栄典)の推薦書類において、虚偽公文書(領収証)の作成が行われたということは、行政への信頼を失わせるとんでもない行為で、絶対に許されないことです。さらに、多額の寄附をしてくださった方の名誉を貶める行為でもあります。

虚偽公文書の作成という行為そのものが全く不要な「不正」(団体からの寄附として推薦すれば、団体として褒章を受けていただくことができます。)であり、事件発覚(2021年5月)後の市の対応についても「公正さを欠く」ものであったのではないかと考え、ホームページでこの事件を振り返りました。

 

この記事を読まれた方から、「問題となった文書は『偽造』だったのか」というご指摘をいただきました。

担当部長は、団体からの寄附であったにもかかわらず、個人からの寄附であったかのように、個人宛の領収証を偽造し、その写しを推薦書類に添付したということです。情報公開制度において、公文書の定義は「職務で作成した文書」となっています。メモも公文書。領収書の公文書性は疑う余地がありません。虚偽の公文書が作成されたのは事実です。

しかし、虚偽公文書である領収証が含まれた推薦書類は「偽造」であったのかというと、極めて違法性の高い文書ではあるものの、偽造ではなく本物です。

そもそも、100万円以上の寄附の収受は市長の決裁事項です。紺綬表彰など、重要な表彰の被表彰者を決定し、推薦することも市長の決裁事項です。

 

枚方市事務決裁規程の第3条に市長の決裁事項が規定されています。

枚方市事務決裁規程 第3条(市長の決裁事項)※抜粋
(13)重要な表彰の被表彰者を決定し、又は推薦すること。
(33)負担付寄附及び100万円以上の寄附(別に定めのあるものを除く。)を受けること。

 

財団からの寄附であったにもかかわらず、個人を褒章対象者とする意思決定は、市長決裁により行われ、国に申請されています。両副市長も決定関与者です。個人宛の領収証の写しが添付され、個人を褒章対象者として推薦する意思決定の一連の決裁文書内に論理的な矛盾はなかったと総務部長は言われていましたが、市長や決定関与した人たちは、添付された個人宛の領収証の写し(←作成された虚偽公文書と指摘されています)に疑問は感じなかったのでしょうか。また、いったん国に申請した推薦書類の取り下げの意思決定も市長決裁です。非常に割り切れない思いが残ります。私は個人を褒章対象者とする虚偽公文書に基づく推薦書類を決裁した市長(及び決定関与者)の責任は免れないと思います。

今回の事件の処分対象がなぜ領収書作成に関わる部長以下の職員だけなのか。団体からの寄附という事実も承知していて(あるいは当然知り得る立場にあって)、なお個人からの寄附として個人を推薦するというイレギュラーな意思決定を虚偽の領収証を根拠に行い、国への推薦手続きを進めた市長・副市長が処分対象となっていないのはなぜなのか。自らを律する姿勢がなぜなかったのか。

事件発覚(2021年5月)後、市長や副市長は、繰り返し「綱紀粛正に努める」と言っていますが、綱紀を乱したのは特定の職員だけで市長や副市長自らは無関係だったというのなら、その対応は「公正さを欠く」ものではないのでしょうか。
こうしたことについて、確認していかなければならないのではないかと考えています。

公務員の不祥事というとき、典型的なものは、汚職・公金横領など、市が直接的・間接的に金銭的な被害を被ることを想定されることが多いと思いますが、実害の有無や動機の如何で責任問題を考えると、公務執行の適正性を欠く判断となるのではないかと懸念します。

また、もし、今回の虚偽公文書の作成を「実害がない」と判断するのであれば、公文書の重要性を理解していないということを物語っているような気もします。偽造や嘘という不実による信用の失墜は、公務の公正性や「公」の存在価値を脅かされることで、これ以上ない実害であると考えます。

守らないといけない一線が公務にはあり、それは公務員の矜持とも呼ばれるものだと思っています。

 


【参考】

なお、市長の決裁事項は上記のとおりですが、どの部署がその事務を担当するのかについては、枚方市事務分掌条例及び枚方市事務分掌規則で規定されています。

いま、「問題となった文書は『偽造』だったのか」というご指摘もあったことから、対象となる紺綬褒章の推薦の申請及び取り下げにかかる市長決裁文書について、情報公開請求(11月25日付)をしています。現時点(12月3日)ではまだ交付されていませんが…。(→12月6日に交付されました!)

枚方市事務分掌規則
第10条(総務部の事務)※抜粋
(コンプライアンス推進課)
(1)公正な職務執行の推進に関すること。
(総務管理室)
(2)叙勲・褒章候補者の推薦に関すること。
(21)寄附収受に関すること。ただし、他の課の所管するものを除く。

 


※「公文書の『偽造』」としていた表現について、法的な正確性を踏まえ、「虚偽公文書の作成」という表現に一部修正しました。(12月15日)

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