建物の老朽化と高齢化の「二つの老い」~マンション管理のリスクは喫緊の課題。今回のマンション管理適正化法改正を含め、一連の法改正の真の狙いは「マンション版の空き家対策特措法への環境整備ではないか」との意見も。

2022/04/18

枚方市議会議員の奥野みかです。

全国的に分譲マンションは増加の一途をたどっていますが、国土交通省によると、今後、築40年越えの高経年マンションが急速に増加することが見込まれています。マンション管理については、マンションの所有者、居住者の高齢化とマンション自体の高齢化という「2つの老い」が大きな課題として指摘されています。

4月18日の朝日新聞に、「『管理不全の兆候』16% 都内、1983年以前建築のマンション」「建物も住民も老いて、マンション荒廃危機 積立金集まらず、台風で屋根飛び雨漏り」という記事が掲載されていました。

空き室や居住者の高齢化などによって、住民が管理に積極的に関わることが難しくなってきたり、また、住民自身の管理意識の低さがマンションの管理不全につながる、とも言われています。

空き家問題に詳しい大阪経済法科大学の米山秀隆教授のお話として、「人口増の時代は、住宅の量を確保するために新築供給を重視する政策には合理性があったが、今後も新規供給が増え続けると、古いマンションで空室が増え、将来的に管理不全につながる恐れもある。新築の総量規制を促すような住宅政策の転換も必要ではないか。」と記されています。

 


 

マンションの管理の適正化の推進について区分所有者の高齢化、若年層の減少の他、空き室や賃貸などによる非居住化の進展、管理組合の担い手不足等、マンション管理のリスクは喫緊の課題となっています。

今後、マンションの管理組合の運営はますます難しさを増していると言われています。当然、本市に既にあるマンションについても例外ではなく、同様の問題が生じることが懸念されます。

昨年9月の定例月議会の一般質問で、マンションの管理の適正化の推進について質問し、市には、マンション管理適正化法の改正の目的をしっかりと受け止めた取組の具体化を強く要望したところです。
建物の老朽化と高齢化の「二つの老い」~マンション管理に潜む リスクの認識は待ったなし、です。

2020(令和2)年1月時点の固定資産税の家屋課税台帳によると、高経年マンションと言われる市内の建築後40年を超えるマンションは、約210棟、戸数については約7,700戸とのご答弁でした。

2022(令和4)年1月時点の固定資産税の家屋課税台帳によると、市内のマンションは487棟、戸数については約26,700戸で、そのうち建築後40年を超えるマンションは217棟、戸数については約8,200戸となっているようです。少しずつ、少しずつ、増えていきますね。

 


 

2022(令和4)年度予算に枚方市は「市内分譲マンション実態調査業務委託料」を計上しています。予算特別委員会で、この委託料についての質問を準備していましたが、持ち時間の関係で質問することができませんでしたが、マンションの管理に関する問題については、別の機会で改めて確認させていただきたいと思っています。

マンション管理の適正化を推進するため、「マンション管理適正化推進計画」の作成に向けて、外観などの状態や管理組合の運営状況などの実態を把握するためには調査が必要ということで、今年度、市内分譲マンション実態調査業務委託料を予算計上したとのことです。そして、その調査費については、国の補助制度(マンション管理適正化・再生推進事業 ※下記参照)の活用を考えているとのことでした。

ただ、国の補助金は、申請すれば交付されるというものではなく、国の採択が必要となるようです。しかし、本市において何が必要な取り組みかを判断するためには、実態調査の実施は必須であるため、国の補助金の採択がされなくても、当初予定していた内容どおり、適切に調査を実施するよう求めていましたが、国土交通省のホームページを見ると、採択されたようです。よかったです。

マンション管理適正化・再生推進事業の採択結果について

市としてマンション管理適正化推進計画の策定及び必要な施策の推進にしっかりと取り組むとともに、老朽化マンション問題が大きな政策課題として明らかになっている今、枚方市駅周辺再整備基本計画との関係では、貴重な駅前公有地をマンション敷地に転換し、50年後の課題の種をまくようなことがないように求めていきたいと考えています。

【マンション管理適正化・再生推進事業】

国土交通省の補助制度。今後、増大することが予想されている老朽化マンションに係る課題の解決を図ることを目的としたもので、「マンション管理適正化推進計画」を作成する地方公共団体が実施するマンション管理の実態調査などに活用ができる。この制度を活用できる期間は、2019(令和元)年度から2021(令和3)年度となっていたが、「マンション管理の適正化の推進に関する法律」の改正にあわせて、2022(令和4)年度から3か年延伸。国が行う募集に対して、応募した地方自治体の中から選定された場合については、国の予算の範囲内で、1事業主体当たり 1,000万円を限度額とした定額補助が受けられるもの。

 


 

マンションの管理不全と老朽化に危機感を抱いた板橋区は、2018年、「良質なマンションの管理等の推進に関する条例」を施行しています。
国の法改正などに先駆けて制度を整備してきており、この4月から認定制度を開始できたとのことです。

認定制度では国が示す認定基準に加えて、自治体が独自の認定基準を追加できますが、板橋区では「マンションの中に自治会があるか」「防災計画があるか」の2点を追加しています。

マンションは管理規約、経理、長期修繕計画に至るまで、さまざまな物事を決めるのに住民同士のコミュニケーションが必要になりますが、「マンションの中で顔を合わせて誰か分からないなら合意形成は難しい」(住宅政策課)と考えたから、と説明されています。これからは、マンションの中にこそ、自治会活動が必要になってくるのではないでしょうか。

管理不全マンションに「行政が口を出す」狙いとは(週刊エコノミスト Onlineから)

マンション問題に詳しい大阪経済法科大学の米山秀隆教授が「マンションは管理でも建て替えでも多数の区分所有者の合意が必要だが、これが終末段階で機能するかが最後に直面する問題だ」と指摘されていることが掲載されています。そして、今回のマンション管理適正化法改正を含め、一連の法改正の真の狙いは「マンション版の空き家対策特措法への環境整備ではないか」とも記されています。

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