枚方市駅周辺再整備における取り組み状況について、2月21日、全員協議会が開催されました。老朽公共施設の更新は待ったなし。大規模災害に備えるということが本市の最優先課題であり、その対応拠点となる新庁舎は、防災拠点機能を持つ④街区の広大な公園・広場と隣接して整備されることが、最も合理的ではないかと訴えました。

2024/02/21

枚方市議会議員の奥野みかです。

2月26日から開催される3月定例月議会に先立ち、2月21日、「枚方市駅周辺再整備における取り組み状況について」を案件とする全員協議会が開催されました。(21日のみで終了)

全員協議会の資料はこちらにアップされています。
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資料:枚方市駅周辺再整備に係る取り組み状況について

今回の全員協議会は、2024(令和6)年度から複合施設等が順次、開設していく予定の③街区の市街地再開発事業の進捗を踏まえ、さらに、昨年6月開催の全員協議会以降に改訂された「枚方市駅周辺再整備基本計画(2021年3月策定)」や、一昨年9月定例月議会において否決となった市役所の移転条例案(市役所の位置に関する条例案)以降、検討を進めたという④⑤街区の土地利用の考え方、概算事業費や今後の取り組み予定などの報告を受け、11人の議員が質疑に立つ、というものでした。

今期、2回目の全員協議会ですが、いったい、枚方市役所、どうなっているの、と思いながら臨んだ前回の全員協議会よりも「酷い」全員協議会であったのではないでしょうか。それぞれの議員から市の示す考え方に対する問題提起、また、課題を指摘する意見が次々と展開されました。議員の質疑はほぼすべてが問題点を指摘するスタイルで、「連鎖型まちづくりを止めない」と市が示す計画の実現可能性への疑念がさらに可視化されたのではないでしょうか。「過ちを改めようとしないことが本当の過ちである」と、枚方市の発展のため、枚方市民のため、枚方市役所の職員のため、何が最善なのか、市長に姿勢を改めることを求めた議員の発言に強く賛同しています。

新庁舎が駅から遠くなることに対して、来庁者市民の利便性を確保するために整備したはずの➂街区の行政コーナーについても、その機能においても、体制においても、とても、そうした目的や役割を果たせるものにならないのではないかということが、可視化されたと思います。

④街区でまず求められているのは、建物の耐震化・不燃化の確保のためにも、老朽化した危険公共建築物の解体・撤去です。枚方市が所有する④街区の広大な土地を民間開発事業者に売却するのではなく、④⑤街区における新庁舎や必要な公共施設の更新等、大規模災害への対応拠点の整備に活用し、平時においては、子どもを大切にし、子育てのしやすいまちであることが実感できる機能と施設の集積に役立てることこそが、市の実現したい施策の具体化にもつながるのではないでしょうか。

私は、全体の11番目に質問しました。その内容は以下の12点です。(※先の議員の質疑を踏まえ、質問を省略したものもあり)

1.事業目的の合理性・状況適合性について
2.防災拠点形成に関する考え方について
3.枚方警察署、枚方消防署の更新について
4.税務署との合同庁舎化について
5.新庁舎が備えるべき大規模災害対応機能
6.④⑤街区の地盤の状況について
7.災害への備えの一義性について
8.④街区におけるタワーマンション開発のリスクについて
9.④街区への住宅機能導入のリスクについて
10.④街区への民間複合施設整備のリスクについて
11.④⑤街区の再整備における土地区画整理事業上のリスク
12.大規模災害に備えるため、いま、④⑤街区に求められる整備について

今回の質疑では、まず、「事業目的の公共性」や、「事業内容が目的や状況に対してきちんと適合したものであるかどうか」という視点や基準で市の見解を質しました。そして、次には、市が打ち出している様々な取り組みが抱えている「リスク」とその「回避策」について質しました。その結果、すべてが「ちぐはぐ」でした。それは、事業の目的や内容について論理的な検討を積み重ねているのではなく、理由も根拠もあいまいな「はじめにあった結論」に固執したからでしょう。新庁舎の⑤街区移転が、その中核をなすものです。

2024年1月1日に発生した能登半島地震のマグニチュードは7.6でした。国は、M9.1が想定される南海トラフ巨大地震の地震発生確率について、30年以内に70~80%という数字を公表していますが、約10年後に必ず起こり(2035年±5年)、その災害規模は東日本大震災より10倍大きいと伝えるようにしているという学者もおられます。想定の「前提」が誤ってしまうと、実際の発災時にはすべてが「想定外」となってしまいます。いま、優先すべきは、近い将来に発生が予測される南海トラフ巨大地震のリスクではないでしょうか。

危機感をもって防災力のさらなる向上を図り、大規模災害に備えるということが本市の最優先課題であり、災害時にも行政機能を最大限に発揮することのできる新庁舎は、④街区の防災拠点機能を持った公園・広場と隣接して一体的に整備されることが、最も合理的ではないでしょうか。そして、⑤街区については、訓練施設や高度化された消防・救急機能などを備えた枚方消防署と、優れた機能を有した新しい枚方警察署が集積する地域づくりを、それこそ連鎖的に進めるべきあると考えています。

 

 


 

以下、当日の議場でのやりとりを掲載します。

1.事業目的の合理性・状況適合性について

Q.私の質問

私が11人目の質問者で、最後になる。各論にあたる具体的課題については、重複するものも多くなるが、再度、確認の意味で伺うので、よろしくお願いする。

どのような施策・事業においても、「目的」が重要である。まして、新庁舎建設、そして④⑤街区の再整備事業は、市民から預かった税金や、市民の財産である市有地の売却まで想定されるなど、枚方市の歴史に残る事業である。そうした巨額の投資事業を進めるにあたっては、民間企業でも同じことだと思うが、しっかりとした事前評価・検討が必要である。それがずさんであると、あとで想定外の事業費の「上振れ」というリスクや、公共性の欠如等の問題点が顕在化し、市民からの批判の高まりにさらされる。こうしたことを、私たちは今まさに、多くの場面で経験させられているのではないか。
私の質疑では、能登半島地震という大規模な災害が発生し、そして近い将来、確実に発生すると予測されている南海・東南海地震への備えを改めて本格化しなければならない状況の中、市が計画されている新庁舎建設、そして④⑤街区の再整備事業が、本市にとって真に必要な、合理的なものであるのか、投資に値する適切なものであるのかについて、改めて順に確認させていただく。
まず、新庁舎建設と④⑤街区の再整備事業の「事業目的」と、それが現在の状況に適合したものであるかどうかについて、市はどのように判断しているのか、伺う。

A.市駅周辺まち活性化部長の答弁

④⑤街区においては、老朽化が進み更新が必要となっている市庁舎の建替え等を早期に実現するなど、建築物の更新等を通じてまちの耐震化や不燃化の向上を図るとともに歩車の分離と狭い道路の解消、公園や緑地といった都市基盤の整備改善を進めることなどが必要であると考えており、このまちづくりを実施し、まちの魅力を高める複合施設等の新たな都市機能の導入や、公園・広場と複合施設が一体となった賑わいと交流の拠点を形成していく。
そのため、府民センター跡地を活用して新庁舎を整備し防災の拠点を形成するなど、公有地と民有地を最適利用し、都市の機能を止めることなく連鎖型まちづくりを推進することができるよう、2021(令和3)年に枚方市駅周辺再整備基本計画を定め、社会状況などを踏まえながら合理的な判断のもと、着実にまちづくりを進めていると考えている。

O.私の意見

「④⑤街区においては、老朽化が進み更新が必要となっている市庁舎の建替え等を早期に実現するなど、建築物の更新等を通じてまちの耐震化や不燃化の向上を図る。」と述べられた、「防災拠点の形成」に関する「目的」の部分は、現在の状況下で全く適切であるし、市民同意を得ることができるものであると考える。ところが、それに続けて、「まちの魅力を高める複合施設等の新たな都市機能の導入や、公園・広場と複合施設が一体となった賑わいと交流の拠点を形成していく。」といった方向性が語られることによって、事実上、事業目的が変質している。ただいまのご答弁の中に、計画が抱える大きな問題点が表れているわけである。
「複合施設等の新たな都市機能の導入」とは、分かりやすい言葉で表現すれば、「市有地を売却して住宅や商業施設を整備する民間開発を行わせる」ということである。先ほど、前田議員が「原点に戻れ」と、「100年先の未来を考えた取り組みを」と指摘されていたが、「防災拠点の形成」という「目的」が、それこそ、「ゆとりと賑わいの創出」でもなく、「民間開発」に置き換えられているのである。

2.防災拠点形成に関する考え方について

Q.私の質問

撤去も含む建替えなどにより、老朽化して危険な公共施設や公共建築物の更新を進め、平時の防災拠点、大規模災害時における活動拠点・災害拠点を確保する。~市民の安全・安心を守る役割を果たす基礎自治体である枚方市にとって、今まさに、このことこそが最も重要な課題ではないか。市の見解を伺う。
改めて、「枚方市駅周辺整備構想(H16)」において、枚方市駅周辺で建替えが必要と指摘された公共施設・公共機関について、これまで、更新されたものは何か、また、更新されていないものは何か、伺う。
なお、市民の安全確保に重要な役割を果たす枚方警察署や枚方消防署といった公共機関の施設の現状と方向性についても言及をお願いする。

A.市駅周辺まち活性化部長の答弁

枚方市駅周辺の市有建築物については、新耐震基準での建築や一定の耐震改修などが実施されており、また、「枚方市市有建築物保全計画」による更新等については、再整備基本計画などと整合を図りながら、保全を行っているところである。
その中で、災害対策本部となる市役所本庁舎や消防活動拠点である枚方消防署については、国の重要な官庁施設と同様、通常の基準から1.5倍の耐震性が必要と考えており、大規模な地震が発生した場合には、人命は守れるものの、その機能の継続性について課題があることから建て替えに向けて検討を進めている。
現時点においても、大規模な災害発生時においては、市の各施設等を活用することで、各活動機能を確保しているが、より高い防災基準で、⑤街区での新庁舎整備や5分消防体制を確保できる区域での枚方消防署の建替えなどに取り組み、さらなる強化を図る考えである。また、枚方警察署については、大阪府より建て替え等の予定はないと聞いている。

3.枚方警察署、枚方消防署の更新について

Q.私の質問

「枚方市市有建築物保全計画」による更新等については、再整備基本計画などと整合を図りながら、保全を行っているところ」とのご答弁であるが、これも大切な市の取り組みの経過について触れられていない。
それは、かつて、「庁舎周辺整備特別委員会(H4)」が設置され、市と市議会において検討し、確立された「庁舎周辺整備計画」では、「総合文化施設を旧のクラボウ敷地に建設し、市民会館の跡地へ新庁舎等を建設する」とあるので、総合文化芸術センターが整備されたことに伴い、枚方市市民会館本館・大ホールは、直ちに撤去して新庁舎を建設することが可能になっているということである。
一方、老朽化が進む枚方警察署については、相変わらず「予定がないと聞いている」との答弁で、枚方消防署については移転建替えを示唆されている。

そこで、伺うが、築約50年と老朽化が進み、またそれ以外にも様々な課題を抱える枚方警察署が現状のまま継続されることは、市民の安全を確保する観点からみて、あり得ない対応だと考える。
「建て替える予定がない」と聞いて済ますのではなく、将来のビジョン・方向性をどう考えているのか、府の基本方針である既存施設の利用による更新か、現地建替えか、移転建替えなのかについて、市は確認したのか、伺う。
あわせて、訓練施設を含む枚方消防署の建替えを、現在地に近く、災害時対応の拠点性を高めるために有益な⑤街区内での検討しないのはなぜなのか、伺う。

A.新内危機管理部長の答弁

大阪府における警察署の建て替えの考え方については、大阪府ファシリティマネジメント基本方針に基づき、建築後70年以上を目標とする一方で、通常の維持修繕や改修・増築等を実施しても、効率的な警察活動や府民サービスに支障を来す課題が解消できない場合は70年に満たない場合でも更新を検討されるものと認識しているところである。
そうした中で、枚方警察署については、現在のところ建て替え等の予定はないと伺っているところである。
枚方消防署の更新にあたっては、庁舎の建て替えに併せて訓練施設の充実が必要であると考えており、枚方寝屋川消防組合では、施設全体の総面積を3,500㎡程度と見込んでおられる。
⑤街区内では、そのための面積確保が難しいことから、当該面積が確保でき、かつ5分消防体制を維持できる立地での建て替えを検討しているところである。

O.私の意見

枚方警察署や枚方消防署の更新に関する検討の選択肢から⑤街区があらかじめ排除されるのは、1回目の質問に対するご答弁にもあったように、「府民センター跡地を活用して新庁舎を整備し防災の拠点を形成する」と、「⑤街区に市庁舎の移転ありき」を前提としているからである。
しかし、なぜ大阪府の土地をわざわざ費用を負担して取得し、そこに枚方市役所の新庁舎を建設しなければならないのか、結局、その合理性・有益性についての説明はできていない。
過去の質疑においても、⑤街区への新庁舎移転については、「枚方市における国・府・市有財産の最適利用推進連絡会議による協議結果」との一点張りで、そもそも、国・大阪府・枚方市の合同庁舎構想によって始まった市庁舎の移転検討が、大阪府北河内府民センターの➂街区移転という状況変化があってなお見直されないのか、いまだにまともな説明ができているとは思えない。

4.税務署との合同庁舎化について

Q.私の質問

大阪府の施設は⑤街区には残らないので、仮に「合同庁舎化」というものが具体化されるとすれば、税務署だけである。
そこで伺うが、「税務署との合同庁舎化」の具体化について、国との具体的な協議内容はどのようになっているのか、伺う。
具体的には、税務署機能を合体するにあたって、国は合同庁舎を区分所有するのか。有償、もしくは無償で市が提供するのか。「換地」はどうなるのか。「換地」されたところに自前で建てることはないのか、伺う。

A.市駅周辺まち活性化部長の答弁

⑤街区における枚方税務署との合同庁舎化については、国・府・市で構成する「枚方市における国・府・市有財産の最適利用推進連絡会議」で検討を重ねるとともに、効率的な庁舎とするために、施設の一部共用の考えなどについて大阪国税局などと意見交換をしているところである。
土地所有などの権利のあり方については、現在、国有財産の調整業務を所管する近畿財務局などと協議しているところである。また、「換地」につきましては、施行者が定めることとなる。
引き続き、枚方税務署との合同庁舎化に向けて、庁舎規模の合理化を図るとともに、来庁される方が利用しやすい庁舎となるよう、関係機関等と連携していく。

5.新庁舎が備えるべき大規模災害対応機能

O.私の意見

「税務署との合同庁舎化」の具体的な内容は、まだ何も決まっていないようである。
③街区における大阪府北河内府民センター庁舎は、別棟として建築された。税務署が別棟として建設されるのであれば、「換地」が関わってくるのかと考えるが、換地は施行者が定めるとのご答弁ですので、それでは建築物の形態がはっきりしない。
いずれにせよ、税務行政のデジタル化が推進される中で、税務庁舎の比重は小さくなっていると思われ、税務署との合同庁舎を行うから、建設する市役所新庁舎を⑤街区に位置しなければならないというものではないと考えられる。
いずれにせよ、「新庁舎を整備し、防災の拠点を形成する」ためには、「⑤街区の府民センター跡地に新庁舎を整備することが最適である」ということの説明が必要である。
新庁舎が備えるべき大規模災害対応機能については、新庁舎整備に際して、十分な耐震性と安全性を確保するともに、大規模な災害時においてもエネルギーの安定供給が可能となる機能や職員や援助・応援隊の活動スペースの確保なども必要と考えていると、先の議員にご答弁があった。また、以前の質疑で取り上げたヘリポート機能の整備については、今後の枚方市新庁舎整備基本計画の策定作業の中で、設置を検討していくとのお答えであった。

6.④⑤街区の地盤の状況について

(※省略。以下のやりとりを想定)
今回の能登半島地震においても、液状化など地盤の弱い場所での建築物の被害が大きかったと言われている。静岡大学防災総合センターの北村晃寿教授によると、「氷見市の住宅街は、もともと浜堤という浜のところ、海岸のところに、小型の砂丘と考えられる砂丘の高まりのところに古い住宅が発展していて、浜堤の下は海の堆積物なので、おそらく細かい砂、あるいは泥などでつくられた地層であったと思われる。そうすると、地盤が非常に軟弱なので今回の地震によって揺れが非常に大きな揺れが生じてその結果液状化、家屋の倒壊等が起きたと推定される」とのことである。③街区の高層建築物の建築にあたっても、ボーリング調査等も実施されたものと思うが、新庁舎を建設するにあたっても、地盤の確認が重要だと考える。④街区、⑤街区の地盤の状況はどのようなものなのか、ボーリング調査等を行うのか、今後の予定について伺おうと考えていました。「④⑤街区の地盤の状況については、土地区画整理事業に関する環境影響評価として、周辺のボーリング調査結果などの既存資料により、土質や地下水位の確認を行っているが、土地区画整理事業は主に面整備を行う事業であり、大規模な工作物なども想定していないことから、新たにボーリング調査を実施する予定はない。今後、新庁舎も含めて建築物の設計段階で、地耐力の確認などのために、建築者が建物の規模などに応じて調査内容を定め、ボーリング調査等を実施する場合がある」と、地盤強度に関する注意は払われていないと感じられる説明を受けました。時間の関係で質問は省きました。

7.災害への備えの一義性について

Q.私の質問

新庁舎が備えるべき大規模災害対応機能の具体化にあまり注意は払われていないようである。
しかし、現在、私たちが置かれている状況を考えれば、新庁舎整備及び④⑤街区の整備にあたっては、大規模災害への備えを最優先に考え、知力を尽くして整備を進めるべきではないかと考えるが、伏見市長の見解を伺う。

A.伏見市長の答弁

近い将来に発生が予測される南海トラフ巨大地震をはじめ、あらゆる災害に対応できるよう防災力のさらなる向上を図る必要があり、枚方市駅周辺再整備においては、災害に強いまちづくりを実現する考えである。
⑤街区の新庁舎においては、災害時にも行政機能を最大限に発揮する高度な防災拠点施設とするとともに、ニッペパーク岡東中央の拡大整備により、防災機能をあわせ持つ公園・広場を設けるなどの一体的な整備により、市民や来街者が安心できるまちづくりを進める。

O.私の意見

新庁舎がどのような大規模災害に対する防災拠点となるのか、それは大きく分けると次の2つだと考える。
1つは、南海・東南海地震といった巨大地震。他の1つは、淀川の決壊による洪水である。
三和議員の質問にもあったが、淀川洪水に対応できる新庁舎とするには、④街区でも⑤街区でもなく、交野台地と呼ばれる中宮地域のような標高の高い地域に移転する必要があります。⑤街区が④街区よりも優位であるとされたのは内水ハザード上のものであり、それは庁舎があろうがなかろうが、市として解消すべきリスクであるから、今、優先すべきは巨大地震のリスクではないか。
能登半島地震のマグニチュードは7.6。これは、M7.3の阪神淡路大震災やM9の東日本大震災などと並ぶ巨大震災であり、M6.1の大阪北部地震とは規模が異なる。国は南海トラフ巨大地震の地震発生確率について、30年以内に70~80%という数字を公表している。
地球科学・火山学を専門とする京都大学の鎌田浩毅(かまたひろき)名誉教授は、確率ではなく、マグニチュード9.1が想定される南海トラフ巨大地震は、「①約10年後に必ず起こる(2035年±5年)」、「②その災害規模は3.11_東日本大震災より10倍大きい、1ケタ違う」と伝えるようにしていると言われていた。
想定の「前提」が誤ってしまうと、実際の発災時にはすべてが「想定外」となってしまうからである。
こうした災害に対応できる拠点を整備するには、先のご答弁にあったように、「十分な耐震性と安全性が確保」された庁舎とともに、「大規模な災害時においてもエネルギーの安定供給が可能となる機能、職員や援助・応援隊が集結できる広い活動スペースの確保」が必要である。さらには、広域連携を可能にするヘリポートも必要であろうし、大震災発生の際の交通機関の停止に伴う帰宅困難者等の一時的待機場所も必要になると思われる。
そうしたことを考えあわせれば、新庁舎は、今、市長が答弁された「防災機能を有した公園・広場」が整備される「④街区」にこそ整備されるべきではないか。
広大な④街区を売却し、⑤街区にわざわざ狭い防災対策用の広場を作って新庁舎を建てるなどという計画は「不合理」の極みである。
一方、防災拠点となるべき④街区に、大規模災害発生時には被災住民となってしまうタワマン等の居住人口を誘導するというのも、さらなる「不合理」である。
枚方市の新庁舎の位置については、事務的な協議の場に過ぎない「枚方市における国・府・市有財産の最適利用推進連絡会議」なるものの結論に縛られた計画を見直し、今、実施すべき事業目的に対して合理的な内容に変更すべきと、強く意見しておく。

次に、市が進めようとしている「複合施設等の新たな都市機能の導入」に関する実現可能性等に関する様々なリスクに関して伺う。これらの事項についてのチェックが甘いと、事業破綻の原因となるからである。

8.④街区におけるタワーマンション開発のリスクについて

Q.私の質問

「賑わいと交流の拠点」を整備するとして、④街区に導入しようとする「複合施設等」とは、分かりやすく言えば、「市有地を売却して住宅や商業施設を整備する民間開発」である。では、「賑わいと交流の拠点」を整備しようというのに、なぜ住宅開発をさせるのか。また、これまでの議会審議の中で明らかになってきたことは、その住宅とはタワーマンションだということである。そして、なぜタワマンなのかと言えば、タワマンでなければ開発事業者の採算が確保できないからである。言い換えれば、タワマンを建てる開発事業でなければ用地を買えない、市の立場で表現すれば、タワマンを建てさせなければ土地が売れない、ということである。
そして、これまでの議会審議において、分譲のタワマンという大規模な区分所有建築物については、将来における建替えなどの意思決定や具体化能力に大きな問題を抱えていることから、まちの将来に大きなリスクを抱えるのではないかとの指摘がなされてきた。
このことに対するまともな対応策の説明もない中、今回、またぞろ理解できない対応策が打ち出された。すなわち、「市有財産の有効活用方法については、一部売却などを前提に本市の財政状況や市場ニーズなどを踏まえ、定期借地についても検討を行う」という、用地を売却せず、定借により貸し付けるという対応策である。
しかし、こうした対応には、そのことに対する新たなリスクが発生すると考えられるので、次のことに対する市の認識と対応策について伺う。

1つめは、用地を売却しなかった場合、事業財源や市の財政に対して、どのような影響を与えるのかということである。
2つめは、土地の所有権を市が保有したまま、定期借地権によって民間事業者がタワマンを建設し分譲した場合、50年先、70年先に借地権が切れる時には、そのマンションの所有権者、その時には多数の区分所有権者により区分所有されているわけであるが、それらの区分所有者がタワマンを解体撤去して、更地に原状回復して市に土地を返還する義務が生じる。定借分譲マンションについては、そうした将来の取扱いの困難さや、リセールバリューが低下することから人気のない物件となっていると聞くが、多くの民間開発事業者がこうした事業スキームを採用して、④街区の開発に参入する可能性があると判断しているのか、そして将来において、適切に定期借地権の解消がなされる担保をどのように確保されるのか伺う。

A.田中総合政策部長の答弁

まず、定期借地とした場合における財政に与える影響について、お答えする。
市有地の有効活用では、売却想定額を約34億円としているが、売却をしなかった場合、本事業を進めるうえで、当面の間、収支を維持することは可能であるが、土地の売却収入が減少することから、本事業への活用を予定している枚方市駅周辺再整備推進基金の残高減少につながる。
そのため、毎年の収支状況を踏まえた本基金への計画的な積み増しや、起債発行額を増額するなど、他の財源確保手法の検討が必要になってくる。

A.市駅周辺まち活性化部長の答弁

続いて、定期借地によるご質問にお答えする。
定期借地による高層のマンションについては、将来的な解体費用は、解体積立金として区分所有者が負担するものとして、全国的な事例がある。
この原状回復の費用の他、土地の管理方法やそれらに伴う借地料の設定のほか、将来的な定期借地契約の解約リスクなどの課題はあると認識しており、このため、現時点では、市有地売却を前提に検討している。
また、定期借地は、市の所有権を存置できるメリットはあると考えているが、事例等を踏まえつつ、実現できるかどうかは民間事業になるため市場性を確認することが必要となる。今後も、引き続き定期借地も含め、幅広く検討していく。

O.私の意見

ただ今の答弁を伺う限り、④街区の市有財産の有効活用方法について定期借地を活用することについては、約34億円を見込んでいる土地の売却収入が借地料収入に置き換えられると、事業財源確保のために基金の減少をもたらすこと。また、事業の成立可能性についても懸念を持たれていること。将来の土地の取扱いに対する確実なリスク回避策もお持ちでないことなどがうかがえ、「検討する」とは打ち出されたものの、「言ってみただけ」に過ぎないようである。
アリーナ整備についてもそうであったが、事業の根幹にかかわることが、あまりにも、単なる「思い付き」や「取り繕い」レベルの質で打ち出されることは問題である。こんなことで、歴史的な大事業が進められるわけがないと指摘しておく。

9.④街区への住宅機能導入のリスクについて

Q.私の質問

次に、④街区にタワーマンションが整備された場合、そこには多数の居住者人口が張り付く住宅地となる。この間の大規模災害の発災時に明らかになったように、タワマンは巨大地震発災時において倒壊こそしないものの、停電等の発生によって上層階が「陸の孤島」のようになり、家への出入り、水の供給などに大きな困難を抱える被災者が多く居住する地域となる。万が一、震災とともに火災でも発生しようものなら、消火活動や救助活動は困難を極める。
そうした住宅地を防災拠点となるべき地域の中に抱えるリスクについて、市はどのように考えるのか、見解を伺う。

A.市駅周辺まち活性化部長の答弁

このエリアに導入する機能については、土地の合理的かつ健全な高度利用を図りつつ、隣接するみどりの大空間と連携して相互に魅力を高め合うことができる「まちの魅力を高める複合施設」として誘導する考えで、新たに建築される建築物は、法令の耐震基準を超える強度などを有することとなるとともに、様々な災害に対応できるよう電源の確保や消防活動空地の確保などが図られると考えている。
今後、このエリアの土地利用の具体化にあたっては、災害時の防災・減災機能の確保の観点も含めて検討する考えである。

10.④街区への民間複合施設整備のリスクについて

Q.私の質問

ただ今の答弁も、結局のところ、民間事業者に対する「期待」を述べられただけである。

私は、これまでの議会質問において、④街区における民間複合施設の中に整備を期待する各種機能も、市の単なる「期待」でしかなく、事業採算性の悪いものについては、いくら公募条件としたとしても、民間事業者からの提案がない、あるいは提案があったとしても選択の余地がない、例えば1社からの評価できない提案となるリスクがあると指摘した。
このリスクへの対応については、まともな回答が示されていないが、この間の落ち込む経済状況や、建設供給能力の低下の中で、あらためてこうしたリスクについてどうとらえているのか、また、土地区画整理事業費の上振れリスク、市有地売却収入の下振れリスク、売却不能リスクによる公費負担額の増大リスクなどにどのように対応しようと考えているのか、見解を伺う。

A.市駅周辺まち活性化部長の答弁

市駅周辺地区の再整備を推進する上では、みどりの大空間一体となった賑わいと交流の拠点づくりに向けた民間活力導入エリアへの各種都市機能の誘導など、社会情勢の急激な変化などに対応せざるを得ないリスクがあるものと認識している。
とりわけ、世帯情勢の変動や大規模災害などに起因するリスクについては、その規模や期間などについて、あらかじめ具体的に想定することは困難ですが、リスクが発生した際に、その影響を最大限に抑えられるよう取り組む考えである。
また、昨今の物価高騰などに伴う市負担額の増減など、社会情勢の変化を注視し、適宜、各種リスクへの対応を行いながら、④⑤街区の再整備並びに新庁舎の整備を進めていく。

O.私の意見

民間開発事業者に④街区を委ねることに伴うリスク分析も、対応策も、まったく用意されているとは思えない答弁である。

11.④⑤街区の再整備における土地区画整理事業上のリスク

O.私の意見

次に、④⑤街区の再整備における土地区画整理事業上のリスクについてである。
2023(令和5)年6月に改訂された枚方市駅周辺再整備基本計画においては、みどりの大空間の形成と道路等の公共施設を整備するため、④⑤街区の区域を拡大した府道沿いの「一般地権者」の土地も土地区画整理事業の対象区域に含めている。それら一般地権者に、国・府・市、その他の一般地権者を合計すると、④⑤街区の地権者は全部で14者になるとお聞きした。
これらの一般地権者には、土地の形状を整理したり、建築物の移転建替えを行う内発的な必要性があるようには思われない。土地区画整理事業の施行により移転等が必要になるが、所有者側のニーズがなければ、いくら丁寧に説明したとしても事業への協力を得ることは困難なのではないか。
地権者の利害やニーズを考慮せず、事業区域を拡大し、地権者を拡大すると、事業の成立や進捗に対する大きなリスクとなる。これだけ公的機関の土地所有が多い地域を再整備するのであるから、大規模災害に備えるための拠点整備という公共性の高い事業目的を確立して、事業を行うことが、もっとも現状に適合していると考える。

12.大規模災害に備えるため、いま、④⑤街区に求められる整備について

Q.私の質問

今回の質問で私は、はじめに、「事業目的の公共性」や、「事業内容が目的や状況に対してきちんと適合したものであるかどうか」という視点や基準で市の見解を質した。そして、次には、市が打ち出している様々な取り組みが抱えている「リスク」とその「回避策」について質した。その結果、すべてが「ちぐはぐ」であった。それは、事業の目的や内容について論理的な検討を積み重ねているのではなく、理由も根拠もあいまいな「はじめにあった結論」に固執したからだと考える。新庁舎の⑤街区移転が、その中核をなすものである。
そして、新庁舎が駅から遠くなることに対して、来庁者市民の利便性を確保するために整備したはずの➂街区の行政コーナーについても、その機能においても、体制においても、とても、そうした目的や役割を果たせるものにならないことが、他の議員の質疑によって明らかになったと思う。だとすれば、➂街区の行政コーナーと新庁舎の間の物理的な距離や移動ルート、またバックアップについて機能的に行える新庁舎の計画とすることが必要となったのではないか。

大規模災害に備えるということが本市の最優先課題であり、その対応拠点となる新庁舎は、④街区の広くて防災拠点機能を持った公園・広場と隣接して整備されることが、最も合理的である。そして、⑤街区については、訓練施設や高度化された消防・救急機能などを備えた枚方消防署と、優れた機能を有した新しい枚方警察署が集積する地域づくりを、それこそ連鎖的に進めるべきである。
④街区に枚方市が所有する広大な土地について、民間開発事業者に売却するのではなく、④⑤街区における新庁舎や枚方消防署の更新という大規模災害への対応拠点の整備に活用すること。そして、④街区については、平時においては、子どもを大切にし、子育てのしやすいまちであることが実感できる機能と施設の集積に役立てることこそが、この後の3月議会で述べられる市長公約を具体化するものになるのではないか。
最後に、再度、改めて伏見市長の見解を伺う。

A.伏見市長の答弁

枚方市駅周辺再整備においては、④街区に比べ、災害に対して有利な立地条件を備えた⑤街区に防災拠点となる新庁舎を建設することや、ニッペパーク岡東中央を拡大し、防災機能をあわせもつ公園・広場とするなど、一体的な整備により災害に強いまちづくりを実現する考えである。
また、子ども・子育て施策についても、本市の最重点施策であり、市駅周辺のみならず、市域全体において、安心して楽しく子育てができる環境整備に向けて取り組んでいく。

O.私の意見

ただいまの市長答弁では、新庁舎を防災拠点として整備するとともに、④街区のニッペパーク岡東中央公園を拡大し、防災機能を有する公園・広場を整備すること。そのことにより、災害に強いまちを実現する考えであると訴えられたものと受け止めた。そして、子ども・子育て施策についても、本市の最重点施策であることを表明されている。
だとするならば、様々な事業リスクへの対応を何一つ示さないまま④街区の広大な市有地を民間開発事業者に売却して、⑤街区に新庁舎を移転する必要がどこにあるのか。現行計画にこだわり続ける理由が、私には全く理解できない。
④街区においては、新庁舎及び新庁舎と連携する防災公園・広場の整備による大規模災害対策のため拠点機能を整備すべきである。そして、平時には、子育ち・子育ての支援機能を提供する。こうしたことを基本に計画を見直すべきである。
伏見市長には、「枚方市や枚方市民の公益こそ大切にする」という姿勢のもと、計画を適切に見直した上で事業を進められるよう強く求めておく。

 


 

 

 


【※以下、2024年2月_全員協議会資料より抜粋】

▶ ④⑤街区の土地利用の具体化に向けて

下図は、枚方市の基本的な考え方を示すものであり、決まったものではなく、詳細については、事業化を図る際に、権利者など関係者の意見を聴きながら定めていくとの記載されています

 


【参考】

※以下は、枚方消防署の更新に関して、2023(令和5)年6月12日の全員協議会で行った質問からの抜粋です。

↓↓

耐震補強について、伏見市長が、2011(平成23)年消防組合議員であった時のご質問(2011年3月24日_枚方寝屋川消防組合議会)をご紹介する。
「消防本部・枚方署合同庁舎及び寝屋川署庁舎については、建て替えを視野に入れた上で耐震補強を行っており、Is値は0.75を確保したものの、0.9には至っていないとの答弁であった。今回の東北地方太平洋沖地震における被害の全容はまだわからないが、マスコミ報道によると、市役所庁舎、消防庁舎など災害拠点の機能そのものが消失するというすさまじい被害を受けた自治体がいくつもあると認識している。本組合においても災害拠点機能の重要性を再認識し、東南海・南海地震など予測される災害に対して庁舎の耐震性など対応が十分かどうか、再検証されることを要望する。」

現枚方消防署は、2007(平成19)年に行った耐震補強も、実は消防庁舎として十分な機能を満たせるものではなく、近い将来に建替えをするのであればとの応急的な措置であったようである。
現2,000㎡の敷地では狭隘で訓練施設も不十分であり、建替えに際しては5,000㎡程度の敷地の確保と、訓練施設、特殊車両(化学車・梯子車)等の配備も要望しておられる。そのような施設を「⑤街区で確保することは困難である(市駅周辺では難しい)」との市からの回答を得ており、市の方でも、候補となる場所を探してくれているところではあるが、消防職員は、老朽施設の中で、普段より振動が激しい上に、それこそ、市役所本庁舎のような軒先からの崩落がないかと日々ひやひやしている状況であると聞いている。
枚方消防署や枚方警察署の建替えがアジェンダ(取り組むべき政策課題)となっていないのは、「政治」の責任ではないか。
伏見市長は、このことを政治課題にすると市役所の⑤街区移転計画の支障になるから隠しておられるのだろうか。市議会議員であった時の質疑を思い起こしていただければ、消防庁舎、そして市庁舎もであるが、それらの施設の問題点などは充分理解いただけると思う。現消防庁舎の危険性とその建替えが極めて緊急性の高いアジェンダであることをしっかりとご認識いただき、市庁舎の⑤街区移転だの、市有地の売却などと言って、その解決の道筋を放棄してしまうことは、やめていただきたい。
賑わいだの、ワクワクだのという言葉には内容はなく、説得力もない。この後、DX推進のなかで、市民の求める市庁舎のありようや果たすべき役割も変わってくるかもしれないが、現在の極めて緊急性の高いリスクから目をそらすことなく、いま、目の前の市民の暮らしの安全・安心、そして、将来市民の希望となる判断を求めておく。

※再掲


【参考】

※2024年2月21日_全員協議会(生中継分)→youtu.be/jmA23dddOa4?t=21855]

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