本来のまちづくり手法としてではなく、移転補償費を積み増すための手段として、土地区画整理事業というスキームを無理に取り入れようとしているのではないか。高額な土地買収と「手続き先行」への強い懸念~枚方市駅周辺再整備についての質問です。12月定例月議会、一般質問の報告④です。

2025/12/12

枚方市議会議員の奥野みかです。

ここでは、「4.枚方市駅周辺再整備について」の報告です。

枚方市駅周辺再整備をめぐり、市は④街区の市有地活用について、「売却」から「定期借地を第一義とする」方針へ大きく転換しました。しかし、その転換から時間が経っても、定期借地によってどれほどの収入が見込めるのか、財政にどのような影響が出るのかといった具体的な資料は示されていません。

定期借地は、土地を売却する場合と異なり、収入がすぐに入らないため、事業を進めるには市が借金(市債)をする必要があります。しかも現在は金利が上昇局面にあり、将来にわたって多額の利子負担が生じる可能性があります。その結果、上下水道、道路、橋、学校など、老朽化が深刻化している市民生活に直結するインフラ整備が抑制されるのではないかという強い懸念があります。

さらに看過できないのが、新庁舎の移転先として想定されている大阪府有地(北河内府民センター跡地)の買収方法です。市が示している想定では、通常の不動産取引では価値を持たないと考えられる老朽建築物の補償費まで含めて、高額で土地を買収しようとしているように見えます。アスベストの含有も想定される時代の建物です。老朽建築物は、本来であれば評価額を下げる要素であり、除却費用を差し引いて評価するのが一般的です。そうした考え方を取らず、あえて補償費(移転補償費)を上乗せするような手法は、不動産評価の基本である「最も有効に使える状態で評価する(最有効使用の原則)」という原則に反する可能性が高いと言わざるを得ません。

そのために、市は本来のまちづくり手法としてではなく、移転補償費を積み増すための手段として、土地区画整理事業というスキームを無理に取り入れようとしているのではないかという疑念が拭えません。まちづくりのための制度が、高額な土地買収を正当化するための「手続き作り」に使われるのであれば、これは本末転倒です。

大規模地震が相次ぐ中、防災拠点となる新庁舎の整備は急ぐべき重要な課題です。しかし、その実現のために、不要な高値買収や将来世代に負担を残す借金を重ねることが、本当に市民の利益につながるのかが問われています。市がすでに所有する④街区の土地を活用するという、最も合理的で説明のつく選択肢に立ち返るべきだと、強く指摘しました。

 

 


 

以下、12月12日の一般質問でのやりとりを掲載します。

4.枚方市駅周辺再整備について

Q.私の質問(「定期借地を第一義とする」の場合の事業見通しについて)

先の全員協議会において、④街区の有効活用における手法の方針転換について、配付資料では、新庁舎を⑤街区とした場合のメリットの一つとして、「④街区の市有財産の有効活用(売却や定期借地など)による収入」と記載されていた。しかし、答弁では、売却ではなく「定期借地を第一義とする」旨の方針転換が示された。
資料はあくまで「売却想定」のみである。そこで、「定期借地を第一義とする」場合、有効活用額等はどのような想定になるのかを伺う。

A.山中市駅周辺まち活性化部長の答弁

9月の全員協議会でお示した、市有地を継続して保有することを第一義とした検討方針により、定期借地を含めた市有地の有効活用を具体化できるように取り組んでいるところである。
現在、市場ニーズの確認などを目的として、民間企業にヒアリングを実施する可能性調査を実施し、定期借地の導入の可否などを検討しているところであり、定期借地料の算定までには至っていない。
今後、できるだけ早期に、市有地の有効活用の方向性をお示しできるように、継続して取り組みを行っていく。

枚方市議会報(2025年11月1日_第359号第4面)より抜粋】

Q.私の質問(方針転換の現下の財政運営への影響について)

先の八尾議員の指摘にもあったが、市長の政治的判断とやらで行った大きな方針転換にもかかわらず、2か月以上たっても、「定期借地を第一義とする」場合の想定の資料すら示せないのは、そもそも「無理」のある判断だったからではないか。
9月の全員協議会において、総合政策部長は、市有地を定期借地にした場合には、「市債を最大限に活用するとともに、他の投資的事業について事業費の見直しやスケジュールの変更を行う。」と答弁された。
事業費の見直しやスケジュールの変更を行うとされた「他の投資的事業」には、全国的にも喫緊の課題となり、重要性が浮かび上がっている上下水道・道路・橋梁・各種公共建築物などの老朽化対応工事が大きな割合を占めるのではないか。しかし、本市も例外ではなく、老朽化した都市インフラの維持管理、改修や更新が十分に進められてきたとは言えない状況である。長期の財政見通しにおいても、こうした投資的経費については、一定の「枠取り」でしか必要費用が想定されていない。「市駅と連立を除いて年70億円程度を基本に」と書かれていたかと思う。
だとすると、今回の見直しによって、これら各種インフラ整備等に対する投資的事業が抑制されることになりかねない。そうした危惧を持つのですが、財政当局の見解を伺う。
あわせて、市債を活用するということになれば、現在、長期金利が上昇している中、当然に多大な金利負担が想定される。このことについて、どのように捉えているのかについても、伺う。

A.藤原総合政策部長の答弁

道路や公園、学校園施設のほか、市有建築物に係る維持補修や保全経費については、長期財政の見通しにおいて、適切な事業費を確保する必要があると考えている。
施設等保全経費を含む投資的事業の計画的な実施に向けては、新たな行政需要に対応するため実施する投資的事業や今後予定される投資的事業のスケジュールを見直すなど、実施時期を精査するとともに、長期財政の見通しの試算を踏まえ、可能な限り市負担の平準化を図りながら進めていく考えである。
また、近年の長期金利の上昇に伴う公債費の増加は、経常収支比率の上昇を招き、財政の硬直化が進むこととなるため、計画的な市債発行を行っていく必要があると考えている。枚方市駅周辺再整備の実施に向けては、今後も市駅周辺再整備推進基金を計画的に積み増ししながら、最大限活用するなど、過度な市債発行とならないよう努めていく考えである。

O.私の意見・要望(公益に反する方針転換への指摘)

今月8日には青森県東方沖を震源地とするM7.5と推定される地震で最大震度6強の大きな地震が発生した。
被災された皆さまには心よりお見舞い申し上げます。被災地域の皆さまの身の安全の確保、そして速やかなる復旧・復興を祈念いたします。
このことにつけても振り返るのは本市の状況である。南海・東南海の巨大地震に備え、④街区内に多数存在する危険な老朽公共建築物を早く解体撤去し、大規模災害時に機能できる新庁舎と防災拠点機能を整備することは一刻を急ぐ重要な事業である。④街区における枚方市駅周辺再整備は、防災上の意義こそが核心であり、その意味において重要な事業なのであって、本来、取得する必要のない大阪府の用地を買収して庁舎移転を図り、その財源確保のために市有地を民間企業に売却したり、定借したりしようとする。そのような市の計画自体、全く公益に反している。
さらに、定借にした場合、収入にはタイムラグが生じるため、起債、つまり、つなぎの借入れが必要となる。そして、今後上昇が見込まれる多額の利子負担まで発生する。そのうえ、重要なインフラ更新など、他の投資的事業の抑制にまで影響が及ぶのでは、到底容認できない。開いた口がふさがらない。これこそが「過度な起債発行」であり、行ってはならない判断であることを強く指摘しておく。

Q.私の質問(北河内府民センター用地の買収について)

次の質問である。私は、今、「本来、取得する必要のない大阪府の用地を買収する」と述べたが、大阪府側からみれば、「元北河内府民センターの跡地を処分する」という表現になる。この点に関して、今年12月に開催された大阪府議会総務常任委員会で注目すべき質疑があった。
大阪府は、北河内府民センター跡地を枚方市のまちづくりに協力するとの立場で、枚方市への売却を前提にしている。問題は、その売却価格である。大阪府は、枚方市のまちづくりに協力し早期移転したのだから、移転補償がされるべきとの認識を持っているようである。
その根拠として考えられるのが、2021(令和3)年2月、北河内府民センターの③街区への移転条例案提出時に、大阪府議会に示された資料である。そこには「府民センター跡地の収入(枚方市試算)」として、「枚方市(土地区画整理事業を実施予定)」として、「29.2億円(建物補償費込み)」と記載されている。そこで、この「枚方市試算」について伺う。
当時、どのような判断で、大阪府に当該試算額を示したのか。また、4年以上経過した現在、その見解はどのように変化しているのか、伺う。

A.山中市駅周辺まち活性化部長の答弁

2020(令和2)年度において、大阪府が③街区に北河内府民センターの機能を移転されるにあたり、府民センター跡地の資金化の見込みを本市が試算したものである。
試算内容としては当時の路線価などを用いて、跡地を約19.6億円、土地区画整理事業による建物などの補償額として約9.6億円、合計約29.2億円となっている。
つぎに、現時点の見解であるが、④街区と⑤街区一体施行を見直し、⑤街区を先行整備する方針に変更しており、これにより、土地区画整理事業の仮換地指定後に、仮清算または庁舎用地としての取得等について、今後、大阪府と協議・調整等を行っていくこととなる。
また、それらに必要な費用については、その実施時期までに、不動産鑑定や補償算定を実施するなど、適正に算出を行っていく考えである。

Q.私の質問(不動産取引における「最有効使用の原則」の適用について)

12月の大阪府議会総務常任委員会では、次のような指摘があった。
北河内府民センターは、府民の便益向上のため大阪府自身の判断・理由で移転したのだから、枚方市に移転補償を求めるのは妥当ではない。堺にある府営三原台住宅用地の近畿大学への売却の際には、不動産鑑定上の原則である「最有効使用の原則」が適用され、2019(令和元)年度には、約30,000㎡の約14.3億円と評価される土地を、建物等除却費(約9億円)を減算して約5.2億円で、2022(令和4)年度には、約33,000㎡の約16億円と評価される土地を、建物等除却費(約11.5億円)を減算して約4.4億円という低廉な価格で売却した実例があるというものである。


これは、当該敷地にある既存の建物が古すぎたり、その土地の本来の価値に対して不適切であったりする場合、古い建物を解体して土地を更地として利用(再開発)する場合には、土地の価格から解体費用などの負の価値を控除して評価することが適切とされる「最有効使用の原則」に基づいたものとされている。
しかし、山中部長の答弁にあったように、本市が試算として大阪府に示した29.2億円という試算は、跡地の約19.6億円に、本来価値のない建物の補償額として約9.6億円を加えたというものである。土地代が約20億円で、解体撤去しなければならない建物に約10億円支払うというのである。
しかし、吉村知事は、「不動産に対する評価について、府有財産は適正な対価により処分を行うということが基本となっている。移転費用にもルールがあり、そのルールの中で決定していくということになると思う。」と答弁をしている。
通常の不動産売買の場合、不要建物の価値はゼロで、除却費用はマイナスになる。では、知事の答弁にある「ルール」とは、いったい何か。それは、土地区画整理事業における「移転補償」しかあり得ない。それを知事は期待しているのだろう。
そこで、改めて伺うが、2020(令和2)年度に本市が試算し、大阪府に対して示した府民センター跡地の資金化の見込みの中で、土地区画整理事業の事業決定も、関連予算の議決も、まだ確実なことが何も決まっていない状況の中で、なぜ通常の用地買収とは異なった土地区画整理事業における移転補償額まで上積みした跡地の価格を示したのか、理由をお聞かせいただきたい。そして、この金額算定については、大阪府に対して履行義務がある一種の「約定(約束)」のような性格を持っていると考えておられるのかについても伺う。

A.山中市駅周辺まち活性化部長の答弁

2020(令和2)年度には、④・⑤街区において土地区画整理事業の施行を想定しており、本市が試算した金額については、通常の用地買収とは異なり、土地を地区内に換地することを前提としている。
また、建物等の補償費については、法令により施行者が補償することが義務づけられているため試算したものである。
なお、これらの金額については、当時の路線価などを用いた概算によるものであることから変動するとともに、大阪府への履行や、市が府に支払いを確約する性質のものではない。

Q.私の質問(「国・府・市有財産最適利用推進連絡会議」は何か)

「事業手法を想定すること」と「金額を示すこと」は「ことの重み」が異なる。
当時の経過を振り返ると、市はこれまでいつも「国・府・市有財産最適利用推進連絡会議」で確認してきたと答えてきた。
しかし、この会議の性格、すなわち各団体を代表する者による協議機関なのか、単なる実務レベルの連絡調整機関なのか。その設置根拠は何か。そこでの合意事項にどのような拘束力があるのか。そして、どのような合意があったのか、補償費についても、どのような議論があったのか。議事録は存在するのか。また公開されるのか、これらが全くわからないのが実情である。
そこで、改めて「国・府・市有財産最適利用推進連絡会議」に関するこれらのことについての説明を求める。

A.山中市駅周辺まち活性化部長の答弁

「枚方市における国・府・市有財産の最適利用推進連絡会議」は、財務省近畿財務局、大阪府及び枚方市の職員で構成されており、枚方市駅周辺地域に所在する国・大阪府・市有財産の最適な活用を推進するために会則により設置しているものである。
本会議では、枚方市駅周辺における都市施設整備、まちづくり、地域経済の活性化等に資するよう、対象となる財産の利用計画などについて協議・検討することを目的としており、会議での協議・検討結果を踏まえたうえで、各機関で合意形成をそれぞれ図るものである。「補償費」については、国・大阪府・市有財産の活用を検討するために、市街地再開発事業や土地区画整理事業の仕組みとして説明をしている。
議員お示しの2017(平成29)年8月25日の会議においては、大阪府北河内府民センターは③街区に移転し、その跡地などを活用して国・市の合同庁舎を整備する方向で進めることが国・府・市有財産の最適利用として、効率的で最も有効であることを確認したものであり、その内容については、2017(平成29)年8月31日に議会への情報提供をさせていただくとともに、プレスリリースやホームページへの掲載を行った。
また、本会議では、検討段階の議論が行われていることなどから、会則に基づき、原則として非公開としており、議事録については、会議要録を作成している。

O.私の意見・要望(最適利用の代替提案)

答弁によると、「最適利用推進連絡会議」とは、財務省近畿財務局、大阪府及び枚方市の職員で構成され、会則により設置されたもので、目的は財産の利用計画などについての協議・検討ということである。すなわち、あくまでも実務レベルでの調整機関であり、各機関を代表するものによって構成され、その合意事項に一定の履行責任が生じるような協議機関ではない。ですから、さまざまな状況・事情の変化によって当時の説明と異なる事業展開になったとしても、改めて協議をすればよいだけである。

ところが、先ほどの山中部長の答弁や先の全員協議会の資料では、土地区画整理事業について、

➤ ④街区と⑤街区の一体的施行を見直し、⑤街区を先行整備する方針に変更し、
➤ 仮換地指定後に、仮清算または庁舎用地としての取得等について、大阪府と調整等を行い、
➤ それらに必要な費用については、その実施時期までに、不動産鑑定や補償算定を実施する

と、⑤街区の土地区画整理事業を先行させ、大阪府の用地を移転補償付きの高値で買うための「手続き作り」を一心不乱に進めようとしているのではないか。

つまり、2024(平成6)年11月に移転を完了させた大阪府において、いよいよ跡地活用が問題になってきた。だから、枚方市として必要な高値買収の根拠を急いで作るため、④街区と⑤街区の一体的施行を見直して⑤街区を先行整備する方針に変更し、⑤街区単独の土地区画整理事業、北河内府民センター跡地の府有地7,700㎡が含まれる「⑤街区単独での土地区画整理事業」という話を持ち出したということではないか。
使用価値のない建物価額をゼロにすることや、アスベストも含有されているであろう建物除却に要する費用を控除することもなく、逆に移転補償費用を加算するなど、もってのほかである。
そのために行われる土地区画整理事業など、もはやまちづくりのための事業ではなく、北河内府民センター用地買収額に約10億円の補償額を上乗せできるようにする「ルール作り」のための便法にすぎない。
時間がかかるからか、「都市計画決定のない土地区画整理事業もないことはない」等という説明も聞いた。何もかもが、無理を押し通そうとする姿勢のあらわれとしか思えない。
当初から、大阪府有地の高値売却、枚方市の側から見ると高値買収を「有効利用促進」という名目の下、大阪府と示し合わせて進めてこられたのかもしれない。しかし、本来、市庁舎については、わざわざ離れた府有地に移転させて建設する必要性も必然性もなく、20,000㎡超もある広大な④街区の市有地を活用して建設すればよいだけのことなのである。ましてや、府有地の高値買収のための財源確保のために、貴重な市有地を民間企業に売却、または貸さなければならないなどという話に、納税者市民の理解が得られるとは思えない。
先ほどの答弁でも、試算額は、「大阪府への履行や、市が府に支払いを確約する性質のものではない。」とのことであった。
大阪府が枚方市のまちづくりに協力するというのであれば、今、枚方市としては、土地区画整理事業を仕立てて「移転補償費」を積み増しして府民センター跡地を取得するのではなく、次のような考え方で大阪府との協議に臨むべきはないか。

➤ 枚方市役所新庁舎は市有地で建設します。
➤ 北河内府民センター跡地への移転は行いません。
➤ ですから、北河内府民センター跡地は大阪府で活用してください。
➤ 活用にあたっては、枚方警察が2署体制に分割され、新しい交野警察署が整備されましたが、枚方警察署は元のままです。老朽化が著しく、生活安全課はプレハブで執務され、エレベーターもなく、劣悪な状況にある枚方警察署の建て替えに、ぜひ活用してください。
► 売却を検討されるなら、新警察署を整備した後の、現枚方警察署用地を検討ください。

こうした立場こそが、大阪府民でもある枚方市民にとって最も望ましい対応方針だと考える。伏見市長には、このような方針に修正するお考えはないのか伺いたいところであるが、時間の関係もあり、強く意見して私の質問を終わらせていただく。

 

 

 

◇枚方市議会 2025(令和7)年12月定例月議会(第2日)(5:25:15くらいから)

 

 

 


【これまでの投稿】

▶ 9月29日、枚方市駅周辺再整備の取組について、全員協議会が開催されました。「ゼロベースで」「売却ではなく定借を第一義に」!? 突然の方針転換を当日答弁で初めて明らかにする不誠実さには怒りも。しかし、持続可能な未来のための最適解を探れるよう、2つ目の代替案も示して、責任ある判断を市長に求めました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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