今般のマンション管理適正化法(マン管法)の改正は、マンション政策における地方公共団体の権限強化がポイントの一つ。マンション管理の適正化について質問しました。6月定例月議会、一般質問の報告④です。
枚方市議会議員の奥野みかです。
ここでは、「4.マンション管理の適正化について」の報告です。
マンションの管理について、区分所有者の高齢化、若年層の減少の他、空き室や賃貸などによる非居住化の進展、管理組合の担い手不足等、マンション管理のリスクが課題として認識されてきています。そのため、マンションの適正管理を促進するとともに、マンションの老朽化を抑制し、老朽化が進み維持修繕等が困難なマンションについては、再生に向けた取り組みを強化することも喫緊の課題となっています。
2020年6月、国において、適切な管理を行政も後押しする「改正マンション管理適正化法」が成立し、「基本的な方針(マンションの管理の適正化の推進を図るための基本的な方針(2021年9月28日国土交通省告示第1286号)」も発出されています。いずれも、2022年4月1日施行です。
▶マンション管理適正化法・建替円滑化法の改正について/(国土交通省資料)(※クリックするとPDFが開きます。)
私は、2021年9月の議会で、枚方市駅周辺をはじめ、新築マンション建設の誘導ばかりを行うまちづくりではなく、市としてマンション管理適正化推進計画を定め、マンションの管理状況の実態把握を適切に行い、管理が適正に行われていないマンションに対しては必要に応じて指導や助言、専門家の派遣等による支援、また、マンションの管理組合が定める管理計画認定制度の導入など、改正法に基づき、マンション管理の適正化を推進していくよう、強く要望しました。
マンションはひとたび管理不全に陥ると、問題は区分所有者や居住者のみにとどまりません。外壁の崩落などは周辺住民にも危険が生じますし、空き室が増えてくると治安も悪化しかねません。また、自治体が建物を強制的に取り壊さざるを得なくなれば、その負担は広く納税者全体にも及ぶことになるわけです。国・地方自治体が踏み込んで、マンションの管理について積極的に関与する基盤が作られたわけですから、市は、法改正の目的をしっかりと受け止めた取り組みの具体化に努めなければならないと考えます。
マンション管理の適正化を推進するため、「マンション管理適正化推進計画」の作成に向けて、外観などの状態や管理組合の運営状況などの実態を把握するためには調査が必要である、ということで、今年度、市は「市内分譲マンション実態調査業務委託料」を予算計上し、国の補助制度(マンション管理適正化・再生推進事業)の活用を考えているとのことでした。そのため、予算特別委員会で、この委託料についての質問を準備していましたが、持ち時間の関係で質問することができませんでしたので、今回、確認をしました。
市内分譲マンション実態調査により把握された実態や課題抽出を踏まえ、マンション管理適正化の法改正に基づき、どのような計画を策定していく考えであるのか質問したところ、管理適正化に関する目標を設定し、基本的な方針を示し、管理組合による自律的なマンション管理や、管理不適正マンションの解消などに関する技術支援策を検討するとのお答えでした。
具体的な内容はよくわかりませんでしたが…、今回の実態調査により可視化されるさまざまなリスクに対応する適切な施策を検討いただきたいと要望しました。
そして、繰り返しになりますが、今、検討が進められている枚方市駅周辺再整備基本計画との関係では、貴重な枚方市駅前に広がる枚方市の土地をタワーマンション敷地に転換し、50年後の課題の種をまくようなことは決してあってはならない、と意見しました。
以下、6月17日の一般質問でのやりとりを掲載します。
4.マンション管理の適正化について
Q.私の質問
昨年9月の定例月議会の一般質問において、私は、マンション管理適正化法の改正目的をしっかりと受け止めた取り組みの具体化を強く要望させていただいた。
今年度、予算化されている「市内分譲マンション実態調査」について、市は、どのような調査を行うのか、伺う。また、その調査への補助金の活用についても伺う。
A.都市計画部長の答弁
本市としては、法改正に基づき、マンション管理適正化の推進のための計画策定に向けて、市内の分譲マンションに対して調査を実施するものである。
調査については、郵送によるアンケート調査を業務委託により実施し、建物の基礎情報や管理組合の運営状況など(※)、マンションの管理の実態を把握することとしており、これらを踏まえて計画の策定を進めていく。
なお、この調査については、国土交通省の補助金である「マンション管理適正化・再生推進事業」の補助メニューを活用して実施していく。
Q.私の質問
国土交通省によると、全国的に分譲マンションは増加の一途をたどっており、また、今後、築40年を超える高経年マンションが急速に増加することが見込まれている。マンションの所有者・居住者の高齢化とマンション自体の老朽化という「二つの老い」が大きな課題として指摘され、マンションの管理組合の運営はますます難しさを増していると言われている。当然、本市に既にあるマンションについても例外ではなく、同様の問題が生じていると考える。
今回、分譲マンションの実態調査を行うことにより、本市における分譲マンションの現況や管理状況の実態を適切に把握いただき、課題を抽出いただきたいと考える。そして、その実態把握や課題抽出を踏まえ、マンション管理適正化の法改正に基づき、計画を策定されると考えるが、市として、どのような計画を策定していく考えであるのか、伺う。
A.都市計画部長の答弁
本市が策定する計画については、マンションの現況や管理状況の実態から見える課題を踏まえ、管理適正化に関する適切な目標を設定する。また、目標の達成に向けては基本的な方針を示し、管理組合による自律的なマンション管理や、管理不適正マンションの解消などに関する技術支援策を検討し、計画の策定を進めていく。
O.私の意見
今回のマンション管理適正化法改正を含め、一連の法改正の真の狙いは「マンション版の空き家対策特措法への環境整備ではないか」という識者の指摘もある。空き家対策はまちづくり、住宅政策においても大きな課題であるが、集合住宅の空き家対策はより深刻である。マンションは、日常の維持管理においても、大規模改修や建替えにおいても、多数の区分所有者の合意が必要となる。区分所有者が数百人となるタワーマンションなどにおいて適切なガバナンスを確立し、長期にわたって保持し続けることは、本当に難しい問題だと思う。
今回の実態調査により、さまざまなマンションリスクが見える化されるわけである。すでに、条例等により規制に取り組む自治体の例もあるが、これまで、私有財産であるから踏み込んでこられなかった部分に関しても、行政としての適切な対応を検討いただけるよう要望する。
市としてマンション管理適正化推進計画の策定及び必要な施策の推進にしっかりと取り組むとともに、老朽化マンション問題が大きな政策課題として明らかになっている今、枚方市駅周辺再整備基本計画との関係では、貴重な枚方市駅前に広がる枚方市の土地をタワーマンション敷地に転換し、50年後の課題の種をまくようなことは決してあってはならない、と意見しておく。
▶ アンケート調査の内容の「建物の基礎情報や管理組合の運営状況など(※)」について
・建物の基礎情報:建設時期や床面積、住宅の総戸数やマンションに設けられている設備、耐震性の有無等
・管理組合の運営状況:管理規約や長期修繕計画の有無、管理費や修繕積立金に関すること等
→市内分譲マンションのデータベース化
※以下は、国土交通省が各地方公共団体に実施したアンケートをもとに作成された公表データから大阪府分のみ抽出したもの。
▶ 国土交通省の最新資料より
建物の老朽化と高齢化の「二つの老い」~マンション管理に潜む リスクの認識は待ったなし。2021年9月定例月議会で、マンションの管理の適正化の推進について、質問しました。
マンション管理適正化法改正を含め、一連の法改正の真の狙いは「マンション版の空き家対策特措法への環境整備ではないか」との意見も。マンション管理の適正化の推進は喫緊の課題。
マンション管理組合として、超高齢化社会へどう備えるべきか。枚方マンション管理組合連合会の交流会では、さまざまな問題の共有化、そして、情報交換・意見交換も活発に行われていました。
【追記】
▶ 「マンション管理」新時代(毎日新聞_経済プレミア・トピックス)
(1)「マンションは管理を買え」官民“格付け”が始まった(2022年6月15日)
(2)マンション管理認定制度「積立金不足」だけでない難関(2022年6月22日)
(3)マンション「管理費と修繕積立金」まだまだ上がる理由(2022年6月29日)